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◆◆二宮と綴の作戦会議


ここは私立沙華味小学校。の、昼休みの保健室。
「う〜〜ん」
二宮雅がずっと真顔で何か考え込んでいた。
それを心配そうに見つめていた後輩の遠野綴は、たまらず彼に声をかける。
「あの……二宮さん、どうしたんですか?」
「つづり、ボクはシンケンに考えているんだよ!“いたずらしてもETにお尻を叩かれない方法”を!」
「えっ?は、はぁ……」
綴は一瞬驚いたように目を見開いて、おずおずと言う。
「えっと……それは、いたずらをしなかったら、いいんじゃないですか?」
「つづり!それは違うよ!」
二宮は、真顔で力説する。
「君は“女の子に振られない方法”を考える時、“恋をしなければいい”って言うのかい!?
そんな世の中はロマンチックのカケラも無い、なんせんすな世界さ!
君も恋や愛の無い世界はつまらないと思うだろう!?」
「おっ、思います!!」
綴もまた、真剣な顔で頷く。やや頬を赤くして。
「そう!大切なのは愛と平和と自由!ラブ&ピース&ジユウさ!
子供のむじゃきな自由を奪うETは全く、ダメだね!
彼はもっと愛を持って子供に接するべきだよ!つづりもそう思うだろう!?」
「愛……ラブ……」
二宮の言葉を聞いているうちに、綴の頬はますます赤くなる。
ひとしきり、ぽやっとした後、大きく何度も頷いた。
「思います!そう、思います!!」
「だろう?これは重要なカダイだね……何かいい方法はないかな〜〜?
逃げる・キックする・パンチする……どれもイマイチ、ピンとこなくてね。
つづりは何か思いつく?」
「え、ええと……」
二宮と綴は一緒に“う〜ん”と唸って考え込む。
けれどお互いに良い案は浮かばなかったようだ。
二宮がポンと手を打った。
「仕方ない!ここはETになりきって“しゅみれーと”してみよう!」
「しゅみれぇと?」
「それをやってみるって事さ!じょうきょうを、サイゲンすれば何か分かるかもしれないよ!」
「に、二宮さん何だかカッコいいです!!」
「ありがとうつづり!じゃあ、ボクがETの役をするから」
「つづりは、二宮さんの役をするんですか?」
「う〜ん、君は君でいいよ」
「分かりました!」
勢いでやる気になってしまった綴と二宮。
二宮が張り切ってさっそく指示を出す。
「シーンはこうだ。“君が田中におもちゃのヘビを投げていたずらをしたら、ETにお尻を叩かれそうになってる”」
「あわわ……田中先生かわいそうです……」
「いくらボクでもそこまでしないさ。でも、世の中何が起こるか分からないからね!
君は君の思う方法で“お尻を叩かれないように”やってみて?」
「わ、分かりました!」
「緊張しなくていいよ、リラックスね」
「はい……!」
妙な緊張感の中、“しゅみれーと”は始まった。
二宮はゴホンと咳払いをして、ワザとらしい悪役作り声を出す。
「フッフッフ……観念するんだつづり!ネタは上がってるんだ!もう逃げ道はないぞ!
無駄な抵抗はやめろ!悪い子の君の、可愛らしいお尻を俺に叩かせろぉぉぉ!」
「……」
この二宮の演技に、綴は眉を下げて抗議した。
「二宮さん、先生、そんなんじゃないです」
「えっ!?そうなの!?おかしいな、君相手なら、
こんな感じでヘンタイっぽいと思ったのに。じゃあ、どんな感じなんだい?」
「えっと……優しく、“つづり君ダメだよ”って、言ってくれます……」
「ふーん、なるほど」
モジモジした綴と納得した二宮が迎えたテイク2。
「つづり、田中に面白そうなイタズラして……ダメだよ?さぁ叩いてあげるから先生にお尻を見せるんだ!」
「せ、先生!ごめんなさい!あぁっ、それだけは許してください!もうしませんから!お願いです!」
「ダメだ!素直にしないと痛くしちゃうぞ!」
「そんな!!心を込めてごめんなさいする作戦が……!」
「ちょこざいな……そんな事でETの親玉である俺が許すとでも思っていたのかい?」
「うぅ……!」
怯えた表情で涙を浮かべる綴。
二宮は上履きを脱ぎ、ベッドに乗り上げて綴を膝の上に乗せてしまう。
「先生……!いやだ、許して!」
「ダメだよつづり、悪い子はお尻を叩かれる運命なのさ!」
この“しゅみれーと”、どこまで続くのか二人のどちらにも分からない。
分からないが、今それを終わらせる権限をもっているのは二宮だろう。
その彼は綴のズボンや下着を下ろして、肌を晒した小さなお尻を軽快に叩く。
パァン!
「やぁっ!」
ペンッ!ペンッ!ペンッ!
「いやぁっ……!先生、痛いです……!」
「つづりったらどうしたんだい?“心を込めてごめんなさいする作戦”なら、
もっとごめんなさいしてくれないと!一回じゃ許さないよ?」
ペンッ!ペシッ!ペンッ!
「あ、あ!ごめんなさい!先生、ごめんなさい!もうしないから……!」
「ふふっ、素直で可愛いねつづり。そんなじゃ、邪悪な心に囚われているETはもっと君のお尻を叩きたくなってしまうかも」
「やっ……そんな事……あぁっ!!」
二宮はそんなに強く叩いていないけれど、綴は叩かれるたびに悲鳴を上げて、瞳を潤ませる。
「嘘ぉっ!嘘ですそんなぁっ!」
「“お尻を叩かれない”ってのはもう失敗したけどさ、チャンスタイムだよつづり。
今度は“叩かれてもすぐ許してもらえる方法”を考えよう!
聞かせておくれよ。このETがすべてを許したくなる言葉をさ!」
ペンッ!ペンッ!ペンッ!
「あぁん!分かりませんもう!二宮さぁん……!」
「おぉ!その甘ったるい声はたばねにそっくりだね!さすが双子!」
「ひっ……!やぁぁああっ!!や、やめてくださいぃ〜!」
綴は必死で頭を横に振って訴えるけれど、二宮は感心したようにお尻を叩くだけ。
何度も叩かれているとほんのり色づいてきた。
けれども、綴の方もまだ余裕があるのかこんな疑問を投げかける。
「うっ、う……!に、二宮さん……たばね、君のお尻もペンペンした事あるんですか!?」
「そうなんだよ!前にたばねとも、このしゅみれーとをした事があってさ!
けど、結局たばねが可愛かっただけでいいアイデアは浮かばなかったな〜……」
「は、う……たばねくぅん……!!」
「あ。たばねを叩いた事を怒ってるの?ごめんよ、傷つける気は無かったんだ。君の事もね」
ペンッ!ペンッ!ペンッ!
「い、っ、いいです!分かってます……!」
「う〜ん……お尻、赤くなってきちゃったね?もうやめようか?」
「あっ……はぁっ……!!」
綴は大きく頷く。
しかし、その直後綴は閃いた!!
「……!!二宮さん……!お、思いつきました!」
「えっ……!!まさか……!!」
「せんせ……に、許してもらえそうなぁっ、言葉……!!」
「何だって!?聞かせて!!僕をETだと思って、聞かせて!!」
ペンッ!ペンッ!ペンッ!
二宮に緊張が走ったのか、無意識にお尻を叩く手が強まる。
綴は悲鳴と一緒に懸命に叫ぶ。
「あぁああん!!せ、せんせっ……せんせぇっ!!」
「何だい!?」
「好き……!あ、愛しています……!!」
「……!!」
驚く二宮。言い切ってくたっと力を抜く綴。
ついに、奇跡のワード発見か!?――と思ったが、しかし、二宮は困った顔をしながら言う。
「そんな、君にしか使えなさそうな作戦はキャッカだよ〜〜」
ピシャンッ!
「ひゃんっ!ごめんなさ〜〜い!」
再び悲鳴を上げる綴。
その時

「ただいまー!遅くなってごめんね綴君!」
にこやかに保健室に入って来たのは保健室の先生、藤堂寺至。
“しゅみれーと”していた二宮と綴は動きを止め、
「あっ……」
「せ、せんせ……」
「……」
藤堂寺も動きを止めた後、鬼のようなにこやかに顔を変えて二宮へ呼びかける。
「二宮……」
「ち、違う!ゴカイだよ!僕はつづりをいじめてたわけじゃなくて、
ETにお尻を叩かれない方法とか、叩かれてもすぐ許してもらえる方法をしゅみれーとしようと……!!」
「ほー、そりゃ良かったな!今から本物のETで試したい放題だ!」
真っ青になりながらの必死の言い訳も聞き入れられず、二宮はさらに必死に言う。
「あ、愛してるよET!!」
「はいはい俺も……」
その告白(?)をさらっと流しそうになった藤堂寺は、綴の潤んだ視線に気が付いて……
「愛してるわけないだろこの悪ガキめ!さっさとこっちへ来い!」
「ちくしょ――う!!」
素早い変わり身と共に二宮を捕まえていた。
そして綴は……
(や、やっぱり“好き”って言葉は大切にしなきゃ……許してもらうために使うなんて、
さっきはどうかしてたな……二宮さんごめんなさい!!)
そんな事を考えていた。

この後二宮は、綴が庇ってくれたので比較的軽いお仕置きで済んだらしい。




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【作品番号】AS6

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