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※注意! 描写力には自信が無いのですが、ガッツリ性描写あります。
上倉さんの株大暴落?の上に内容的に優しい方は不快になるかもしれません。ご了承ください。



父さんが死んでから、俺はただ、自慢の家族が壊れていくのが怖かった。

朝から晩まで働き詰めの母親。
俺は大学と、母親ができない家事、ゼロにはできないバイト……全部抱えるだけで精いっぱい。
家から出られずに引きこもって胸に自傷を繰り返す弟を、誰も構ってやれない。
逼迫していく家計。閉塞していく状況。追い詰められる精神。

(このままじゃ俺達全員、共倒れになる……!!何とかしなきゃ、俺が、何とか……!!)

弱気になっちゃダメだ!父さんの代わりに俺が全部守らないと!
父さんの生きてた頃と何一つ変えちゃいけない!奪われちゃいけない!

せめて、真由が幸せなら、母さんが幸せなら、それでいい!

俺は、何も要らない

パンドラBOX〜上倉大一郎の場合(前編)〜

煌々と光るゴテゴテしいシャンデリア。
下卑た濃い赤の絨毯に、バカ高そうなアンティークのソファー。
座り心地だけはいいそれに座って、執事服の俺は一生懸命考えるふりをする。
隣ではいかにも成金な男がニヤニヤしていた。
「ん〜〜……こっち!」
考え抜いた(フリ)の末、テーブルの上に伏せて置かれた2つの金のカップの片方を指さす。
正解じゃなくていい。むしろ外した方が相手は喜ぶ。
「ハイ、残念……」
「え〜〜〜〜!!?」
口元を下品に歪める相手の男に、大げさに落胆した声を出す。
男は喜々として俺が指さした方と違うカップからサイコロを取りだした。
“目”にブラックダイヤやルビーを埋め込んでいる、無駄に金のかかっているサイコロだ。
こんな単純な遊びは心底どうでもいいけど、相手の胸にしなだりかかりながら甘えた声を出す。
「絶対こっちでしたよ!何かズルしてるでしょう!?もう一回!もう一回やってください!」
「いいぜ?何度でもやってやるよ。でもその前に……」
男が俺の体に手をかける。そのまま伸し掛かられる様に押し倒された。
「罰ゲームだ。チロ」
「んっ……」
強引なキスにも、さっそく服を脱がされている事にも抵抗は無い。
こんなのは日常茶飯事だ。
ちなみに『チロ』はここでの俺の呼び名。


不思議な縁で、ある意味天罰で、俺はこの屋敷で執事として働く事になってもう2年経つ。
とはいえ実際やっている事は執事というより売春婦に近かった。
執事の格好をして旦那様やそのゲストに“ご奉仕”をするのが俺の仕事。汚く言うと“性奴隷”。
朝から晩までセックス三昧のこの生活……悲惨に聞こえるかもしれないけれど、俺は結構楽しんでいた。
俺を息子扱いして自分の事を“パパ”と呼ばせる超絶変態の旦那様のお陰で、性奴でも高待遇。
豪華な風呂、トイレ使いたい放題。屋敷の中は自由にうろつける。欲しい物は大体与えられて、食事も部屋も超豪華。
自分が元から金持ちの息子にでも生まれてきたのかと錯覚しそうなくらいだった。
実際は、俺を可愛がってくれる旦那様に張り付いて同じように生活してるからこうなるんだけれど……

一発目からトラウマになるほど気持ち良かった男との性行為は今じゃすっかり大好物。
『パパと変態な仲間達』が面白がって変にいじめるから、気付いたら快楽依存気味のマゾヒストになっていた。
でも、俺はそんな事はどうでもいい。
皆が皆、俺の事を“可愛い可愛い”と抱いてくれる。誰彼なしに囁かれる“愛してる”は挨拶だと分かっていても耳に心地いい。
この仕事は最高に気持ちいい。そして気持ちよければ何でもいい。何をされてもいい。誰とでもいい。何人でもいい。
(この仕事は俺の天職かもしれない……!!)
そんな事さえ思い始めて、ルンルン気分で廊下を歩く。


そんなある日の事だ。
久しぶりに実家に連絡したら、母さんが嬉しそうに話してくれた。
『真由がね、執事学校に行きたいんですって!』
「執事学校?真由が?」
“執事”という言葉に一瞬ドキッとした。母さんに俺の仕事の事は、当たり前だけど言ってない。
『住み込みのカニ缶工場』と話して強引に納得してもらった。
母さんには俺の動揺は伝わってないらしく、ずっと嬉しそうに話す。
『そうなの!年少者向けの短期学校でね、きちんと勉強したら2年で卒業できるらしくて!
執事だけじゃなくてメイドを目指す子も一緒に教育してて……大きく“使用人学校”って感じなのかしら?
だから性別も関係ないみたい!受験担当の先生に相談したら、入試に通る学力さえあれば
真由みたいな子でも受け入れてくれるって!基盤さえあればあとの教育はこちらの仕事だから、って!
先生も学校もいい雰囲気だったから、お母さんも安心したわ!
真由もすっかりやる気になっちゃって、今一生懸命勉強頑張ってるのよ?
パン屋のご夫婦も応援してくださって!しばらくバイトはお休みするみたい!』
「すごい……!真由、頑張ってるんだな……!」
引きこもりだった真由はあれから、同じような事情の子が集まる小さな塾に通うようになった。
そして近所の、顔なじみの優しい熟年夫婦がやっている小さいパン屋でアルバイトをして、徐々に外の世界で頑張っていた。
俺はそれが励みになっていて、すごく嬉しかった。おまけにきちんとした将来の目標までできて受験……
『全部大一郎のおかげよ!本当にありがとう!』
母さんの弾んだ声に俺も一気にテンションが上がる。
「そんな事ないよ!真由が自分で頑張ってる!よーし、俺も頑張らなきゃ!
真由の学費、頑張って稼ぐから!俺も応援してるって言っといて!」
『大一郎……』
急に母さんがしんみりした声になる。
『真由が言ってたわ。“オレが早く執事になって働けば、おにぃがいっぱい働かなくていいから、帰って来れるよな!?”って。
お母さんもね、もう少ししたら働こうと思うのよ。真由はもう少々一人にしても大丈夫だと思うし、
胸も傷つけなくなった。貴方達が頑張ってるのに、一人だけ専業主婦じゃ申し訳ないじゃない?』
「そんな、申し訳ないだなんて……」
『だからね、大一郎……そろそろ帰って来ない?こっちで、もう少し余裕のあるお仕事探さない?
貴方が帰って来なくなってもう2年になるじゃないの……お母さんも真由も寂しいわ……』
「そ……」
とっさに声が出なかった。言われるとは思って無かった。“帰って来ない?”だなんて。
動揺したけれど、黙っているわけにもいかないから慌てて口を動かした。
「考えて、みるよ……急には、きっと無理だから。こっちの職場にも色々恩があるし……」
『そうね。上司の方とよく相談してみて』
「うん。そうするね……母さん……ありがとう……」
泣きそうになりながら、俺は言う。
母さんは『大一郎が帰ってくるのを楽しみにしているから』と言って電話を切った。
最後に優しい声で『無理しないで、体を大事にしてね』とも。
(母さん、ごめんなさい……)
俺は受話器を握りしめて母さんに心底謝った。この後もまだ“仕事”があるから。
途端に、普段は忘れてる罪悪感が一気に押し寄せて、15分ほど落ち込んでしまった。


で、心の底からの懺悔も罪悪感も、快楽の波に飲まれれば綺麗サッパリ忘れられる。完全にどうでもよくなる。
俺は変態マゾなだけでなく、最低のクズ野郎らしい。うん、前から知ってたけど。
だから、今ここで旦那様にお仕置きされているのも仕方のない事だ。
ベッドの上で旦那様に尻を向けて四つん這いにさせられて、ズボンと下着をずり下ろされる。
「あぁ……パパごめんなさい……!」
泣きそうな声色作りなんてお手の物。ホントはドキドキして仕方ない。
パドルの風切り音に心臓が跳ね上がった。
ピシィッ!
「う、ぁっ!!」
鋭い痛みも恥ずかしさも確かに感じる、けど、それが同時に快感を生み出す。すごく便利な俺の神経回路。
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
「痛い!痛いですパパ!これからはいい子にしますから!」
「うるさい!あんな男に抱かれおって!アイツには体を許すなと言っておいただろう!悪い子め!」
「だっ、だってあの人が無理やり……!!」
「嘘をつけ!お前が喜々として腰を振っていたと見てたヤツが言っておったわ!」
ビシィッ!!
「あぁうっ!!はぁっ、はぁぁ……!」
息を吸うのも吐くのも一苦労。でもコレが堪らない!
ちなみに、俺は旦那様が嫌っている若い成金とやっちゃったのでお仕置きされている。
二人共利害関係は一致しているらしく、表面上は仲がよさそうに振る舞っている。
だから向こうもよくこの屋敷に来るんだけれど……それで俺を可愛がってくれた。
言っておくけどこれが初めてじゃない。だって向こうから誘ってきたし、顔が好みだったし。
内緒にしてればバレないと思ったけど甘かったみたいだ。
誰かに告げ口されてこうなるなんて……何てラッキーな事か。
そう考えている間にも痛みと快楽は一緒くたになって襲ってくる。
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
「やっ、ぁっ、パパぁ、痛い……!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「ダメだ!パパの言いつけが守れない子はうんとお仕置きしてやるぞ!」
「うぅっ……!やだぁぁ……!パパぁ!!」
「ほぅら、その可愛い尻を突き出してみせろ!あの男にやった様に振ってみせろ!」
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
「あっ、んっ!!はぁ、ぁ……!パパごめんなさい!あぁあっ!」
痛い。痛いけど、旦那様のご所望通り、軽く腰をくねらせてみる。
そうすると旦那様は喜んでもっとパドルを打ってくる。
ピシッ!ピシッ!ピシッ!ピシッ!ピシッ!
「やぁぁああっ!パパぁ!痛ッ……んぁああっ!!」
尻が痛い。熱い。痛みで涙が出そうになる。
けど向こうも伊達に変態はやってない。俺の気が少し緩んだ時に図った様にキツイ一発をお見舞いしてくる。
繰り返されると苦しめられる。苦しめられると何だか嬉しくなってくる。
「あぁっ、へぅっ、パパぁ!痛いよ!んんぅ、お尻裂けちゃうよぉ!はぁぁんっ!」
「ハッハ!腰を振って喘ぎながら“痛い”と言われても説得力が無いな!真っ赤な尻を叩かれて感じてるのか?ええ?チロ?」
「そんな事ないです!反省してますっ、やぁんっ!!」
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
苦しい、痛い、あぁ、もっと、もっと……!!
“喘ぎ声”だと言われた情けない声は8割がマジだ。
この裂けるような焼けるような痛みが何とも言えず気持ちいい。
俺があんあん喜んでいると、旦那様も少しずつノッてきたようだ。
「フッハハ!真っ赤なお尻も可愛いなぁ!」
バシィッ!!
「ひぃぃっ!パパの意地悪ぅぅっ!!」
お前はお仕置きしてるんじゃないのかと問いたいけれど、お互い様だった。
俺の方も理性のストッパーが効かなくなって、快感のまま叫んでいるのだから。
「パパぁ!ああ、パパ!ごめんなさい!チロが悪い子でしたぁ!もっとお尻打ってぇ!お願いですからぁ!」
「何だって?もうスイッチが入ったのか……これじゃあお仕置きにならんなぁ!アッハハハ!」
「ご、ごめっ、なさいぃっ!はぁ、いいっ!パパ!お尻叩かれるの、いいぃぃっ!」
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
パドル音と、悲鳴嬌声、嬉しそうになじる声。滲む視界。旦那様のフレグランス。痛みと快感。
感覚のすべてが脳を蕩けさせる。
おかげで俺の股間のドMアンテナはバリバリの直立不動だ。きっと後で発見されて叱られる。
「あぁああっ、パパぁ!ごめんなさいぃ!うわぁぁああん!」
気持ちいい。でも、痛いもんは痛い。それで泣いてしまったけど、悲しくない。惨めさも無い。
甚振られれば甚振られるほど心を幸せが満たしていく。
(良かった、良かったこれでいい!俺みたいなのは、こうやって痛めつけられて泣き喚くのが当然なんだ!)
こうやって尻でも何でも(旦那様やゲストは尻がお好きなようだが)酷く打たれて泣かされると安心する。
嬉しくなる。何かに許された気になる。
だから俺は……
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
「あぁあああん!パパぁっ!!好きぃぃ!」
旦那様は明らかなる変態キモ豚だけど、そうなんだと思う。
俺が涙ながらにそう言うと、下品な笑い声が響いた。
「ッハハハハ!可愛い事を言いおる!仕方ない、お仕置きは終わりにして可愛がってやろうか!」
「あっ……!!」
後ろから勢いよく伸びてきた武骨な手は、俺を一瞬で仰向けにする。
予想通り、俺のドМアンテナが直立なのを見て醜く笑い、握りつぶす勢いで掴んできた。
「いっ!!」
「もうこんなにして……さっきのお仕置きは意味が無かったか?」
「そ、そんな事……あっ、あ……!」
否定しようとしたら上下に擦られて言葉が続かなくなった。また頭が緩んでくる。
旦那様の声も夢の中で響いているみたいだ。
「貞操帯の代わりになるかと思ってここを剃ったのに……
こんな恥ずかしい子供チンポでよくあいつに抱かれる事ができたなぁ?」
じっとりした言い方は不快なはずなのに、何も感じない。
頭が快感に取られて他の事は考えられない。
この前剃られてしまった陰毛部分をもう片方の手で撫でられながら、ぼんやりと答えた。
「お、お兄様方には好評でした……」
「お兄様“方”!?仲間もいたのか!?何て節操無しだお前は!」
「ご、ごめんなさい!!」
さすがに怒鳴り声はきちんと頭の中に入って来て、慌てて大声で謝る。
けれども旦那様は酷くご立腹の様で、勢いよく自分の下半身を丸出しにする。
「全く、お前は誰の息子だと思ってるんだ!教えてやる!お前と一番相性がいいのは、この私だと言う事を!
ちゃんとバージンも奪ってやったと言うのに!」
「パパ……!」
赤いような黒いような、隆起したペニスを見て、言いようのない興奮と恐怖が入り混じる。
もう何度も突っ込まれて見慣れてるはずなのに。
けれどこういう時、どうしたらいいか俺は知っている。
「パパの……」
生娘のように恥じらいながらも、期待に満ちた表情でソワソワすればいい。俺は半分素でこれができる。
俺の人生を閉幕させた憎いペニスのはずなのに、今はこれで犯されるのがすごく楽しみなのだ。
「嬉しそうだな……すぐに挿れてやろう」
「……!!」
強引にズボンと下着を引っ張られて放られた。
片足を付け根から押し上げられて、俺も合わせて自然と体を横向けて……
ブラウスがせり上がったら旦那様が何かに気付いたようだ。
「何だこれは?」
「やっ、ダメです……!」
慌てて止める(フリをした)けれど、旦那様は俺のブラウスを捲くり上げた。
お腹のあたりに油性マジックで『淫乱ドM奴隷のチロです♥いっぱい犯してね♥↓変態子供チンポ』と書いてある。
俺は(興奮で)顔を真っ赤にして震える声で言った。
「お兄様方が……!」
「ほほう、アイツらもやりおる……」
旦那様は楽しそうに笑って、その落書きがよく見える様に俺を裸にした。
そしてすごくご満悦で気の済むまで俺を犯した。


そこから何事も無かったかのように旦那様と夕食を食べて、一緒にお風呂に入ったらまた犯されて。
着替えて一緒にベッドでに入る。もちろんここでも犯されるわけだが、俺は旦那様に言っておかなければならない事があった。
「パパ……一つお話があるんですが……」
「何だチロ?」
ゴツイ手が優しく髪を撫でるのに愛想笑いを返して、俺は少し緊張気味に言った。
「俺が、この屋敷を出たいと言ったらどうします?」
「…………」
母さんから言われた事はまず隠して。
この後、怒り狂った旦那様に拷問レベルの性行為を強要される事も覚悟した。
けれど……
「別に、お前がそうしたいならそうすればいいさ」
「え……?」
穏やかであっさりした返事に戸惑っていると、旦那様がまた穏やかな声で言った。
「首輪を持っておいで」
「あ、はい……」
俺は、訳の分からないまま自分の首輪を取りに行く。
旦那様はさっきの話を早々に終わらせて“夜伽”に入ろうとしているのだろうか?
それとも、何ともないふりをして実はすごく怒っているのだろうか?もしや今から拷問プレイ?
色々考えつつ、サイドチェストから首輪を取り出して旦那様を見ると、彼はソファーに移動して手招きしている。
素直に旦那様のところに行くと、またしてもそそり立つペニスとご対面。
「首輪をつけて、服を全部脱ぐんだ。その後、自分で腰を下ろしてごらん。鏡の方を向いてね」
俺に拒否権は無い。あったとして、それでも俺は喜んでいう通りにするだろう。
情けない事にこの時点で俺の変態チンポも半勃ちなんだから。
だから言われたとおり、自分で首輪を装着して全裸になって、旦那様と繋がるように彼に腰を下ろす。
「あっ、ん……くぅっ……!」
少し苦しかったけれど、何とか旦那様の一物が入った。それだけで体が熱くなって興奮してくる。
頭がまた惚けてきた。
「それでさっきの話の続きだけどね、チロ……」
「ひゃぁぁっ!」
急に旦那様が俺の両足を持ちあげて、無理やり足を開かされる格好になった。
体が沈みこみ、旦那様のが余計に奥に入って来て、歯を食いしばった。
でもその努力は一瞬で崩される。旦那様が腰を揺すり始めたから。
「パパっ、や、ぁ……!」
情けなく喘ぎ始めた俺の耳元で旦那様が優しく囁く。
「この屋敷を出て、一体どこでどうするつもりだ?」
「え?へっ?ふぁっ、あんっ……!」
一定のリズムで尻穴の中を擦られて、気持ち良くて頭がまともに動かない。
それでも旦那様はどんどん話しかけてくる。
「前を見て。男に犯されてよがってる可愛い可愛いM奴隷がいるだろう?」
「……!や、やめっ……!」
口ではそう言いながら、前を見る。
目の前は一面鏡張りだ。決して曇る事ない、何もかも綺麗に映し出す鏡。
こんなもの前からあった。知っていたはずなのに……!
鏡に映る自分は、驚くほどみっともなくて汚い存在に思えた。
両足を広げて、首輪を付けて性器を晒して、男に後ろの穴を犯されて、その癖嬉しそうな、最低の人種。
それが自分だなんて、再起不能レベルに鬱になるべきなのに、どうして今俺は……
「どうだ?見えるか?ケツの穴を突かれて変態チンポが嬉しそうだな?完全に勃起して震えておる……!」
「あ、がっ……見えっ、見えて……ひ……!」
旦那様の言う通り、俺の変態チンポは勃起していた。はち切れんばかりに。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、ダメなのに、すっごい興奮する!!
食い入るように鏡を見つめる俺の耳元では、また旦那様が囁いた。
「こんな淫乱な変態を、世間一般が果たして受け入れてくれるだろうか……?」
「うぅっ!!」
心臓を鷲掴みにされた気がした。確かに、その通りだった。
急に体に当たる首輪から垂れた鎖が冷たく感じる。でも、快感と喘ぎ声は止まらない。
「こんな『淫乱ドM奴隷のチロです♥いっぱい犯してね♥』なんて腹に書いて喜んでいる男が、普通に働けるのか?
屋敷を出れば、誰も犯してくれんぞ?鞭で打ってもくれん……」
「あっ、あぁっ、やだ……そんなのヤダ……誰か、犯して、くれなきゃ……!!」
自分で言ってゾッとした。
お腹に書かれた落書きはまだ消えてない。
旦那様は耳元で押し殺したように笑って、余計に激しく突き上げ始める。
合わせて快感も一気に膨らむ。気持ち良くて堪らない。
「あぁああっ!パパぁ!気持ちいい!」
「チロ?“病気のお姉さん”が使用人学校に通うんだってな?学費はどうする?
もしお前がここを出て普通に働けたとして、マゾセックスしか能の無いお前がそんなにお金が稼げる所に就職できるだろうか?」
「んぁああっ!分かんないぃっ!れもっ、パパ!もっと、擦ってぇぇ!」
下劣な奇声を上げながら、一心不乱に快楽をむさぼる変態が鏡に映っている。
俺はコイツが嫌いじゃない。でも、コイツはこの屋敷を出たら生きていけない。そう確信してしまった。
そうしたら涙が出てきて止まらなくなった。けれど耳元の悪魔は黙ってくれない。
どこまで知ってる?!こいつは俺の家族の事、どこまで知ってる?!
家族の事は、適当と嘘をブレンドして軽く伝えてた!こいつもあまり詮索しなかったのに!
探ろうにも、だらしなく口を開けて女みたいな嬌声をあげている俺には無理だった。
「お母さんや“お父さん”や“お姉さん”は、帰ってきたお前を見て喜んでくれるか?
染みついた淫靡な匂いはそうそう隠せるもんじゃない……こんなにも変わり果てたお前は、家族に堂々と会えるか?」
「うぇっ、気持ちいい……パパ、もっと、もっとぉぉっ!」
泣きじゃくる。気持ち良くて、情けなくて。
どうして俺はこんな簡単な事を考え及ばなかったんだろう?
母さんや真由が待っているのは、こんなセックス廃人の“チロ”じゃない。明るくてそこそこ優秀だった、“上倉大一郎”だ。
今の俺は、母さんと真由と幸せに暮らす権利なんて無いのに。
悲しい。悔しい。帰れると、思ってしまった。でもすっごく気持ちいい。
繋がった部分から快感が全身にいきわたる。
全部忘れてしまいたい。この悔しさも絶望も悲しみも、全部。
ああ、旦那様……旦那様、助けてください……
縋る様に頭を預けたら、首筋に舌を這わせられる。その後はまた声が。
「ここにいて、今まで通り家族に仕送りを続けなさい。そうすれば、皆幸せだ。
お前は人間じゃない。人の形をした醜い怪物なんだよ……チロ」
小さい子に言い聞かせるような優しい音色だった。
俺にとっては絶対的に正しい意見だ。そうだ。言う通りにしよう。この人の言う通りにしよう。
息を切らせながら、俺は言った。
「分かりましたぁっ!ここにいます!パパの傍に、チロはずっといます!
もういいです!家の戸籍から消してもらいます!お金送ってれば、いいから!皆が幸せならいい!」
ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
せっかく綺麗に産んでくれたのに、人間に産んでくれたのに!!
お金は送るから、絶対ずっと送るから!だから、どうか二人で幸せに……!!
俺は……!!
「いい子だチロ……ご褒美をあげよう」
旦那様が思いっきり腰を突き動かして、乳首を捻り上げる。
「うぁああああっ!!」
頭の中が一瞬真っ白になって、俺はおもいっきり射精してたらしい。
遅れて旦那様の精液にも付き上げられたら、もう一度イッてしまった。
旦那様のペニスが引き抜かれる時がまた気持ち良くて、幸せすぎてキスして。
やっぱり俺、旦那様好きだ……。

俺は、ずっとここにいればいいや。



次の日、実家に連絡した。

「あ、母さん?あの……やっぱり、今は辞められない。
真由が卒業するまでは、ガッツリ稼ぎたいから。それに俺この仕事好きだし。
母さん、仕事始めて真由を放置したらアイツ、不良になるかもよ?アハハ!
今まで通り専業主婦しなよ。俺、母さんと真由の為に稼ぐのが趣味みたいなとこあるから。
心配しないで。連絡は今まで通りするから。一生会えないわけじゃないだろ?
真由が受かったら教えてよ。まずは“お祝金”!期待してね?じゃあ」

電話を切った。
母さんは最後まで悲しそうに俺の名前を呼んでいた。
何度も何度も『本当に無理しないで、体壊さないで』と、念を押した。
母さんごめんなさい。
もうきっと壊れてる。俺はまともじゃない。
「でもさ……俺、間違ってないと……思うんだよねぇ……ね、父さん……?」

俺は受話器を握りしめて泣いた。
……涙もろくなったな。歳かな?



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【作品番号】PB3
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