TOP小説
戻る 進む


美女軍団来襲!?







町の路地にひっそりと佇む小さな喫茶店「Times」。
ここは優しい熟女な店主がコーヒーやケーキと安らぎを提供してくれる癒し空間。
今日ものんびりと開店です。

「時子さん」
キッチンにいた女店主の時子に呼びかけるのはバイトの優君。
いつもの無表情な優君に、時子は首をかしげます。
「どうしたの優君?」
「またあのオカマ軍団が来てるので入店拒否していいですか?」
「だめだよ!!」
時子が盛大にツッコむと同時に、明るくて野太い声が響きます。
「時子ちゃ〜〜ん!来たわよ〜〜ん!」
「は、は――い!ほら、優君!彼女達は常連さんなんだから!
私が席に案内しておくから、ちゃんとお水持ってきてね!?」
時子がそう言うと、優君は不機嫌そうに顔をしかめています。
「でも時子さん……ここは飲食店ですよ?」
「そ、そうだよ??」
「吐き気を催すものを店内に置いておくのはどうかと思います」
「それ絶対に彼女らの前では言わないでよ!?」
優君にそう釘をさして、時子は早足でお客さんのお出向かえに行きます。

店内にいたのは3人の美女(?)。
「ハァイ時子ちゃん♪今日も癒してちょうだいね」
魅惑の低音ボイスで茶目っ気たっぷりにウインクして見せるのは、一人目「シャルロット」。
ローズピンクの唇を始め、全体的にラブリーメイク。
金髪のミディアムヘアーを可愛らしく内巻きにした、筋骨隆々のガッチリ系雄嬢(おじょう)。
明るいピンクのボディコンから筋肉質の太い腕と足が伸びています。
足元の濃いピンクヒールもドデカサイズで、背もそこそこ高いけれど逞しい横幅があります。

「シャル姐さんったら、時子ちゃんに会いたいって聞かないの!ま、アタシもだけどね」
ややハスキーボイスで無邪気に笑うのは、二人目「べスティーナ」。
輝く黒髪を全体的に緩くウエーブさせた、筋肉質ではあるけれどスラリとした雄嬢。
メイクは他の二人よりはナチュラルで目元のグリーンが涼やかオシャレです。
明るいグリーンのワンピースには若々しい可愛らしさがありました。
細身で背は高いけれど、しっかりした筋肉と彫りの深い顔立ちは男の香りを隠せません。

「こらこらアンタたち、静かになさい。騒がしくてごめんなさいね時子ちゃん」
三人目の「ママ」は、熟れた魅力たっぷりの、和装が似合う年長雄嬢。
暗めの茶髪を全体的に後ろでまとめています。
濃い赤のルージュ、紫のアイシャドウ……濃厚な大人の色気たっぷりです。
白地に紫のグラデーションと、淡い色の大きな牡丹柄が入った上品な着物に似合った上品な身のこなしです。

こんな個性的な三人ですが、時子はいつものように笑顔で対応します。
「いつもありがとう、ママさん、シャルロットさん、べスティーナさん。
ゆっくりしていってね。もうすぐ優君がお水を持ってくると思うから……」
「ウフフッ、優君今日も不機嫌なんでしょうね〜〜。笑ってたらきっと可愛いのにもったいないわ〜〜」
ママがクスクス笑うと、シャルロットがすかさず合の手を入れます。
「あれは不機嫌じゃなくて、不躾って言うのよママ!あの子には年長者に対する敬いってものが無いわ!」
「って言う割には、この前シャル姐さん“優君のケツ揉みてぇ!!”って叫んでたじゃない」
「イイ男はとりあえずケツ揉みたいじゃない。あ〜〜あ、あのクソガキンチョ、顔だけは好みなのよね〜〜」
「ちょっとシャル……時子ちゃんも聞いてるのに何言ってるの」
呆れ顔のママに、ぎこちない笑顔の時子。
そんなところへ――
「水です」
ドゴン、ドゴン、ドゴン!
乱暴に、叩きつけるように水を置いた優君。噂をすれば本人登場です。
優君の顔は無表情どころか不機嫌そのものですが、雄嬢三人組は気にしません。
シャルロットとべスティーナがさっそく若いウエイターをからかい始めます。
「あら優君、今日も可愛いわね!せっかくだしお姉さん達とお話しましょーよぉ」
「嫌です」
「んまぁ照れちゃって!今日は露出が多いドレスにしちゃったからだわシャル姐さん」
「そうね、べス。優君には少し刺激が強すぎたのね」
「チッ……キモジジイ共……」
「優君!!」
時子が叱るように叫んだものの、その暴言はしっかりシャルロットとべスティーナに届いていました。
特にシャルロットがピクリと眉を吊り上げます。
「……あ〜〜ら、何か今、聞き捨てならない事を言ったかしらぁぁん??」
「別に。貴方がたの事を“キモジジイ”と言っただけです」
「何ですってこのクソガキャァァァァッ!!」
シャルロットが激高してガタンと席を立ちあがります。
それでも優君の方は不機嫌そうな顔の眉ひとつ動かしませんでした。
「お止めシャルロット!」
「優君ダメだよ!ごめんなさいして!」
保護者二人が止めるけれど、優君とシャルロットの喧嘩は止まりません。
「ほ――ら時子さんが謝れって言ってるわよ!謝りなさいよ子供は子供らしく!」
「黙れケツアゴ野郎」
「誰がケツアゴじゃいッ!!テメーのケツ揉ませろやゴルァァアアアッ!!」
シャルロットがそう叫んだ瞬間、優君はゆっくりとにキッチンの方へ戻っていきます。
「な、何よ……逃げたのね?」
少し拍子抜けしたように、しかし得意気に鼻を鳴らすシャルロット。
しかし次の瞬間……シャルロットは油断していたので気付くのが遅れたのですが……
キッチンから元気に猛ダッシュで走ってくる優君の姿が!
そして……
ベシャァァァァッ!!
綺麗なジャンプアタックフォームで、お皿にたっぷりと乗ったクリームをシャルロットの顔面に皿ごと叩きつけました。
「シャル姐さん!」
「シャルロットさん!!」
べスティーナと時子の叫び声。
ママだけは目を丸くして状況を見つめています。
辺りは一瞬沈黙しましたが、やがてシャルロットの顔面からクリームのお皿がズルズルと滑り落ちます。
そしてシャルロットは真っ白い顔の口をパクパクさせて叫びます。
「あ、ぷっ……乙女の顔に何すんのよぉぉぉぉぉっ!!!」
「乙女?おばけの間違いでしょう?」
「んだどゴラァァァァァァッ!!ああ〜〜んもうっ!私のプリティ―フェイスがぁぁぁっ!!」
シャルロットは急いで鞄から鏡を取り出して自分の顔を確認しますが……
「ぎゃぁぁぁあああああっ!!おばけぇぇぇぇぇ!!」
「シャル姐さん!!落ち着いて!それは貴女の顔よ!?」
べスティーナのフォローも虚しく、シャルロットはそのまま後ろに倒れて気絶してしまいました。
「うわぁぁぁああ!!シャルロットさん!!優君!何て事したの!?」
「オッホホホホホホホホ!!構わないわよぉ!時子ちゃん!!」
優君を怒鳴りつけた時子を宥めたのはママでした。
シャルロットを見て大爆笑しながら続けます。
「シャルにあんな風に凄まれたら、身の危険を感じるってものよ!うちの子が大人げなかっただけ……
それにしても、何なのよこの娘ったらオホホホホホホホホッ!!」
「ちょっとママぁ!そんなに笑ったらシャル姐さんが可哀想よ!」
「ご、ごめんなさいべス!でも、でもねぇ……オッホホホホホホホ!!」
大爆笑のママに困り顔のべスティーナ。
ママがあまりに楽しそうなので時子はしばらく呆然としていましたが、
思い出したようにパタパタと布巾を持ってきました。
そして床に倒れたシャルロットの、クリームまみれの顔を丁寧に拭いました。平謝りしながら。
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「んもぅ、そんなに謝らないでちょうだいな時子ちゃん!それより、その布巾が心配よ〜〜。
シャルの厚化粧が付いて、次から使えなくなっちゃうんじゃないの??」
「いいんです!こんな布巾一枚くらい!そ、それよりシャルロットさんが……!」
「時子ちゃん本当に気にしないで?シャル姐さんなら、アタシが店まで運んで帰るわ。
きっとすぐに目を覚ますわよ」
べスティーナはそう言って、シャルロットをおぶって立ちあがります。細マッチョな割に力持ちの様です。
それに寄り添う様にママが並んで、優雅に言いました。
「騒がしくしてごめんなさいね。今日はシャルがこんなだから、また改めて来させてもらうわ」
「そ、そんな……!こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした!!」
深々と頭を下げた時子に、ママが近づいてきて優しく言います。
「頭をあげてちょうだい?私達本当に気にしてないから。でもね、時子ちゃん……」
そこまで言って、ママはそっと唇を時子の耳元に寄せます。
「彼氏ちゃんの事、あんまり甘やかしちゃダメよ?」
「……!!」
こっそりそう言って、ウインクしたママ。
それからべスティーナを連れて帰って行きました。
シャルロットは最後、『霊に殺される……霊に殺される……』とうなされていました。


オカマ軍団が帰ってしまうと、時子は大きく息を吐いて優君の方に向き直ります。
そして怒った顔で言います。
「……君は、皆に一っっ言も謝らなかったね?」
「(シャリシャリシャリシャリ……)」
「野菜スティック食べるんじゃないのッ!!何してんのさ君はッ!!」
いつの間にか野菜スティックをかじっている優君を怒鳴りつけ、
不機嫌そうな顔の彼に、堂々と言い放ちます。
「今日は私、本当に怒ったからね!?優君、後でお仕置きだよ!?
お店終わったら、一緒に私の部屋に来る事!いいね!?」
「(シャリシャリシャリシャリ……)」
「だから、野菜スティックを食べるんじゃないのッ!!ほら、次のお客さん来ちゃうよ!?」
時子はわざとそっけなく仕事を再開しました。
それを見て優君も仕事を再開する気になったようで、時子を追いかけてきました。
「時子さん……」
「悪い子とはお話しません!!」
「…………」
チラリと優の顔を見ると寂しそうにしていたので可哀想に思った時子ですが
その後優君がゴミ箱を蹴りまくっていたので、やはり一日中そっけなくし続けました。


そして閉店後。
優君が時子の後を付いてきて言います。
「時子さん……」
「いいから黙って付いておいで!」
「…………」
ガタドコォッ!!
「ゴミ箱を蹴らないのッ!!ほら早くおいで!」
「時子さんっ……」
「悪い子とはお話ししないって言ったでしょう!?」
「…………チッ」
(露骨に舌打ちしたよこの子!!全然反省してないんだから!)
こんな感じで、今日一日優君が話しかけてきても、業務連絡以外まともに取り合わなかった時子。
そのせいか優君はいつもより多めに一生懸命時子に呼びかけていたのですが
可哀想に思うたび、ママに言われた言葉が何度も頭の中に響きました。
『彼氏ちゃんの事、あんまり甘やかしちゃダメよ?』
(そうだよ……今までまともに叱らなかったからダメなんだ!
今日こそは何言われてもちゃんと叱るぞ!そんでもって、お尻ぺんぺんなんだから!)
そう心に誓って、店の二階の住居スペースまで優を連れてきた時子。
部屋に入って電気を付けて「さぁお仕置きしてやるぞ!」と思った途端に……
優君に押し倒されて、体と床がぶつかる大きな音が響きます。

「うわっ!?優君……!!」
「時子さん……!!」
ものすごい力で両手を床に押さえつけられる時子。
いつもの展開に一瞬怯んでしまいますが、今日の時子は気合いが違いました。
(ここで……流されちゃダメだ!!私は、ちゃんと優君を叱るんだから!)
キッと優君を睨みつけて何か言おうとしましたが、言葉を発したのは優君が先でした。
「どうして僕の事、無視するんですか!?貴女……卑怯じゃないですか!!」
(……え?)
良く見ると優君の顔は泣きそうに歪んでいました。
酷く感情剥き出しの言葉は『相手をしてくれなくて淋しい!!』に聞こえます。
いつも冷静で大人びた優君の事が急に子供のように見えて、時子は一気に冷静になります。
だから、優君の目を見ながら淡々と言いました。
「ごめんね。今日は優君が悪い子だったから、反省させようと思ってわざと冷たくしてた……
でもこんなやり方、間違ってたかもね」
「そうです!ふざけ過ぎです!」
「うん。優君、淋しかったよね?」
「そんなんじゃありません!」
気まずそうに顔を逸らす優君。けれど、彼も時子の気持ちを聞いて少しは落ち着いたようで
押さえつける力が一気に弱まりました。
その隙をついて時子は勢いよく体を起こします。優君は驚いて時子から体を離しました。
ちょうど向かい合って座る形になった2人。今度は時子の方から静かに言いました。
「私はね、今日は優君の事叱るって決めてきたんだ。
“後でお仕置きだよ”って言ったよね?だから優君、お尻出して?」
「――――」
優君は時子のその言葉を聞いて、心底驚いたような顔をしていました。
けれどもすぐに反抗的な顔になってキッパリ言います。
「お断りします」
「ダメだよ。今日は許さない」
「貴女にそんな事ができると思ってるんですか?」
「うん。できるよ」
「……えらく血迷いましたね時子さん……!!」
優君は、やけに冷静な時子の様子に動揺しているようでした。
けれども、まだいつものように自分のペースに持っていけると信じていたのでしょう。
その動揺をひた隠して余裕たっぷりに言いました。
「そんなに自信がおありなら、力づくでどうにかすればいい!
貴女なんて、いつも僕に押し倒されても抵抗の一つも……」
ゴトッ。
飛びつく様に優君を押し倒した時子。優君は油断していたようでこの奇襲は成功しました。
彼の体に乗りかかって、その後すぐさま、思い切り唇に吸いつきます。
「……んっ、ちゅっ……」
「んっ……ふっ……!!?」
驚いた優君が抵抗しようとしますが、時子が必死にキスで反撃します。
沈み込むように深く、絡みつく様に甘く、舌と唇で必死の愛撫。
時子の知っている、優君の唯一の弱点です。
メカニズムは分かりませんが、優君は“時子から”、“キス責め”されると弱体化するようでした。
「んっ!んん〜〜っ!」
それは今回も効いているようで、嫌がって左右に振れる頭を抱え込みながら、服を掴まれても気にせず。
ここで負けたらせっかく立て直した形勢がまた逆転するに違いありません。
「はっ、ぁ、ときっ……あ、んっ……んむぅぅっ!」
息継ぎを繰り返しながら、根気よく続けていると、服を掴んでいた手から力が抜けていきます。
優君はただ泣きそうになりながら、されるがままになってきました。
それでも唇を一瞬離すと「やめろ」的な言葉を訴えていたのですが、それに被せてキスし続けました。
そんな事がしばらく続き、やっとこさで唇を離した時子。
「……さぁ、お尻出そうか?」
そう声をかけると、ほぼ半泣き状態の優君が勢いよく体をひねって逃げようとします。
が、そうすると自然とうつ伏せになってしまって……
「いい子だね優君」
「違っ……!!」
偶然にも時子の方に向けられた優のお尻に、時子は思いっきり平手を落とします。
パァン!
「あッ……!」
(よし、このまま……もっと強く!)
パン!パン!パン!
抵抗される前に弱らせようと、それに服の上からという事もあったので
時子は力を入れて何度も叩きました。
優君は大げさなほど頭を跳ねあげて苦しそうに呻きます。
「時子さん……うぅっ!!」
「もっとお仕置きしてあげるからこっちにおいで?」
「嫌だ……!!」
その声にはただならぬ必死さがありましたが
意外にすんなり優の体を膝の上に引き寄せる事ができて時子は驚きます。
ともあれ、叩きやすくなったお尻をどんどん叩いていました。
パン!パン!パン!
叩かれれば叩かれるほど、優君は必死に叫んでいます。
「時子さん!!こ、こんなのDVですよ!?」
「……君だっていつも私のお尻叩くじゃない」
「僕のはお仕置きです!」
「私のだってそうだよ!!」
パァンッ!!
「ひぁぁぁっ!!訴えます!警察と弁護士に訴えます――――っ!!」
「やれるもんならやってみなよ!もう!どうしてお尻叩かれてるか分かってる?!」
「知りませっ……やぁぁっ!!このっ、ババア!暴力女――――ッ!!」
パン!パン!パン!
と、必死な割に反抗的な優君のお仕置きは激しさを増すばかり。
だんだんと子供じみてくる罵詈雑言に時子は呆れ気味です。
逆に優君はだんだん涙声になって喚いていました。
「なっ、何なんですか貴女!?何なんですか!?このDVババア!!虐待魔!!
年増!厚化粧!小じわ妖怪!年齢肌!三段腹!たるみ!老化現象!」
「あ〜〜の〜〜ね〜〜ぇ……」
あまりの言いたい放題に、時子は振り上げた手をブルブルと震わせます。
さっきまで少しばかり“可哀想かな?”なんて思っていた気持ちは吹き飛んで、
新たな怒りだけが湧いてきて……怒り笑顔で優君を見下ろして言います。
「あ〜〜ぁ、そう?ふぅ〜〜〜〜ん、そういう事言う?
君が全っっっ然、反省してないのが良〜〜〜〜く分かったよ!そんな悪い子はこうしちゃうから!」
時子は勢いよく優君のズボンに手をかけます。
すると、優君の方も危機を感じたのが焦って震える声が聞こえました。
「やっ!?や、やだっ、待って!!」
その制止を聞かずに時子は優君のズボンも下着も下ろしてしまって、
なおかつ思いっきり彼の裸のお尻を叩きました。
ビシッ!!
「やはぁぁぁぁっ!!」
「おっと、ずいぶん大きな声が出たね。これで、少しは素直になれる!?」
ビシ!ビシ!ビシ!
その肌が赤くなるほど何度も何度も時子は優君のお尻を叩きます。
そうすると優君はますます必死に叫んでいました。
「やめてくだい!やめて……お願いだからぁっ!!」
「だったらちゃんと反省しなさい!どうしてお客さんにあんな事したの!?」
「だって、だっ……ヤダ、嫌だぁぁぁぁッ!!」
ビシ!ビシ!ビシ!
もう悪態をつく事もなく優は叫んでいました。
すでに泣きそうだった悲鳴はみるみるうちに泣き声へと変わっていきます。
「痛い!痛いです!離せぇぇぇっ!!」
ビシ!ビシ!ビシ!
「ふ、ぅぅっ、うぁぁ――――ああん!!」
ビシ!ビシ!ビシ!
「痛い!痛い――――!うわぁぁぁああん!!」
「優君、お客さんに悪戯するような子はこうなるんだよ?!分かった!?」
「やだぁぁぁあああっ!痛いぃっ!うわぁぁぁああん!!」
「分かったの!?」
「うわぁぁぁああん!!やぁぁぁあああっ!」
「優君!?お返事は!?」
「痛いぃぃぃぃっ!!うわ――――ん!!」
(優君……)
いくら時子が声をかけても優君は泣くばかりなので時子は少し困ってしまいます。
一旦手を止めて優君に声をかけました。
「……もしかして、優君って意外と叩かれると弱かったりする?」
「うっ、ひっく、そんなわけないでしょうッ!?」
「……そう」
ぺんっ!
「わぁっ!!」
分かりやすく強がっている優君を、時子は軽く叩きます。
これ以上本気で叩いても会話にならないと思ったので。
それでも優君は過剰反応で痛がっていましたが。
ぺん!ぺん!ぺん!
「いっ……やぁっ!!」
「優君がちゃんと“ごめんなさい”して、もうしないって約束してくれたら
お仕置き終わりにしてあげるよ?」
「うぅっ……!何て偉そうなババア……時子さんのくせに……時子さんのくせにッ!!」
「…………」
ビシ!ビシ!ビシ!
再び強く叩くと優君は大慌てで謝ります。
「わぁぁぁぁっ!やだぁぁぁぁぁっ!ごめんなさい!ごめんなさぁぁぁぁい!!」
「もうしない?」
「もうしません!!謝りますからっ、あの人達にも謝りますからぁッ!!」
「最初からそうやって、素直に言えばいいのに……」
「黙れ……本っ当、黙れ……」
ビシ!ビシ!ビシ!
「わぁぁぁぁん!!ごめんなさぁぁぁぁい!!」
「優君は、もうしばらく叩かないと素直になってくれそうにないね!?」
ビシ!ビシ!ビシ!
謝罪→暴言→謝罪→暴言→謝罪→暴言……を繰り返しつつ、どうにか許してもらえた優君。
よっぽど膝の上が嫌だったらしく、瞬時に飛びのいてズボンをはいていました。
そして、慰めようと近づく時子から顔を逸らして涙ながらに言います。
「見ないで下さい!見ないでっ……こんな、カッコ悪い……!!
僕はもう、子供じゃないのに……うぅっ、えっく……!」
「優君……バカだね……」
苦笑しつつ、そんな優君を抱きしめる時子。
胸に抱いた優君の頭を撫でながら言います。
「好きな人の泣いてる顔、カッコ悪いなんて思う人はいないよ。早く泣きやんで欲しいなって、思うよ」
「貴女がやったくせに……!!」
「そうだね。君が悪い子だったから」
「うっ、ぇっ……年上ぶって!!」
「はいはい。いつまでもふてくされてないで……泣きやんでよ」
「嫌です!!貴女のせいだ!責任とって下さい!!」
優君は叫んで、ガッシリと時子にすがりていました。
(もう、甘えんぼ……)
言葉に出すとまた喚かれそうだから、心の中でそう呟いた時子でした。






気に入ったら押してやってください
【作品番号】KS4

戻る 進む

TOP小説