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妖怪御殿のとある一日 引っ越し後4
※所々セクハラシーンが含まれます
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つま先から、まるで体を這い上がってくるように不気味な痣が増えていく。
それが上がってくれば上がってくるほど、体調が悪化した。
だんだん息がし辛くなってきた。意識が朦朧とする時間が増えた。
頭の中で誰かがずっと「死ね」と呪詛を呟いている。
もうダメだ。もう死ぬんだ。

絶対に助けてくれるって言ったのに。
本当は死ぬのを待ってるんだ。
そうだ。
そうに決まってる。

信じてたのに……!

このままここで殺されるくらいなら、いっそ、外に――

******************

「――まれ!誉!!」
「!?」
ぬぬの声で、帝はハッとして目を覚ました。
手を握っているぬぬは心配そうに帝を見つめる。
「すごく、うなされてた。大丈夫か?」
「……!……!」
帝はその手を振り払って、勢いよく体を起こして、寝間着の薄い着物を脱ぎ捨てる。
「誉!?誉……」
必死に自分の体を見回している帝に、ぬぬは悲しげな表情で優しく言った。
「綺麗な体。見惚れるくらい……」
「っ、うぅっ……!!」
「大丈夫。呪いの痣なんて一つもない」
泣き出した帝をぬぬが抱きしめると、帝はますます泣きじゃくった。
「うぇっ……ひっく……!!」
「痣は無い。呪いは解けてる。怖くない」
ぬぬがトントンと優しく背中を叩きながら言い聞かせ、
しばらくして泣き止んだ帝は、また着物を着て、ぼんやりした表情で部屋を出た。
「……水を飲んでくる」
「いってらっしゃい」
ぬぬは心配そうに帝を見送った。


台所に来た帝は、眠っている恋心姫を膝に座らせて、椅子に座っている煤鬼に遭遇した。
「よう」
「何だ?どした?姫が風邪を引くぞ?早く部屋に戻って寝かせてやれ」
「今眠ったところだからな。動かしていいものか思案中だ」
煤鬼の言葉で事情を察して、帝は複雑な表情をする。
恋心姫も自分と同じように……
「……また泣いて起きたか?」
「あぁ。今日は部屋であやしても泣き止まなかったからここへ連れ出した」
「姫も難儀な体質だな……」
「お前もな」
「それを言うならお前もだ」
そして煤鬼も同じように。

煤鬼は恋心姫を悲しそうに見つめながら言う。
「俺が苦しむのは俺のせいだ。でも恋心姫は違う。
巻き込まれただけで、何度も血生臭い夢を見ている。可哀想に。
できる事なら代わってやりたいが、こればかりは……」
「幼子の乳を弄りながら言うセリフじゃないぞ」
「なんとでも言え。うなされるくらいなら、俺の夢になればいい」
煤鬼はぐりぐりと服の上から恋心姫の胸を擦っていて、
恋心姫が少し身を捩りながらふわりと口を開く。
「んっ、すす、き……すすき……もう、えっちぃ……おっぱい、いじったら眠れませんよぉ……」
「違う違う。恋心姫がいい夢を見られるおまじないだ」
寝ぼけ半分のフワフワしている恋心姫を愛おしそうに見つめて、煤鬼が返す言葉はとても優しい声で。
そうすると、また恋心姫が寝言のように言った。
「うそ、ばっかり……」
「はは、バレたか?何の夢が見たい?」
「……いちごだいふく……」
「そうか。なら、苺大福の事を考えて眠るといい」
「はぁい……」
すうっと、再び恋心姫が眠りに入ると、煤鬼は恋心姫の頭を撫でながら帝に言った。
「……お前も虚勢を張らずに誰かを頼れ。俺は恋心姫にだけ全部話した。だいぶ楽になったぞ。
恋心姫も俺に話してくれたし、そうやって支え合えば、悪夢も怖くない。ぬぬがいるだろう?」
「ぬぬに“うなされてたら乳を弄ってくれ”と頼むのはごめんだな」
そう茶化す帝に、煤鬼の声は真剣だった。
「多少情けない方法でも、楽になれるならそうした方がいい。
ボロボロになってまで体裁を保ってる奴など、見ていて痛々しいだけだ。
そうなる前に……ぬぬでも、桜太郎でも、麿でも、もちろん俺でもいいし、
大サービスだ、恋心姫がいいなら許可してやる。
誰か、お前の後ろ暗いところ含めて、全部を受け止めてくれる存在を作れ」
「……そろそろ部屋に戻ろう。皆で風邪を引いたら桜太郎がてんてこ舞いだぞ?」
「……そうだな。ま、意地っ張りで格好つけのお前が誰も頼れずとも……
俺達がうなされ仲間だ。一人じゃない事だけ、覚えておけ」
そう言って明るく笑った煤鬼に、帝も笑顔を返した。
そして煤鬼が恋心姫を抱きかかえて部屋に帰るのを見送って……
台所の全ての酒を抱えて部屋に帰る。



「お帰り。落ち着いたか?……誉?」
帝はぬぬに声をかけられても無視で、酒瓶を机に並べて座った。
ぬぬが慌てて近寄っていく。
「誉、その量は……さすがに体に悪い……!!」
「黙れ!お前は寝ておればいいだろう!」
帝が瓶に口を付けて酒をあおる。
ぬぬはますます慌てた。
「あ……直飲みはちょっと……!!」
「んっ……邪魔をするなと、言っておろうが!尻を打たれたいか!?お前はもう寝ろ!」
ぬぬを手で追い払って怒鳴る、そして酒を飲みまくる帝。
一度は、ぬぬもしぶしぶ布団に潜ったけれど、帝がガンガン飲み続けると這い出してきた。
「やっぱりそれ以上は……!!」
「うるひゃいこの変態!」
「お願いだからもうやめてくれ!一緒に寝よう!?大丈夫!もう怖い夢なんて見ないから!」
「あぁうっとおしい!!」
そう叫んだ帝がぬぬに酒をぶちまけて、ぬぬはびしょ濡れになって困り果てていた。
「……布団の上じゃなくて良かったけど……(着替えたら無理やり布団に引きずり込もう)」
結局、その夜は、着替えたぬぬが半ば強引に帝を布団に入れて寝かせたのだった。

翌日→帝・ぬぬside  恋心姫・煤鬼side



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【作品番号】youkaisin4

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