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姫神様フリーダムanother(和のお詫び編)




ここは神々住まう天の国。
神王の一人、和は同じく神王友達である閻廷の城に来ているのだが……
「いやぁ!よくぞ来られた和殿!待ちかねたぞ!」
「和様、よ、ようこそお越しくださいました……!」
「私も……何と言うか……お二人に会えて嬉しい……」
嬉しそうな笑顔の閻廷や、恥ずかしげな閻濡に比べ、和はぎこちない笑顔を浮かべている。
と、いうのも……和がここに来たのは先の“温泉旅行”で、
酔った和が閻濡を口説いたり色々した事に対しての“お詫び”をするためだった。
なのでさっそく――勢いよく&深く頭を下げる。
「閻廷殿、閻濡姫!!先日の温泉旅行では本当に無礼な事をして申し訳なかっ……
申し訳ありませんでした!!閻濡姫、怖い思いをさせた事をどうか許してほしい……」
「そんな、ぼく、いえ、私……!!」
和に謝られた閻濡は顔を赤くして俯く。
しかし、その後すぐに上目づかいでおずおずと恥ずかしそうに、遠慮気味に言葉を紡いだ。
「ぜ、全然平気です……!!怖くなんて無かったし、その……
和様、すごくカッコいいから……ドキドキして、パパ以外にあんな事されるの初めてで……
う、上手く言えないんですけどっ!!ぼくっ、大丈夫なので、和様は何も気にしないで下さい!!」
「あ……ありが、とう……」
閻濡はとてもありがたい言葉をかけてくれるのだけれど、
和にしてみれば、隣の閻廷が笑顔で禍々しいオーラを放っていたので気が気ではなかった。
そんな閻廷は勢いよく和の手を取って、
「まぁまぁ!来て早々謝罪なんて堅っ苦しいじゃないか!
せっかくだし、向こうでパパ友同士積もる話でもしよう♪
閻濡?パパは和殿と大事な話があるから、すまないけれど二人にさせてくれ!
さぁさ和殿!飲み物は何がいい?お菓子も色々あるぞ〜〜♪」
和の手をしっかり繋いで引っ張って、楽しそうに連行していった。
「お、お構いなく……!!」
和は前のめり気味に引っ張られていって……
閻濡がそんな二人を「ごゆっくり」と、ニコニコ笑顔で見送っていた。


そして。
いつの間にやら閻廷とテーブルに向かい合って、二人っきりでお茶会状態の和は……
振る舞われまくっている色鮮やかな茶菓子の数々にはあまり手を付けられず、
向かいで無邪気に茶菓子を食べまくっている閻廷に困惑しつつ話していた。
「ん〜〜っ!どれもこれも絶品だな!見た目も可愛いし!最高だ!
あれ?和殿は食べないのか?甘い物はお好きだと思っていたが?」
「そういうわけでは無いんだけれど……何だか、申し訳ないし……」
「ははっ!そう遠慮せずに!全部閻濡が選んでくれたんだ♪
それを無下にされると……」
「いただきますッッ!!」
慌てて茶菓子に口を付け始める和に、満足そうに目を細めて笑う閻廷は、
のんびりと世間話を始める。
「……尊姫や更殿もお元気か?」
「あ、ああ……二人とも、元気だ。ありがとう。
尊なんかは今日一緒に行きたいとゴネて、宥めるのが大変で……」
「何だ、連れてこれば良かったのに」
閻廷のその一言で、和の血の気がまたサーッと引いていく。
思わずお菓子を食べていた手を止めて、俯いて声を震わせる。
「……いや、でも……今日は“お詫び”だし、その……」
「ふふっ……心配しなくても、尊姫の前で和殿をお仕置きしたりはしない。
和殿さっきから……顔色が悪くていらっしゃる。私としては複雑な気分なんだ……。
閻濡に手を出した大罪人としてみれば、当然の報いだとも思うが……
和殿は大切な友達でもあるし……そう考えると、心配でもある……」
「……“美神が怒ると怖い”と言うのは嘘ではないらしい……」
この辛すぎる状況に、和は思わず軽く頭を押さえながら、苦し紛れに閻廷を褒めてみたのだが……
当の閻廷はまたニコニコと笑って声を弾ませ、
「そうそう!ちょうどその話を聞きたかったんだ!更殿はとても美しいから!
どうだった和殿!?お仕置きも、さぞかし厳しかったのか!?」
「え゛っ!?」
「でも〜〜、更殿はとても大人しくて、優しい感じだし……いつもこう、
三歩下がって和殿を立てている感じだし!その辺が判断しかねる!
実際のトコロ、どうだった??できるだけ詳しく知りたい!参考までに♪」
「…………」
恐ろしい煽り方をしてくる。
和はついに耐え切れなくなって、閻廷に懇願した。
「閻廷殿、恥を忍んで――、お願いだ。
“お仕置き”をするなら早く始めてもらえないだろうか?
正直、不安で閻濡姫の選んでくれたお菓子の味が全く分からない……
お願いだから、これ以上いじめないでくれ……」
「え〜?酷い事を言う。私は友達をいじめたりはしない……」
ふんわりと微笑んでいた閻廷はそう言って一旦目を閉じ、
笑顔を消して和を睨みつける。

「これは、罰を与えているんだが?」

「ッ……!!」
いつも懐っこくニコニコしている閻廷の本気の怒り顔は、
和がゾクリとした寒気を感じるほどの迫力だった訳だが、
それも一瞬で、また穏やかな表情に戻った。
「でもまぁ、和殿がそう言うなら……もう始めても構わないぞ?
さっきの話は和殿を……」
言いながら閻廷は和を手招きして、慌ててやってきた和の下半身の衣服を脱がせて
膝の上に乗せて、お仕置きの体勢に持っていきながら話を続ける。
「お仕置きしながら、ゆっくり聞かせてもらってもいいし。
“話さなければお仕置きを止めないぞ”と、なれば……
和殿も可愛らしく恥ずかしがってはいられないだろう??」
「閻廷殿……ごめん、なさい……どうすれば、貴方の怒りを治める事ができる……?」
閻廷の膝の上でお尻を丸出しにして、完全にお仕置きされる格好になった和は、
真っ赤な顔を両手で覆って“やっぱり、またこれか”と思いながら、心底参っている声を出す。
対して、閻廷の方は相変わらずの明るい調子で言った。
「そんな事は至極簡単!和殿が十分反省してくれればいいだけだ♪
さぁ、悪い子は……」
バシィッ!!
「ひぁっ!!?」
「パパがいっぱいお仕置きしてやろう♪」
さっそく一発お尻を打たれて、驚きの混じった様な悲鳴を上げる和に構わず、
閻廷は追加でバシバシお尻を打っていた。
ビシッ!バシィッ!バシッ!!
「え、閻廷殿!本当にっ、ごっ、ごめん!なさい!!あっ、あぁ!!」
「謝って済む問題じゃないんだ和殿……分かるだろう?」
ビシィッ!!
「ひ、ぃいった……!!」
「ふふっ、私の閻濡に手を出した罪深さをその身をもって知るといい!
で、己の愚かさを存分に後悔するといい!
酒が入っていただなんて言い訳は……」
バシッ!ビシィッ!!
「あぁあっ!!」
「するだけ無駄だぞ?
そんな事は何の許される理由にもならないから」
「っうぅ……!!」
怒鳴ってくるわけでは無いものの、全然許してくれそうもない閻廷。
ひたすら痛みに耐えて呻くしか無い和に、閻廷がまた言う。
「それより、さっきの話の続きをしよう!更殿のお仕置きはどうだった?」
「え、閻廷殿……ごめんなさい!!申し訳なかった!お願いだから、許してくれ……!!」
恥ずかしい質問に答えたくない和がどうにか粘ってみるが……
「あぁ和殿〜〜……私がさっき“謝って済む問題じゃない”と言った事をもう忘れてるのか?
うっかりさんめ!」
ビシッ!バシィッ!バシッ!!
「うぁあああっ!!」
「もう一度聞くぞ?“更殿のお仕置きはどうだった?”」
脅す様に余計に酷くお尻を叩かれてしまう。
これはもう、答えないとどうにもならないと悟った和は覚悟を決め、
恥じらいながらも質問に答えた。
「そのっ……!更にも相当、叱られて!怒鳴られたりはしなかったけれど……
同じように……叩かれてしまって……!!」
「へぇ!お尻を?今と同じような感じでか??」
ビシッ!バシィッ!!
「ぅうあっ!!そ、そう……!!んっ!!」
「もっと詳しく聞きたいなぁ和殿……“どこで”、 “どんな風に”、“どんな格好で”??」
「あ……ぁぁあっ……!!」
お尻を叩かれながらで痛いし恥ずかしい中、こんな話題を意地悪に引っ張られ……
和は思わず嘆くような悲鳴が漏れる。
けれど、答え続けるしか道が無いのは明白なので、恥を押し殺して返事を続ける。
「だ、だからっ……寝室で、その、あっ!!
更の膝の上に乗せられて、下着も全部脱がされてぇぇッ……!!」
「おお!更殿もやり手だなぁ!」
バシッ!バシィッ!!ビシッ!!
「んっ、うあぁっ!!」
「そうか……で、たくさん叩かれたのか?」
「うっ、うぅううっ!!」
強くお尻を叩かれ通しの和のお尻は赤くなっていて。
羞恥心も痛みも限界ギリギリの涙目で必死に首を縦に振る。
が、閻廷の質問攻めはまだ続くようで、
「更殿がしっかりお仕置きしてくれたみたいで安心した!今とどっちが痛い??」
「そっ、そんなの貴方の方が……!!」
「そうかぁ、それならいい事だ……それで、更殿にお尻を叩かれて泣いたか?」
挙句、とどめを刺すような質問。
「あぁあああ閻廷殿ぉぉぉぉっ!!」
和は耐えきれなくなって叫んだ。
涙声で必死に叫び続ける。
「もうやめてくれ!!こんなの!!こんなのっ……お願いだ!お願いだからぁぁッ!!」
「質問を無視するのは良くないぞ和殿?泣いたか?今みたいに」
バシィッ!!ビシッ!ビシィッ!!
「うわぁああああん!!」
必死の懇願も許されなくて、まだ厳しく叩かれて……
和はもう、なりふり構わず泣き叫んだ。
「泣いたぁッ!泣きましたぁっ!!泣いて反省しました!!
今だって反省してます!!もう貴方の姫君に手を出したりしませんから!
絶対にしませんから誓いますからぁぁッ!!
だから許してください!!うわぁあああん!!」
「そうそう!閻濡は“私の”だからな!それに、ただの可愛い姫君じゃないんだ……
あの子は、私の妻になる。もう妻も同然なんだ。お分かりいただけるか?」
閻廷の絶対的な響きを持つ真剣な言葉に、
底知れない恐ろしさを感じながら和はひたすら謝る。
「ごめんなさい!!わ、分かりました!うわぁああん!ごめんなさぁぁい!!」
「よしよし、反省してくれたならそれでいい!さっそく仲直りしよう!!」
「う、あぁぁっ!!」
閻廷の手が止まって……やっと許されたのかとホッとしつつ、
膝から下りて服を整えると……
「うわぁあああん!!和殿ぉぉぉぉっ!!」
「!!?」
閻廷が勢いよく抱き付いてきて、泣きそうになりながら捲し立てる。
「色々、意地悪を言って、酷い事をして済まなかった!ごめんなさい!!
でもっ、でもぉぉっ!!」
ギュウギュウと和を抱きしめながら、和を見上げて瞳を潤ませ、閻廷は必死に続ける。
「せ、せっかく、せっかく境佳以外のお友達ができたのに!!ぅう嬉しかったのにっ!!
でも!閻濡に手を出されたら仲良しじゃいられなくなるんだ!!絶対、それだけは許せない!
お願いだ和殿!!もうこんな事しないでくれ!これからも、和殿と仲良しでいさせてくれ!!」
「……閻廷殿……!!」
閻廷の必死な姿を、言葉を受けて、
和はいっそう罪悪感が込み上げてきて、もう一度誠心誠意謝った。
「私は……あぁ、自分が本当に情けない。こんなにも想ってくれている友を傷つけるなんて……
閻廷殿、約束する。貴方の未来の妻には、もう何があっても無礼な真似はしない。
本当に、許してくれ……私の方こそ、ずっと仲よくしてほしい」
「和殿……ありがとうぅぅぅっ!!」
「こちらこそ……」
ひたすら抱き付いてくる閻廷に、和も微笑んで軽く抱きしめ返す。

こうして、無事仲直りできた二人は、再びお茶会を仕切り直して……
パパ友っぽい会話をしていた。
和が美味しくお菓子を食べながらもため息をつく。
「はぁ……閻廷殿も、境佳殿も、子供達と上手くいってるし、
素晴らしい父親になれているし羨ましい!どうして私は……!!」
「まぁまぁ、うちは閻濡が超絶いい子なだけで、私が別段良いパパというわけでは無い。
境佳だって、まぁ、いいパパなんだが……立佳と琳姫の扱いに微妙に差があるみたいで……
立佳は明るい子だからあまり表に出さないけれど……昔は家出してきて私に泣きついてきた事があったぞ?
“女の子に生まれたかった!!”って」
「えっ……!!」
「さすがにその件は境佳もショックだったみたいで……それからはまぁ、問題なくやってるみたいだけれど。
やっぱり私から見たら、まだ立佳にはちょっと厳しいな。まぁ、境佳も厳しく育てられたから。
境佳のパパは逆に玲姫殿をちょっぴり軽視していて……二人の結婚も最初は渋ったらしい。
境佳も子供の頃からずっと歯痒く思っていたみたいだから、琳姫を手厚めに可愛がるのかもしれない」
「…………」
想わぬ話を聞いて驚く和に、閻廷は優しく言った。
「和殿、失敗してないパパなんていないんだ。
私はワガママで奔放らしいから、そこは私のパパの失敗かもしれないな♪
それでも、私はパパが大好きだ!きっと、和殿の子供達も和殿が大好きだぞ!
和殿はパパが好きか??」
「それ……は……」
“父親が好きか?”そう問われ、和の中に色々な想いが渦巻いて……
一瞬答えに詰まってしまう。
「優しくて、尊敬できて……素晴らしい、父親なんだ。
私は、たくさん愛された……大切にされた。分かってるけど……
でも、急に、信じられなくなって……今も、やっぱり……!!」
「……パパになったから、パパの事で分かる気持ちもあるだろう?
和殿がパパに歩み寄ったら、思わぬ解決になる事もあるかもしれないぞ?
ん〜〜家庭それぞれの事情もあるし、あまり偉そうな事は言えないが……」
答えに悩んでいる和にも、穏やかな眼差しを向けてそう言って……
閻廷は急に明るい声を出して、和を指差す。
「でも!一つ確実なアドバイスがある!和殿は子供達に笑顔が足りない!!
尊姫といる時、いつも困った顔をしていないか?誉皇子にも、そうなんじゃないか?」
「えっ!!?」
唐突な指摘に驚く和に、閻廷はお手本のようにニコニコ明るい笑顔で言葉を続ける。
「パパがニコニコしてて嫌な子供達はいない!
和殿はせっかく男前なんだから!
もっと子供達にニコニコしてやったら、喜ぶと思うぞ!更殿も!」
「そう……だな!」
「そうそう!その笑顔!!」
和が笑って見せると、閻廷は手を叩いて喜ぶ。

それからは、お互い笑顔で……閻廷が閻濡の写真集を披露しまくったり、
閻濡も一緒にお茶会に参加したりで、皆で楽しく過ごした。
そしてとても嬉しそうな二人に“ぜひまた来てくれ”と、手土産をめいいっぱい持たされて送り出された。

色々な意味で大変で、しかしとても温かくて楽しい、そんな不思議な一日を体験できた和は……
(閻廷殿……境佳殿といるのを見て、
楽天的で懐っこい弟属性といった印象を持っていたが……
意外としっかりした方なんだな……)
と、閻廷に対するイメージが少し変わったりした。




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【作品番号】HSB19

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