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妖怪御殿のとある一日 引っ越し後15 |
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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ここもすっかりカップル御殿! 妖怪達の愛を見守る男!怪研究家兼、妖怪の麿拙者麿だよ! 今日は帝さんとぬぬ君がデートに出かけるみたいで、 帝さんが桜太郎君に着替えを手伝ってもらってるみたい! 僕?僕は当然のごとく部屋を追い出されました!! ……でも、今日は桜太郎君と帝さんを二人きりにしてもそんなに心配じゃないんだ。 だって帝さん、珍しくソワソワして緊張してそうだったから! きっとぬぬ君とのデートの事で頭がいっぱいなんだよね! ぬぬ君はぬぬ君で着替えてるみたいで、もしかしたらぬぬ君の初違う服が見られるかも! 僕もそっちにお手伝いに行っちゃおうかな! 二人のデート、上手くいくといいなぁ! ****************** 麿と桜太郎の部屋では、桜太郎が帝に着物を着せ終わったようで、 帝を見上げてにっこりとほほ笑む。 「はい。終わりましたよ」 「さ、桜太郎……余は変ではないか?似合ってるか?」 「貴方がそんな事を言うなんて、意外ですね…… “自分は何を着ても似合う”と自信を持ってるタイプだと思っていました♪」 「こら!余をからかうと後が怖いぞ?!」 「ふふ、ごめんなさい。大丈夫。すごく華やかだし色っぽいし、良くお似合いですよ。 ぬぬもきっとビックリしますね」 「そ、そうか……」 頬を赤らめながら視線を彷徨わせる帝を、桜太郎が微笑ましく見守っていた。 一方、恋心姫と煤鬼の部屋では、ぬぬが白地の上品な着物を着たり、角に装飾を付けたりおめかししていた…… と、いうかさせられていた。 ぬぬはまじまじと鏡に映る自分の姿を見つめて、「何だか、新鮮……」と、不思議そうにしていて、 ぬぬおめかし隊の主導の恋心姫は嬉しそうに満足げに、煤鬼や麿も感心しつつ笑顔で見守っていた。 「バッチリです!カッコいいですよぬぬ!やっぱりデートなんだからおめかししないと!」 「すごいなぁ!ガラッと雰囲気が変わった!ぬぬ、似合ってるぞ!」 「本当!男前度上がったよね!(わぁぁこれはレアだなぁ〜〜!!)」 「あ、ありがとう皆……」 照れくさそうに少し微笑むぬぬに、恋心姫が皆を代表して応援の言葉をかけた。 「ぬぬ!デート頑張ってください!! 今日のぬぬなら、帝のハートはガッチリ掴めるはずですよ!」 「頑張る!!」 ぬぬは無表情ながらキリッと親指を立てて、皆もそれにサムズアップを返す。 こうして、同じ場所からデートに出発ながらも、帝とぬぬの二人がこの日初めて顔を合わせる。 ――のだが。 「誉……!!すごい!綺麗……!!むしろ神々しい……!!」 とても驚いて、頬を赤らめて呆然とするぬぬ。 デートの為におめかしした恋人に対する反応としては上々だった。 一方の帝は…… 「…………」 「ほ、誉……??どうした?俺、やっぱり変だろうか??」 「…………」 「誉……??誉??もしかして、緊張してる?誉〜〜??」 一言も声を発せず、顔を真っ赤にして硬直している帝の目の前で、ぬぬが手を振ってみる。 すると、ビクンと反応した帝は…… 「うわぁああああん!!出かけるのやめるぅううううっ!!」 半泣きで叫びながら家の中へ走り去ってしまった。 「えぇえええええ!!?待って誉ぇええええっ!!」 ぬぬも慌てて追いかけた。 その後。 例のごとく空間封鎖能力を発動しつつ部屋に引きこもってしまった帝を、 ぬぬが部屋の外から困り果てながら説得していた。 「誉、機嫌直して……!俺の恰好が気に入らなかったなら、着替えて来るから……」 「うるさい!!お前の服装などどうでもよいわ!!余はもう部屋から出んからな!!」 「で、でも俺……今日のデート楽しみにしてて……」 「喚くな!もう下がれ!!失せろ!!」 「わ、分かった!今日はもうデートじゃなくていいから、一緒に散歩に出よう! 誉、せっかく綺麗な格好なのに、出かけないなんてもったいない!!」 「うるさいうるさい!!早うどっかへ行ってしまえ!お前が何を喚こうと! 余は今日は引き籠ると決めたんだ!!」 「誉……」 ぬぬは悲しそうな表情をして、ため息をついて言った。 「……分かった……。デート、台無しにしてごめん。着替えて桜太郎の手伝いでもしてくる。 誉は好きな事してゆっくり過ごして……ご飯の時には機嫌直して出てきて?」 「…………」 そう言い残したぬぬが、くるりと踵を返す…… その気配に、部屋の中にいた帝は慌て気味に障子戸に縋り付いて、グッと何かを堪えるように静止して。 しかし、その瞬間、 ガタンッ!! 「!!?」 勢いよく障子戸が開く。 バランスを崩して床に倒れかけた帝が驚いて呆然と見上げると、戸を開け放ったぬぬはほんのり微笑んで言った。 「……やっぱり。誉のこの特技、誉の心理状態に依存してる。 ちょっと誉の気が緩めば、簡単に封鎖は破れる……と、予想してたけど正しかった」 「あ……おまっ……!!」 帝が慌ててぬぬの方へ手をかざすけれど、ぬぬがその手を取る様に帝に体を寄せる。 「ダメ。部屋に入ったからもう無駄。誉、何で怒ってる?……というか、怒ってる? どうして急にデートする気が無くなったか教えて?」 「ひっ!?よ、寄るなそんな格好で!!」 「俺の服装はどうでもいいんじゃなかった?」 ぬぬに抱き寄せられている状態の帝は顔を真っ赤にしてぎゅっと目を瞑りながら喚く。 「う、うるさい!!どうでもいい!!だっ、誰だお前にそんな服を着せたバカは!!」 「……恋心姫が張り切ってくれて、煤鬼や麿が手伝ってくれた。誉とのデート、応援してくれた。バカ呼ばわりは良くない」 「余の、許可も、無く、勝手な、真似を……!!あいつらタダではおかん……!!」 「誉……皆に当たるのはダメ。今日はどうしたの誉?何で機嫌悪いか教えて?」 「しつこい!!お前に話すことなど無い!!離れろ!!余はあ奴らに話が!!」 「誉ぇ。あんまりワガママすると……」 ぬぬは呆れぎみに叱ろうとするけれど、誉は相変わらず怒って喚いて、ぬぬの服を乱暴に引っ張っていた。 「こんな服!こんな服!!お前ごと燃やしてやる!!」 「……分かったいい事考えた。“おうちデート”ってのがあるらしいから今日はそれにしよう。 “おうちでお仕置きデート”……誉のおかげですっごくマニアックなデートプランになった。複雑」 「なっ、何言って……!!」 「……でも、こんな綺麗な誉をお仕置きして泣かせられるなんて、興奮するかも…… ![]() 「へ、変態!!」 「ごめん。そこだけは諦めて」 「開き直るなぁああっ!!や、やめろ!やだぁぁっ!!」 嫌がって抵抗する帝を膝に乗せて、その美しい着物の裾を捲ったぬぬがお尻に手を振り下ろす。 ぺしっ! 「えっ……!!?」 その弱弱しい一打に、帝は驚いて拍子抜けしたような声を出す。 しかし、ぬぬの方はいつもと変わらない様子で帝を叱っていた。 「誉、もうワガママ言わない?皆に当たらない?」 「……?……??(な、何だ?やけに痛くない……)」 「返事は?もっとお尻叩かれたい?」 ぺちっ!ぺちっ!! また、弱い平手で叩かれ続ける帝。 痛みに意識が取られない分、“お尻を叩かれている”という 今の状況がハッキリと意識できてしまって、帝は顔を赤くしながら声を震わせる。 「や、やめろ!!離せ……!!」 「全然反省してない……」 ぺしっ!ぴちっ! 「お、おい!!」 「何?」 帝は思わず、このワケの分からない状況をぬぬに問い詰めようと声を上げたが、 “今日は打ち方が弱い”なんて言ったら強く叩かれるかもしれない。 それもそれで嫌な事に気付いて、何も言えなくなってしまった。 言いたかった言葉を飲み込んで濁す。 「な、何でも無い……!!」 「そう。ちゃんと反省するまで泣いても許さないから」 ぱしっ!ぺしっ!ぺしっ! 「んっ!うぅっ……!!や、やめっ……!!」 ぬぬの態度だけがいつも通りなので、帝は弱く叩かれながらだんだん混乱してくる。 足りない痛みの代わりに羞恥心だけがどんどん増幅させられて、自然と息も上がってきた。 「あっ、はぁっ……!!い、やだ……!!」 自然と漏れる声がまるで喘ぎ声のようになってしまう。 それに、自分で気づいてしまう。 帝はますます顔を赤くして苦しげにぬぬに訴える。 「やめろ……!ぬぬ!こん、なっ……!!」 すると。 「誉?」 「んぁっ……!?」 「お仕置きなのに興奮しちゃダメ ![]() 「!!?」 ぬぬに言われたのはまさかの一言で。 一気に冷静に、というか目が覚めるように恥ずかしくなった帝が叫ぶ。 「興奮してるわけないだろうがド変態がぁぁ!いい加減にしろぉぉっ!!」 「……いい加減にするのは誉の方」 バシィッ!! 「ひっ!!?」 ビシッ!バシッ!バシィッ!! 急に、強く叩かれ始めて帝は驚いた。 と、同時に怖くもなった。(また、いつもみたいにたくさん痛くされて泣かされてしまう)と、 今までお仕置きされた記憶が警報を鳴らす。 なので慌てて謝りはじめる。 「あっ!あぁっ!!ごめんなさい!ごめんなさい!もうワガママ言わないから……!! あ奴らに乱暴もしない!いい、子に……!!」 「いい子する?」 バシッ!! 「する!するから……許してくれ!!ごめんなさい!!」 「分かった。許してあげる。でも最後に聞かせて。何で今日は急に機嫌悪くしたの?」 バシィッ!! 「うぁああっ!お、お前が……!!」 帝的には本音は言いたく無かったけれど、“お仕置きされながら”だと黙っているわけにはいかない。 恥ずかしくなりながらも途切れ途切れに言葉を紡ぐ。 「お前が、いつもと、違うから……ビックリして……」 「この格好、気に入らなかった?」 「っ……」 「……気に入ってくれた?」 ぬぬがいくら色々気を使って言葉を引き出そうとしてくれても、 どうしても、本当のところが言えない帝が、小さな声で返す返事。 「……嫌いじゃ、ない……」 「ありがとう。皆の言うとおり着飾ってみてよかった。誉……」 それで、ぬぬも許してくれたようで、帝を抱き起して穏やかな表情で尋ねる。 「今からでもデート、してくれる?せっかくのこの格好で一緒に出かけたい」 「仕方、ないな……少しだけなら……あ、あまり余の視界に入るなよ!!」 「いや!むしろずっと見てたら慣れると思う!だから誉、今日はなるべく俺を見て!」 「だ、黙れ!張り切るな!!その辺を少し歩くだけだからな!!?」 「十分!嬉しい!!」 「……単純な奴め……」 ぬぬから視線を逸らし気味な帝が、小さく呟く。 立ち上がったぬぬが、帝に手を差し伸べる。 「じゃあ、行こう誉」 「……な、何だその、手は……」 「手を繋ごう」 「……っ……」 帝が恐る恐るぬぬの手を取って、二人はやっとデートに出かける事が出来た。 その後、二人は妖怪御殿の周りの散歩コースを歩いて、 咲いている花を愛でながらあれこれ話していた。 帝も歩いているうちに緊張がほぐれたらしく、また、ぬぬの見た目にも慣れて来たらしく、 ぬぬと笑いあって楽しそうにしていた。 そして、そこそこ歩いたかなと思ったぬぬが言う。 「綺麗な花もたくさん咲いていたし、楽しかった。そろそろ戻ろうか?」 「…………」 「誉?どうした?」 黙り込んだ帝が急に、手ごろな石に腰掛けてしまう。 「お腹が空いた!!もうここから一歩も動けん!!」 「えっ!?」 「い、言っておくけどワガママじゃないからな!!生理現象だから仕方ない! ぬぬ、桜太郎から菓子をもらって来い!ここで食べてから帰る!! その、仕方ないからお前の分ももらってきて一緒に食べてもいいぞ!」 微妙にソワソワしながらそう言う帝。 この分かりやすいのか分かりにくいのか微妙な愛情表現に、ぬぬは嬉しくなって 照れくさそうなほんのり笑顔で頷く。 「……分かった。誉、好き ![]() 「い、いいからさっさともらってこい!余を餓死させる気か!!」 「仰せのままに誉様 ![]() ぬぬは嬉しそうに妖怪御殿におやつを取りに戻った。 【おまけ】 (帰宅後) 帝 「……ぬぬ、今日の……その、最初は妙に力が無かったじゃないか。お前、調子が悪かったのか?」 ぬぬ「“おうちデート”だから優しくしてみた。恥ずかしそうな誉も、途中で怯える誉も可愛かった ![]() 帝 「……つまり、わざと余を嬲ったのか?」 ぬぬ「!?いや、な、嬲ったと言うか……(しまった……!可愛い誉にテンションが上がって言わなくていい事を……!!)」 帝 「いい度胸だ……恋人ペットの分際で……」 ぬぬ「ほ、誉……?誉、様?あの……」 帝 「今日は服の所為か、なかなかの色男だなぬぬ?余に甚振られるのに相応しいくらいには…… 脱ぐついでに時間もあるし“おうちデート”の続きをしようじゃないか? 余にはお前専用のとっておきのプランがあるぞ ![]() ぬぬ「せ、せっかくの服を汚すのは良くな…………あ……」 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 気に入ったら押してやってください 【作品番号】youkaisin15 TOP>小説>妖怪御殿 戻る 進む |