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妖怪御殿のとある一日 引っ越し後18
※エロ御殿注意
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やってきました温泉旅行!!
お風呂も気持ち良かったし、料理も美味しかったぁ!
怪研究家兼、妖怪の麿拙者麿だよ!
お風呂で帝さんに体洗わされたり、煤鬼君が迷子になっちゃったり、恋心姫君がオイタしちゃったり……
色々あったけど、やっぱり“家族旅行”って楽しいし思い出に残るよね!

うん、思い出に残るから……


さぁ運命の、夜が来る……気合い入れて行きまっ、行きまふ!だ、大丈夫!

******************

温泉旅行先で、夜を迎える妖怪御殿の面々。
帝とぬぬの部屋(in旅館)では、
がんじがらめに上半身縛られて布団に転がっているぬぬを見て、満足そうな帝がいた。
「これでよし。これなら、お前も余に変なマネはできまい……」
「誉……でもコレ、トイレに行きたくなった時どうすれば……」
無表情ながらも、少し困った風な雰囲気のぬぬ。
しかし、帝の方は不満そうに眉を吊り上げてぬぬの股間を足蹴にした。
「はぁ?そんなもの、余が縛めを解いてやるまで我慢すれば済む話だろうが!」
「っ、誉……!!」
「獣でもあるまいし容易い事だろう?言うまでもないが、もし我慢できずに旅館の布団を汚して
余に恥をかかせたら……ものすご〜〜く、厳しいお仕置きをしてやるからな?」
「わ、わか……った……」
ぬぬが顔を赤くして、踏まれている足から逃れるように身じろぎをすると、
帝が意地悪く笑って余計足をグリグリ動かす。
「ほぉ?何やら足の裏に違和感があるが、本当に分かっているのか?」
「ほま、誉っ、様……やめて……やめてください……!!」
ぬぬの辛そうに上ずった声に紛れて、他の部屋からも微かな艶声が聞こえてくる。
帝もぬぬもすぐに気が付いて、しかしいつもの事だと……
「ほら……色ボケ鬼共も始めおったわ……」
「うぅ……」
帝がそう言って。ぬぬもそうだろうと思って。
しばらく帝がぬぬを“いじめて”いたら、だんだんと両方は気づき出す。
「…………!」
「…………!?」
帝は艶声の声質、ぬぬは微かな“桜の香り”……
「ち、違う……違う、姫の、声じゃ、ない……!!」
言いながら、動揺して真っ青になっていく帝は、慌てて部屋を出ようとする。
「桜太郎!!」
「誉!!」
大声で帝を呼び止めたぬぬは、真剣な表情で言った。
「行かないで……!!行ったら怒る……!お仕置きもする!」
「だ、だって桜太郎が!余の桜太郎が!!」
泣きそうになって狼狽している帝を、ぬぬは必死に説得する。
「桜太郎は誉の大事な家族だけど、誉のモノじゃない!今はどっちかって言うと麿のモノ!!
大事な性行為の邪魔をしたら、さすがに麿だって怒るし、桜太郎だって傷つく!!」
「だっ、黙れ!!お前に余と桜太郎の仲が分かるものか!偉そうに!!」
「誉は俺の恋人!!誉のモノは俺!桜太郎は違う!行かないで!行っちゃダメ!!」
「嫌だ!!桜太郎!!」
ぬぬから顔を逸らし、制止を振り切って部屋を出ようとする帝は――

「行くな!!」

ぬぬの怒鳴る様な制止に、体をビクつかせて驚いて……
「!!?っ……ペットのくせに余に向かって大声で命令するなバカッッ!!」
帝は涙目でそれだけ叫ぶと、部屋を出て行ってしまった。
「誉!!誉……」
ぬぬは悲しそうにため息をつくと……縛られたまま器用に立ち上がっていた。


そこから少し前……
麿と桜太郎の部屋(in旅館)では桜太郎が、きちんと敷かれた布団に瞳を輝かせて感激していた。
「ご飯も作っていただいた上、布団まで敷いていただけるとは……!!
旅館というのは本当に至れり尽くせりなんですね!何だか申し訳ないです……!!」
「あはは!桜太郎君はいつも家事頑張ってるんだから、気にせずゆっくりしたらいいんだよ!」
そんな桜太郎に微笑ましげに言葉をかける麿。
桜太郎の方は遠慮がちに微笑んでいる。
「そ、そうでしょうか……?」
「そうだよ!ほら、せっかく敷いてくれたんだし、一緒に横になろう?」
麿は何気なくそう言った後、
「!?」
「あっ!!いや……!!」
驚いたようにバッと麿の顔を見た桜太郎の、煙が出そうな勢いの赤面+硬直で我に返る。
そして自身も赤面しながら慌てて何か取り繕おうとするけれど、気合を入れて思い直す。
(い、いや!今、いい流れを作ったぞ!!怖気づくな麿拙者麿!ここで一気に決めろ!!)
その勢いで、桜太郎へ……緊張でガチガチになりながらも言った。
「こ、今宵こそ!桜太郎君と交わりたく候……!!(何コレ!!?僕急に何キャラ!?何目線!?)」
「しょ、承知……!!」
(僕の恋人超優しい!!)
こうして、お互いもじもじと布団へ横になり、桜太郎に覆いかぶさった麿。
ゴクリと喉を鳴らして……アワアワと口を開いた。
「と、ところで桜太郎君は何か“これがしたい!”とか“こうしてほしい”とか、リクエストはある?
(あぁああああ!!土壇場で桜太郎君に丸投げしてしまう僕のヘタレェェェエエエエッ!!)」
内心で叫びまくってる麿の下で、桜太郎は恥ずかしそうに視線を彷徨わせて、
麿から目を逸らしながらも、顔を真っ赤にして言い辛そうに……
「……あ、あの………………口付け、を……」
途切れ途切れに、言葉を紡ぎ……
「この前……みたいに……、唇に…………」
「…………」
「ご、ごめんなさい!!」
リクエストを述べると勢いよく謝って、顔を覆ってしまった。
麿は嬉しさと愛しさと恥ずかしさと、桜の香りに当てられて、意識が飛んでいきそうになる。
(僕の恋人超可愛いィィィィイイイッッ!!)
が、頑張って意識を取り戻してフォローする。
「ううん!初手のキスは定石だよ!基本を押さえた良いプランだと思うよ!さすが桜太郎君!!
僕もちょうどキスしたいなァァって思ってたんだ!!」
「そ、そっ、そう……なん、ですか……?」
チラリと両手の隙間から麿を覗き見る桜太郎に、またギュンギュンに愛しさを募らせつつ、
麿は必死で言う。
「そう!そうなの!!だ、だから、キス……しよっか……?手は、退けてね?」
麿に言われた通り手を退けて、こくりと頷いた桜太郎。
お互いにそれとなく目を瞑りながら、麿が桜太郎の唇を、そっと奪う。
(ア ナニコレアマクテヤワラカイ)
温かく湿った柔らかさに、芳醇さに、麿はスッと軽やかに理性を投げ捨てて……
桜太郎の口内へと舌を差し入れる。
「んっ……!!?」
(ビックリさせちゃってごめんね桜太郎君……!!)
明らかに動揺した、声のような吐息が漏れ、桜太郎が硬直する。
それでも麿は桜太郎の中を舌で愛撫する事をやめられなかった。
「ふっ……!ん……ぅっ、ちゅっ……!?!」
(だ、ダメだ……甘い……濃い、桜の匂いで……スイッチが……!!)
微かに体を震わせて動きを止める桜太郎とのキスを堪能して、
麿が唇を離すと。桜太郎は金縛りが解けたかのように慌てて麿の浴衣を掴んで、
必死に何かを伝えようとパクパク口を動かす。
「あっ、あの!!あのあのっ……!!」
「何……?どしたの桜太郎君……?」
トロンとした瞳で、恍惚とした顔つきで、桜太郎の肌を撫でるように浴衣を肌蹴る麿に、
桜太郎はビックリしながらも動けない。
うっすらと目に涙を浮かべた赤面で、オロオロと言葉を投げる。
「これあの!これからっ、その!事に、及ぶと……!!
ココノ姫とススキみたいに、声が!大声、が、出てしまうものなんでしょうか!?
それだったら私っ、私……!!あのそのっ……!!」
「……ごめん。僕もその辺、詳しくないから、事に及んでみないと分からないな……。
でもね、桜太郎君……僕、聞きたい……」
「ヒッ……!!」
震える手が、遠慮がちな指使いが、露わになった桜太郎の胸を……突起の周りを撫でまわす。
憑りつかれたようにそうする麿が、深い胸の内を吐き出す様に声を絞り出す。
「桜太郎君の、余裕無いエッチな大声聞きたい……!!」
「麿さ……あ……ぁっ
「愛してる……!!ずっっっと、こうしたかった……!!
ごめん、ごめんね、もうダメだ……!!桜太郎君に思いっきりいやらしい事したい……!!
最低限、痛くはしないようにするから……あぁ桜太郎君……愛してる……桜太郎……!!」
感極まって半泣きになりながら、欲望を曝け出しながら、懸命に桜太郎の胸を触っている麿。
最初より遠慮の解けてきた手つきは、桜色の突起も優しく撫で回して、
桜太郎も初めての快感に戸惑いながらも、麿の想いを受け止めて微笑んだ。
「んんっ、麿さっ……私も……あぁっ 私も、愛、して……ますから……!!
だから……ひ、ぅ  麿さんの、望む事、んっ、一緒に、したい、です……!!」
控えめに喘ぎつつ、すべてに同意してくれた優しい笑顔。
それを見た麿は少し落ち着いたようで、ホッとしたように桜太郎に微笑んだ。
「たぶんね、僕も声出ちゃうから……今、嬉しくてすっごく叫びたい気分……
だから、桜太郎君も声……我慢しないでね?どうせ恋心姫君と煤鬼君の声に被って分かんないよ」
「は、はいっ……んぁあっ 麿さん!麿さん、そんな、そこっ……やぁぁっ!」
勢いに乗った麿は、今度は桜太郎の下着を押し上げていた枝を解放して、
感触を確かめるように優しく擦り上げる。
そして嬉しそうにうっとり見つめる。
「ここがイッッチ番、触りたかったぁぁ…… わぁぁシッカリしてて……可愛い……
「やあぁっ もう麿さんもぉぉおっ!!」
桜太郎もだんだんと大胆に喘ぎ始めて……そして……

「っ……うっ、うぅっ……桜太郎……!!」
結局部屋には突入できなかった帝が、襖の前で崩れ落ちて、さめざめと泣くことになる。
そこへ、縛られたままのぬぬが追いかけてきて
「……誉」
「ぐすっ、ひっく……!!」
「部屋に戻ろう……」
静かに声をかけたけれど、帝は泣きながら首を振る。
ぬぬは帝の傍にしゃがみこんで、再度優しく声をかける。
「……もう、ここにいても仕方がない。
誉が……悲しまなくていいのに、悲しくなるだけ。
戻ろう?俺の縄、解いて?」
「っ、うっ…………!!」
「言う事聞かないと、俺は今すぐ自分で縄を抜けて、
誉を無理やり部屋に連れて帰った挙句、お仕置きを倍にする」
「!?」
「縄、解いて」
驚いて振り返った帝は、ぬぬの真剣な表情と目が合う。
有無を言わさぬような言葉に、ぬぬの縄を解こうとして……はたと手を止めた。
帝の細い指先が震えているのを見て、ぬぬが心配そうに声をかける。
「……大丈夫?手、動かない?」
「……自由にしてやるから、余に手を上げないと約束しろ」
「…………」
ぬぬは一瞬目を細めて……次の瞬間には誉の口を手で固く塞いで抱き込んでいた。
そのタイミングでやっと驚く事の出来た帝の耳元へ、冷たい声で囁く。
「誉……もしかして……お仕置き厳しいの、好き?」
「――んんっ!!」
「お願いだから静かにじっとして。気絶させたくない」
「!!」
ぬぬの冷静な声が、“本当にやりかねない”妙な迫力を持っていて……
帝は抵抗をやめ、大人しくぬぬに連れて帰られた。


再び帝とぬぬの部屋(in旅館)では、布団に優しめに投げ落とされた帝が、慌てて起き上がって
尻餅を付いたまま後ずさっていた。
「く、来るな!!言う事を聞いただろうが!!黙ってじっとしてやっただろう!!」
「でも縄は解いてくれなかった。言ったのに。言う事を聞かないと……」
ぬぬはじりじりと帝に近づきながら、指折り数えつつ言う。
「俺は“今すぐ自分で縄を抜けて”、“誉を無理やり部屋に連れて帰った挙句”……ここまではやった。
あと一つは?」
「お、お仕置きを……倍に……」
震える声でそう答えた帝を、ぬぬは捕まえて膝へ乗せる。
「正解。それが今からやる事」
「や、やめろ!!嫌だ!!」
「“行ったら怒る、お仕置きもする”とも言った。でも、誉は飛び出した。
いつもながら、全然俺の言う事聞かない悪い子」
浴衣の裾を捲ると、誉はいつも以上に喚いて暴れる。
「やっ、だぁぁっ!!倍って何だ!?何の倍だ!?
ふ、ふざけるな!!痛いのは……!!」
「誉?防音大丈夫?」
「っ……!!離せ!!離せぇぇ!!」
“防音”術はしっかり施しつつも、嫌がって暴れ回る帝を、ぬぬは一旦膝から下ろす。
「……仕方ない。もう一回だけ誉が俺の言う事聞く、良い子かどうか見極める」
「!?よ、よし!やらせてやる!!」
少し嬉しそうに意気込む帝。
その帝へ、ぬぬは真顔で言った。
「“いい子にしますから、お仕置きは半分で許してください”」
「……は?」
「“いい子にしますから、お仕置きは半分で許してください”って、ちゃんと俺にお願いできたら、そうしてあげる」
「…………」
帝はポカンとした後、みるみる不機嫌そうになって……
涙目+赤面+怒り顔のコンボで震えながらぬぬを睨みつけた。
「……余を、辱めて楽しいか……!?」
「……楽しいと言うか……その表情はちょっと興奮するかも」
「このっ……!!」
「でも、怒ってもいるから。反省して」
しれっと再び帝を膝の上に乗せたぬぬは、躊躇なく浴衣の裾を捲って、褌一丁の帝尻を叩き始める。

バシィッ!!
「あぁああっ!やめろ!離せぇぇっ!余が何をしたぁぁっ!!」
ビシッ!バシッ!バシッ!!
暴れて抵抗する帝のお尻を叩きながら、ぬぬがいつも通り冷静に言う。
「麿と桜太郎の邪魔をしようとした」
「してないぃっ!!結局部屋には入らなかっただろうがぁぁッ!!」
「……うん。未遂で終わって本当に良かった。
せっかくの旅行で、きっと彼ら初めての性交の思い出なのに台無しにしたら可哀想。
最悪の事態は免れたけど……」
バシィッ!!
「うぁあああっ!!痛い!やめろぉぉっ!!」
「やめない。聞いて。
“邪魔をしようとした”とした事自体が問題。俺があんなに止めたのに。
それを振り切って行ったって事は……お仕置きされるのも厭わないって、そういう覚悟だったんじゃないの?」
「そんなわけあるかぁっ!何故余がお前の言うことなど聞かないといけないんだぁぁっ!!
ぶざけおって!ふざけおってぇぇっ!!」
「別にふざけてない!!誉!素直に反省しないなら俺本気で怒るけど!?」
バシッ!ビシッ!ビシッ!!
「あぁああああんっ!!わぁああん!!ぬぬのくせに怒鳴るなぁぁっ!!」
大声目に叱って手を強めると、帝は泣き声に近いような悲鳴を上げる。
厳しくしようとすると意固地になっていくようで……
ぬぬは、少しの間、叩く手を弱めて帝を落ち着かせる事にした。
怒鳴るのは諦めて声を和らげる。
「……はぁ。誉の、気持ちは……分かってるつもり。
昔、得られなかった父性や母性を……誉は桜太郎に求めてる……」
「なっ……んっ!!?」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「だからって、誉は桜太郎に執着し過ぎ。
桜太郎が麿と何度体を重ねようとも、どんなに愛し合おうとも……
桜太郎が何か変わってしまう事も、誉から離れていく事も絶対に無い。
だから、邪魔しなくても、悲しまなくていい」
「違う……!!違う違う違う!!勝手を言うな!!余は、桜太郎が気に入ってるだけで……!!
お気に入りを!余のあずかり知らぬところでオモチャにされるのが気に入らないだけだ!!」
「……本当に、そのワガママな理由なら叱り方を変えなきゃいけないけど……」
頬を真っ赤にしてぬぬの言葉を否定した帝に、ぬぬはまたお尻を叩く手を強める。
バシッ!ビシッ!バシィッ!!
「あぁあああっ!!」
「麿は桜太郎を玩具になんかしてない!彼らは本当に愛し合ってる!誉知ってるくせに!!
それに、愛し合う二人の仲を無理に邪魔する事がどれだけ罪深い事か……誉が一番よく知ってるはず!!」
「!?っ……あぁあああああん!!うわぁあああん!!」
「……ごめん。ちょっと嫌な事言った……」
泣き出した帝を見て、過去の事を引き合いに出した事へ罪悪感を覚えつつ……
ぬぬは帝へのお仕置きを根気よく続けた。
そろそろ赤くなっている帝のお尻を容赦なく叩き続ける。
バシッ!ビシッ!バシッ!!
「誉、桜太郎の事お気に入りなら……大好きなら、麿の事、いい加減認めてあげて!!
過剰に干渉しないであげて!!桜太郎だって、きっと誉の事大好きなのに、
麿との仲を邪魔したら、どうしていいか分からなくて悲しむ!!」
「うわぁああん!痛い!あぁああん!!だってぇぇぇっ!!」
「それに、それに俺だって……」
一瞬、言うのを躊躇った後……ぬぬは珍しく……
「俺だって!こんなだけど、嫉妬だってするし不安にもなるから!!
誉本当は、桜太郎の事、家族とは別の意味で、愛してるんじゃないかって……!」
「っ!?あぁあああん!痛い!痛いバカァァァッ!!」
……本心を熱く暴露したものの、帝の態度が全然変わらないのでスッと真顔になって、
いつものテンションに戻った。そして何事も無かったかのように真っ赤なお尻をお仕置きしていた。
バシッ!バシンッ!バシィッ!!
「……誉は全然いい子にならないし。俺の話、聞いてた?」
「聞いてたぁぁぁッ!バカバカぬぬのバカァアアアアッ!!」
帝の方も何やら、響くものが無かったわけではない様で……
ボロボロと痛みに涙を流しながらも一生懸命言葉を紡ぐ。
「桜っ、太郎は!気に入ってるけど!恋人になりたいとか、そんなじゃなくて……、
お、お前と!!桜太郎は違うんだァァッ!!
おまっ、余の恋人ペットのくせにそんな事も分からんのかぁぁああああっ!!」
「……そう……
思わぬ反論に、ぬぬは真顔ながらもほんのりと頬を染め、
耳をぴょこんと動かして……若干声が明るくなった。
「安心した。安心したからお仕置きに集中できる。……悪い子の誉様?ごめんなさいは?」
バシッ!ビシィッ!ビシンッ!!
そしてお尻叩きも絶好調になった。
帝は足をバタつかせて泣き喚く。
「うわぁあああん!!ごめんなさぁぁああい!!」
「もうしない?桜太郎の恋路の邪魔をしたら可哀想だって反省した?」
バシッ!バシッ!ビシッ!!
「し、したぁぁっ!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!!もうしないぃぃっ!!」
「これからも上手く態度で表現できそうにないから、この機会に言っておくけど……
俺、結構ヤキモチ焼くし、誉と同じくらい……いや、たぶん誉よりも……」
バシィッ!!
「独占欲、強いから」
「――――!!」
ぬぬの低い声に、帝はゾクゾクと体が火照るような、
体温が下がる様なワケの分からない興奮に苛まれて……
ビシィッ!!バシッ!バシィッ!!
直後、またお尻を叩かれまくって泣き叫んだ。
「あぁああああっ!分かった!分かったぁぁッ!!うわぁああん!ごめんなさぁぁあい!!」
「……泣いている誉を、もっともっと独り占めしたい気分……」
「やめてぇぇっ!!ごめんなさい!ごめんなさいいい子になったぁぁっ!!」
「……期待しとく
「わぁああああん!!」
結局はぬぬもいつものテンションでもうしばらくだけお仕置きして、帝を許した。
膝から下ろされた帝はぬぬに泣きつくだけ泣きついて……
落ち着いたらまた強気に戻ってぬぬの手足を前回より頑丈に縛り上げ、さっさと眠ってしまった。


――翌日。


帝は起きてすぐ、桜太郎に突撃する。
「桜太郎!!あぁ桜太郎!!お前!!麿とまぐわったのか!?」
「えっ、ちょっと……!!」
髪を梳かしていた桜太郎は掴みかかられた衝撃で櫛を落として赤面したけれど、
帝の泣きそうな、切羽詰った顔を見て、困ったように笑う。
「……なんて顔で聞くんですか……途中、までは。最後までは頑張れませんでした」
「……そ、そうか……」
「私が麿さんと繋がってしまうと……帝さん、お辛いですか?」
桜太郎が悲しげにそう尋ねると、帝も悲しげにふて腐れて顔を下気味に逸らす。
「……べ、別に……だがまぁ、お主は麿にくれてやるには惜しい男だぞ?」
「私なんかを惜しまなくていいじゃないですか。帝さんにはもっといい男がいるでしょう?」
「は?」
ポカンとする帝に、桜太郎は胸の前で手を重ねて、幸せそうに言う。
「愛する相手と床を共にする事が、あんなに気持ちが良くて胸躍る事だとは知りませんでした……。
ココノ姫とススキ達が病みつきになるのも、少しだけ分かる気がします。……にしても、あの子達は度が過ぎますが……。
帝さんも、昨日はぬぬと……そんな幸せな時間を過ごしました?」
思わぬ質問をされて、今度は逆に帝の方が顔を赤くする。
「っ、バカを言うな!あのペットは縛り上げて床に転がしてやったわ!」
「そうなんですか?帝さんもてっきりお楽しみかと……。
“恋人”になった分、今までとも心持が違うでしょうし、これからが楽しみですね?」
ニッコリと笑う桜太郎。
その笑顔を見ていた帝は、何だか不思議と心が温かく、明るくなってくるのを感じる。
なので、自然と不思議そうな顔で、言葉が零れ落ちる。
「…………桜太郎、本当に嬉しそうだな……」
「そ、そうですか!?お恥ずかしい……!あまりはしゃがないようにしないと……」
慌ててペタペタと顔を触って、表情を引き締めようと桜太郎が慌てていた時、
帝はもうすでに、ご機嫌に笑って……
「……ま、余としては、どんどんお主の色香が出てきてくれた方が、愛で甲斐も上がると言うもの
麿にはせいぜい期待するとしよう♪」
「へ、変な期待はやめてください!!」
いつものように軽口が叩けるようになっていた。
本当に、帝にとっても不思議な一瞬での心境の変化で……
そんな中、恋心姫が起きてくる。
「おはようございます!!……?あれ!桜太郎お花の匂いがします!いい匂い〜〜!!」
「えっ!!?」
すり寄ってきた恋心姫を反射的に抱きしめて、赤くなって慌てる桜太郎。
帝も真似をして桜太郎にすり寄ろうとする。
「ほう?どれどれ余にも確かめさせてくれ」
「ちょっ、帝さんはダメです!!こら!」
「何だ、姫だけ贔屓か〜〜?」
桜太郎が必死で帝を遠ざけている中、恋心姫が余計に桜太郎に甘えていて……
「煤鬼は?煤鬼もいいでしょう?」
「す、ススキもダメです!!」
「え――っ!煤鬼にもお花の匂い教えてあげたいです〜〜っ!!」
「ダメったらダメ!!」
あっちこっちに対応しててんやわんやしている桜太郎を見て、
麿がビックリしたり、煤鬼が笑っていたり、ぬぬが優しく見守っていたり……

今日もほのぼのな妖怪御殿のメンバーだった。


【おまけ】

帝とぬぬの部屋(in旅館)

ぬぬ「……誉、桜太郎と上手く話せた?」
帝 「……昨日の夜、お前を縛った事を少し後悔した……」
ぬぬ「えっ……」
帝 「冗談に決まっておるだろうがバ〜〜カ!」 ザブトンナゲー
ぬぬ「えっ……!?」


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【作品番号】youkaisin18

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