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姫神様フリーダムanother(閻廷とラブラブな悪夢)




ここは神々住まう天の国。
閻延の城では家臣達が何か揉めている様子。

「この無礼者共がぁぁぁぁっ!閻廷様に性欲なんか無――――い!!」
「理想被せ過ぎですよ!いくら今だに無邪気な感じがしてもあの方だって立派な男神なんですから!」
「ええい黙れ黙れい!閻廷様は昔から、“恥”と“性”の概念には恐ろしく無頓着な方なのだ!
純真無垢な方なのだ――――!大体、こんな話は下世話にもほどがある!やめだやめだこんな話!
貴様らも閻廷様に忠誠を誓った同志なら、無駄口叩かずとっとと働かんか――――いッ!!」
「ハイハイ。……ったく、この話すると毎回絶対荒れる層が出るよな?」
「な――。特に古株組な。頭固いわ――」
プンスカ怒る古参家臣に、つまらなそうな新参家臣。
ちなみに話題は“光濡様が亡くなって15年も経つけど閻廷様はムラムラする夜は無いのか?”みたいな感じだった。


そしてそんな臣下達のゴシップはつゆ知らず、閻廷と娘の閻濡は仲良く寝床の準備をしている。
ピンクを基調にしたベビードールを着た閻濡がベッドに座って、可愛らしい小瓶の液体を一滴枕に垂らす。
寝そべって娘の手元に目を輝かせている、薄い着物姿の閻廷が言う。
「閻濡、それは何だ?」
「玲姫様がくれたんだよ。“良く眠れる香水”だって。いい匂いがするね」
「本当だ!いい匂いがする!」
嬉しそうに枕に顔をうずめる閻廷に、閻濡は優しく微笑みかける。
そっと父親の髪を撫でて、柔らかい声で言った。
「今夜はいい夢が見られそうだね」
「そうだな!閻濡と同じ夢が見られたらいいのに!」
閻廷が無邪気な微笑みを返して、お互い軽く口づけを交わす。
そして閻濡はいつものように目を閉じる閻廷を見ながら彼の手を握る。
やがて、閻廷がすやすやと寝息を立て始めたので、そっとベッドを下りた。
「えんじゅ……」
弱弱しい声に呼びとめられて振り向くと、寝ぼけ半分の閻廷が自分を見つめている。
幼子の様な無防備な表情に、閻濡はクスリと笑って言った。
「ごめんね。おトイレに行くだけだから……」
「そ、か……」
閻廷はまたすやすやと寝息を立て始め、閻濡はそっと部屋を出た。


一方、閻廷の意識はすっかり深い闇の中に落ちていた。

「……ん、ここはどこだ?」

意識を取り戻したとたん、しっかりと立っている自分に気づく。
不思議に思いながら周りを見回してもただ何も無い、霧のようなものに包まれた
ぼんやりとした空間がひたすら広がっている。
しかし、良く目を凝らしてみるとそこにうっすらと浮かぶ人影があった。
ほんのり桜色の全体にゆるくウエーブがかかった髪。
白い肌に長い睫毛……確かに閻濡に受け継がれたその容姿……
「光濡!?」
間違いない。間違うはずがない。
目の前に現れたのは閻廷の最愛の妻、光濡。
閻廷は考えるより早く走って行って思いっきり彼女を抱き締める。
「ああ、光濡!!会いたかった!」
「閻廷様……」
光濡も閻廷の背中に手を回して抱きつく。
しばらく抱き合った後、光濡は閻廷を見上げて言う。
「閻廷様……?今の光濡の姿を見て何か感じませんか……?」
「え?」
そう言われて閻廷が光濡を見る。
彼女の着ていたドレスはだんだん透けていき、消えてしまった。
後に残ったのは清楚な白の下着だけ。
閻廷は目をぱちくりと瞬きして、極上の笑顔で言う。
「すっっっごく、可愛い!!」
「そうですか……罪な方……」
光濡が閻廷にぐっと体重をかける。閻廷はバランスを崩してその場に尻もちをついた。
閻廷の胸にしなだれかかる光濡は彼女らしからぬ妖艶な表情で閻廷の顔を覗きこむ。
「一緒に、赤ちゃんの作り方を勉強しましたよね……?その他の事も……
どうしたら、一緒にたくさん気持ちよくなれるか、とか……」
「そ、そうだな……(なん、だか光濡が、光濡っぽくない……)」
光濡は閻廷の着物の合わせ目を開き、白い肌を手のひらですっと撫でる。
さすがの閻廷も何だかドキドキしてきた。
「閻廷様?光濡と一緒に気持ちいい事、しましょう?」
「光濡……!!」
積極的な妻に戸惑いながら顔を赤くして、光濡を見つめる閻廷。その時……
「パパ……!!」
突然、背中に感じる柔らかさと心地よい重み。
娘の閻濡が背中にべったりと抱きついてきたのだ。
柔らかい体をめいいっぱい背中に押し付け、甘えるように擦る。
「パパは、ぼくの事お嫁さんにしてくれるんだよね……?
もうぼく、子供じゃないから……心も体も、パパのお嫁さんにして……」
「え、閻濡!?」
娘の声は聞いた事もないほど妖艶だった。
それでいて、甘えるような可愛らしさもあった。
閻濡が背中で動くたび、ベビードールの薄い生地が擦れる音が響く。
愛しい妻と愛する娘に柔肌サンドイッチされて、閻廷はどちらを向けばいいか分からない。
しかも2人ともいつもと違って色っぽく……閻廷を異常にドキドキさせていた。
なので首をオロオロ振りながら混乱するばかりだ。
「あ、あの……光濡も閻濡も、甘えん坊だなぁ!一体どうしたというんだ!?」
アハハと笑って恥ずかしさを誤魔化しつつ、閻廷は明るい声を出す。
しかし、光濡も閻濡もさらに閻廷に擦り寄って、余計に甘えた声を出す。
「閻廷様……光濡と閻濡のどちらが好きですか?」
「ねぇパパ、ぼくだよね……?」
「いいえ、光濡を選んでくださいますよね?閻廷様?」
「えぇええええっ!?」
この禁断の質問に、閻廷は本気で参ってしまう。
彼にとっては妻も娘も深く深く深く、本気で愛しているのでどちらか選べるわけがない。
冷汗ダラダラで言葉を濁してしまう。
「え、ええと、そ、そんな、急に、どっちかだなんて!!」
「閻廷様……あんなにベッドの上で光濡を愛していると言ってくださったではありませんか……!」
「パパは、ぼくと男の子の赤ちゃんを作ってくれるんだよね……?」
「あの時のように夫婦の契りを交わしてはくださらないのですか……?」
「お願い……ぼくを大人の女にして……!」
二つの声が代わる代わる閻廷を誘惑する。
しかも二人で限りなく裸に近い体をめいいっぱい閻廷にくっつけながら。
「そそそそそそ、そんな……光濡……閻濡……!!」
恥かしさ、嬉しさ、そして混乱が一気に閻廷を襲う。
しかし二人のどちらに何を囁かれたとしても、閻廷にはどちらか一人など選べそうに無かった。
年下の婚約者、理想の妻、大切な時間を共に過ごし、愛しい娘まで授けてくれた光濡……
妻の忘れ形見、心優しい一人娘、過ごした時間は宝物で、妻亡き後の唯一の心の支えだった閻濡……
閻廷にとっては二人共がかけがえのない存在なのだ。
「さぁ、閻廷様……」
「パパ……早く……」
「うっ、うぅっ……!!」
選べない。けれど二人が“選べ”と迫る。
苦しい状況に閻廷はぎゅっと目を瞑って震えた。
暗闇の中で甘い声が綺麗に重なり、響く。
「「どちらか選んで……?」」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
閻廷は大声で叫んで、二人を振り払って立ちあがる。
へにゃりぺたりと地面に手を突く閻濡と光濡に向かい涙目になって訴える。
「私は、光濡も閻濡もどちらも大好きだ!愛してる!どちらか一人なんて選べない!
二人とも同じぐらいすごくすご――く、愛してるんだ!私は、絶対、選ぶなら二人共を選ぶぞ!!」
美しい銀の長髪を乱し、そう言い切った閻廷。
閻濡と光濡は困ったように顔を見合わせ……怒った顔で閻廷を見た。
「閻廷様……その答えは男として最低ですよ!!」
「そうだよパパ!ぼく達の事、二股しようって言うんだね!?」
「えっ……えぇっ!?そんな、二股だなんて!!私は二人共同じくらい、誠実に愛して……」
思わぬ展開にさらに焦る閻廷。
女にだらしない男の様に言われてしまった。閻廷は本当の本気で二人を愛していると言うのに。
そう訴えても、光濡も閻濡も怒った顔のままだ。
「閻濡、こんな不純な閻廷様にはお仕置きが必要ね!」
「そうだねママ!ぼく、パパがこんないい加減な人だと思わなかった!
こんな悪いパパはお尻ぺんぺんだよね!」
双子の様にそっくりな二人が息もぴったりに言い合う言葉……
閻廷には展開が速すぎてついていけなかった。
ぎこちない笑顔を浮かべて、機嫌を取るように二人に言う。
「あ、あの……冗談だろう?二人共……?
そんな怒った顔もすごく可愛いけど、笑ってた方がもっとすごく可愛いぞ?
せっかく3人でいるんだから皆で仲良くちゅっちゅして寝よう!!」
「「……この……女の敵ッ!!」」
「ひっ!?」
「閻濡!閻廷様の体を押さえて!ママがお尻を叩くから!」
「分かったよママ!パパ、大人しくしててね?!」
「……うわぁあああん!嫌だぁぁぁぁ!!」
どうやら光濡も閻濡も本気で自分をお仕置きするつもりだと確信し、二人に背を向けて走って逃げる閻廷。
しかし……
「――あっ!!」
突然見えない壁にぶつかってしまう。
目を凝らすと、薄いピンクの壁が閻廷の前に無限に広がっていた。
「どこへ行くのパパ……?」
振り返ると、恐ろしくも愛らしい笑顔で、細い腕を前に伸ばす閻濡。
目の前の壁は彼女の作りだした結界らしかった。
「え、閻濡……うわっ!!」
娘の方を振り返った瞬間に、閻廷は地面に倒れ込む。
自分の体はいつの間にかピンクの鎖でがんじがらめ……
そしてズルズルと後ろに引っ張られていく。
「閻廷様?素直にお仕置きを受けられない子は数を増やしますよ?」
「こ、光濡……!!」
恐ろしくも愛らしい笑顔で、自分を縛る鎖を手繰り寄せている光濡。
天界一の美少女コンビ(←閻廷調べ)の神力コンボであっさりと二人の元に連れ戻された閻廷。
これからお仕置きされるかと思うと釣られた魚のように暴れながら喚く。
「や、やめてくれ!お尻は嫌だ!どうしてせっかく光濡や閻濡といるのに、
お尻なんてぺんぺんされなきゃいけないんだ!そんなの全然楽しくないぞ!」
「お仕置きが楽しかったら意味が無いでしょう?相変わらずワガママですねぇ閻廷様……
光濡といた時より、見た目は少し大人っぽくなられましたのに……」
この一言に閻廷は嬉しそうな笑顔になる。
「え!?本当か!?大人っぽくてカッコいい男になったか!?」
「ええ。光濡の知っている閻廷様より少し大人っぽくなられました……。
けれど、ワガママなのは変わらないようですから……やっぱりお仕置きです!
閻濡のところで大人しくしててください!」
「うわっ!?」
ぐいと引き上げられ、投げ出された。
とっさに縋りつくようにもたれ掛った柔らかい着地点は、いつの間にか椅子に座っている閻濡の膝だったらしく、
今、閻廷は地面に膝をついてお尻を突き出すような格好になっている。
「パパこんにちは♥」
「え、閻濡ぅぅっ!お仕置きは嫌だ!助けてくれ!」
「ダメだよ。僕がだっこしててあげるから、いい子にしててね?」
すっと肩に触れたのは温かい手だったのに、あまりにも無慈悲だ。
しかも、お尻の方はだんだん布に覆われてる感が失われていく。
「や、よせっ……やめてくれ!!」
閻廷は半泣きだった。
前門の愛娘に後門の愛妻。なのにとっても絶望的な気分。
「う、嘘だ!!こんなの嘘だ〜〜っ!!」
ピシィッ!
「ひゃっ!!」
叫んだ瞬間に叩かれていた。慌てて悲鳴を上げて訴える。
「い、痛い!光濡!痛い!」
「お仕置きですからね」
光濡は澄ました声でそう言って、閻廷のお尻を叩き続ける。
ピシッ!ピシッ!
「う、あっ!!いっ、嫌だぁ!」
「どうして逃げようとするんです?まだ始まったばかりなのに……めっ、ですよ!」
ピシンッ!
「あぁぁっ!だっ、だって……!!」
「仕方ないパパだなぁ〜……」
急にそんな声が聞こえて、閻廷の頭を優しい手が撫でた。
お尻の痛みにばかり意識がいっていた閻廷は思い出したように顔を上げる。
「えっ、閻濡……!!」
「パパ、可愛いお顔してるよ?」
「ぅお前の方がっ……!!」
どんな時でも愛しい娘に褒められたら褒め返す閻廷だが、ここでお尻に激痛が。
パシィッ!
「んぁああっ!痛いぃ!」
「お仕置き中なのに閻濡にデレデレするからです!」
「そんな事言われたってぇぇっ!!許してくれ光濡〜〜っ!!」
「まだまだ全然ダメですよ!」
ピシンッ!パシンッ!
何だか怒った様子の光濡にキツくお尻を叩かれ続ける閻廷。
呼吸すら悲鳴に変わってしまうこの状況で、お尻もだんだん赤くなり始める。
ガツンガツンに追い詰めてくる痛みに耐えられず、閻廷はうっすら涙を浮かべながら閻濡に助けを求めた。
「うぁっ!うぅっ!閻濡!閻濡、お前からも何とかママを説得してくれ!」
「ダメだよお仕置きだもん。ぼくが頭ナデナデしてあげるから、頑張れるでしょう?」
「うぅっ……確かにもっとなでなでしてほしいぞ!でもっ……ぁあぅっ!」
「頑張って。もっと、ぼくのお膝ぎゅってしていいよ」
閻濡がそう言いながら“縋って来い”とばかりに閻廷の頭を膝へ押しつける。
ほんのり甘い香りがして、痛いのもあって、必死で縋ってしまった。
「ぁ、ぅ……えんじゅぅぅ……!」
「パパ可愛い……♥」
と、こんな事をしていると案の定……
ピシンッ!パシンッ!パァンッ!
「い、痛い……痛い!いたぃぃっ!光濡ぅぅっ!!」
光濡がお怒りでお尻叩きがヒートアップしていた。
「何だか閻濡ばかり閻廷様の可愛いお顔を見てズルいです!
こうなったら、光濡は閻廷様の可愛いお尻をたくさんお仕置きしちゃいますからね!」
「やめてくれ!!」
必死に言っても効果なし。激しい打音に掻き消されるだけだった。
パシンッ!パァンッ!パァンッ!
「あぁああっ!やぁあああっ!痛い!本当に!やめてぇぇっ!」
「閻廷様の悪い子!浮気者!見境なし!」
妻の本気のお仕置きはあっという間に閻廷のお尻を真っ赤にしてしまって、
もがこうにも、閻濡の膝に縋った状態で頭をべったり押さえつけられていてはそれもままならない。
悲鳴交じりの釈明が精一杯だ。
「ごめんなさいぃ!っでもぉ!浮気じゃないんだ!あっ、見境、無くもない!
私が愛してるのはぁっ、んっ、お前たち二人だけなんだ〜〜ッ!!ひぃぃっ!」
ピシィッ!パンッ!パンッ!
「ふぁっ、あはぁああああっ!こう、じゅ!痛い!いたい〜〜!!」
「泣いても許しませんよ!」
パァンッ!パシンッ!
バシンッ!
「ひぁっ!!」
偶然、ものすごく痛い一発が入ってしまったらしく、閻廷はビクッと身を震わせる。
ずっと叩かれていた閻廷のお尻というか精神力というか、たぶん両方がここにきて限界を迎えた。
一気に泣き出してしまう。
「うわぁああああん!!私はどうすればいいんだぁぁぁぁ!!
だって!だってぇぇぇっ!光濡も閻濡も世界一好きなのに愛してるのにぃぃぃっ!!」
大号泣する閻廷の姿とその言葉で、お仕置きする側の二人にも変化が……
「閻廷様……♥」
「パパ……♥」
常に閻廷がラブパワー出しまくりではしゃいでいるので忘れ去られがちだけれど、
実はこの夫婦(or父娘)、お互いの愛情の深さは互角だったりする=閻濡や光濡も閻廷にベタ惚れなのだ。
なので、結局は彼に甘くなってしまう。
今も例外ではなく、光濡は赤い顔をしてこう言った。
「え……閻廷様は自分はただの二股男じゃないとおっしゃるのですね?」
「当たり前だぁぁぁっ!わぁぁああん!やだもうお尻いやだぁぁっ!ごめんなさいぃっ!」
「ねぇだったらさ、パパ……証明して見せてよ……」
閻濡も言いながら頬を赤らめていた。
ピシィッ!パァンッ!パシンッ!
閻廷は涙や痛みと闘いながらも必死に言葉を返している。
「うっ、あぁはぅぅ!!証明ってぇぇっ!?」
「私達を平等に愛するというなら、その愛の力で、私達2人のお仕置きに耐えきってください!」
「そうだよパパ!愛の力で耐えきって!!」
妻と娘のこの要求に閻廷は……
「わぁああああん!そんなムチャクチャだぁぁぁぁっ!うわぁあああん!
もう許してくれぇぇぇっ!!」
やっぱり首をブンブン振りながら大号泣。
しかし……
「閻廷様……」
「パパ……」
「うっ……ううううううぅぅっ!!」
二人の愛しい女神の悲しそうな声に……
「あぁああああああっ!こうなったらやってやるぅぅぅぅぅっ!!」
泣きながら大見得を切った。
そして閻廷の決意に、光濡も閻濡も大喜びだ。
「閻廷様……!嬉しい!光濡は閻濡と一緒に誠実に愛してもらえるのですね!!?」
「パパありがとう!!ママと同じように真実の愛が手に入るなんて、ぼくも嬉しい!!」
(2人とも……!!)
お尻は真っ赤で痛くても、二人の嬉しそうな様子は何よりも嬉しい閻廷。
ふわっと頬が緩んだその瞬間に、
「じゃあ、光濡も一生懸命叩きます!!」
「それはやめてぇぇぇぇっ!!」
また絶望の淵に真っ逆さまだった。
光濡は本当に今までより張り切ってお尻を叩いている。
ピシンッ!パシンッ!パァンッ!
「うわぁあああっ!ごめんなさい!やぁああああっ!!」
「パパ!パパ!!」
「うぇっ、あぁあああああん!!(どうした閻濡??)」
泣きながらも、閻濡が急に必死な声と顔になった事に戸惑う閻廷。
心配そうな声はだんだん鮮明に頭の中に響いてくる。
ピシィッ!ピシィッ!
「パパ!パパ、どうしたの!?怖い夢見てる?!」
「うっ、はぁ、あぁああぅっ!(え?え……?)」
『起きて!パパ!!』
その大きな声を聞いた途端、閻廷は目の前が真っ白になって……
「!!」
体を小さく跳ね上げながら目を開ける。
閻濡が心配そうに覗き込んでいた。
「パパ……!うなされてたけど、大丈夫?」
「……あ……」
声が出ない。
さっきまでの夢が頭の端に残っている。
「パパ……?」
「へ、平気だ……大丈夫!」
声が出た。
目の前の閻濡を見ていると、夢の切れ端がすーっと溶けていく。
閻濡がほっとしたように笑った。
「良かった……」
「……閻濡」
閻廷は起き上がった。
そして、閻濡に力強くこう言った。
「パパはお前もママも大大大大好きだけど、決して二股ではないぞ!!?」
「ぴぇ??」
閻濡は目を丸くした後、すぐにまた笑顔に戻って言う。
「うん。ありがとう。僕もパパとママ、大大大だ〜い好きだよ♥」
「うわぁあああん!!閻濡愛してる〜〜っ!!」
夢の事もあってか、感情が弾けて泣きながら閻濡に抱きついた閻廷。
「あはは!パパったら、よっぽど怖い夢見たんだね」
閻濡に撫でられながら、“あれが夢で良かった”と安堵する閻廷だった。


【おまけ】

玲姫(フンフフ〜ン♪今日はこの前買った“ラブラブ・ドリーム香水”を使って
   夢の中で境佳様とあんなプレイやこんなプレイに挑戦よ!そして正夢にするの!
   あ、でもその前に現実で予行演習を……あら?普通逆かしら?ええい!何でもいいわ!
   え〜っと確かこの辺に……あら?これは“安眠香水”?……変ね、こっちは閻濡にあげたと思ったのに……)
境佳「どうした?」
玲姫「ひゃっ!?境佳様……!」
境佳「なんだ……その怪しい小瓶は?お前また妙な事を企んでないだろうな?」
玲姫「こ、これはただの“良く眠れる香水”ですよ!」
境佳「お!いいじゃないか!使ってみよう」
玲姫「(な、なんですって!境佳様ったら夫婦の時間も取らずに眠るつもり?!)
    あ!でも眠っている境佳様にイタズラできる!」
境佳「……口に出てるぞ」





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【作品番号】HSB18

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