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◆◆チャラ男と夜の街の話


繁華街の路地にひっそりと佇むクラブ『マドンナハウス』。
今日も店内ではマドンナ達と客が一時の夢の時間を楽しんでいるのだけれど……、
人々の目が届かないVIPルームでは、若いホスト風の男がママに土下座させられていた。
この男、この店の常連で雄嬢達にも可愛がられているのだが……私生活では奥さんに離婚されたり
たまに子連れで入店したりとややだらしなく、たびたび店内で問題を起こしていて、
今日はついにお仕置きされてしまったのだ。
「本当ッ、迷惑かけてスンマセンでしたッ!!」
「分かればいいのよ帳(とばり)ちゃん……」
にっこりとほほ笑むママは、バッと扇子を広げて口元を隠すと
その優雅な笑顔のまま優しい口調で、目だけ鋭く“帳ちゃん”を見つめる。
「さて、今日暴れて壊した物と、今まで“ツケ”で払ってる分のお代を頂こうかしら?」
「ヘヘッ……もちろん……」
ホスト風の男=帳は涙ぐみつつ愛想笑いを浮かべて、財布を取り出す。
そしてカパッと開くと顔面蒼白になった。
「あっ……!」
「どうしたの?」
「い、いや、今日も持ち合わせが無くて、ツケって事で……」
「あ゛ぁんっ!?」
「ひっ!!」
ママのドス声で帳は飛び上がり、後ずさって携帯電話を取り出す。
「ま、ま、待っ……栞(しおり)に借りる!!」
「やめなさい!アンタねぇ、どれだけ栞ちゃんに迷惑かけたら気が済むの!?
自分でした事ぐらい自分で責任取りなさい!!」
「で、でも俺今、金ねぇし!!」
「無いんなら体で返してもらおうじゃない……今からうちで働きなさい!」
「なっ……!!俺にオカマやれってのかよ!?無理無理マジ無理!!」
「あ〜ら、もう一回お仕置きされる方がいいって事かしら?」
ボキボキと拳を鳴らすママに、帳は髪を振り乱して首を横に振る。
すると、ママが強引に帳の腕を取った。
「決まりね!シャル!べス!帳ちゃんがお詫びに働きたいって言ってるわ!
お着替え手伝ってあげて!」
「はーいママ!」
「素敵!頑張りましょうね帳ちゃん!」
駆けつけたシャルロット&ベスティーナに両脇からホールドされて引きずられる帳。
「ぅお、おい!助けてくれよシャル!ベス!俺達友達だろ!?」
「イ・ヤ・よ!帳ちゃんってばいつもワガママ放題なんだから!」
「少しは私達の苦労を知って反省なさいな!」
「いやだぁぁぁああ!助けて束ぇぇぇ!!」
こうして、帳があっさり連行されて数十分。

ドレスルームでは変わり果てた彼が呆然と全身鏡を見つめていた。
「あ……あ……」
可愛いブレザー制服風のドレス。それに合わせたアクセサリーの数々。
アクセサリーの付いたシュシュで、下ろした髪を残して少しだけまとめられたサイドテールは、
クルクルと螺旋を描いて、明るい印象に。
そんな、すっかり女子高生風味にされた自分の姿に帳は……
「あ、あんだよっ!!俺ってばチョー可愛いじゃん!!!」
嬉しそうに鏡の両端を掴んでいた。
そしてそのテンションでシャルロットやベスティーナに向き直る。
「なぁなぁ!べス!束に送るから写メ撮ってくれよ!シャル!一緒に入ろうぜ!」
「……この子ったら嬉しそうじゃないの」
「いいじゃないシャル姐さん。ほら、撮ってあげましょ」
「も〜!!何でアタシがアンタと写んなきゃならないのよ!」
「その方が俺の可愛さが引き立つじゃん♪」
「どういう意味だゴラァァァァッ!」
騒いでいると他の雄嬢達も面白がって入ってきて、
ガヤガヤと騒ぎながら皆で記念撮影が終了。
源名は「強そうなヤツ!」との帳のリクエストで『イザベラ』に決定し、
帳はさっそく接客に挑戦する事に。先輩雄嬢達は心配そうだ。
「帳ちゃん!?アンタ今日は接客側なんだから、くれぐれも、お客さんに失礼の無いようにね?!」
「わーってるわーってる!チョロイぜ!」
シャルロットにヒラヒラ手を振った帳は、さっそく堂々とホールに歩み出て
メニュー表で肩を叩く適当スタイル(しかも仁王立ち)で、大声で叫ぶ。
「うぉーい!お前らチーッス!今日お前らを接客してやる事になった、
この店で最強のイザベラちゃんだぜ!遠慮せずどんどん貢げよな!ヨロシク〜〜♪」
固まる客達。そして唖然とする雄嬢達。
しかし帳は、楽しそうな笑顔でマイペースに辺りを見回す。
「さぁ〜て、どいつから接客してやろっかな〜??お!弱そうなヤツ見っけ!」
「ひっ!?」
帳と目があった気弱そうなサラリーマンが悲鳴を上げる。
ツカツカと無遠慮にそのサラリーマンの席に行って隣に乱暴に腰かける。
そしてグイッと身を寄せて……
「おいお前!」
「はっ、ハイ!!」
「何か酒注文しろよ!高いヤツな!俺も飲むから!」
「えっ!?えっと……じゃぁ……この、ロイヤルマドンナ……」
「はぁっ!?そんな安酒を俺に飲ませようってのか!?」
「ヒィィっ!!?」
「マジでテンション下がるんですけど〜!他のにしな!高くてウマいヤツ!楽しく飲もうぜ☆」
「ハイィッ!それじゃあ、えっと……えっとぉぉっ!!」
この最高に自己中心的な接客を目の当たりにし、辺りはざわつき始める。
「だ、ダメだわあの子!まるで乙女の繊細さが欠けてる!」
「あれじゃ恐喝じゃない!マリーちゃんといい、最近の若い子は……!」
「満点なのは笑顔だけね!もう、注意してやらなきゃ……」
そんな辛口評価の先輩雄嬢達。しかし……
「な、何だ……?あの可愛い子、ちょっと乱暴だけど……俺の中の何かが込み上げてくる!!」
「あの子、アレだ……何ていうか、そう!!“ギャル”っぽい!」
「そうだギャル!ギャル雄嬢!今までにないタイプだ!強引だけど可愛いし!」
客達は徐々に興奮に包まれていく。
そしてその興奮を抑制する物はこの店には無い。客達の言葉は熱いコールとなる。
「イザベラちゃん!こっちも接客してくれ!」
「おじさんが美味しいお酒を驕ってあげるよイザベラちゃん!」
急に周りから呼ばれ始め、帳は不思議そうに顔を上げる。
「あん?何だ?」
「イザベラちゃん!ほら!ほらお小遣いあげるからこっちおいで!」
「いいや!こっちだイザベラちゃん!好きなお酒頼んでいいんだよ!」
「イザベラ―!!俺だ――!援交してくれ――!!」
何だか熱いサラリーマン達にあちこちから呼ばれ、皆の必死な顔を見て
帳は盛大に吹き出し、手を叩いて大笑いだ。
「ヒャハハハっ!何お前ら!?チョーキメェ!!あははは!」
けれども気を良くしたのか立ち上がって、ビシッとポーズを決めて皆に向けて指を差し、言い放つ。
「けど、いいぜ!今日は俺“セッキャク中”だからな!お前ら全員とエンコーしてやんよ!☆」
「「「うぉぉおおおお!イザベラちゃん最高だぁぁぁぁ!!」」」
何だか、帳のペースに巻き込まれて盛り上がってしまった店内。
雄嬢達はげっそりしていた。
「……帳ちゃんに関してはもう、怒る気も失せるわね……」
「またママに慰めてもらって元気貰いに行かなくちゃ……」
「けど、どっちにしろ……」
落ち込む雄嬢達の中で、シャルロットが声を張り上げる。
「イザベラちゃん!!アンタ今日はもうお酒飲んじゃダメよ!」
「はぁぁぁぁっ!?えっ!?何で!?」
「酔ったら無茶苦茶するでしょアンタは!!」
「平気だって!飲めないのにタダ働きとかダルいし!!」
「お黙り!!ダメったらダメなの!いいこと!?絶対飲んじゃダメよ!?」
「え――っ!んだよ……ちぇ〜〜っ!!」
遠距離、大声の会話を終了させた帳はつまらなそうに頬を膨らませる。
隣の気弱サラリーマンが遠慮がちに慰めた。
「い、イザベラさん、元気出してください……僕、頑張って高いお酒頼みますから」
「マジで!?お前チョーいい奴だな!」
「イザベラさんのためなら!(ふぁぁぁっ!可愛いなぁイザベラさん!)」
そして、彼が頑張って注文した高いお酒が運ばれてくると、
ソフトドリンクを飲む帳と楽しくお話していた。
しかししばらくすると……帳は辺りを見回して、急に気弱サラリーマンにぎゅっと身を寄せる。
そして耳元で囁いた。
(なぁ、お前の酒、一口ちょうだい?)
「えっ……そんな、さっきシャルロットさんがダメだって……」
(いいじゃん一口だけ!バレないように!)
「でも……」
(頼むよ!飲ませてくれよ!ほら、こうやって……)
密着したまま、気弱サラリーマンのグラスを持つ手に、帳が手を重ねて……
真っ赤な顔をした気弱サラリーマンの手ごと、グラスを自らの口元に誘導する。
そして強引に飲んだ。本当に一口だけだったけれど。
その後は二カッと笑う。
「へへっ!ウマかったぜサンキュな!お前が無理やり飲ませたんだぜ?」
「あぁっ……そんな……!」
「ん〜〜、この作戦イケるな!」
ぺろっと唇を舐めた帳は立ち上がって、マイペースに席を移動していた。
「イザベラさん!僕を捨てないで〜〜!!」
と、そんな叫びも気にせず、帳は次から次へと席を移動してはそこの席に座る客から
こっそり一口お酒を分けてもらう……を、繰り返していく。
ある席では
「よぉおっさん!エンコーしにきてやったぜ♪まずはキスさせろ!そのグラスに!」
とか、またある席では
「って言うかお前メタボ過ぎ!感謝しろよ、メタボの元、一口もらってやんぜ!」
とか、違う席では
「バーカ!俺、ガキいるし……はぁ?人妻?ケーサンブ?って何部だよ!え?違う?
いいから乾杯しようぜ!お前の酒でな!」
とか、さらに他の席で
「下着の色?ショッキングピンクかな!オラ、答えたんだから酒寄越せよ!
お!サンキュ〜♪んっ……あ、さっきの嘘だけどな!」
とか……好き勝手に会話しながら色々な酒を飲み続けていたら、
さすがに酔いが回って来たらしい。
「ん〜〜……何だか、眠みぃ……」
眠そうな顔で目をこする帳。
この時横にいた恰幅のいい男性は、息を荒くしながら帳の肩を支えた。
「ど、どうしたんだいイザベラちゃん、おねむかな??
オジサンのお膝の上に座って、オジサンの肉布団でねんねするかい!?」
「ヒャハッ!お前の腹、もたれ掛ったら気持ち良さそうだもんな〜……ふぁぁっ、そうすっかな……?」
しかしここでまた客達のイザベラ争奪戦が始まる。
「イザベラちゃん!こっちの膝の方が座り心地がいいよ!」
「いいや!眠るならオジサンのお腹が気持ちいいよ!」
「イザベラちゃんのベッドは俺だ――っ!!」
ギャイギャイ騒ぐ客達の声が、帳の中で遠くなってくる。瞼が重い。
(何、言ってるか……分かんねぇなコイツら……)
「ちょっと!!帳ちゃんったら明らか飲んでるじゃない!」
「ヤダも――!あれだけシャルロットが念押ししたのに!」
(あ、やべっ……バレた……)
雄嬢達に飲酒がバレて焦るけれどもその気持ちすらフワフワ頼りない。
「飲んで、ねぇ……よ……」
言い返す言葉は半分夢の中で。
「もう……これは酔い覚ましも眠気覚ましも兼ねて、お仕置きが必要ね!」
「あらあら、いっそここでやっちゃう?」
「い、イザベラちゃんの公開お仕置きショーだと!?」
「見たい!見たいよぜひ前のステージで!」
「もちろんお尻は丸出しにしますよねっ!?」
雄嬢の声と客達の声が頭の中で混ざり合って反響する。
(何、言ってんだコイツら……冗談じゃ、ねぇ……!!)
心でそう思っても、すでに声を出すことすらできなかった。
眠る直前の凄まじい気持ち良さに囚われてしまって、指一本さえ動かせない。
(……―――)
次の思考は無く、帳の意識は一瞬にして闇に落ちていった。

と、次の瞬間――
バシィッ!!
「ひぁっ!はっ!!?」
激しい音と痛みで、一瞬にして目を覚ます帳。
体を跳ね上げて息を吸い込み、目を瞬かせて辺りをキョロキョロする。
目に入って来た光景は今までいた店でも自宅でも無い……
「あら、やっと起きた?」
「し、栞か!?」
離婚した妻の声が余計に帳を混乱させて、その上に体の違和感に気付く。
「な、な、何だよこれ!?」
後ろ手に手首を何かで縛られ、両足首も縛られて、服は着替えさせられたらしく
かろうじでパジャマの上だけ着せられた状態で、
素っ裸のお尻を突き出した姿勢でベッドに打ち上げられている。
そんなところへ次の一打がまた振り下ろされた。
バシィッ!
「ひぎゃっ!?な、何すっ……何なんだよコレぇッ!!」
「それはこっちのセリフよ!何なのよアンタぁぁっ!!」
ビシィッ!バシィッ!!
「痛てぇ!!痛てぇよ!!やめろ!固てぇし冷てぇし!」
「これ」
元妻の冷たい声と共に、目の前に突き立てられたのは、黒くて平たい、大きなヘラのような物体。
謎の物体を見た帳は声を震わせて問うしかない。
「何だよ、それ……」
「アンタをここへ送ってくれたオカマさんが、貸してくれたの。お尻を叩く道具なんですって」
「は!?」
驚く帳の目の前からその物体が消え、再び耐えがたい痛みがお尻を襲う。
ビシッ!バシィッ!バシッ!
「うぁああっ!だからっ!痛てぇって!叩くのやめろよぉっ!!」
「バカ言ってんじゃないわよ!アンタ何も覚えて無いわけ!?」
「っ、シャルの店で……バイトしてたんだよ!!」
「そうよね……店の方に散々迷惑かけた償いにね!
その途中で酔って寝て、送ってもらうとか、どれだけロクでもない男なの!?
もう私も頭にきて……!!」
バシィッ!ビシッ!
「いっ、あぁっ!落ち着けって栞!!ふざけんなよ!こんな事っ……!!」
「ふざけてんのはアンタでしょ!?聞いたわよ束も時々連れ込んでるって!
子供を……バカじゃないの!?何考えてんのよ!」
帳の元妻=栞は激高していて、何度も帳のお尻を思い切り叩いている。
道具を使っている威力も重なって、すでにお尻は赤くなっていたし、帳は堪らなくて必死に叫ぶ。
「や、やめろ!叩くなぁ!叩くなって!このっ……変態女ぁぁぁ!!」
「っ……!!」
栞が驚いたように息を飲んで、手が止まった瞬間、帳はチャンスとばかりに畳み掛ける。息を切らせて。
「よぉ栞……俺にこんな格好させてさ、縛って。お前の持ってるそれも、つまりはSMの道具って事だろ?
ハハッ……俺と別れて欲求不満なんじゃねぇの?そだろ?」
「…………」
「こんな事しなくても……言えよ。久々にヤろうぜ?なぁ、しお……」
バシィィッ!!
「ぃいったぁぁぁっ!!?」
「――どこまで……バカなのよ!!帳!!」
「ひっ!!?」
思いっきり叩かれた衝撃と痛みと、
その威圧的な声量だけで、帳は悲鳴を上げてしまう。
ビシッ!バシィッ!ビシッ!
「あっ、わぁぁっ!痛い!痛い痛い痛いぃぃっ!!」
「アンタね、冷静に自分が何をされてるか考えてみなさい!
お尻、叩かれてるのよ?分かる!?私、同じ事、綴や束が悪い事した時にもするわよ?!
アンタは、今、“お仕置き”されてるの!!」
バシィィッ!!
「っんだと!?バカ言え!!」
「仕方ないわよねぇ?アンタ子供と同レベルなんだから!」
「うるせ……んぁあっ!言うなぁぁっ!!やっ、やめっ……」
バシィッ!バシィッ!
「やぁぁああああっ!!」
すでに赤かったお尻をさらに叩かれまくった帳はついに泣き声のような悲鳴を上げる。
実際涙も出てきた。もがこうにも抵抗しようにも、手足は縛られている。
痛いし、それに先ほどのやりとりで変に羞恥心を煽られてしまった。
なのに、
「あんまり、うるさくしないでよね!綴や束を起こしたら可哀想でしょ?!
それとも何、“パパが悪い子だからお仕置きしてるのよ”って、教えてあげる?」
「ふざけんな!ふざけんなふざけんなぁぁぁっ!やめろ栞!栞、頼むからぁぁっ!!
うわぁああああん!!」
さらに煽ってくる。
帳は痛みと恥ずかしさと、あと焦りで訳が分からなくなってくる。
とにかく涙ながらに必死で叫んだ。
「や、やめて!!やめてぇぇっ!お願いぃぃぃっ!!」
「帳、アンタお仕置きされてるのよね?」
「それでいい!!もうそれでいいからぁぁぁっ!!」
「“それでいい?”何それ?」
ビシッ!バシィィッ!バシッ!
「あぁああっ!!もうヤダ!!痛い!お、俺が!!
俺が、お仕置きされてるんだよ!分かったよぉぉぉっ!」
「分かったなら、謝りなさいよ」
「ご、ごめん!俺が、悪かったからぁぁっ!!」
「“ごめんなさい”でしょ?」
「ごめんなさぁぁぁい!!」
ほとんど痛みに突き動かされての、言われるがまま、だ。
もう帳には反論する気力は無かった。
とにかく痛くて痛くて……しかも泣きながら謝らされて、気が付けばいつもの調子良さも抜けていた。
「うぁああああん!痛いよ!ヤダぁぁ!!」
バシィンッ!ビシィッ!!
「本当に反省したんでしょうね!?」
「した!したからぁ!うぇっ、ぐすっ、しぃちゃん!!も、ヤダぁぁぁ!!ごめんなさぁぁい!!」
「……反省したみたいね」
栞は大きく息を吐いて、手を止める。
そして、帳の手足の拘束を解いて、赤くなったお尻をゆっくり撫でた。
「ね……離れててもアンタの事、心配なんだよ?お願いだから、もうちょっとまともになってよ……。
私に、“束も引き取る”って言われたくないでしょ?」
「ぐすっ、まとも、だもん……!!しぃちゃんのために……、強い男に、なったんだもん……!」
「違うよ、帳……私は……!!」
「俺は……!!」
栞の言葉を遮った声は、いつもの調子を取り戻していた。
「束は、俺の事チョー愛してんぜ?引き離してみろよ、できるならな!」
「バカ……綴も、アンタの事好きよ……」
「……寝る」
「下、穿いてから寝てよね」
結局微妙な空気のまま、一つ屋根の下で一家四人が揃った夜だった。


【おまけ】
≪例の写メを束が見ました≫
束「わぁぁぁっ!パパちょー可愛い〜〜っ!!ねぇねぇ!またこのドレス着て〜〜!!」
帳「ヒャハハハッ!着ねぇよバ――カ♪ま、俺は何着ても似合うって事なのだ!」
束「ねぇ、センセーに見せてもいい?」
帳「いいぜ!でも、アイツロリコンだから惚れられたらヤバいな!」
束「せんせーは綴が好きだから大丈夫だよ!」
帳「え!?マジ?マジで?」
束「そだよ!」
帳「……ふーん……死ねって言っとけ」
束「も〜〜!!怒られるよ〜〜??」





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【作品番号】AS5

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