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茶屋のとある一日3
(姫神様フリーダム×妖怪御殿コラボ作品)
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麿日記 ○月×日(天気:晴れ)

今日、桜太郎君と山のお茶屋さんに行ったら、帝さんのお父さんが偶然来てたみたいで、
店員さん……桃里さん、だったかな?が、紹介してくれて……

桜太郎「貴方が帝さんのお父様でしたか!家族でお世話になっているのに、今までご挨拶もできず大変失礼いたしました!
    帝さん、今までご自分の事はなかなか話してくださらなくて……何だかお一人で抱え込んでいるみたいで心配だったんです。
    けど、最近はお父様のおかげで、帝さん前より楽しそうですし、ほっとしました!
    今度またぜひ、うちへ遊びにいらしてくださいね?」
和  「……何故……」
桜太郎「え?」

帝さんのお父さんがガッチリ桜太郎君の手を握りながら……

和  「何故!!貴女のような心優しくて素敵な女性が家族の中にいるのに!!誉は男に走ってしまったんでしょうか!?」
桜太郎「えっ!?」
和  「貴女のような方が!誉の恋人だったら……妻だったら……!!」
桜太郎「あ、あの、ぬぬも……私なんか遠く及ばないほど、ずっと帝さんを近くで支えてて、その、そもそも私は……!!」

ってな事があって、僕はめちゃくちゃ凹みました☆☆

******************

ここは神々の住まう天の国。
本日、山にある茶屋“山の隠れ家”では、茶屋娘の桃里と、その恋人で弟分の雪里が
外に面したカウンター越しに話しこんでいた。

「誉様……何だか俺にだけ当たりがキツイ気がして……
いや、姫様達より格下と見なされてるからだろうけど……。
できれば姫様にも、もう少し優しくなっていただければ……」
「う〜ん……誉様って何だか扱い辛そうな性格してるもんねぇ……クレーマー体質だし」
「桃里姉さん、そんなハッキリ……」
「あ、でも!ペットのぬぬさんとは時々ここへ来るけど、仲良くやってるみたいだし、ちょっとは優しく見えるわよ?
いっそ雪里も誉様の“ペット”にしてもらえば?」
「えぇっ!?う〜ん、ペットかぁ……それが姫様の為になるなら……」
雪里が考え込んでいると、桃里はぱっと視線を前方へ向けて笑顔で言う。
「あ!恋心姫ちゃんと煤鬼さん!いらっしゃ〜い!」
その声と視線につられて雪里も振り向くと、恋心姫はビクリと身をすくませて煤鬼に縋り付く。
雪里は怯えられて複雑な気持ちになりつつ、優しく叱るように恋心姫に声をかけた。
「この前の事はきちんと反省したのか?」
「煤鬼!煤鬼ぃっ!」
「あぁ、コイツだったのか……」
恋心姫に助けを求めるように呼びかけられ、煤鬼は恋心姫の背中を撫でつつ、雪里をニヤリと見やった。
そして雪里の目の前に来ると、ニッコリと笑ってこう言った。
「この前は済まなかったな、恋心姫が迷惑をかけて」
「いや、まぁ……子供のした事だし、彼女が反省したならそれで……」
雪里がそう返事をしかけると、急に胸倉を掴まれ、引っ張り上げられる。
急な事に驚いた雪里の目を、煤鬼の怒りを湛えた目がじっと捕えつつ、笑顔で言葉を続ける。
「本当に済まなかった……二度とあんな事はさせない。
けど……恋心姫は、刃物には嫌な思い出があってな。身内が身内を刺し殺したところを見てる。
お前にも心があるなら、二度と恋心姫に刃物を向けてくれるなよ?」
「ぐっ……!!」
「くれぐれも、頼んだぞ?」
冷静な口調とは裏腹に、ギリギリと首が圧迫される感覚と、明らかな敵意に雪里は顔を歪める。
すると、泣きそうな声が聞こえた。
「煤鬼!やめて!ダメですよ煤鬼ぃ!」
「あぁ、大丈夫大丈夫。話をしただけだ」
煤鬼はパッと雪里から手を離すと、身をかがめて心配そうにしている恋心姫の頭を撫でた。
そして、そのまま雪里に睨みつけるような視線を向けた後、愛想よく笑った。
「お前は帝の身内だし、これからも何かと縁があるかもしれん。恋心姫共々、よろしくな?」
「……よろ、しく……」
雪里はふらつきながら襟元を押さえて、警戒で表情を強張らせつつそれだけ言った。
すると煤鬼も気が済んだらしく、何度も振り返る恋心姫の手を引いて、一緒に店の奥の席へ入っていった。
慌てて桃里が雪里に駆け寄ってくる……
「ちょっと雪里!大丈……」
「大丈夫?」
「ぬぬ、さん……!」
前に、ぬぬが雪里に声をかけて、少し困った様な表情で、雪里に説明した。
「彼は煤鬼っていう名前の鬼。
悪い奴ではないんだ……恋心姫が好き過ぎるだけで」
「謝るフリにもなってない脅しだ。目が“次に刃物を向けたらお前を殺す”と言っていた……」
店の奥を睨みつける雪里に、ぬぬは頑張ってフォローを続ける。
「心根は優しい奴だから、むやみにそちらに危害は加えないと思う。
あまり悪いように思わないでやって欲しい。
遊んでいれば無邪気だし、心から笑った顔はとてもチャーミング」
「そ、そうそう!普段は煤鬼さん、いいお兄さんなんだよ雪里!」
「姉さんまで……」
「まぁ二人で甘いもの食べて落ち着きなよ!サービスで持ってくるから!」

桃里が二人に外の長椅子に座るよう勧めて店の奥に消えていくと、雪里はため息をついてぬぬに尋ねる。
「本当、なのか?あの子が“身内が身内を刺し殺したところを見てる。”って……」
「……恋心姫は妖怪になる前、誉の母親を殺した、元恋人の男の身代わり人形だった。
誉の母親が殺されるところも見ていたみたいだし、それが刺殺だったのかもしれない。
その男も、後に自殺したと聞いたけれど……」
「…………」
黙っている雪里の横で、ぬぬは悲しげな、悔しげな表情で俯いて言葉を続ける。
「愛する者が殺す様を、愛する者が死んでいく様を見ながら……体が自由に動く今と違って、
縋って止める事も、叫んで説得する事も、目を背ける事も、泣く事すらできなかった恋心姫が……
どれだけの絶望や悲しみを背負ったかは俺には計り知れない。
妖怪になってからも、煤鬼が俺達の元に連れてきて、目を覚ますまではずっと眠っていたらしい。
和王と話し合った後は減ったけれど、前は頻繁に悪夢にうなされて泣いていた」
そこまで言うと、また顔を上げていつもの冷静顔で雪里に言った。
「だからといって、恋心姫に同情して何もかも許してほしい訳じゃない。
貴方は貴方の守りたい者を全力で守ればいい。煤鬼もそうしてるだけ。
ただ、本来は本当にいい子達だから……」
「……分かった。貴方は信頼できるし、彼女らの事はあまり悪く思わないようにする。
和様もひたすら謝るだけで、あの子の事は悪く言えないようだったし……」
雪里が微笑むと、ぬぬもホッとしたように少し微笑んだ。
「ありがとう。誉の家族が、優しくて良かった」
「私も、誉様の今の家族の事は、良く知りたいと思ってるんだ。
また教えてくれたり、紹介してもらえたら嬉しい」
「もちろん。残りの麿と桜太郎は普通に穏やかで礼儀正しいから、すぐ親しくなれると思う」
「良かった……あと、誉様と仲よくしたいんだけど……俺も“ペット”にしてもらえば仲良くなれるかな?
姫様とも、もう少し仲よくしてもらいたいんだ」
「!!」
雪里がポロッと発言したその言葉を、ぬぬは慌てて否定した。
「そ、それは……あの、誉の境遇を考えると、すぐに妹君と仲よくするのは無理だと思う!
誉が欲しかった物全部、妹君は当然のように持ってるから!誉にしたら複雑で!
貴方の事もきっと、妹君の仲間だと思ってるからキツく当たるのかもしれない!
だ、だから……今は時間が必要なんだと思う!
誉のペットになるのはあまり……いや、本気でお勧めしない!!たぶん普通は身がもたない!」
「ほ〜〜う?面白そうな話をしているなぁ?」
「「!!」」
気が付けば、二人の目の前にはニヤニヤと笑う帝が立っていた。
そして雪里に言う。
「余のペットになりたければしてやるぞ妾腹の狐?お前の働き次第では、あの妾腹と仲良くしてやってもいい」
「本当ですか!?」
「誉!やめて!」
「ペット一号は黙っておれ。お前、勝手に余のペット志願者を断るなんて偉くなったなぁ?
ちょっと、その……こっ、恋人になったからって勘違いしてるんじゃないか?」
帝はそう言って頬を赤らめながらぬぬを睨みつけ、雪里の方には余裕の笑みを見せる。
「忠義に熱いというのは素晴らしい事だ……お前が、妾腹と余の仲を取り持つために
余のペットになったと知れば、奴は泣いてお前に感謝するだろう。それでこそ、“従者の鏡”というものではないか?」
「!!」
雪里の輝くような表情を見たぬぬは、いっそう焦って考える。
(だ、ダメだ!!このままでは雪里が誉に乗せられてペットにされてしまう!
まだわだかまりの残る妹の従者を、誉がペットにすればどんな風に扱うかなんて目に見えてるし、
それに……俺以外のペットが増えるのはなんか嫌だ!!絶対に阻止しないと!!)
意を決したぬぬが軽く深呼吸して口を開いた。
「誉、誉様……?志願者であれば誰でも彼でもペットにするのは良くない。
貴方のペットに相応しいか、確かめてからにしないと」
「相応しいかどうかなんて……後で余が相応しくなるようにどうとでもしてやる」
「しっ、しかし、俺も半端な奴にペット仲間になって欲しくない……!
ペットの何たるかを見てもらって、それでもペットになりたいと言うなら、その想いは本気だと思う……!
お、俺が!見本に、なるから……!!」
「!!……こんな外で、この獣の目の前で……余に何をされたいんだ変態ペット??」
(よし!誉がその気になってる!この会話がおかしい事に、これから起こる事に……ドン引きしてくれ雪里!)
帝が嬉しそうに目を細めて笑う様子に、確かな手ごたえを感じたぬぬは、
知り合いをペットの道から救うべく、自分のポジションを守るべく、帝にこう言った。
「そんなのっ、もちろん……誉様に愛のお仕置きをしてほしいに決まってる!!
俺は最近生意気なペットだったから!!!」
「はははは!!しょ〜〜がない奴だなぁ〜〜っ♪♪!!」
「えっ、えぇえええええっ!!?」
嬉しそうな帝の笑い声と雪里の驚きの声が入り混じる。
声を上げたっきり固まってしまった雪里の目の前で、帝とぬぬはサクサクと“お仕置き”を始めようとしていた。
「ほらさっさと席を譲って余の膝の上に腹這いになれ!」
「御意!!」
「待って!待ってください困ります!店の前でそんな事をされたら店の景観を損ねてしまいます!!」
真っ青になる雪里が立ち上がってオロオロしながら二人を止めようと叫ぶが、
帝はぬぬを膝の上に抱えつつ、不機嫌そうな顔で怒鳴った。
「店の景観を損ねるぅぅ〜〜??ふざけるな!あのクズ……お父さ……ッ、クズ男にも言ってやれ!!
アイツもここで余の尻を叩いたんだぞ!?」
「えっ!?」
「そして今言った事は忘れろ!!
他の客なんて来ないボロ茶屋のくせに、景観など気にするだけ無駄だ!」
真っ赤な顔でそう言い切った帝。
今度はぬぬの方へ視線を落として、ズボンや下着を脱がせながら言う。
「そう言えば……お前もその時、余を辱めてくれたなぁ?あのクズより酷い方法で」
「あ、あの時は……ごめんなさい……」
「ふふふ♪一度お仕置きしてやった気もするが、まぁどうでもいい。
お前もたっぷりと痛くて恥ずかしい目に遭わせてやろう!」
「お願いします誉様……!!」
「俺っ、いや私っ、もう誉様のペットになるのやめますから〜〜っ!!」
バシッ!!
雪里の必死の叫びも虚しく、帝がぬぬのお尻を叩き始める。
「うぁっ……!!」
「どうしたぁ?一度叩いたぐらいで情けない声を上げて。
まだまだまだまだ、お前が偉そうに余の尻を打った回数には届かんぞ?」
ビシッ!バシッ!ビシッ!!
「ひっ、あっ……誉、様ぁ!!」
(あぁああああ姉さんの店の美観が〜〜っ!!)
帝とぬぬが盛り上がってる横で、内心絶叫する雪里。
一方の帝とぬぬはお互い不思議な気持ちになっていた。
「んんっ、あっ!あぁっ!ごめん、なさい!!
(な、何だろう……!最近、誉に距離を取られていたせいか……!
こうやって誉と密着していると、妙な気分になってくる……!!
叩かれる、たびに、痛いけれど、何だか熱く……!!)」
お尻を叩かれるたびに、悲鳴を上げては頭がぼんやりとするぬぬ。
最近、恋人同士になったはずなのに距離が遠くなり、接触が前より無くなったジレンマが、
このお仕置きで解消されていくのを感じていた。
そして、そう感じているのはぬぬだけではなく……
「謝って許されると思うなよ!お前は尻を叩くより叩かれる側だって事を、
思い出させてやるからな!尻が真っ赤になるまで躾け直してやる!
(な、何だか……ぬぬの尻なんて久しぶりに見た気が……!
あぁくそ!変な気分になってきた!それもこれもぬぬが変態だから悪いんだ!
変態の癖に!この、変態の、尻が……!!)」
叩くたびに興奮を煽られてイライラしてくる帝も、よく分からない高揚感に余計に叩く手を強める。
バシィッ!ビシッ!バシッ!!
「うぁああっ!ふっ、うぅう!!」
そうすると、叩かれているぬぬの悲鳴も苦しげに大きくなって、
帝はますますぬぬやぬぬのお尻をいじめたくなってしまう。
薄く笑いながら、ぬぬに声をかけた。
「ぬぬよ?さっきからお前、変な声を出してないか?
もしかして……お仕置きされて興奮しているのではあるまいな?」
「っ、あああっ!うっ、あっ……!誉、様……!!」
「質問に答えんか鈍間!」
バシィッ!!
「ひぁあああっ!うぅう……!ごめん、なさい!!
反省しようと思っても、ほ、誉様に叩かれるたびに、熱くて、頭がぼんやりして……!!」
「はしたない奴だなぁ、狐が見てるんだぞ?」
ビシィッ!バシィッ!!ビシッ!!
「んうぅうううっ!わっ、分かってるんです、けどぉッ!はぁっ、もうやめて下さい誉様ぁっ!!」
「うるさい!躾け直してやると言っただろうが!お前が尻を真っ赤にして、泣きながら
“明日からもたくさんお仕置きして下さい”と懇願するまで叩き続けてやるからな!」
「あぁそんなぁぁっ!!うぁあああっ!!」
ぬぬの余裕の無い声を聞けば聞くほど、帝は嬉しそうにぬぬのお尻を叩いた。
無遠慮に叩かれ続けるぬぬのお尻はだんだん真っ赤になっていく。
ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「んぁあああっ!やっ、あぁあう!!あぁっ、誉様ぁっ!!うぅううっ!!」
「ふっふふ♪お前今、さぞかし情けない顔をしているんだろうなぁ?
あぁ、余は見られないのが残念だ。狐、お前からは見えるか?コイツ、どんな顔をしている?」
帝にそう聞かれた雪里は顔面蒼白になりながらもとっさに、
「……可哀想、です……もう、やめてください!!こんな事なら私は、誉様のペットにはなりたくない!」
帝の手を掴んで止める。帝はあからさまに不機嫌になって怒鳴った。
「ッ、根性なしめ!邪魔をするな!!」
「しかし!ぬぬさんはもう……!!」
「ゆ、き……里……!!」
雪里の言葉に割って入ったぬぬの震える声が、
「お、お願い……!もう少しだけ……!!」
「!?」
そう言った瞬間、帝が勝ち誇ったように笑う。
「手を離せ。無粋な奴め」
「!!」
雪里は悔しげに手を離して、店の中に走っていった。

そして、恋心姫を膝の上に座らせて座っている煤鬼を見つけると叫んだ。
「一緒に来てくれ!!」
「はぁ?俺が動いたら恋心姫が起きるだろうが」
嫌そうな顔をした煤鬼にもたれかかるようにすやすや眠っている恋心姫。
けれど、雪里は必死で言い募った。
「止めたいんだ!誉様がぬぬさんを……何というか!いじめてて!!」
「何だと?アイツ……」
煤鬼は舌打ちをして、そっと恋心姫を膝から下ろして椅子の上に寝かせると、
頬にキスをして立ち上がる。

そして雪里と共に帝の元へ行って……
帝の肩を強く叩くと、やや怒り気味の声をかける。
「おい!ぬぬに乱暴するなと前に言っただろう!」
「ッ!?来ていたのか……!!だ、だが、残念ながらこれは同意の上で乱暴ではないぞ?なぁ、ぬぬ?」
「うっ、う……俺が、言い出した……!」
息を切らせるぬぬがそう言って、煤鬼も少し困った顔をする。
「本当だろうな?」
「それは本当だけど……それにしたって誉様!!こんなのは健全な主従関係とは言えませんよ!」
雪里が抗議すると、帝は雪里を睨みつける。
「黙れ。本当にお前はうっとおしいなぁ。気に食わん。妾腹もお前も」
「くッ……!!」
「ぬぬ〜〜?可哀想に邪魔が入ったなぁ?続きは家に戻ってしような〜〜?」
帝は悔しそうな雪里を無視しつつ、猫なで声でぬぬにそう言って、真っ赤になったお尻を撫でる。
と……。
「いや、もう大丈夫。久しぶりに何だかスッキリした」
「……は……?」
「誉……父親の事はちゃんと“お父様”って呼ぶように約束させられたって喚いてたのに。
また“クズ”呼ばわりは良くない。ちゃんと呼ばないと」
「えっ……?」
さっそく回復して起き上がり、服を整えているぬぬの冷静さに呆然とする事になる。
煤鬼や雪里にも
「親は敬えと言ってるのに分からん奴だなぁ……」
「……和様に伝えておきますね?」
などと言われてしまい、特に雪里の発言に慌てていた。
「ふざけるな!お前余計な事を言ったら――」
帝は雪里に食って掛かろうとして、煤鬼に着物を軽く掴んで引きとめられる。
「そいつにも乱暴するのか?先に俺か、桜太郎か、ぬぬか、麿か選んでからにしろ」
「〜〜っ!!こんな狐ごときに構ってる暇などないわ!離せ!」
帝は悔しげに煤鬼を睨みつけて、逃れるように体を揺する。煤鬼もパッと手を離した。
「ぬぬ!!帰るぞ!!全部お前のせいだからな!」
「……誉も少しは反省して?」
「うるさい!!」
そして帝は悔しげに喚いてさっさと歩きだしてしまい、ぬぬが後を追いかけるように二人は帰ってしまう。
雪里は、残った煤鬼に言った。
「ありがとう。助かった」
「いや……帝も悪い奴じゃないんだが……どうも化けの皮がはがれてから、ワガママで子供っぽいな」
「俺も悪い方だとは思ってない。頑張って仲よくしようと思う」
「そうか。そうしてやってくれ」
お互い微笑み合う雪里と煤鬼。
そんな中、桃里が泣いている恋心姫を抱っこしながら雪里達の方へ向かってきた。
「わぁああん!煤鬼!煤鬼ぃぃっ!!」
「ほら恋心姫ちゃん!煤鬼さんいたよ!あそこにいた!」
「何で急にいなくなっちゃうんですか煤鬼ぃぃっ!!バカぁッ!!うわぁあああん!!」
怒り気味に泣いている恋心姫を桃里から受け取った煤鬼が、手慣れた様子であやした。
「おぉ、すまんな恋心姫!どうした?怖い夢を見たか?」
「怖い夢は見てないですけどぉっ!煤鬼はいなくなっちゃだめなんですぅぅっ!!」
「ははっ、何だ寝起きが悪いのか?ほらほら、もう泣くな!」
煤鬼が顔をうずめるてくる恋心姫を撫でている傍で、桃里と雪里もホッとした様子で会話していた。
「姉さん……」
「ご、ごめんね……甘いもの持って行こうと思ってたんだけど……あの状況じゃ……!!」
「いや、あれは来辛い。気にしないで」
「前にも同じような事があったんだけど……球里兄さんが言ってた!忘れればいいんだよ雪里!!」
「前にも!?あぁ、そう言えば誉様が言ってたような……三回目は無いといいね……」

そう言ってため息をつく桃里と雪里だった。


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【作品番号】tyaya3

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