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妖怪御殿のとある一日 引っ越し後2
※18禁(恋心姫×煤鬼)
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最近、僕の家事レベルが上がってる気がする!!
妖怪研究家、兼妖怪の麿拙者麿だよ!

今日は煤鬼君が飲み会(?)に行く事になったみたい!
庭に偶然、風に乗って鬼の飲み会のお知らせの紙が飛んできて!
帝さんが言うには、たまたま人間の世界と道が繋がって飛んできたんだろうって。
飲み会会場は僕らの住む神の国ではないみたいなんだけど……
人間の世界でも神域になるみたいで、一日くらいなら行っても平気なんだって。

煤鬼君、子供の頃に群れ(っていうのかな?)
から迷子になっちゃったはぐれ鬼だったらしくって、その群れ主催の飲み会なんだって。
「皆に会えるのか?」ってポカンとしてたけど……出発時間が近づくと嬉しそうにしてるよ。

あと、恋心姫君が「その飲み会って女の子いますか?!」って
心配そうにソワソワしてるのが微笑ましいです。


******************

そんな妖怪御殿pm5:00の事。
煤鬼は “飲み会”に出かけようとしていて、
恋心姫と“行ってきますの抱擁”を交わしていた。

「行ってくるな?恋心姫」
「行ってらっしゃい……美人でボインボインの女鬼が寄ってきても相手しちゃダメですよ?!」
「お!めずらしく恋心姫が嫉妬してるのか?愛らしい顔を目に焼き付けておこう♪」
「もう!からかわないでください!」
「心配するな。ボインボインだろうが何だろうが、俺は恋心姫以外には興味が無いから」
そう会話して、自然と軽いキスをする二人。
恋心姫は少しホッとした顔をして言う。
「楽しんできてくださいね。あと……早く帰ってきて、くださいね?」
「あぁ〜〜 やっぱり行くのやめる〜〜
「だ、ダメですよ!楽しみにしてたんでしょう?行ってらっしゃい!」
恋心姫は、自分を抱きしめて頬ずりする煤鬼を必死で押し返して、笑顔で手を振って送り出す。
煤鬼が行ってしまった後は少しさびしそうな表情をして扉を見つめていたけれど、
桜太郎に優しく手を引かれて促され、部屋へと戻って行った。


一方の煤鬼が飲み会会場に到着したpm6:00の事。
(……“誰でも自由参加”って書いてあったから
来てみたはいいが、皆、俺の事を覚えているだろうか……?)
今更不安になりつつ、会場内に足を踏み入れると……

「おい……アレ、煤鬼か!?」
「うぉおおおおっ!煤鬼だ!煤鬼――!お前生きてたのか――っ!!」
「煤鬼――!大きくなったなぁ!会いたかったぞ――!!」

煤鬼の不安は一瞬にして消し飛ぶくらいに熱烈に歓迎され、
煤鬼より大きめのガタイMaxの年上鬼たちに囲まれてあれよあれよと宴会の中心に据えられてしまった。

「いーやぁぁっ!本当にお前がいなくなった時には心配したんだ〜〜っ!!」
「ごめんなぁ見つけてやれなくて……!寂しかったよなぁ?」
酒をガンガンに飲まされながらの昔話から始まって……
「最近は鬼の数も減っちまってさ、団も合併合併の嵐!
俺達西部45団も、近いうちに北部178団と合併して北西部223団になるんだ!
北部178団も元は北部53団と北部125団の合併で……」
最近の鬼事情なんかを聴かされつつ、煤鬼自身の話になる。
「で、煤鬼は今、恋人いるのか?」
こんな話題がくればもう……
「……まぁ、それなりにな?とびきり可愛い恋人を捕まえた」
煤鬼の得意顔が輝く“恋心姫語り”の独壇場となる。
「名を恋心姫と言って、可愛くて優しくておまけにエロイ
「わぁぁっ!なんだそれ最高じゃねぇか!!」
「羨ましいなー煤鬼!」
ここは鬼の宴会場。エロに対する食いつきは抜群だった。
しかも皆は久しく再会した煤鬼を盛り上げて話を聞いてくれる。
「そんな姫さんとどこでお近づきになったんだ?」
「大雨の日に岩の陰で倒れていたのを俺が助けた。……まぁ、運命、って、ヤツだな☆」
「「「おおおおおおお!!」」」
お酒も入りまくって有頂天で得意語りの煤鬼でも、とにかく皆は盛り上げる。
なので絶好調で恋心姫のノロケ話を繰り広げていると……
「何だい何だい?アンタら楽しそうだねぇ。オイラ達もまぜておくれよ」
妖艶な女鬼の集団が話の輪に加わってくる。
その中でもリーダー格っぽい、美人で巨乳の女鬼が煤鬼の隣に大胆に座った。
「オイラは北部178団の灯美鬼(ひびき)。坊やは見かけない顔だね?」
「俺は煤鬼。元西部45団だけど今はフリーだ。あまり俺に近づくなよボインボイン。
愛しい恋心姫から“浮気はするな”と仰せつかってるからな」
「おやおや、真面目じゃないか。そのお姫さんの話でさっきから盛り上がってたのかい?」
「お前も聞きたいか?」
「あぁ、ぜひ」
こうして、また煤鬼は恋心姫のノロケ話に時間を費やすことになり、
皆楽しそうに聞いてくれた。
また、煤鬼も他の鬼達の恋人との過激なノロケ話も大喜びで聞いていた。
そうこうしていると……
「よし皆〜〜!そろそろお待ちかねの“脱衣ジャンケン”ターイム!!」
誰かのそんな掛け声に周りから「イエーイ」だの「フゥーー!!」だの盛り上げのコールが掛かる。
ここは鬼の宴会場。遊び方も粗雑にしてエロかった。
男鬼vs女鬼で、希望者同士がジャンケンをして、負けた方が一枚ずつ服を脱ぐのを、
どちらかが全裸になるまで繰り返す、単純な遊びだ。
煤鬼は特に参加せずに、お酒を飲みながらぼーっと眺めていたが、
男鬼の方が少し負け続けているようで……
「うわぁああ!男ばっかり脱いでもつまらん!煤鬼!頼む俺達の無念を晴らしてくれ!!」
「俺か〜〜?ん〜〜恋心姫の裸以外興味無いがな〜〜……」
何となく駆り出される。
そして、特に乗り気でも無かったが30分後。

「さぁさぁ、次はどいつが脱ぎ散らかすんだ!?」
元気な煤鬼の雄叫び。
男鬼仲間からは応援の声と拍手喝采。
煤鬼は圧倒的なじゃんけんの強さを見せつけ、女鬼たちが裸で悔しそうにしていて、
灯美鬼へ助けを求める。
「灯美鬼ぃ!何とかしとくれよぉ!」
「はぁぁ〜〜仕方ないねェ……」
今まで不参加だった灯美鬼が重い腰を上げて、煤鬼の前に立った。
長い金色の髪を気怠そうにかきあげて言う。
「悪いけど、坊やの連勝伝説はここで打ち切らせてもらうよ?
裸になった事、大好きなお姫さんの土産話にでもしてやんな」
「調子に乗るのはジャンケンに勝ってからにしろ。
俺としても恋心姫の為、他の女の前で脱ぐわけにはいかんのでな」
煤鬼も言葉では一歩も引かず。
そして二人の勝負の行方は……
「「「あっと一枚!あっと一枚!」」」
からの、これまた煤鬼の圧勝。最後の一回まで勝ち尽くしてしまった。
「「「ああああ……灯美鬼ぃぃ……!!」」」
女鬼達のガッカリ声の中、下着一枚姿で完全敗北が確定した灯美鬼は、
裸を隠しはしないものの、少し恥ずかしそうに喚いた。
「なんてガキだよ全く……!!」
「残念だな灯美鬼。ほら早くそれも脱げ!」
「やっ!?ちょっとぉ!!何さ!今脱ぐってば!!」
酒の勢いも勝利の高揚もあり、煤鬼は灯美鬼の下着を無理やり脱がせる。
そしてなぜか……
「捕ったぞぉぉぉおお!!」
「「「うぉおおおおおっ!!」」」
高々と拳を突き上げて黒と紫のTバックを掲げる煤鬼(ガチ酔い)。
盛り上がる男鬼仲間。女鬼達は呆れて首を振っている。
そして煤鬼は何故か灯美鬼のTバックを懐に仕舞う。
「はー勝った勝った!」
「こらガキ!!何持って帰ろうとしてるんだよ!返しな!」
「これは戦利品だ!」
「はぁっ!?」
結局、灯美鬼はツッコミと下着を諦めた。
その後も宴会は酒と皆の勢いで続き……
「う〜ん……恋心姫ぇぇぇ……!!」
「コラ抱き付くな!しっかりしなよ煤鬼!
オイラに近づくなって言ってたのアンタだろ!?」
煤鬼がぼんやりと帰宅を決意したのは、pm10:00頃だった。
記念品でもらった甘いお菓子を懐に仕舞って、上機嫌で妖怪御殿へ戻る。


一方の妖怪御殿pm11:00の事。
桜太郎の膝の上に座ってうとうとしている恋心姫が、ハッとして左右を見回す。
隣にいる麿が優しく笑いながら声をかけた。
「まだ煤鬼君、帰ってないよ」
「そ、そうですか……」
眠そうに目をこする恋心姫。
桜太郎も困り気味の笑顔で恋心姫に、今日5回くらい繰り返した言葉をかける。
「ココノ姫、もう遅いですから、今日は先に私達と寝ましょう?」
「もうちょっとだけ、いいでしょう!?煤鬼、早く帰って来るって約束しました!」
けれど、恋心姫の返事も5回とも同じ。
桜太郎と麿が顔を見合わせたその時……
「おーい!ただいま〜〜!!」
「煤鬼!!」
帰ってきたらしき、煤鬼の元気な声に嬉しそうな恋心姫。
煤鬼は真っ赤な顔でフラフラしながら部屋に入ってきて……
「いやー―っ!楽しかったぁ!脱衣ジャンケンで盛り上がってしまって!
俺が負かしてやった女鬼共が脱ぎ散らかして、素っ裸!愉快ったらなかったな!
全くどいつもこいつも無駄にデカい乳で……」
ものすごく楽しそうにそんな事を口走った。
当然、煤鬼に抱き付こうとしていた恋心姫は凍りつく。
煤鬼は恋心姫の驚愕の表情に気付かず、呑気に腰を落として手を広げている。
「おっ!恋心姫ただいまぁ!お帰りの抱擁はしてくれんのか?」
「……の」
「ん?」
「煤鬼のバカァアアアアアッ!!」
「うおっ!?」
恋心姫が煤鬼に勢いよくタックルしたので、煤鬼は尻餅を付く。
そのまま、恋心姫は半泣きで煤鬼を怒鳴りながら着物の襟をギュウギュウ引っ張った。
「何が“脱衣ジャンケン”ですか!何が“素っ裸!”ですか!
何が“無駄にデカい”……うわぁあああん!!
妾以外の裸を見るのがそんなに楽しかったんですか!?
こっちは寝ないで待ってたんですよぉぉ!?
うわぁあああん!他の女の匂いがしますぅぅぅっ!!」
「あ、え、ま、待て恋心姫!悪かった!機嫌を直してくれ!
そ、そうだ!!恋心姫にお土産があるんだぞ!?」
そう言って煤鬼は慌てて懐を探って、“お土産の甘いお菓子”を勢いよく取り出して恋心姫に見せる。
「――ひッ!!?」
「あれっ!?」
はずが、煤鬼の手に握られたセクシーな“誰かの”Tバックを見て、恋心姫は目を見開いで息を飲む。
そして――
「ふっ……ぇっ……!!」
「違っ……誤解だ、恋心っ……!!」
ぱちんっ!!
「うわぁあああん!煤鬼なんて大っきらぁぁあああい!!」
恋心姫は煤鬼に渾身のビンタ(弱い)をかまして、泣きながら走り去ってしまった。
「わぁぁあ!待ってくれ恋心姫ぇぇぇっ!!」
煤鬼も慌てて追いかけようとするが……
「う、わ!?」
植物の蔓に足を取られて動けなくなる。

視線を上げると、麿と桜太郎が立っていて、桜太郎が冷たい目をして言った。
「ココノ姫は、今日は私達の部屋で寝ますから」
「煤鬼君……今日は追いかけない方がいいよ。明日、冷静に話し合おう?」
麿も困ったように笑ってそう言う。

「うぅう……恋心姫ぇぇ……」
煤鬼はションボリしながら一人で寝ることになり、明日を待つしかなかった。


次の日。
廊下で恋心姫の姿を見つけた煤鬼はとりあえず挨拶する。
「お、お早う恋心姫!」
「…………」
「あ、あの!昨日の事はすまない!けど、違うんだ!
あれは何というか、遊んでいただけで!!」
煤鬼が何か言う間、ずっと疑惑の眼差しを向けてくる恋心姫の、
無言の圧力に耐えられず、煤鬼はその場で土下座した。
「恋心姫を裏切るような事はしてない!本当だ!
だから許してくれ!この通り!!もう絶対、変な遊びはしないから!!」
「……もういいんです。煤鬼なんか!一生一緒に寝てあげないし!
お風呂に入ってあげないし!遊んであげません!!」
「えぇええええっ!!?待ってくれ恋心姫ぇぇっ!!」
怒鳴って走り去っていく恋心姫。煤鬼は追いかけようとするが……
「付いてこないで下さい!!」
と言われ、ショックで立ち尽くす。

それから一週間。
いつも大抵くっついて一緒にいた恋心姫と煤鬼が、不自然なくらい距離を取る日々が続く。
煤鬼の方は、どうにか恋心姫に寄っていって何度も謝るのだが、恋心姫がとにかくそれを突っぱねた。
ご飯時も、お風呂も、寝る時も、恋心姫は桜太郎か麿にベッタリで、昼間も麿かぬぬと遊んでいて……
遊び相手がいない時は一人で遊んでいた。
これに参ってくるのは煤鬼で……
「もうダメだ恋心姫に嫌われた俺は生きていけない……!!」
庭の片隅でうずくまってどんよりする煤鬼を、ぬぬが慰める。
「……ドンマイ。大丈夫。時間が解決する」
「恋心姫だって鬼じゃない……優しいから、何度も誠心誠意謝ればきっと許してくれると、
思ってたのに!むしろ状況が悪化してる!今や目も合わせてくれん!
あぁ、笑って欲しい、話がしたい、抱きしめたい、交わりたい……!!」
丸まっている煤鬼は、長々と苦悩を吐き出す。
「……恋心姫も、ちょっとした事で怒り過ぎじゃないか?
俺が“いい加減根に持つな”って感じで、ガーッと怒鳴れば……
うわぁあああ!!ダメだ恋心姫が泣く!!できない!もう嫌だ全般的に俺が悪いぃぃっ!!」
「……ドンマイ煤鬼」
ぬぬも心配そうに煤鬼の背中を撫でる。

しかし……それからまた一週間。状況は全く変わらなかった。
ついに煤鬼から恋心姫に話しかける事もなくなり、煤鬼は朝食が終わるとフラッとどこかの部屋に籠ってしまう。
恋心姫も同じく部屋に籠ってしまって、そんな二人を見ていた麿も……
「煤鬼君と恋心姫君……結構ケンカ長引いてるね。二人とも、口数が少なくなって心配だよ」
桜太郎と食器を洗いながら、そんな話をしている。
隣に立つ桜太郎も、心配そうな顔だ。
「私も心配です。どうせあの二人の事だからコロッと仲直りすると思ってましたが。
ココノ姫も……きっと、こんな事今まで無かったから、
自分の気持ちをどう処理していいか分からないんでしょうね……。
私も何度か、ススキの事を話してみたけれど、“絶対許せない”って、泣き出すので……」
「……僕、少し恋心姫君の様子見てこようかな……」
「お願いします」
麿は恋心姫の様子を見に行く。
恋心姫は部屋の中で一人、寂しそうな顔で、小さな煤鬼のぬいぐるみに話しかけていた。
「……煤鬼……もう全部許してあげますよ。一緒に遊びましょう……」
麿はそれを見て何とも言えない気持ちになり……明るく話しかける。
「何してるの?お人形遊び?」
「麿……」
「小さい煤鬼君、嬉しそうだね。
大きい方の煤鬼君に言ってあげれば、もっと喜んでくれると思うよ?」
「……お人形でないと、言えないんです……」
泣きそうな顔でぬいぐるみを見つめる恋心姫の隣に座って、麿は優しく言った。
「煤鬼君、とっても元気が無くて寂しそうなんだ。
きっと……飲み会の時はさ、久しぶりにお友達と会えて、嬉しくなっちゃったんだよ。
お友達と遊んでただけなんだよ。あんな遊び方になっちゃったけど。
煤鬼君が大好きなのは恋心姫君だけなんだって、僕でさえ、今見てても分かるよ?」
「……妾も……妾にも、分かるのに……!!」
恋心姫は、煤鬼のぬいぐるみを抱きしめてポロポロ涙を零した。
「胸が苦しいくらい、愛されてるって、妾は、分かるのに……!!
煤鬼の気持ち、日に日に強くなって……それでも、許せないなんて……妾、嫌な男です……!!
うぇえっ……煤鬼、最近は朝に扉越しに謝ったきり、全く会わなくなりました!
このまま本当に嫌われたらどうしよう……!!本当は、一緒に遊びたいです!お話したいです!
抱きしめてほしい、えっちしたい……!!」
「こ、恋心姫君……」
泣いている恋心姫を、麿がどう慰めようかオロオロしていると、
部屋に帝が入ってくる。
「姫!ここにおったか!なぁ、煤鬼が今何をしてるか、教えてやろうか?」
「え?」
艶やかな笑みを浮かべ、帝は恋心姫に近づく。
目線を合わせるように屈んで、ニッコリと笑って告げた。
「姫の名を呼びながら、一心不乱に手淫してる」
「しゅ……いん??」
「姫に分かりやすく言えば“一人エッチ”だな」
「!!?」
驚いて顔を真っ赤にする恋心姫に、帝がワザとらしい口調で言った。
「あれでは、今日は部屋から出てこんだろうなぁ。
けれど……なかなか愛らしい姿だったぞ?
姫?煤鬼に愛想を尽かしたなら、アレも余のペットにしてしまってもいいか?」
「バカな事言わないで下さい!!煤鬼は妾の恋人です!!」
恋心姫はそう叫んで、部屋から走り出た。
「恋心姫君!!」
「何だ麿、いたのか」
「……思いっきり見えてましたよね?っていうか、今の話……」
「本当の事だぞ?やれやれ、下らん痴話喧嘩がやっと終わるなぁ」
帝は、恋心姫の落としていった煤鬼ぬいぐるみを拾って部屋から出て行き、
麿は顔を真っ赤にしたまま、ポツンと取り残されたのだった。



「煤鬼!!」
恋心姫が勢いよく襖を開ける。
着物を着崩して、壁に寄りかかる様に足を開いて座って、精液まみれの肉棒を握る、
あられもない姿で息を切らせる煤鬼の、虚ろな目と視線が合った。
「っぁ、はぁっ、はぁっ……恋心、姫……?」
恋心姫の姿を見た途端、煤鬼はそのままの格好で、
涙を流して吐息まじりの言葉を紡ぐ。
「頼む……お願いだ、許してくれ……!!俺は……もう、限界……で、
でも、一人じゃ……全然……!!」
恋心姫が驚きと混乱で何も言えないでいると、煤鬼はなおも息切れ気味に泣きながら言う。
「久しぶりに皆に会えて嬉しかった……!
恋心姫の事が、たくさん自慢できて嬉しかった……!
酒が入って気が大きくなって……、脱衣ジャンケンはしたけれど、
でも、女に目移りなんてしてない……!!信じてくれ……!!」
泣いている煤鬼を見て可哀想に思った。
性的な部分を惜しげも無く晒しながら縋られて興奮した。
そんな二つの感情に押し流され、恋心姫はとっさにこう口走っていた。
「……妾に黙って一人で“気持ちいい事”するなんて、悪い子ですね煤鬼……」
「恋心姫……!!あぁ、やっと声が聞けた……!!
ごめんなさい……!お願いだ、俺の事、許してくれ!何でもするから!
何でも、されるから!!どんな、お仕置きでも受けるから……!!」
嬉しそうな煤鬼に懇願されながら、恋心姫は思う。
(今の、煤鬼……妾の声ならどんな言葉でも、
妾が触れさえすればどんな扱いでも、きっと嬉しいんですね……!!
ショックで思い至りませんでしたが、そうか、お仕置きすれば!!
きっと妾も気が済んで、煤鬼の事、自然な感じで許してあげられます……!!)
と、今結論付けた事を隠す様に、恋心姫は煤鬼の前に行って堂々という。
「仕方ないですね。そこまで言うなら……お仕置き、してあげます。
ちゃんと最後までいい子にできたら、許してあげますよ」
「あ、ありがとう!!頑張る……!!」
「じゃあ、服を全部脱いで仰向けになって」
元々、下着もはいてなくて着物を着崩した状態だった煤鬼は、
それを躊躇なく脱ぎ捨てて、大人しく全裸で畳に仰向けになった。
恋心姫は煤鬼の上に跨って、手を取って、肘を曲げて軽くバンザイする体勢にさせる。
「手はここ。絶対動かしちゃダメですよ?」
「分かった。……恋心姫は脱がんのか?」
「脱ぐわけないでしょう?反省する気あるんですか?」
「ごめんなさい……」
しゅんとする煤鬼の、今度は両足の間に移動して座った恋心姫は、
煤鬼の一物を握ってゆっくりと手を上下に動かす。
自分の精液が潤滑油になっている快感で煤鬼の声が震えた。
「あっ……ぁっ……これ、が、お仕置き、か……?」
「そうです。煤鬼が苦手なやつ」
「ぅう……まさ、か……」
喘ぎ気味の煤鬼の予感的中で、
焦らすような遅くて弱いストロークに耐えられなくなった煤鬼が、早くもねだりだす。
「やっ……だ、恋心、姫……っ、もっと、強く……!!」
「ダメです。お仕置きなんですよ?」
「ごめ……なさぃ……で、も……うぁっ……!!」
「泣き言は言いつつ、だんだん気持ち良くなってるみたいですね」
「んっ……恋心姫に、触れられるのは、久しぶり、だからぁっ……!!」
焦らされながらも、何とか快感を高め、いざ絶頂に、至りそうだった時、
急に恋心姫が手を止めて、煤鬼は思わず叫んだ。
「何で!?何でそこで止める!?」
「もう!何回も言わせないで!!お仕置きだからです!!
文句があるなら一生仲直りしませんよ!?“我慢します”は!?」
「が、我慢します……!!」
恋心姫に怒られたので必死でそう言って迎えたテイク2。
快感に酔わされると、どうしてもおねだりしてしまう煤鬼。
「恋心姫っ……ひ、ぁっ……もっと……もっと欲しい……!」
「頭の悪い子は無視していいですか?」
「やっ、やだぁぁっ!!何か、言ってくれ……あっ、あぁっ!!」
「じゃあ言いますよ?“貴方が泣こうが喚こうが、もっとはしてあげません!”」
「うっ、うぅ……恋心姫ぇぇっ……!!」
縋るように恋心姫の名を呼んでも、じれったさは変わらず、それでもまた
夢の様な限界を迎えようとしたら、手を止められた。
「あぁ、またぁぁっ……!!嫌だぁ!止めないでくれ……!!」
そう嘆いて、続くテイク3。
焦らされた上に――
「まだ!まだぁ!やっ、ぁ……!!うっ、ぇぇっ……もう許してぇぇ……!!」
最後まで達する事が許されず、そろそろ地獄のテイク4。
もうおねだりして怒られるのは慣れてきたが
問題は、果てそうになると恋心姫の手が止まってしまう事。
煤鬼はとうとう泣き喚いた。
「あぁ、嫌だぁっ!おかしくなるぅ!!止めないでくれ!お願いだからぁぁ!!」
しかし、恋心姫の方はしれっと言う。
「あーと10回は繰り返す予定なんですけどぉ?“我慢します”は?」
「じゅっ……!?嫌だ!嫌だぁぁ!もう我慢できない!イキたい!イキたいぃ!ごめんなさいぃ!」
「お仕置きなのに煤鬼はワガママばっかりで、妾が“嫌”って言いたいですよ」
「うわぁああん!ごめんなさぁぁい!イキたいです!お願いですからイかせてくださいぃっ!」
煤鬼は必死になって、敬語も使って、子供のように駄々をこねた。
けれども、その間も嫌がらせのように弱くペニスを弄ぶ恋心姫の声は冷たい。
「妾の為に何かしてくれるガッツは無いんですか?」
「ご、ごめんなさい!!見せる!恋心姫の為にイクとこ見せるぅぅっ!!」
「えぇっ!?あ、ははっ……煤鬼?貴方……自分が今何を言ってるか、分かってるんですか?
素面に戻った時がみものですね♪仕方ない」
クスクス笑う恋心姫が、強く肉棒を握る。
それだけで煤鬼は嬉しそうに悲鳴を上げた。
「うぁああっ!」
「妾に見せるなら、可愛くイかないとダメですよ?」
焦らし一切無しで、グイグイとペニスを扱いて攻め立てながら恋心姫が甘い声で言う。
「分かっ……任せっ……んんぁあっ!!」
「で、妾の為に何をしてくれるんでしたっけ?」
「はぁっ、はぁあっ!恋心姫の、為にぃ!可愛く、イクとこ見せるぅぅっ!!」
完全に快楽酔いしている煤鬼は恋心姫に言われるがまま、
素面なら言えないような事も平気で叫んで、
「んぁあああああっ!!」
念願の絶頂を迎える。
思う存分白濁を吹いて幸せそうな煤鬼を見て、
「可愛くイくのは合格ですね
と、恋心姫も妖艶な笑顔で大満足だった。
けれど……
「でも全然、お仕置き我慢しないんですから。悪い子。
だから、もっときついお仕置きをしてあげます。
ね?手は動かしていいから、足を開いて自分で抱えててください?」
「……え……?」
第二ラウンドが始まったらしい。
しかも謎の体位指令に煤鬼は戸惑ったが、恋心姫は穏やかに容赦なく促してきた。
「足を開いて持ち上げて、自分で抱えてるんです。
ポーズが分からないなら誘導しましょうか?」
「こ、恋心姫……待て、そんな格好させて、どんなお仕置きだそれは……?」
そう、恐る恐る聞いてみた煤鬼は、
「妾が煤鬼にエッチしてあげるお仕置きですけど」
「やめてくれ頼むから!!それだけは!!」
大絶叫する事になる。
すると、恋心姫が煤鬼の上に這い上がってきて、瞳を潤ませて言う。
「煤鬼……お仕置き我慢するって言ったじゃないですか……どうしても嫌なんですか?
妾、煤鬼と早く仲直りがしたいです……
「う……で、でも……!!」
「……いいですよ。一つ前のお仕置きを、できるまで永遠にやりましょう」
「わわわ分かった……!!」
急に声が低くなった恋心姫に、煤鬼が慌てて指定されたポーズをとる。
自分で下半身を晒しているかのような恥ずかしさで顔を赤くした。
「こ、これでいいか……?」
「ハナマルです ご褒美に、妾も脱いであげますね」
「あっ……!!」
「見るだけですよ?」
そう釘を刺され、とっさに“触れたい!”と思った煤鬼は残念そうに大人しくした。
着物や下着を脱いだ恋心姫が指を口の中に入れてしゃぶる光景をドキドキしながら
眺めていたが、すぐにそんな場合ではないと思い知る。
「うっ……あっ!?」
尻穴に指を入れられたから。
驚きと羞恥と恐怖が混ざって、煤鬼は恋心姫に声を上げるが……
「こ、恋心姫……!やっぱり、やめっ……ひぅ!!」
指を動かされるとまともに話せなくなった。
喘ぎ声のような悲鳴ばかり上げてしまう。
「あっ……あっ……!!」
「痛いんですか?」
「んっ……くっ……!!」
「ふふっ……話せませんね。痛くなかったら、顔を右側へ」
煤鬼は痛いわけでは無いので顔を右へ倒す。
そのまま恋心姫の声を聞いて、未知の違和感に息を荒げている。
「良かった。大丈夫、無理にはしませんから。
いつも煤鬼がしてくれるみたいに、たっぷりほぐして挿れてあげます。
手は、離しちゃダメですよ?分かったら頷いて」
とりあえず頷く。
けれど、そうやって抵抗できない間に、恋心姫の指使いは大胆に、
本数は増え、しかも煤鬼はじわじわと違和感が快感らしきものへ変わってきて、
そして話せるようになった。
「ここの、ひめぇっ……!やだぁっ、これもやだぁっ……!!」
「どうして?これは我慢しなくてもいいお仕置きですよ?
煤鬼もだんだん柔らかくなってきたし。気持ち良くないですか?」
恋心姫にそう尋ねられても“気持ちいいような気がする”とも言えず、
煤鬼は顔を赤くして呻くしかなかった。
「うっ……うぅっ……!!」
「どう見ても、気持ちいいお顔ですけど……そんなに嫌なら早く終わらせてあげないと、ですね。
お邪魔、します!!」
「待っ、お願ッ……お引き取っ……うっああっ!!」
指が抜けたかと思うと、恋心姫に腰を突きこまれる。
煤鬼はどうにもならなくて悲鳴を上げたけれど、
愛しい異物を飲み込む苦しみは割と少なく……
「あっ……意外と、すんなり……!!」
「やっ……くっ……!!」
恋心姫もホッとするほど、煤鬼も少し我慢すれば無事に、連結できた。
「ほら、全部入った。分かりますか?」
「う、ぁ……は、入ってる……本当に、入ってる……!!」
煤鬼は涙目になりながら信じられない状況に打ち震えるしかない。
確かに、繋がっている感触があった。
嬉しそうにうっとりとする恋心姫の顔も見える。
「鬼を、貫いてしまいました…… なんだかとっても強くなった気分です
「あぁっ……そんなっ……そんなぁっ……!!」
「ごめんなさい煤鬼……正直、妾のは全然おっきくないし、長さも、物足りないとは思いますが……。
煤鬼ったら“妾に挿れられた”ってだけでこんなになってるんですかね?
これならお互い、結構、楽しめるかもしれません」
言われて煤鬼も気が付いたけれど、自分の一物はギンギンに勃起していて、
一気に恥ずかしくなってくる。
その上、恋心姫が追い打ちをかける一言を放った。
「妾も動きながら頑張って雰囲気出しますから、煤鬼も雰囲気で、どうにか気持ち良くなってくださいね?」
「う、ごっ……!?いやだぁぁぁっ!!動かないでぇぇっ!!」
「動かないとさすがに雰囲気出ませんよぉ。恥ずかしがっちゃダメです いきますよ!」
「待って!待って待ってあぁああっ!!」
二回目のどうにもならないからの悲鳴。
どうにもならなかったので、恋心姫が腰を動かしながら懸命に“雰囲気”を出してくれている。
「ほらぁ、妾のが動いてるの分かりますか?
煤鬼の中、ぐちゃぐちゃに掻き回してあげますから!!」
「やっ、あぁああっ!ひっ、本当に動いてるぅ!」
初めて経験した感触はもちろん“ぐちゃぐちゃに掻き回されている”というほどの物でも無いが、
そんな言葉を吐かれたら、そんな気がしてしまうのが“雰囲気”の怖い所。
“自分よりとても小さな愛しい恋心姫に”、“ぐちゃぐちゃに掻き回されている”。
煤鬼にとっては鬼の沽券に係わる一大事で、恥ずかしくてたまらない。
それに加えて、全く気持ち良くないわけでは無いので、煤鬼は恥ずかしがりながら喘ぐ事になる。
「うぁああんっ!あっ、ふぁっ!」
「ん、ぁっ!!すっごく締め付けてきますよぉ?煤鬼はエッチな子だから気持ち良くて堪らないでしょう?
もっとガンガンに、奥までおかしてあげますね……!!」
「あぁああ!!言うなぁっ!そういう事言うなぁぁっ!んうぅっ!あぁあっ!」
一方の恋心姫は雰囲気作りを頑張ってくれるので、煤鬼の羞恥も快感もどんどん増幅されてしまう。
しかもそれは煤鬼だけではないようで……
「あぁあっ…… でも妾、本当に気持ちいいです!はぁんっ!これも、好きかもぉぉっ
「うぅあぁ!そんな声出されたら俺、は……!!」
可愛らしい喘ぎ声での不意打ち。
煤鬼の一物は限界を迎えて、
「あぁああ!!こんな事ってぇぇっ……!」
「!?」
果ててしまった。
恋心姫に、犯されて。
初めて恋人を自分のモノでイかせる事を成功させた恋心姫は、連結を解除して顔を赤くして喜んだ。
「あぁ、出しちゃうなんて、ズルいです……妾、嬉しくて怒れなくなっちゃうじゃないですかぁ
でも、雰囲気だけで出しちゃうなんて、やっぱり煤鬼は優しくて……意外とロマンチストさんですね
「うっ……うぇぇっ、うわぁああん!!!ひっく、ぐすっ……!!うっ、うううっ!!」
「……煤鬼……そんなに嫌でした?傷つきましたか?」
目を覆って悲壮に泣き出す煤鬼に、恋心姫は心配そうに尋ねる。
煤鬼は泣きながら喚いた。
「嫌とかじゃあ、ないけどぉぉっ!!はっ、恥ずかしくて死ぬぅぅぅ!!
この事実をどう受け止めていいか分からないぃぃ!!うわぅううっ!!」
「お仕置きだから、多少は反省してもらわないと困りますけど……、
煤鬼の気持ちを傷つけたいわけじゃないですから、あまり気に病まないでくださいね?
エッチな事して気持ち良くなっちゃうのは当たり前ですよ。
煤鬼を気持ち良くさせてあげられて、妾嬉しいです」
「わ、分かったぁぁっ……!!」
恋心姫に慰められて、お腹を撫でられ、煤鬼も少し立ち直った。
また、恋心姫が言う。
「じゃあ次のお仕置き……」
「ま、まだ何か、うぅっ、あるのか……!?」
「何か言いましたか?」
「なんれもあいまふぇん……」
恋心姫に頬を引っ張られて、逆らえない第三ラウンド。
「これで最後ですよ。頑張って。
今まではあまりお仕置きっぽくなかったですからね。
最後は、お尻ぺんぺんです。お尻出して」
「分かったぁぁ……」
この頃には恋心姫の声や表情がだいぶ優しくなって、
煤鬼は素直に四つん這いになって恋心姫にお尻を差し出す。
ピシッ!パシンッ!!
「あっ、あ!!」
恋心姫のお尻打ちの威力は相変わらず、煤鬼を本気で痛がらせることはできないけれど、
煤鬼は軽く悲鳴を上げながら大人しくしていた。
ピシッ!パシッ!ピシンッ!
「ヤダヤダばっかり言って、お仕置き全然我慢しなかった煤鬼ですけど、
一つだけ褒めるべきところがあります」
「んっ!うっ!!」
「それは、体は抵抗したり暴れたりしなかった事。そこだけはいい子でしたね」
「は、ぁっ……!!頑張、った……!!」
「そうですね」
パシンッ!ピシィッ!!
恋心姫に褒められて煤鬼は嬉しくなった。
お仕置きの最中にしては、穏やかな会話が二人の間に流れている。
「お札も帯も、もちろん固い鎖も、何も使わなくても貴方を縛っていられた事……
妾の自慢にしていいですか?」
「当たり前、だ……!そんな、すごい事、っ、できるのは……恋心姫だけ、だぞ?
けど、あっ、いっ……他に、言うなよ……?」
「言いませんよ」
パシッ!ピシィッ!!
だんだん、元のテンションを取り戻してきた煤鬼は、
ピリピリする痛みでお尻を揺すって、下半身に残っている興奮で
そのつもりは無くても甘い声が出てしまう。
「うぁぁっ!あっ!はぁっ、はっ……!」
「……煤鬼、お仕置きのお尻ぺんぺんしてるのに気持ちいい声出したらダメですよ?
“えすえむ”になっちゃいます」
「ごめん、なさっ……くっ、ふっ……!!」
「後は、何も使わなくても貴方を痛がらせる事ができたらいいんですけど……
せめてお仕置きの時だけでも。これも“雰囲気”でどうにかなるでしょうか?」
パシンッ!ピシッ!パシッ!!
「んんっ!!あぁっ!!」
「それとも……じっくりと、長く叩いていれば、煤鬼が泣くくらい痛くなりますかね?
例えば今日の一晩中」
「あぁっ!ヤダぁっ!許してくれ……!!」
「またヤダヤダ言って……悪い子はお仕置きの数を増やします!」
ピシィッ!
「ふ、ぁっ!ごめんなさい……!!」
「全く……反省してますか?」
少し強めに叩かれればそれっぽい悲鳴も出るが、まだ煤鬼の中では恥ずかしさの方が勝っている。
顔を赤くして、とにかく許してほしくて謝った。
「反省した!ごめんなさい!ごめんなさぁい!!」
「エッチな遊びは妾としかしちゃダメです!」
パンッ!
「は、はい!」
「あのイヤラシイ下着は捨ててください!!あぁいうのが好きなら妾がはいてあげます!」
「はい!」
「……はいてた女……ボインボインですか?」
この質問には、たぶん怒らせると分かっていても正直に答えるしかなくて、
煤鬼は弱弱しい声で答えた。
「……うぅ、ボインボインだった……」
「もうバカァッ!妾はボインボインにだけはなれないんです!!」
パシンッ!!
「ご、ごめんなさぁい!!別に灯美鬼の乳も下着も興味なかったんだぁ!
た、たまたま持って帰ってきてしまっただけでぇっ!」
「誰ですかヒビキってぇぇっ!!」
ピシッ!パシッ!パシンッ!!
「うぁあっ!!」
恋心姫が怒りだすと、お尻を叩かれる力も強くなって、
煤鬼のお尻もほんのり赤く染まってくる。
「どうやったら、興味が無い女の下着をたまたま持って帰って来る状況になるんですか!!」
「だ、脱衣ジャンケ……」
「もう!分かってますぅぅぅ!!煤鬼の悪い子!バカ!エッチぃぃ!」
ピシッ!パシッ!パシィッ!!
「ご、ごめっ……ごめんなさい!あっ、うぅ!!痛い!!」
煤鬼の方は“痛い”と主張できるくらいには痛くなってきたのに
恋心姫はますます怒りを燃え上がらせている。
「あぁもう!桜太郎からおしゃもじを借りてこれば良かったです!許しませんからね煤鬼ぃ!!」
「ごめんなさい!はぁっ、あっ、痛いっ、許してくれ……!!」
「むしろ今から借りてきて……」
「や、やめて!やめてくれ!反省したからぁっ……!」
ピシッ!パシッ!パシッ!!
「本当に反省したんでしょうね!?」
必死で叫ぶと、恋心姫も道具を使うのは勘弁してくれたみたいだった。
ので、煤鬼も少し痛いのは我慢して、頑張って謝り続ける。
「本当に、あっ、んっ……反省、した!もう、しないから!ごめんなさい!ごめんなさい……!!」
「なら……許して、あげます。こちらを向いていいですよ」
恋心姫からそう言われたので、煤鬼が体を起こして恋心姫の方を振り返ると……
「煤鬼!!」
恋心姫が抱き付いてきた。
煤鬼の体に頬ずりして、さっきまでとは別人の甘えた声を出す。
「ずっと怒っててごめんなさい……!!本当は、妾も早く仲直りしたかったです……!!」
「恋心姫……違う、俺が……俺が悪かった……!!」
煤鬼はそんな恋心姫が愛おしくて申し訳なくて、力いっぱい抱きしめた。
こうして二人は無事仲直りできたわけで、
その直後、体を離した恋心姫が遠慮がちに言う。
「それで、さっそくお願いがあるんですけど……」
「どうした!?何でも言え!?」
食いつき気味の煤鬼。
恋心姫が、恥ずかしそうに頬を赤くして、瞳を潤ませた。
「煤鬼の、おちんちん、欲しいです……お仕置きじゃない、エッチがしたいです……
煤鬼の事、お仕置きしてたら、妾、ドキドキして……!!」
「!!」
「一人エッチしちゃうくらい、我慢してたのは……貴方だけじゃないんですよ……!?
疲れているなら、一度でいいですから……!」
「ま、任せろ……!!」
煤鬼も真っ赤になって震える。
嬉しくて嬉しくてたまらない様子で、満面の笑みで張り切った。
「お詫びだ、存分に、奉仕しよう……!!恋心姫が気持ちいい場所、全部可愛がってやる!!
一度なんて言うな!俺は最低でも十はしたい!!」
「あぁ煤鬼ぃぃっ
二人はラブラブオーラをまき散らして再び仲よく畳に沈む。
そこからは攻守逆転、恋心姫の幸せそうな喘ぎ声が響いていた。


pm8:00の事。
食事も終わって、食卓に固まっていたメンバーのうち、
桜太郎が眉間にしわを寄せて言った。
「……ココノ姫とススキ、まだ部屋に籠ってるんですか……?
もう限界です!!私、見てきます!!」
立ち上がろうとする桜太郎に、帝が緩く声をかけた。
「桜太郎はやめた方がいいぞ?確実に、見たくない光景を見る」
「ですが!!」
「待って桜太郎君!僕が見て来るよ」
桜太郎を宥めるように、麿が名乗りを上げる。
すると帝は手のひらを返した。
「何だ麿……覗きたいか?イヤラシイやつだな」
「あからさまな差別やめてください!!」
「俺も行く。(ちょっと覗きたい)」
結局、麿とぬぬが恋心姫と煤鬼の様子を見に行くことになって……


問題の部屋を探し当て、到達する。
「こ、恋心姫君、煤鬼君!?いるの!?」
「(ドキドキ)」
麿は返事がない事に警戒しつつ、そっと襖に耳を当てた。
隣ではぬぬが無表情ながら、瞳をキラキラさせている。
「……音は何もしない……大丈夫かな?突入してみる?」
麿の言葉にぬぬが何度も頷いて、麿は意を決して襖を勢いよく開いた。
「お取込み中失礼しますッ!!……あ、あれ……?」
麿とぬぬの見た光景は……
煤鬼の着物を掛け布団代わりに、二人で裸で寄り添って眠る恋心姫と煤鬼の姿で、
麿はホッとした表情を浮かべる。
「な、何だ、寝てたんだね……仲直り、できたみたいで良かった」
「事後」
「あぁああ!僕があえて見なかった現実をぉおお!!」
ぬぬの的確なツッコミと麿の絶叫でこの日は幕を閉じた。



翌日。
am7:30の事。
皆揃って朝食の時間。

「貴方達ねェ……」
ビキビキと笑顔を引きつらせる桜太郎は……
「ご飯を食べる時ぐらい離れて食べなさいッ!!」
恋心姫と煤鬼を怒鳴りつけた。
しかし、煤鬼の膝の上に乗っている恋心姫は、ますます煤鬼にくっついて果敢に反論する。
「だって妾達!二週間も離れ離れだったんですよ!?
もっと煤鬼成分を補給したいです!!ねっ?」
「そうだそうだ!俺も恋心姫不足を補わないと!なっ?」
煤鬼も煤鬼で桜太郎に反論して、二人で顔を見合わせてニッコリ笑う。
完全に元の二人に戻っていたが、いささか仲良し度が前よりパワーアップしていて
桜太郎は頭を抱えた。
「あーもう!今日だけですよ!?明日もお行儀悪い事してたら、
帝さんに怒ってもらいますからね!?ねぇ帝さん!?」
「麿、桜太郎に“笑ってた方が可愛いよ”と言ってやれ」
「帝さんッ!!」
今度は帝に怒鳴る桜太郎を、麿が帝の指示通り宥める。
「まぁまぁ、桜太郎君、ほら、笑ってた方が……その、可愛い、よ?」
「ま、麿さん……!も、真に受けないで下さい……!!」
そうすると、顔を赤くして勢いを無くす桜太郎。
麿も恥ずかしかったけれど微笑ましく思う。
(でも桜太郎君も、煤鬼君と恋心姫君が仲直りできて、嬉しそうだよね)

こうして、平和が訪れた妖怪御殿だった。


【おまけ】

煤鬼「なぁ恋心姫?」
恋心姫「何ですか?」
煤鬼「その……どこで覚えた?“中、ぐちゃぐちゃに”とか、
     “もっとガンガンに、奥まで犯して”とか……そういう言い回し……」
恋心姫「どこでって……煤鬼のまねしただけですよ?」
煤鬼「そうかぁ……!!俺かぁ……!!」
※やったらやり返されるカップル

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