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☆目論見

爽やかな朝、私立ボルボックス学園のとある教室……
腕に『風紀委員』の腕章がキラリと光る立佳が、教壇の上から高らかに叫んだ。
「ちょっと男子諸君!!最近の人気投票で女子ばっかり人気あって悲しくならないか!!?」
その声に反応したのは、学ラン凛々しい健介と
男子制服ブラウスに女子制服スカートという不思議な格好の小二郎。
その3人にちょっとした間が流れ……
「男子少ねぇ……!!」
と、立佳が教卓に突っ伏した。
そんな立佳を慰めるように、健介が教卓の近くの席に移動して座る。
「年長組は皆教師だからね……」
「でも、女子も同じような人数じゃねーか」
健介の近くの席に小二郎も座った。
貴重な男子グループが集まったところで立佳も顔を上げ、ある疑問を口にする。

「……小二郎ちゃんは男子のくくりでいいの?」
「まぁ、一応な……」
頬を赤らめた仏頂面で目を逸らす小二郎。そんな小二郎に立佳は明るく笑顔を返す。
「オレは大歓迎だけどね。よし、それではオレ達だけで話し合おう!
オレ達も、もっと人気あっていいと思うんだ!!」
バン!と教卓を叩いて、立佳はまるで舞台の役者のように高らかに拳を振り上げて叫んだ。
しかし健介や小二郎の反応は薄い。
健介は苦笑するだけだし、小二郎も呆れたような顔だった。
やる気のない仲間達に、立佳はますます熱くなる。
「何なの二人とも!もっと真剣になろうよ!10票も取れないんだよ!?
教師陣では裏切り者がいるみたいだけど!
オレ達男の子は10票以上取れないっていうこの現実を……」
そこで立佳は健介と目が合う。

浅岡健介 12票(2010年カナ・エルWebアンケート調べ)

気まずそうに微笑む健介。
立佳も微笑む。そしておもむろに懐からアーミーナイフを……

「健介君を黒ミサの生贄にすればきっと男子の人気が……!!」
「俺達友達だよな?!立佳!!」

ナイフを振り上げる立佳と、その手を必死につかんでいる健介という男の友情シーンを
傍で見ていた小二郎が、堪りかねたように口を開く。

「もう!どうでもいいじゃねーか人気投票の結果なんて!
おっ、オレは……好きな人さえ、オレの事を好きでいてくれれば、それで……」

恥ずかしそうにそう言った小二郎の表情はりんごのほっぺにきらめく瞳……すっかり初恋乙女だ。
立佳も思わずナイフを納める。

「……ありがとう小二郎ちゃん。オレも、君だけに愛されたい」
「お前じゃねーよ」
「ドンマイ立佳」

健介のナイスフォローによって立佳の失恋がきれいに決まった。
見れば周りにいたはずの女子は誰もいない寂しい光景。
そんな中、立佳はショックを振り払うようにブンブンと頭を振る。

「……違う、違うんだ。健介君を屠ったり、小二郎ちゃんにフラれるために男子に呼びかけたんじゃないんだ。
皆!オレ達にはこの最終兵器があるんだ!」

バスンッ!

教卓に叩きつけられる一冊のノート。
真っ白な表紙に、可愛らしくデフォルメされた金色の天使の羽が描かれている。

「これは『エンジェルさんノート』!書いた事が本当になる魔法のノートだ!」
「え……そんなバカな……」
「気味悪りぃ……」

困惑する健介と小二郎に、立佳が得意気に説明する。

「ちっちっち……効果はすでに実証済み。
エンジェルさんのお力添えで、食堂のメニューがいきなり『ハンバーグ』になった!」
「あ、そう言えばあったね。本当はオムライスだったのにハンバーグになった日」
「そんなんで信じていいのかぁ……?」
「論より証拠……書いてみようよ!人気を独占する女子に、正義の鉄槌がくだる文章!」

そう言って、『エンジェルさんノート』にスラスラと何かを書きこんでいく立佳に、
小二郎が不安そうに健介を見る。

(い、いいのかな……女子に何かあったら可哀想じゃね?)
(大丈夫じゃないかな?ノートの効果が本当かどうか分からないし、
立佳だってそんなに酷い事は書かないだろうし……)

そんなこんなで、立佳が書きあげた文章は……

閻濡お姉ちゃんがお仕置きされる
遊磨ちゃんがお仕置きされる
琳ちゃんがお仕置きされる
玲姫先生がお仕置きされる
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