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うちの画家先生20







帰って来て部屋に入ると、テレビを見ていた先生がパッと振り向く。
どうやら先生一人の様だったので僕は何気なく言った。
「あれ?健介君はいないんですねー」
「あっ、あのね、健介君……国外逃亡しちゃった……」
「国外逃亡?あはは……どこの国に逃げてっちゃったんですか?」
僕は冗談っぽく聞き返すけど、先生は涙目になって視線を彷徨わせる。
「分かんない……ほとぼりが冷めるまで身を隠すって言ってた……
ねぇ、ほとぼりっていつ冷めると思う?」
「え?えーっと……」
何と答えていいか分からなくて困ってしまった。
先生の様子を見ていると、冗談を言っているわけではなさそうだ。
本当に健介君はどこかに逃げて行ったのかもしれない。
でも、何で?何から逃げているんだろう?
状況が読めなくて言葉を探していると、先生がおずおずと口を開く。
「ね、ねぇ……私、健介君のベッド、タバコで焦がしちゃったんだけど……」
「え?」
「だから、健介君のベッド、タバコで焦げてるの、私がやったんだ……」
先生は恐る恐るという感じで僕の様子を窺っている。
でも僕は正直ポカンとした。だって先生はタバコなんて……
……何だかだんだん分かってきた。

「健介君……またやったんですね……」
「違うってば!!私がやったんだもん!!」
「先生はタバコなんて吸わないでしょう?大体、どうして先生がわざわざ健介君の部屋でタバコを吸うんですか?」
「私だってダバコぐらい吸うよ!アダルト&ダンディーだからね!!実は吸うんだよ!
それで健介君のベッドを焦がしちゃったってわけなんだ!ごめんなさい!健介君は何も悪くないよ?
どうして私が健介君の部屋にいたかは……えっと、えーっと……ご、ご想像にお任せするよ!!」
一生懸命喋っている先生は、健介君を庇ってるとしか思えない。
最後の方は適当な嘘も思いつかなかったみたいだ。
「だからね、健介君に“怒らないから安心してお家に帰ってきていいよ”って、
言った方がいいと思うよ?!ケータイに電話して、言った方がいいと思うよ?!」
僕の手を取って必死でそう言う先生。
よっぽど健介君がいなくなっているのが心配らしくて……
自分が罪を被ってまで健介君を戻ってこさせようとしている、そんな優しい先生に思わず笑ってしまった。
「分かりました。そう電話してみましょうね?」
「う、うん!!」
ホッとしたような先生の頭を撫でて、健介君の携帯電話に電話をしてみる。
しばらく呼び出し音が鳴った後にオドオドした声が聞こえた。
『も、もしもし……?』
「ああ、健介君?今日は晩ごはん要らないの?」
『え?あの……』
動揺しているみたいな健介君に、僕はワザとこう言った。
「ごめんね〜健介くん……先生がタバコで健介君のベッド焦がしちゃったんだって」
『えっ!?何……えっ!?』
「先生、めったにタバコなんて吸わないから失敗しちゃったのかなぁ?
そういう事だから健介君、“怒らないから安心してお家に帰ってきていいよ”?
ああでも、人がお仕置きされてるのは見てて気持ちいいもんじゃないから……
帰ってくる時間ずらした方がいいかもね。
さーて、僕は今から先生の事お仕置きしなきゃダメだから、切るよ?」
『待って!!あの、俺……っ、あのアホジジイ!!
今から帰るから!!夕月さんそのままにしてて!!叩くなよ!?』
言うだけ言ってブツっと電話が切れたので、僕は携帯電話を机に置きつつ
ずっと心配そうにこっちを見ていた先生に言った。
「健介君、帰ってくるみたいですよ?」
「本当!?良かった!健介君帰ってくる!」
「ねー、良かったですね」
帰ってきたらいっぱいお仕置きしてあげなきゃ。


しばらくして、家の扉が勢いよく開いた。
「た、ただいま!!」
健介君の大声に機敏に反応した先生が、嬉しそうに玄関まで走っていって出迎える。
僕もゆっくりとその後に続いた。
「健介君お帰り!!」
「アンタ……このっ……!!」
抱きついてきた先生に何か言いたげに困った顔をしている健介君。
けど、僕の顔を見てビクッと身を震わせる。
失礼だなぁ……そんな怖い顔はしてないと思うけど。
「お帰り〜。さぁ入って入って……リビングで正座ね?」
健介君はため息をついてのろのろと靴を脱いでいた。


その後。
リビングで向かい合って正座している僕と健介君。健介君の隣には先生。
「で、結局ベッド焦がしたのはどっちなの?」
「ハイッ!!」
元気よくぴしっと上がった先生の手を、健介君が慌てて掴んで下ろす。
「このおっさん!!出しゃばるな!兄貴だって分かってるくせにッ……!!」
「でも、健介君には前に同じような事でお仕置きしたし……」
「うっ……」
気まずそうに俯いた健介君のその反応が答えだ。元々分かっていた事だけど。
こうなればやる事は一つ。
「先生?少し席を外していただけますか?」
「う、うん……」
「終わったら呼びますから。健介君の事“いい子いい子”してあげてください」
「うん、分かった……」
申し訳なさそうにしている先生が気の毒だったけど、今は気にしてる場合でも無い。
先生が出て行った後、僕は改めて健介君に向きなおる。
「それで……今度は寝タバコか……火事の原因って寝タバコが多いの知ってる?」
「…………」
「健介!!聞いてる!?」
「っ!!……ごめんなさい……」
ちょっと怒鳴ると明らかにしゅんとして怯えている健介君。
可哀想だったけど、今日は理由が理由だから
きちんと叱らないと……そう思って心を鬼にする。
「ごめんなさいごめんなさいってそればっかり……
どうして君はいつも人の言う事が聞けないの!?この家燃やしたい!?」
「燃やしたくない……」
「じゃあどうして寝タバコしたの!?危ないでしょ!?
前も言ったのに……そのうち本当に火事になるよ!?分かってる!?」
「分かってる!!そんな済んだ事ごちゃごちゃ言われたって……もう早く叩けばいいだろ!?」
……健介君の言葉に耳を疑った。
「何言ってるの?」
「あ……」
「何言ったの今?」
「な、何も……」
さすがに自分の言った事がダメだったと気付いたらしくて、健介君が青くなって頭を振る。
けどもう遅い。僕にはしっかり聞こえてしまった。

これは……やっぱり心を鬼にしないといけないみたい。
だから健介君が言い訳する暇もないくらい、
一気に体をお膝の上に引き倒してズボンも下着も脱がせてしまう。
それで、彼の裸のお尻を思いっきり叩いた。
バシィッ!!
「いっ!!」
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「いっ、嫌っ!!痛い!!痛い!痛いぃっ!!」
健介君が大声で叫んで暴れる。
そうだよね。最初から強めに叩いてるもの。
でも、そうやって暴れるのを上から押さえつけるみたいにバシバシ叩いた。
叩きながら声をかける。
「まぁ、ちょっと悪い事しても適当に叩かれとけば許してくれるかな、みたいな?そういう感じ?」
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「違う!!やっ、やだぁっ!!やぁぁっ!!」
「分かった、ごめん。ごめんね?長ったらしく説教されるくらいなら叩かれた方がマシ、みたいな……
そんなヤワな叩き方してたからいけなかったんだね?」
「違う!!違うぅっ!!痛い!痛いからぁっ!!」
「あー何も分かって無かった僕……ちょっと反省。
健介君がもう悪い事したくないって思うくらい厳しくしないとダメだったね」
バシィッ!!バシッ!バシッ!
“痛い”と叫び続ける弟を無視して思いっきり平手を叩きつける。
健介君には脅かすみたいな言い方になっちゃったけど、本当に今日は厳しくするつもりだ。
だって……危ない事をしておいて、叱られたのにあんな態度だったんだから。
これで簡単に許しちゃいけないよね。

バシィッ!!バシィッ!!バシッ!
「やだぁぁっ!!痛い!ごめんなさい!痛いぃっ!!」
健介君が泣きそうな声で“ごめんなさい”と謝りだした。
彼は痛みが限界に来るとすぐ“ごめんなさい”って許してもらおうとするから
謝り始めはあんまり信用できない。
だからあえて受け流す様にこう返す。
「何がごめんなさい?」
「あぁあっ!寝タバコぉぉっ!!」
「そうだよ。寝タバコ危ないから反省してね」
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「やっ、あああっ!!ごめんなさい!ごめんなさぃぃっ!!」
「何を謝ってるの?」
「寝タバコぉっ!!寝タバコもうしなぃぃっ!!」
「そうそう。寝タバコ危ないからもうしないでね」
「うぁあっ!!ごめんなさい!痛いぃっ!!ごめんなさぃぃっ!!」
そうやって、健介君が謝るのを軽く受け流して何度もお尻を叩き続ける。
お尻が真っ赤になってきて、涙声になってくる。
けどまだ許してあげるわけにはいかない。
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「んんっ、いあぁああっ!ごめんなさいぃっ!!」
「うん。寝タバコしてごめんなさいだね。そんなに何回も言わなくていいよ?」
「ふぁああっ!やぁぁっ!!やめてぇぇっ!!謝ったぁっ!謝ったもん! 」
「謝ったから何!?」
ほら、こんな事が言えちゃうんだから。
僕はここぞとばかりに強く叩く。
バシィッ!!バシンッ!バシンッ!
「いやぁぁっ!!ごめんなさいぃっ!!」
「謝ったら終わりだと思ってる!?それが反省してないって言ってるの!!」
「うわぁぁあああんっ!!」
健介君、泣きだしちゃったみたい。
けど……まだダメ。可哀想だけど、ここからが本番。
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「健介君がもう悪い事したくないって思うくらい厳しくするって言ったよね!?」
「やだぁぁぁっ!ごめんなさい!ごめんなさぁぁぁい!!わぁぁあああん!」
「やだじゃない!僕はね、やるって言ったらやるの!泣いてもダメなんだからね!?」
「ごめんなさいぃっ!やだ許してぇぇぇっ!!痛い!痛いぃぃ!!」
泣きながら謝っている健介君が必死で体を捻ったり、足をばたつかせたりしているから
真っ赤になっているお尻がそのたびに揺れる。
もう成り振り構わずって感じで、暴れ方が本気じみてきたから本当に痛いんだと思う。
僕も手が痛いけど……けど、もう少し頑張ろう。
いつもと同じじゃ、今日の事懲りてもらえないと思うから。
バシィッ!!バシッ!バシッ!
何度も、力を入れて手を振り下ろす。健介君はますます泣き喚いた。
「いだいっ!あぁあああん!許してぇっ!許して下さい!ごめんなさぁぁぁぁい!
うわぁああああん!!お兄ちゃっ……」
バシィッ!!
「うわぁああああん!!」
……危ない。思わず叩いて封じてしまったよ『お兄ちゃん』。
健介君はお仕置きしてる時だけそんな風に呼んでくる。
普段は『兄貴』なのに。僕に許してもらおうと思って可愛こぶってるのかと思ってたけど、
でも最近……必死なだけなのかなとも思うんだよね。
どっちにしても……
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「うぁぁぁっ、あっ、あぁあああああん!!」
(そろそろ反省できたかな……)
ボロボロ泣いている健介君を見て、タイミングを計る。
真っ赤なお尻は痛々しいし、それに健介君を泣かせるのはやっぱり気持ちのいいものじゃない。
「わぁぁぁああん!!うわぁぁぁああん!ごめっ、なさぁぁぁい!」
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「やだぁぁあ!もうしない!しないからぁぁぁっ!痛いぃぃっ!」
泣き声の間の呼吸が苦しそうだ。
さっきからたくさん謝ったし、これだけ叩けば反省してくれたはず……。
「もうしないね!?」
バシッ!
「しないぃっ!絶対しないぃっ!」
「叱られたらふてくされないで、謝って反省するんだよ!?」
バシィッ!!バシッ!バシッ!
「ごめんなさい!あぁっ、ちゃんと、反省しますぅっ!!」
必死で叫ぶ健介君。
だから僕は手を止めた。
「うぅっ……ぁぁあっ……!!」
健介君はすぐには起き上がらなくて、呻くみたいに泣いていた。
彼が呼吸を整えているらしい間、僕はずっと頭を撫でていた。
そうしていたら健介君も落ち着いたみたい。
起き上がって、自分で下着とズボンを穿いていた。
一応「お尻冷やしてあげようか?」って言ったんだけど「い、要らない!」って
真っ赤な顔してて……抱きしめたら、大人しく僕に寄り添ってくれた。
それで「ごめんなさい……」って。
本当に反省してくれたみたいで良かった。


その後、先生も呼んで……張り切って健介君の頭を撫でる先生から
逃げるみたいに身を捩りながら
「やめてください!髪の毛乱れるじゃないですか!!」
って……照れてる健介君が微笑ましかったな。
何だかんだ言って、この二人って仲良しで僕は少し羨ましいと思った。





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【作品番号】US20

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