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今日は休日。俺はいつものように家の掃除をしていた。 リビング、ダイニングを掃除した後は兄貴の部屋を掃除しに行った。 主婦って言うな!ただの家事係だよ!大体、兄貴だって今スーパーに特売品買いに行ってるんだからな!? まぁ……チラシチェックしたのは俺だけど。 ああ、もういい!そんな事より、掃除だ掃除! 兄貴はそんなに部屋を散らけるタイプじゃないから掃除も楽……ん? 俺は見た。ベッドの下から覗く一冊の本。整然とした部屋でこれは目立つ。 場所が場所だけに少し嫌な予感もしたが……好奇心には勝てない。 恐る恐るその書物を引っ張り出してみる。 『週刊・超絶SMパラダイス☆』 「……え?」 ガチで声が出た。 え……えすえむ?兄貴がSM本? 何だか納得いかないが、試しにパラパラ捲ってみる。 いや、無い無い…… え?何コレどうなってんの? ……ちよっ、ここまでやったら…… ダメダメダメ!!怪我する!怪我するってこれ絶対! うわぁあああああ!!誰か止めろよコレ――――――!! 「これは悪魔の書だ!!」 俺は本をブン投げた! くっそ!怖くて今夜眠れないかも!! でも、冷静に考えたら問題は……これが兄貴の本って事だろ!? もう一度、本を引き寄せて睨めっこしながら考察してみる。 どうして兄貴がこんな本を所持してるんだ? 友達に借りた?いや、こんな本を貸すような友達がいるとは思えない……。 そもそも、自分の趣味に合わないと借りないだろうし……でも、兄貴って押しに弱い所あるし……。 いや待てよ……もしかして…… 『僕って実はこんなエグイSM趣味がある事……健介君に言えない…… そうだ!見えるような場所に置いて見つけてもらおう!健介君、僕のアブナイ趣味、認めて!!』 「絶っっ対に認めんッ!!」 妄想の中の兄貴に断言して、拳を本に叩きつける。 あああ!どうしよう!?兄貴がこんなヤバいSM趣味だったら!? やっぱり、傷つけないようにそれとなくカウンセリングを勧めて…… 俺がそんな解決策を考えているところに…… 「け、健介君……そ、その本……」 「あ……!!」 気付けば部屋に驚いた顔の兄貴。スーパーの袋を持ったまま、視線は完全に俺の本に集中していた。 よし!いい機会だ!!このまま話し合いの方向に……!! 俺が口を開きかけた瞬間、兄貴が言った。 「あ、あのね……健介君の……趣味を、とやかく言うつもりはないんだよ? た、ただ……お兄ちゃん、あんまり危ない事はやめて欲しいな……」 思いっきり俺から視線を逸らしながら、明らかにドン引きした顔だった。 え!?えぇええええっ!? 「おい!!その誤魔化し方は最低だぞ!?自分の本のくせに!!」 「え!?ちょっと健介君!!その押し付けは無くない!?自分の本ぐらい自分の部屋で読みなよ!」 「この本俺のだって言うのかよ!?」 「僕のだって言うの!?」 お互い必死だった。 つか、兄貴!いくら自分の趣味が恥ずかしいからって俺のせいにするなんて! 最悪じゃねーか!このまま俺がハードSM趣味って事にされてたまるか!! 「兄貴の部屋にあったんだよ!兄貴の本だろ!?認めろよ!」 「バカ言わないで!そんな本が僕の部屋にあるわけないでしょ!?健介君が持ち込んだんでしょ!?」 「俺がこんな本持ってるわけ無いだろーがぁぁっ!!」 俺が叫んだら、兄貴が俺に近付く。 優しく両肩に手を置いて、悲しみと慈愛に満ちた表情で、穏やかに言う。 「健介君……大丈夫、少しくらい変な趣味でも……恥ずかしがる事ないんだよ? 性癖なんて人それぞれなんだから。お兄ちゃん怒らないよ?ね?もう隠すのやめよう?」 「あ、兄貴……って、違ぁぁぁぁうッ!!説得に回るんじゃね――――っ!! 大人の余裕でごり押しすんな―――――ッ!」 兄貴の手を払いのけて叫ぶ。あっぶねぇぇ!!流されるところだった!こんな手には乗らない! 手強い兄貴め……意地でも自分だって認めない気だな!?こうなったらあの手だ!! 俺は兄貴をビシッと指さして言った。 「じゃんけんだ兄貴!!神は常に正しい方に勝利をもたらすッ!!」 そう……こうなったら『じゃんけん』で決着を付けるしかない! 俺が正しいんだから、神様は俺に勝たせてくるはず!! 兄貴は真剣な顔で頷いた。 「そうだね……正直者がじゃんけんで勝つ……太古からの必然だよね……!」 「そういう事だ。このじゃんけんで勝った方が正しき者……つまり、負けた方がこのSM本の所有者だ!」 いや、この理論は絶対おかしいんだけど……俺達正直、お互いをSM本の所持者にしたくて必死だった。 だから決着さえつけば方法はどうでもいいんです。 俺は掛け声をかける。全身全霊で勝利を祈り、確信しながら。 「いくぞ!じゃんーけーん……」 俺が正しい!じゃんけん強いし! 「「ぽんっ!!」」 おっしゃぁぁあ……あぁっ!?負けた!俺チョキで負けた! 何故!?俺は嘘なんて言ってない……!っていうか、じゃんけん強いのに! 「勝負あったね健介君?神様はちゃ〜んと、正直者を知ってるんだよ」 「う、嘘だ……そんなはずない!そんなはずがない!」 勝ち誇った顔の兄貴に、俺はチョキのままブルブル震える。 で、チョキのまま兄貴を指刺す。 「こんなの無しだろ!だってあの本、俺のじゃないし!兄貴のだし!」 「まだ言う?神聖なる『じゃんけん』で勝負がついたのにまだ嘘をつく?」 「嘘じゃない!お、俺は……!」 「お仕置きだね健介君。君は嘘ばっかりつくから」 「そ、そんな!!」 今回ばかりは俺は何も悪い事してない!なのに、こんな事って!! 兄貴の言葉は本気だったらしく、俺は兄貴に引っ張られてベッドに座った兄貴の膝の上だ。 あとはもう慣習なんだけど……ズボンやら下着を下ろされて……何故こんな事に!? 「嫌だ!理不尽だ!こんな事は理不尽だ!」 「勝手にSMの本の持ち主にされた僕の方がよっぽど理不尽だよ」 俺の言葉は簡単にあしらわれて、何度も尻を叩かれた。 パン!パン!パン! 「いっ、痛っ……!!」 「ね?健介君……もう自分が恥ずかしいからって人のせいにしちゃダメだよ?」 「こっちのセリフだ!」 「……」 バシッ!バシッ!バシッ! 「ったい!痛いって!無言で怒るなっ!」 俺の反論と共にパワーアップした平手に文句を言う。 「だって、健介君は何度言っても言う事聞かないしね」 兄貴はしれっとした声だ。 だ、だって、今日だけは俺は無実……! 痛みをこらえながら必死に主張する。 「兄貴!いくら自分の主張を通すためだからって……これは横暴すぎる! わ、分かった!兄貴のハードSM趣味は止めないから!本当はヤダけど……! 口は出さないからやめて!」 「……健介君〜〜?“人のせいにしちゃダメだよ”って今言ったばっかりだよね?」 「いっ……人のせいって……」 「強情な子は損するよ?」 バシッ!バシッ!バシッ! 「いや!!嫌だぁっ!助けて痛い!」 どうしていいか分からなかった。だって、俺は嘘なんかついてないのに! 気合い入れて抵抗してみても全然ダメだ……! 俺を簡単に押さえつけている兄貴はいつもより優しげな口調で言う。 「許してあげるから、ちゃんと“嘘ついてごめんなさい”しよう?」 「嘘なんかついてないぃっ!!」 「……今日は粘るね」 バシッ!バシッ!バシッ! 「あぁっ!だ、だから、俺っ……ひ、ぁ!!」 「今日はそんなに怒ってるわけじゃないよ。 泣く前に“ごめんなさい”した方が身のためだと思う」 「やぁああっ!ヤダぁ!俺は何もっ……あ、ぁあっ!!」 痛かった。言葉がまともに続かないくらい。 いつもと違って謝ったら許されるなら……謝った方が……って、考えが頭をかすめる。 でも!俺だって男として守りたいプライドがあるんだ! 「ん、ぐっ……俺は……不当な暴力には屈しない!う、ぁぁぁ!」 「“不当な暴力”……随分な言いがかりだね。そんなに本当の事言うのが恥ずかしい?」 バシッ!バシッ!バシッ! 痛いよ!尻が熱いよ!もう、限界かもしれない!! で、でも負けるものかぁぁ! 必死で耐えるけど、痛みに痛みが重なって我慢できる範囲も、もう……! 悲鳴ばっかり上げてたら、兄貴のため息が聞こえた。 「……何となく気持ちは分かるよ。だから、健介君に勇気をあげるね」 「ん、ぁ……!ゆ……き……?」 「うん。勢いよく謝っちゃえる勇気」 嫌な予感がした。嫌な予感しかしない。っていうかこれは絶対予感でもない! 次の瞬間、致命的な一発が振ってきた。 バシィィッ!! 「うぁぁあっ!ご、ごめんなさぁい!ぁあ!……とか、言うと思うなよッ!!」 「……そのままにしておけばいいのに」 「言ってないからなぁ!ふぇぇ!言ってない!」 「もう一回いく?」 「うっ……うわぁああああん!!」 兄貴の汚い脅しに全力で泣いた。俺だって痛いのは怖いんだ! 泣きながら兄貴に言い返した。 「俺じゃないって言ってるのにぃぃっ!いじわる!お兄ちゃんの意地悪ぅぅぅっ! うわぁああああん!!」 「健介君ったら……いいよ。そう言う事にしてあげる」 兄貴は困り果てたような声でそう言って、尻を叩くのを止めた。 そして俺の頭をよしよしと撫でた。 「あんまりこんな事で厳しく叱るのも良くないって言うしね。 ごめんね?健介君の趣味を責めたわけじゃないからね?ただ、お兄ちゃんのせいにしちゃダメ」 「う、うぅっ……き……か……!」 「ん?なぁに?」 「納得できるかぁぁぁっ!!」 俺は兄貴の膝の上から飛び起きた。 納得がいかない!このままめでたしめでたし。なんて許せるか! 絶対に、兄貴の嘘を暴いてやる! 「ふざけんなよ!俺は嘘なんかついてない!証明してやる! 兄貴、もう一勝負だ!『じゃんけん』!神は必ず真実を勝利へと導く!」 「健介君……もう!意地っ張り!そこまで言うなら、次負けたら『物差し』だよ?!」 「のっ!?ののの、望むところだ!!いくぞ!?じゃんーけーん……」 次負けたら俺は無神論者になるからな!?頼む!神様!俺の方が正しいって知ってるだろ!? 「「ぽんっ!!」」 俺はパー。兄貴はグー。 あ……やったぁぁぁぁぁぁ!ジーザァァァ――ァス!! 「良かった……やっと神様が本気出してくれた……」 「そんな、何で……?」 今度は兄貴が真っ青だ。やっぱり悪い事はできないよなぁ……? 洗いざらい告白してきっちり謝ってもらおうじゃないか! 俺は余裕の笑顔で兄貴に言った。 「さっきはよくもお仕置きしてくれたな?保身のためなら非情になれたか?鬼め!」 「ち、違う!僕は……本当に……!」 「嘘付きはお仕置きだよな?お・に・い・ちゃん?」 「健介君……!」 「ほーら、早くこっち来い!弟に罪をなすりつけるその根性、叩き直してやる!」 「違うんだよ!僕は……!」 ごちゃごちゃと言い訳してる兄貴を引っ張ってきて、さっきの兄貴と俺の位置が逆転した状態。 ズボン?下着?脱がせますよそんなんもん。当然。 「け、健介君!僕じゃない!僕じゃないんだよ!信じて!」 「動くなよ?抵抗したら『物差し』でもいいんだぜ?伊藤さんを呼んでもいいし」 抵抗されたら困るので、そう釘を刺しておく。兄貴は小さく呻いて大人しくしていた。 こっちも座ってたら尻がジンジンするけど……早いトコ懺悔タイム開始だ! 俺は思い切り平手を兄貴の尻に叩きつける。 バシッ!バシッ!バシッ! 「いっ……健介君!!」 「まずは本当の事言ってみな。あの本、兄貴のなんだろ?」 「ち、違う!!」 「ここでゴネると長引くぜ?なんせ、この後は『弟に無実の罪を着せたお仕置き』があるんだから」 「健介君……!自分がお仕置きされたからって仕返しは酷いよ!! 君は嘘をついたじゃない!僕は何もしてないのに!」 「嘘つきはどっちか……お仕置きを続ければ分かるはずだよな?」 「や、やだ……健介君やめて!!」 「正直に言って反省するならやめてやるよ!」 バシッ!バシッ!バシッ! なるべく効くように、力を入れて叩いてるんだけど…… そうすると兄貴は苦しそうだ。呼吸も乱れてる。 「だめっ……健介く……はぁ、痛いよ!!」 「痛いなら変なプライド捨てて“嘘をついてました。ごめんなさい”って謝ればいいじゃん。 あと、“健介君のせいにしてお仕置きしてごめんなさい”」 「違う!違うんだよ……僕じゃない!あんな本知らない!」 「強情は損するよなぁ兄貴?今分かったよ」 「嫌だ……!!」 バシッ!バシッ!バシッ! 「あぁっ!健介君!やめて!許して!これは酷過ぎるよ……!」 「酷いのはどっちだよ?『弟に冤罪をふっかける兄』か、『兄の為に心を鬼にする弟』!」 「うっ、ぁぁ!冤罪じゃ、ないくせに……!やめて、おねがっ、やめっ……!」 「やめません。“ごめんなさい”するまでやめません」 もしかして、酔ってない状態で俺が叩いても結構効くのかもしれない。 兄貴の尻はだんだん赤くなっていた。声も涙声っぽく聞こえない事もない。 でも、兄貴が嘘を認めるまで許さないけどな。 本気出して何度も叩いてやった。 バシッ!バシッ!バシッ! 「やぁぁっ!健介君!酷い!酷いよ!お兄ちゃんの事嫌いなの!?」 「普段は好きだよ?でも、今の悪いお兄ちゃんは嫌いだね」 「そんな、言い方……あぁっ!!痛いよ!健介君も……やだぁ!!」 「謝れよ。大人げないぞ?」 「違うんだよぉ!僕じゃないんだってばぁ!」 泣きそうだけど、主張は曲げない兄貴。 このまま叩いてたら……泣かしちゃうかもなぁ。どうしよっかなぁ? 「けんすけくぅん!信じて!信じてよぉ!僕じゃないんだもん!」 何かこの泣き入ってる声も可哀想になってきた。 でもなぁ……俺も泣かされたしなぁ…… バシッ!バシッ!バシッ! 「うぇぇっ……けんすけくっ……痛いぃ……けんすけくぅ……!」 「……どうしても謝らない気か?」 「ぐすっ、えっく……うぇぇっ、ふぇぇ〜〜!!」 ああ――……これ、マジで泣いてるんだろうなぁ…… まぁ、いいか。可哀想だし。あんな本が見つかって、恥ずかしいんだろうな。 兄ってのはプライドもあるんだろう。うん、許してあげようか。 俺は手を止めた。 そして兄貴がしてくれたみたいに、頭を撫でてやった。 「まったく、恥ずかしいならもっと上手く隠せよ……俺もやりすぎたかな?ごめん。 でも、元はと言えば兄貴が意地はって俺を叩くからいけないんだぜ? あの本の事は、他には黙ってるから……」 「ぐすっ……な……ら……」 「え?何?」 「あり得ないからねこんなのぉぉぉっ!!」 兄貴は俺の膝から飛び起きた。あ、さっきの俺こんな感じ。 と、それは置いといて、目に涙を浮かべながら必死の形相で捲し立ててきた。 「健介君!何て事してくれたの!?弟だからって甘い顔ばっかりしないからね!? もう一回お尻出しなさい!!」 「はぁっ!?ひっでぇ!じゃんけんも何もしてないだろ!? 兄貴だからって権力振りかざすなよ!もう一回尻叩くぞ!?」 こっちも負けじと言い返したら、そのまま口論になって…… 二人でギャーギャー言い争ってたら、入ってきた。もう一人の人物が。 「こ、こらーっ!騒がしいよ君達!どうしたの!?おやつの取り合いしてるの!? 私のおやつまだ残ってるから!あげるから!」 カップケーキの皿を持って入ってきた夕月さん。俺は夕月さんにSM本を見せながら、今までのいきさつをぶつける。 「夕月さん!聞いてくださいよ!兄貴が自分で変態SM本持ってるくせに、俺のせいにするんですよ!? しかも尻まで叩いてきて!最低ですよね!?」 「違うんです先生!あの最低SM本、健介君のなのに強情張って、僕のだって言い張ってるんです! しかも僕のお尻まで叩いて!全く、いつからこんな子に!!」 「……ええっと……?二人でお尻ぺんぺんして遊んでたの?」 「「遊んでませんっ!!」」 二人で声をそろえたら、夕月さんがビクついていた。 でも、その後おずおずと言った。 「その……スーパーモダニズムの本……私が大ちゃんから借りたんだよ? だから、健介君のでも健人君のでもないと思うけど……」 「「え?」」 俺達は一瞬固まる。 この本……夕月さんの、借り物……? 「あの、“大ちゃん”って……どなたですか?」 兄貴が言う。あ、それ俺も気になった。誰だよ“大ちゃん”。 夕月さんがニコニコしながら答えた。 「あ!大ちゃんはね、大一郎だから大ちゃん!廟堂院さんのトコの執事の子で、私と仲良しなんだ〜〜♪ すごく優しいんだよ?“裸婦の資料ないかな?”って言ったらその本貸してくれて!」 つまりは……そのSM本執事野郎が全ての元凶ってわけで…… 「大ちゃん……どんな趣味してやがんだよ……絶対許さねぇ……!!」 「そうだね……最低だね大ちゃん……こんな本を何も知らない人に貸すなんて……!!」 「だ、大ちゃんの悪口やめてあげて!彼、お母さんに仕送りしてるから!いい子だから!」 俺と兄貴が怒りに震えるのを必死で止める夕月さん。 でも俺達の怒りは収まらない。お互いの気持ちは一緒だ。顔を見合わせて爽やかに微笑んだ。 「ごめんね健介君……ずっと“違う”って言ってたのに。健介君がこんな本持ってるわけ無いよね? お兄ちゃんが全部悪かったよ……」 「ううん!俺の方こそ!兄貴はずっと“違う”って言ってたのに!兄貴がこんな本持ってるわけ無いのに 勘違いして……許してくれる?」 「もちろん!怒るべきは違う人だもん!」 「そうだよな!怒るべきは違う人だよな!」 俺達は一斉に夕月さんに向き直った。夕月さんがビクついていた。 まずは兄貴が腰を落として、夕月さんの両肩をガッシと掴んで笑顔で言う。 「先生?どうしてご自分の本を僕の部屋に置いておくんですか? まるで僕の物みたいに思われるじゃないですか?ねぇ?何してくれたんです?」 「ご、ごめん……私、途中まで見たら怖くなっちゃって……健人君の部屋に預けようって……」 「僕に 許可も 無しに ですか?」 「ご、ごめんなさい……」 兄貴の迫力に、目に涙を溜めてガタガタ震える夕月さん。 そこで俺が夕月さんに近付いて頭を撫でる……っていうか、ガシッと鷲掴みにする。 「まぁまぁ兄貴。夕月さんにだって悪気はないんだ。悪いのは大ちゃんなんだし。 でも、大ちゃんはここにはいないから……夕月さんが責任とってくれますよね?」 「せ、せせせ責任って……?」 涙目の夕月さんが俺を見上げてくる。 「「お仕置きですよ 夕月さん? 先生?」」 俺達は笑顔で2回目のハーモニーを奏でる。 その後、夕月さんの悲鳴が響き渡って……二人でお仕置きしてやった。 ま、あんまり厳しくはしなかったけど。 これからは、不審なエロ本があれば全部夕月さんを疑うという事で解決したのだった。 |
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