TOP小説妖怪御殿
戻る 進む
妖怪御殿のとある一日5.5
注:18禁

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

妖怪達の安心ライフを見守る男!覗き魔じゃないよ!
妖怪研究家の麿拙者麿(まろせっしゃまろ)だよ!
そう言えばこの辺は自然が豊かで色んな草花や、食べられそうな実とか、キノコなんかも生えてるんだ!
妖怪研究家じゃなくて、植物研究家もいいかなぁ……ってそんなわけないじゃん!!
今日も元気に妖怪研究しちゃうぞ!!

********************


ここは、ポカポカ陽気な妖怪御殿。
恋心姫(ここのひめ)と煤鬼(すすき)が縁側でひなたぼっこを楽しんでいる。
煤鬼の膝に座っている恋心姫は気持ちよさそうに伸びをして空を眺めていた。
「う〜ん!いい天気ですね煤鬼!」
「そうだな。こんな日は……外で交わりたくないか?」
「!?」
唐突に、そう誘われて後ろから体をまさぐられた恋心姫は驚いた。
顔を赤らめて煤鬼の手を軽く抑える。
「す、煤鬼……ダメですよ!」
恋心姫の制止を無視する煤鬼の手つきはだんだん大胆になって、
着物の中に滑り込んでくる始末。恋心姫は緩く気持ち良くなってきて、
それでも誘いには乗らずに煤鬼を宥めた。
「ぁ、ん…… まだ、お日さまも、出てるし……お外でなんて、っ、桜太郎(さくたろう)に、怒られますよ……!」
「桜太郎なんて怖いものか……俺がやっつけてやるから……」
「煤鬼、はぁっ、ダメ……ダメですってば……!」
「恋心姫だって、ここまできて引けんだろ?ここでやめたら……俺なら気が狂う」
「すす、き……!大げさでしょう!?もう!」
ペシッ!
「おっ??」
恋心姫が煤鬼の手を思い切り叩くと煤鬼は驚いて動きを止め、
その隙に恋心姫はぐるりと体を回転させて、向かい合った煤鬼を睨みつけた。
「ダメです!聞き分けのない事ばかりすると、お仕置きしますよ!」
「ははっ!尻でも叩くのか?恐ろしいな!」
「煤鬼を動けなくして、中途半端に気持ち良くさせて放置します!」
「……もうしない。許してくれ」
顔を赤らめて、両手を上げて降参する煤鬼。
恋心姫は笑った。
「のんびりしてたらこうなるんですから!お散歩に行きますか?」
「そうだな!」
2人は散歩に出かける事にして、楽しく過ごした。
いつも以上に煤鬼がベタベタしてくる気がしたけれど、恋心姫は特に気にしなかった。


けれど、その日の夕方。
皆で夕飯を食べている時に事件は起きた。
恋心姫が帝(みかど)に無邪気に話をしていて、
「それで、煤鬼と一緒に数えたら12個あったんです!」
「そうかそうか。楽しそうで良かったな」
「今度は赤色を探します!ね、煤鬼!」
「…………」
隣に座る煤鬼に話を振るけど、黙ってぼんやりしているので、
心配そうに覗き込んだ。
「煤鬼?どうしたんですか?」
「そう言えば、食事が減ってませんね……具合が悪いんですか?」
桜太郎も心配そうに声をかける。
すると、煤鬼の手から箸が滑り落ち、
熱っぽい視線を恋心姫に向けて、手を伸ばしつつ言った。
「恋心姫……寝所へ行こう!」
「えっ!?」
「なぁ、もう、日が落ちたし……構わんだろ?」
「えっ、妾まだ食べて終わってなっ、んんっ!!?」
唐突に、煤鬼が恋心姫を引き寄せて強引なキス。
(主に桜太郎が)凍りつく食卓。
慌てて顔を離した恋心姫が叫ぶ。
「っ、ぁ、すっ、煤鬼!!お口の中凄い熱いですよ!?お熱があるんですか!?」
「あぁ……そう言えばここが熱くてたまらん……
が、煤鬼は妖艶な顔で舌なめずりして、下半身の着物を肌蹴て自分の性器を下着から出してくるだけ。
逞しい怒張に恋心姫もドキッとしてしまったがそれどころでもなく……
「煤鬼!皆が!皆が見てる!!」
「解熱してくれ恋心姫……!!」
他の家族がいると言うのに、煤鬼が我を忘れたように恋心姫に覆いかぶさってくる。
ここまでくると桜太郎が立ち上がって駆け寄ったところ
「なっ、何してるんですかこのド変態妖怪がぁあああああっ!!」
「うるさい!!邪魔を、するな!!」
思い切り振るった煤鬼の腕がヒットして弾かれる。
「痛っ!!」
「桜太郎!!」
恋心姫が心配して叫んで、尻餅を付いた桜太郎にはぬぬが駆け寄って。
ちょっとした修羅場出来上がったところで、帝が呆れ顔でゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫か?じっとしておれ桜太郎」
帝が近づくのにも気が付かず、煤鬼は恋心姫にくっつく事に夢中になっている。
くっつかれている恋心姫は足をバタつかせるくらいしか抵抗が出来ない。
「はぁっ、恋心姫……!!」
「煤鬼、変ですよ!お熱があるなら、帝か桜太郎に診てもらわないとぉ!」
「要らん要らん!恋心姫さえ、いれば……!!」
「おいこら、そこまでだぞ?」
パシッ!
「あっ……!」
帝が煤鬼の背を軽く叩いたと思ったら煤鬼の動きが止まる。
どうやら背中に“動きを封じるお札(鬼用)”を貼られて動けなくなってしまったようだ。
「うぅ……!くそ!剥がせ卑怯者……!!」
「煤鬼?また悪い物でも食べたか?」
「恋心姫……!!」
「これ。話を聞け」
帝が煤鬼を恋心姫から引きはがして、煤鬼は仰向けに寝転がった。
恋心姫も帝が助け起こして。もう一度、煤鬼に尋ねる。
「お主、外で具合が悪くなる事をしたか?」
「知るか!」
「ん〜〜困った奴だな……姫?ちょっと聞いてやってくれんか?」
「煤鬼……!!」
今度は恋心姫が煤鬼に覆いかぶさるように、胸に縋り付いて心配そうに尋ねる。
「大事な事なんですよ!ちゃんと思い出してください!」
「そ、そんな事より、続きを……」
「〜〜〜〜もうっ!!」
恋心姫は怒って立ち上がると、煤鬼の股間を思い切り踏み倒し、
足を軽く動かしてギュウギュウと踏み込みながら怒鳴りつけた。
「恥ずかしい子ですね本当に!!何も我慢できないんですか!?
我慢の利かない悪いおちんちんはこのまま、踏み潰してやりましょうか!?」
「うぁっ!?や、やめっ……!!」
「言いなさい!!妾の見てないところで変な事してませんか!?」
「あ、あっ……言う、から!!」
恋心姫にされるがまま、真っ赤になって声を震わせる煤鬼。
帝がのんびりと恋心姫に言う。
「……姫、煤鬼から足を退けてやらんと、桜太郎が卒倒してるぞ?」
気が付けば桜太郎が地面に突っ伏して、ぬぬがその背中をさすっている。
恋心姫は踏みつけるのをやめ、少し落ち着いたらしい煤鬼はこんな事を自白する。
「……そ、そういえば昨日……麿の家に行った帰りに、道にキノコが生えてて……
腹が減ってたから食った」
「何やってるんですか!明らかにそれが原因じゃないですか!」
「さて、次はキノコ図鑑がいるか……」
恋心姫がまた煤鬼に怒っている間に、帝はぬぬに“キノコ図鑑”を取って来させる。
それをパラパラめくりながら煤鬼の様子と照らし合わせているようだ。
「どれどれ……症状的には、発熱と……著しい性的興奮、あるいは性欲増大……ふふっ、
そんなに全力で勃たせて苦しかろう?けど相変わらず、惚れ惚れする様だな。同じ男としては羨ましい限りだ」
出しっぱなしになっている煤鬼の股間を見て、
帝がからかうようにそう言うと、煤鬼と恋心姫は顔を真っ赤にして不機嫌になる。
「じっ、ジロジロ見るな!」
「ももも、もう、隠しますからねッ!!桜太郎が怖がるから!!」
「それは残念だな」
帝から隠す様に、恋心姫がせっせと煤鬼の服を整える。
ちなみに桜太郎はひたすらうずくまりながら心の中で叫んでいた。
(別に怖くない……怖くないけど何なんですかこの空間!!)

そうこうしているうちに、帝がそれっぽいキノコを発見したらしい。
図鑑を開いて煤鬼に見せながら尋ねた。
「煤鬼、これか?」
「……そんな、感じだったかもしれん」
「ふむ……」
図鑑をじっと読んでいる帝に、恋心姫が心配そうに尋ねる。
「帝!何て書いてあるんですか!?煤鬼、治りますか!?」
「大丈夫。これ以上酷い症状は引き起こさんし、一晩経てば自然と治るらしい
……ただ、煤鬼にはこのまま一晩過ごしてもらおうか」
「何だと!?」
目を見開く煤鬼に、帝は厳しい表情で言った。
「再三、桜太郎が道端の物を食べるなと注意したのに、この体たらく。
夕食もゆっくり食べられなかったし、少しは反省しろ。なぁ姫?」
「こ、恋心姫ぇ……帝に何とか言ってくれ!!」
「煤鬼……」
帝と煤鬼から声をかけられた恋心姫は、また煤鬼の胸に縋り付いて……
怒ったように煤鬼の頬をペシペシ叩いていた。
「貴方は!どうして!やるなっていう事をやるんですか!!
そのへんの物をお口に入れるなんて!頭が悪すぎます!!」
ぺちっ!ぺちんっ!ぺしっ!
「いっ、うっ!!で、でも、動けないと辛いんだ……!!」
「そうですね辛いでしょうね〜〜反省しなさい!!
妾が明日の朝まで見張ってますけど、絶対、気持ちいい事はしてあげませんから!」
「そんなっ……!!」
煤鬼の弱気な顔を見ても、恋心姫の決意は固かったらしい。
帝もいつもの悠々とした笑みを浮かべた。
「決まりだな。桜太郎大丈夫か?
姫はいくらねだられても、明日の朝までお札を剥がすなよ?」
「分かりました!」
「では皆、夕飯の続きを食べるとするか」
帝の一言で何事も無かったかのように夕食タイムが再開されて、動けない煤鬼は思わず叫ぶ。
「おっ、俺は!?」
「お野菜だけ、お口に放り込んであげますよ」
「うぅう……」
珍しく恋心姫に冷たくあしらわれて、しゅんとしながら唸る事しかできない煤鬼だった。



その後、夕食は終わって片づけられ、部屋には煤鬼と恋心姫の二人だけ。
手だけ握ってくれている恋心姫は怒っているのか、だんまりしているが、
煤鬼はどうしてもソワソワとおねだりしてしまう。
「なぁ、恋心姫……せめて口付けだけでも……」
「妾、怒ってるんですよ!?」
「……すまん……」
「心配、させないでください!!
治ったら……土下座させてやりますから!!
それでっ、それでいっぱい、お尻ぺんぺんですからね!」
「うぅ、すまん……」
結局、話しかけても怒られるのでションボリして謝るしかなく……
煤鬼は大人しく黙っていようと思ったけれど、
どうしても恋心姫の傍にいる事と、キノコの症状で下半身が切なくなる。
早く朝にならないかと、じれったく思いながらも我慢して我慢して……
我慢できずに、恋心姫に聞いてみた。
「なぁ、い、今……何時間ぐらい経った?6時間、くらいか?」
「残念ながら1時間も経ってません」
「!?」
あまりの体感と実際の時間差に煤鬼は愕然とする。
これでは朝になるまでにどれほどの苦しみを味わえばいいのか……
そう考えたら泣けてきた。
「うっ、うぅっ……!!」
「もう、泣かないの!眠ってしまえばいいですよ。子守唄を歌ってあげますから」
少し声を優しく和らげて、恋心姫は歌い出す。
「♪ねんねんころり〜〜煤鬼は良い子だ〜〜ねんねこね〜
ねんねんころり〜〜ねんねんこ〜〜♪」
(何だその歌……)
そう思いつつも煤鬼は子守唄(?)で眠ってしまった。




恋心姫がホッとした様子で部屋から出ると、部屋の前にぬぬが座っていて声をかけられた。
「煤鬼、寝たか?」
「寝ました」
「そうか、良かった。辛そうだったから。色んな意味で」
「道端のキノコなんて食べるからこうなるんです!いっぱいお仕置きして、二度とさせませんから!」
恋心姫がそう意気込むと、ぬぬは少しためらいがちに言う。
「……庇うわけじゃないけど、俺も、煤鬼もきっと、
昔は食べられる物を適当に探して食べる生活を送ってた。
もしそれで具合が悪くなっても、心配してくれる人なんていなくて、
気が付けば治って。それでまた適当に食べる生活だった。
食べられそうだと思った物を食べる事に抵抗が無いのは……その名残だろう」
「怒ったら可哀想って事ですか?」
困った顔をする恋心姫に、ぬぬは首を振った。
「違う。今は心配してくれる人がいる。
今度やったらもっと苦しむかもしれない。そうなったら俺も悲しい。
恋心姫が叱れば効くだろうから、叱ってやってほしい」
淡々と、だけれど優しい言葉をかけてくれたぬぬ。
恋心姫はこう返した。
「……ぬぬも拾い食いはダメですよ?具合が悪くなったら、皆悲しいですよ?」
「俺は、帝に叱られたからもうしない」
「そうですか……帝って怒ったら怖そうですもんね」
「怖かった。でも……感謝してる」
ぬぬはそう言って少しだけ微笑んだので、恋心姫も自然と笑みがこぼれる。
そこへ桜太郎がやってきて声をかけた。
「ココノ姫もぬぬも、お疲れ様。もう寝ましょう?」
「……煤鬼と寝たらダメですか?」
恋心姫が上目づかいでそう言うと、桜太郎が笑う。
「じゃあ、お布団持ってきますね?」
「俺が運ぶ」
「ありがとう、ぬぬ」
ぬぬにお礼を言って布団を取りに行こうとした桜太郎を、恋心姫が引き留めた。
「あ!桜太郎!」
「え?」
「後で、相談したい事が……」

恋心姫は布団を敷いてもらって、相談にも乗ってもらい、煤鬼の隣で眠った。



翌日。

「んっ……」
目を覚ました煤鬼。
隣にある恋心姫の寝顔を見て昨日の事を思い出す。
「恋心姫……そうか、昨日……」
「んんっ……」
「お?恋心姫も起きるか?」
身じろぎした恋心姫に話しかけると、恋心姫は眠そうに目をこすって、ふわりと唇を開く。
「す……す、き……煤鬼!?」
「お早う」
煤鬼が笑顔で挨拶すると、恋心姫が飛び起きる。
「もう、平気ですか!?」
「あぁ、治ったみたいだ。熱もない感じだし、気分もいい」
「良かったぁぁ!!うわぁあああん煤鬼ぃぃぃっ!」
「恋心姫……心配をかけてすまなかったな……」
泣きながら抱き付いてくる恋心姫を愛おしく思う煤鬼。
ところが……
「……それが、あやまる態度ですか?」
「え!?」
「昨日、妾が言った事は覚えてますよね?」
ペリ。と、背中に回された手に乱暴にお札を剥がされて。
煤鬼は豹変した恋心姫に気圧されながらも、
「あ、あぁ……ええと……ごめんなさい……」
とりあえず“土下座”してみる。
恋心姫は立ち上がって、煤鬼に冷たい視線を向けながらさらに言う。
「煤鬼が、二度とその辺の物を食べてしまわないように、
今からお仕置きしてあげますから。忘れられないくらい!」
「だ、だが!気持ちはとてもありがたいけれど、恋心姫に叩かれても痛くないだろうし!!」
ぺしっ!
顔を上げて慌てる煤鬼の額に再びお札を貼る恋心姫。
そして、着物の中から謎の液体が入った小さな瓶を取り出して言った。
「だから“叩かれた痛みを増やすお薬”をもらいました。さぁ煤鬼、飲んで?」
「!?こっ、恋心姫!頼むそれだけは……」
煤鬼の口元に瓶を開けて近づけると、煤鬼は嫌がって顔を背けた。
けれども恋心姫は慌てる様子もない。
「ダメです。嫌だとは言わせません」
「お、俺は……飲まんぞ……!!」
「だから、嫌だとは言わせませんってば」
恋心姫は着物を脱ぎ捨て……自分の胸からお腹にかけて薬を塗りつけてしまう。
そして、煤鬼に向けて妖艶な笑みを浮かべた。
「これなら、飲んでくれますよね?
「あ、ぁ、酷い……事を……考える……」
「煤鬼がエッチな事ばっかりするから、
妾もこういう事を考え付くようになったんです。さぁ、煤鬼」
恋心姫が煤鬼の頭を抱きしめると、煤鬼は小さく呻いて、恋心姫の体に舌を這わせ始める。
それは薬を舐めている事、飲んでいるのと同じ事。
恋心姫もくすぐったそうに、気持ち良さそうにしながら満足げだ。
「んっ、あっ……!!煤鬼は、本当にっ……はぁっ、仕方ない子ですね……!!
いいですか?お仕置き、されるために……あんっ、それぇ、飲んで、るんですよ……?」
恋心姫にそう言われても、煤鬼は何も言わずに恋心姫を舐め続けた。


ひとしきり、薬の塗ってあるところを色々舐めさせた恋心姫は、脱いだ着物をもう一度着て、
煤鬼の体を布団に押し付けてお尻を突き出させるような格好にさせる。
「恋心姫、やっぱり嫌だ!!やめよう!」
「やめません!今日のは遊びじゃないんですからね!?
今から、本当に煤鬼のお尻をお仕置きするんですから!全部出して!」
「恋心姫、頼む、後生だからぁ……!!」
嫌がる煤鬼の祈るような声を無視して、着物の裾を捲って下着を下ろして、
恋心姫は煤鬼の丸出しのお尻を平手で打った。
ピシッ!パシッ!パシンッ!
「うぁあっ!?あぁっ!!いっ……!!」
薬の効果は抜群のようで、少し叩いただけでも煤鬼は大げさに悲鳴を上げる。
痛がる様子は可哀想に思ったけれども、恋心姫は“お仕置きだから”と、
続けて煤鬼のお尻に平手を振り下ろした。
パシッ!パシッ!ピシッ!
「ひっ、痛い!痛い!!」
「良かったですね煤鬼!妾の非力でもいっぱい反省できますね!」
「あ、や、やめてくれ!やめて!!」
「やめませんってば!!妾、あまり煤鬼に可哀想な事はしたくありませんが!お仕置きは別です!」
パシンッ!!
「うあああぁっ!!」
強めに叩けばそれこそ、誰か駆けつけて来そうな大声で叫んで、
抵抗できない体の代わりのように頭を振って嫌がる煤鬼。
「い゛ぃっ!!あっ、あぁっ!」
「泣いて謝るくらい、いっぱい叩いてあげますから!いっぱい反省してください!」
ピシッ!パシッ!!
「うわぁあああ!嫌だぁぁ!ごめんなさい!
ごめんなさいやめてくれ!反省したから!もうしないからぁ!」
「やめないって言ってるでしょう!?“嫌だ”って何ですか!口先だけ謝っても無駄です!」
「おっ、お願いだから!恋心姫に、尻を叩かれて泣かされるだなんて、そんな……!!あぁあっ!」
「煤鬼だって、妾が悪い事したらお仕置きするでしょう!?おあいこですよ!」
「それと、これとは……!」
「同じです!!妾に叩かれる事を気にしているくらいなら、まだまだ余裕ですね!」
パシィッ!
「ひぁあああっ!!」
反論は叩いて黙らせていく方向で、とにかく容赦がない恋心姫。
煤鬼が頭を布団に擦りつけて、震えていて辛そうでもお尻を叩く手を緩める気配は無かった。
ピシッ!パシッ!ピシッ!
「妾だって怒ったら怖いんですからね!」
「うっ、ぐっ……分かったぁ、ごめんなさぁい!!」
「分かればいいんです!ただ、分かったなら、“嫌だ”とか“やめて”とか言わないんですよ?!」
「あぁあああっ!嫌だぁっ!」
「煤鬼!!」
パシッ!
「ごめんなさぁあい!!」
「もう!煤鬼が我慢弱いのも、決まりごとが苦手なのも知っていますけど!
絶対に守らないといけないところっていうのはあるんです!」
ピシッ!パシッ!パシィッ!!
「うっああああっ!あぁあああっ!うっ、うぅっ!!」
謝り倒して息を荒げている煤鬼のお尻は少し赤くなっていた。
薬の効果で感じている痛みはそれ以上のようで、
大きな悲鳴の合間合間に、弱弱しい声で呻いて、時折足の指がかすかに動く。
恋心姫はそんな煤鬼の様子を見ながらも叱りつけた。
「ワケの分からないものは口に入れないで!分かりましたか!?」
「分かったぁ!ごめんなさい!ごめんなさぁい!!」
「……痛いですか?我慢できない?」
「うぅうう〜〜〜〜っ!!」
ここぞとばかりに、必死で首を縦に振る煤鬼。
恋心姫は大きく手を振り上げて……
「言う事を聞かないとこうなるんです!」
ピシンッ!パシンッ!!
「うわぁああああん!!」
強めに叩いて煤鬼を泣かせていた。
その後も追い詰めるようにガンガンに叩いていく。
ピシッ!パシィッ!パァンッ!!
「ねぇ!!前に桜太郎に同じこと、叱られたんですよね!?何で言われた事忘れてたんですか!?」
「だって、そんなのっ、わぁあああん!!」
「桜太郎の事……皆の事、舐めてるでしょう!?
いざとなったら力のある自分が勝つとか思ってるんでしょう!?ダメですよそういう子は!!」
「うわぁああああん!ごめんなさぁあああい!」
「煤鬼はもっと皆の言う事、しっかり聞かなきゃいけません!
妾の前でだけいい子にしてたってダメなんですよ!?」
「ごめんなさい!ごめんなさい分かったぁああああっ!!」
ピシンッ!パシィッ!!パァンッ!
語気を強めて叱って叩くと、煤鬼はますます泣き喚いて、
なので恋心姫はそろそろ手を止めようかと声をかける。
「皆、昨日は心配してくれたんです!ちゃんとごめんなさいして、お礼を言ってくださいね!
あと桜太郎には暴力した事、あやまってください!」
「するぅ!するからぁ!!もう嫌だぁぁっ!!あぁあああああん!!」
が、ふと思いついた事もとりあえず付け足しておいた。
「ついでに、桜太郎とケンカばっかりしたらダメですよ!?」
「ごめんなさぁあああい!!うわぁああああん!!
いっ、嫌だごめんなさい!もう許してくれ!全部反省するからぁぁぁ!!」
「……約束ですからね?」
恋心姫は今度こそ手を止めて、泣いている煤鬼お尻を撫でてあげるのだった。


そして、落ち着いて体も自由になった煤鬼の方は恋心姫に送り出され、
他のメンバーに謝ったりお礼を言ったりして回らなければならない。
適当に家の中を歩き回りながら見付けた順で、
まずは台所で片づけをしているらしい桜太郎に声をかけた。
「さ、桜太郎……」
「あぁ。大丈夫なんですか?」
桜太郎は呆れ気味だけれども、怒っては無い風なので煤鬼はホッとしながらも謝る。
「もう良くなった。すまなかった……その、お前に手を上げてしまったし」
「別に何ともないですよ。でも私、拾い食いの事は少なくとも5、6回は注意しましたけどね?」
ドスッ!
「え゛っ!?」
桜太郎が突然地面を突いて大きな音を立てるのは、見覚えのある大きめしゃもじ。
煤鬼は冷や汗を垂らして後ずさるしかない。
「ま、待て……薬が、残ってたら……今、そんなもので叩かれたら死んでしまう……」
「死にはしませんよ。最悪でも気絶くらいでしょ?後ろを向いて」
「お前か恋心姫に薬を渡したのは!!鬼め!!」
「鬼は貴方です」
「くそっ……!頼む、許してくれ!何でもするから!!掃除でも、お使いでも何でも!!」
煤鬼が手を合わせて必死で頼み込むと、桜太郎がため息をついてしゃもじが消える。
「……仕方ないですね。ココノ姫にだいぶ絞られたでしょうし、今日のところは。許してあげます。
その代わり、一日しっかり働いてもらいますからね?」
「……あ、ありがとう!!」

と、何とか危機を脱した煤鬼は、次に部屋でくつろいでいるらしい帝に声をかけた。
帝の傍に座りながら。
「帝、昨日はすまなかった」
「もう平気か?」
「治った。ありがとう」
「そうか……姫もだいぶ怒ってただろう?たくさん尻を叩いてもらったか?」
「……そ、そうだな」
恥ずかしくなって、ニコニコしている帝から目を逸らすと、とんでもない事を言われる。
「見せてみろ」
「はぁっ!?ふざけるな!断る!」
とっさの反論。
けれど、帝は笑顔を崩さない。多少、意地悪さはプラスされたけれど。
「……見せられない?さては、姫に叩かれたなんて嘘か?
余がお仕置きしてやらねばならん」
「うっ……このっ……!!」
煤鬼は諦めて、膝立ちになって下着を下ろし、着物の裾を捲る。
ヤケクソ気味に帝にお尻を見せた。
「これでいいだろう!?」
「ほー、姫もやるもんだ……」
少し赤みの残る煤鬼のお尻を帝が何度か撫でると、
煤鬼は恥ずかしそうに、嫌そうに声を絞り出した。
「触、るな……!!」
けれど、帝はお尻を撫で続けながら煤鬼に言う。
「姫にお仕置きされて、うっかり興奮して怒らせなかったか?
お主、ちとマゾっ気があるみたいだからな」
「うるさい!でたらめ言うな!調子に乗ると大声を出すぞ!」
「ふふ……それは困るな。桜太郎と姫に嫌われてしまう」
帝の手が離れると、煤鬼は乱暴に着物を整えて、触られた個所を必死ではたく。
帝はクスクス笑っていた。
「もうやるなよ?」
「分かってる!!」

怒り気味に帝の部屋を飛び出した煤鬼は最後……
庭でぬぬを見つけて声をかけた。遠目から。
「ぬぬ、昨日は……すまなかった。もう、平気だから」
「お疲れ様。俺は何もしないから、近づいてくれてもいい」
「……お前は優しい奴だな!!」
煤鬼はぬぬに駆け寄って、悔しそうに喚く。
「桜太郎も帝も酷い!特にお前の主どうにかしろ!!」
「……悪いけどそれは無理だ。皆、煤鬼を心配してた。俺も」
淡々とそう言われ、煤鬼はしゅんとする。
「……そうだな。俺が、悪かったんだな」
「ドンマイ」
手を差し出してくれたぬぬと握手をして、煤鬼のお詫び行脚は終わり……恋心姫の元へと戻ってきた。
恋心姫が笑顔で駆け寄ってくる。
「お帰りなさい煤鬼!皆にごめんなさいしてきました?」
「行ってきたぞ」
「そうですか!いい子いい子!」
「あぁ……」
(煤鬼の頭に手が届かない)恋心姫にお腹を撫でられつつ、
煤鬼が疲れてぐったりしていると、恋心姫が心配そうに顔を見上げてくる。
「煤鬼、妾もう怒ってませんよ?しょんぼりしないでください。
朝ごはんを食べて、今日もいっぱい遊びましょう!」
「……おう!!」
恋心姫の明るい笑顔につられるように煤鬼も明るく笑って、
この日は恋心姫と一緒に楽しくお手伝いをした煤鬼だった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


気に入ったら押してやってください
【作品番号】youkai5.5

TOP小説
戻る 進む