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◆◆ある日パーティーに潜入した話

町で噂の大富豪廟堂院家。
その大きな洋風屋敷は、ちょっとしたお城みたいでとても素敵。
今日は、その現実離れした豪華な門の前に小さなお客さんがいるみたい。
門の外から屋敷をじーっと見つめる、制服姿で良く似た顔の2人の小さな男の子達。
「…………」
「ね?つづり、来て良かったでしょ?」
活発そうな男の子が隣にそう問いかけると、
うっとりと屋敷を見ていた大人しそうな男の子が瞳を輝かせて頷きます。
「……う、うんっ!!すごいね!絵本の中のお城みたい!!」
「ね!すっごいね!いいなぁ〜オレもこんなお家に住みたいなぁ〜♪」
キャッキャとはしゃぎながら屋敷を見つめる男の子達の……背後から一人の青年が近づいて来て、声をかけました。
「いらっしゃいませご主人様。当屋敷に何か御用でしょうか?」
小さな2人がぱっと振り向くと、そこにいたのはにこやかなお兄さん。
ドラマで見る様な執事服を着て、荷物をたくさん持っています。
「あ!ひつじさん!」
「ちっ、違うよたばね君っ!“しつじ”さんだよ!!」
「あのねー、オレ達、エリちゃんが“隣の隣の駅で降りたら
お城みたいなおっきいお家があるよ”って言ってたから、見に来たんだ!」
元気いっぱいに答える男の子を、大人しそうな男の子はハラハラしながら見ています。
お兄さんはにっこりした笑顔で言いました。
「……千歳様や千早様のお友達ではいらっしゃらない……?」
「誰それ?」
元気いっぱいの男の子がそう答えた途端、お兄さんの顔つきが変わります。
少しむっとした顔に。
「こらチビ共!寄り道してねーでとっとと帰れ!お父さんとお母さんが心配すんぞ!」
「「!!」」
ガラリと変わったお兄さんの態度にビックリしてしまった2人。
優しく怒鳴られた感じなのですが、大人しそうな男の子は慌てて元気な男の子の手を引っ張ります。
「ごめんなさい!たばね君帰ろう!?」
「むぅ。お兄さんってばいきなり怒る事ないじゃん!つづりが怖がってるでしょ!?」
「たたたたばね君っ!!ぼくの事はいいよぉ〜〜っ!!」
勇敢にもお兄さんに立ち向かって言った男の子を、泣きそうな勢いでひっぱるもう一人の男の子。
お兄さんは困った顔でため息をつきます。
「あーハイハイ。いきなり怒って悪かったよ。ごめんごめん。
はいっ、謝ったから気が済んだろ?だから帰んな?こっちは今夜のパーティーの準備で忙しいの!」
「え!パーティー!?すっごぉぉい!ねぇねぇ、オレ達も来ていい!?」
「たばねくぅん〜〜!!」
今度はお兄さんと話しこむ勢いの男の子。腕を引っ張る男の子の叫びは聞いちゃいません。
お兄さんはますます困った顔を……するかと思えばにんまりと笑って言います。
「なぁチビちゃん達?その制服、沙華味小学校だろ?学校に電話してやってもいいんだぜ?」
「そ、それ困る!!帰ろうつづり!」
「ひゃぁっ!たばね君引っ張らないで〜〜っ!」
元気な男の子は、大人しげな男の子を引っ張って走っていってしまいました。
お兄さんもほっと一息ついて屋敷の中に入っていきましたとさ。


さて、お兄さんと別れた後の男の子達。
双子の束君と綴君は、お家(厳密には綴君のお家なのですが)に帰ってからも楽しそうにお喋りしています。
「つづり!あのお家、今日パーティーがあるって言ってたよね!?行ってみようよ!!」
「えぇええええっ!!無理だよ!お呼ばれしてないし……その、“こーくがい”だし……」
「へーきへーき!きっといっぱい人が来るでしょう?
可愛いドレス着て、お姫様に混じっちゃえば少しくらいバレないよ!」
「ド、ドレスって、ぼくたち男の子だよ!?それに、可愛いドレスなんて持ってないし!」
「ダーイジョウブっ♪作戦があるの!付いて来て!」
束君が明るい笑顔で綴君を引っ張って連れて行きます。
玄関まで来ると、お母さんに声をかけられました。
「あら、どこ行くの2人共?」
「たかし君のお家で遊んでくる〜!」
(たかし君のお家にドレスがあるのかな?)
束君が明るく答えるのを聞いて、綴君はそう考えました。
「そう。ちゃんとお行儀よくしなきゃダメよ?遅くならないように帰って来てね」
「は――い!」
「い、行ってきます……!」
2人で元気よく出かける双子達を、お母さんはニコニコと見送りました。


さてさて、その後2人がどうしたかというと……
「んま――っ!可愛いわぁ!やっぱり素材がいいとドレスも輝くのよ〜〜♪」
試着室の様な、綺麗な部屋の中で白いフリフリのドレスを着た女性が、ドレスアップした綴君を見て興奮しています。
水色の可愛らしいドレスで、バラやリボンの飾りがアクセントです。
一方の綴君は顔を真っ赤にして涙ぐんでいますが。
「あの……その、男の子なのに……変じゃ、ないですか……?」
「とんでもない!可愛過ぎてどうにかなっちゃうわ〜〜♥
男の子が可愛い物着たっていいのよ!綴君も束君もとっても可愛い!
おばさんが保証しちゃう!自信を持って!!」
「そうだよつづり!つづりはとっても可愛いよ!」
ちゃっかり女の人の横で綴君を励ます束君は、綴君のと色違いのピンクのドレスです。
「うぅぅ〜……何か違う気がします〜〜……」
と、綴君が恥ずかしそうにした時、誰かが部屋に入ってきたようです。
「やぁ、お揃いだねプリンセス達?じゃあ……ボクというプリンスと一緒にパーティーに行こうじゃないか!」
と、自信満々なのは王子様の格好をした二宮君。
ここは、ドレスショップを営む二宮君のお家だったのです。
そう言えば来た時には「お母さんに嘘ついたの――?!」って綴君が泣きそうになっていました。
と、いうところでドレスの女性……つまりは二宮君のお母さんが言います。
「あら雅。貴方は今日塾だから行けないでしょう?」
「え!?そんな!そこを何とか頼むよママン!塾なんか今日は休ませてよ!」
「何言ってんのアンタァッ!!!アンタは学校でイタズラばっかりしてるでしょ!!
先生に迷惑ばっかりかけて!分かってんの!?
せめていい成績取って、少しは評価が良くなるようにしなさいッ!!」
と、二宮君のお母さんが烈火のごとく怒鳴りました。ドレスとの違和感が半端ありません。
これには二宮君も逆らえないようで……しゅんと下を向いてしまいました。
双子は彼を一生懸命励まします。
「元気出してニノ!王子様の服、カッコいいよ!」
「あ、あの……二宮さん、パーティーに参加できたら、お土産を持ってきますから!」
「ありがとう……マイプリンセス達……」
二宮君がほろりと涙を流した瞬間でした。

※ちなみに、“パーティーって夜からだよねぇ”と、言うワケで双子と二宮君はしばらく一緒に遊びました。
塾へ行く途中まで一緒に出かけた時には、二宮君はすっかり元気になっていましたとさ。


さてさてさて、ついにドレススタイルの双子達は再び廟堂院家に到着です。
人々の流れに付いていきましたが、入り口で“しつじ”さんに声をかけられます。
「ようこそお越しくださいましたお嬢様。お二人でおいでですか?お父様やお母様はどちらに?」
しゃがんで優しく声をかけてくれるのは、昼間のお兄さんとは違って、
大人っぽいお兄さんです。綴君はほっとして、束君はいつもの調子で答えました。
「パパとママは、おねつがでて来られないんだよ!」
「……それはそれは……どうかお大事にとお伝えくださいね。失礼ですが、招待状はお持ちですか?」
「ううん!お家に忘れちゃったぁ!
でもねーオレ達、チトセちゃんとチハヤちゃんのお友達なの!だから無くてもいいよね!」
(たっ……たばね君ったら……!!)
堂々とお兄さんに嘘をつく束君に、綴君はヒヤヒヤ。
しかもちゃっかり昼間のお兄さんが言っていた名前を利用しています。
お兄さんは優しい笑顔のまましばらく黙って、こう言いました。
「失礼いたしました。どうぞ中へ。千歳様と千早様の所へご案内しますね」


こうして、まんまと潜入に成功した双子。
また別のしつじのお兄さんに案内してもらっています。
少し気弱そうな……けれど優しそうなお兄さんです。
並んで歩く双子な二人はひそひそと会話しました。
(たばね君、ダイタンすぎるよ!チトセ様やチハヤ様っていう子がどんな子かも分からないのに!!)
(えへへっ♪こうやって入れたんだから、もし、追い出されてもそれでいいじゃん!
それよりの周り見てみなよつづり!中もやっぱりゴーカだね!
それにさ、みんなおめかししてて可愛い!
お料理もちょーおいしそう〜〜!ちょっと食べられないかな?)
(もう〜〜たばね君は落ち着きすぎだよ!ぼくなんてそれどころじゃないよぅ!)
(……つづり、体、苦しくなったらすぐ言うんだよ?)
ふと、真面目な顔でそう言った束君。
真剣な“お兄ちゃん”の顔に、綴君はドキッとしてしまいながら頷きました。
そうこうしているうちに……双子がたどり着いたのは……

「千歳様……千歳様のお友達がいらっしゃいました」
「え?」
双子の目の前に立つ、“チトセ様”と呼ばれた男の子。
半ズボンの白いタキシードの様な正装をしている、大人しそうだけれど気品にあふれて、
周りにキラキラと光りが散らばる……のは、綴君の視覚エフェクトのよう。
(かっ……カッコいい……!優しそう……!ほっ、ホントに……ホントの王子様みたい……!)
と心の中で大興奮しつつ、真っ赤な顔でぽーっとしている綴君。
ここでは上手い言葉が出ないのか、緊張気味で黙っている束君。
そんな二人を“チトセ様”はすっと目を細めて見つめ……にこりと微笑みました。
「あぁ、君達だったんだね……こんばんは。来てくれてありがとう。
鷹森さんもご苦労様でした。もう戻っていただいて結構ですよ」
「はい。失礼いたします。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
お兄さんがいなくなり、双子達は呆気に取られていました。
なぜなら……“チトセ様”は、知らないはずの双子達に話を合わせてくれたのです!
二人は嬉しくて顔を見合わせましたが……それは一瞬でした。
「で……誰なの君達?この屋敷に潜り込んで何を企んでいるの?
それを聞きたくて話を合わせてあげたんだ。答えなよ」
急に別人のように冷た声でそう聞いてくる“チトセ様”。
笑顔なのに睨まれているような……そんな迫力です。
綴君は真っ青になってしまって、束君はすこし気圧されてしまったようで……
ですが、元気で勇気ある束君が答えました。
「なっ、何もたくらんでなんかないよ!!オレはたばねで、この子はつづり!
オレ達はただ、このお家がお城みたいで素敵だから、パーティーに出たくて来ただけだもん!」
「た、たばねくんっ……!」
震える綴君を束君が庇う様に背中に隠します。
そしてキッと睨んで言いました。
「つづりを泣かせたら、お友達になってあげないんだからねッ!!」
「……っ……!」
急に口元を押さえる“チトセ様”は、良く見ると笑っているみたい?
緊張していた双子はポカンとしてしまいました。
そして、“チトセ様”が肩を震わせながら言います。
「ごっ、ごめん……!君たちみたいな子供がっ、ふふっ、そんな悪意持ってるわけないよね……!
ふっ、あははっ!!」
思いっきり短く笑って、小さく深呼吸すると、“チトセ様”は最初と同じような爽やかな笑顔でした。
「疑ったり怖がらせたりして、ごめんね。僕は廟堂院千歳。お友達になってくれると嬉しいな」
“チトセ様”、改め千歳君の言葉に、双子はぱぁっと嬉しそうに顔をほころばせました。
「も、もちろん!オレ達も勝手に来ちゃってごめんね!オレ達、もうお友達だよ!ね!つづり!」
「はっ、ハイ!!よろしくお願いしますちとせ様っ♥」
「もう!つづりってば!お友達なんだからそんなにお行儀よく喋らなくていいの!ねーっ、ちーちゃん♪」
「あ、えっと……それじゃあ、ちーちゃん様……!」
さっそくフレンドリーにあだ名を付けた束君。顔を赤くしてモジモジしている綴君。
そんな正反対の2人にくすっと笑った千歳君。
ふと、3人の輪の中に入ってくる、もう一つの足音が聞こえてきました。
「兄様!探しました!こちらにいらしたのですね!」
とびっきりの笑顔で千歳君に駆け寄ってくる男の子。
千歳君とよく似た顔で、千歳君と色違いの黒い正装を着た男の子です。
「あら、ごめんね千早ちゃん。フラフラしてたら、つい……」
「いえ!兄様が謝る事は無いんです!オレが兄様と一緒にいたいだけなので!」
「ありがとう。僕も千早ちゃんと一緒にいたいから、これからはぐれない様に気を付けるね?」
「にっ……兄様……あぁ、幸せです!!」
千歳君の笑顔にすっかりメロメロの男の子。
仲良しな2人を見て、束君が興味津々に声をかけました。
「ねーねー!その子って、ちーちゃんの弟??」
「ちーちゃん!?」
ものすごい勢いで反応したのは千歳君ではなく男の子。
デレデレ笑顔をかき消し、敵意むき出しで束君を睨みつけます。
「きっ……貴様……兄様を“ちーちゃん”などと気安く呼んだか?」
「そだよ?お友達だもん」
「はぁっ!?口を慎め雌犬め!!貴様ごときが兄様と“お友達”だと!?
おこがましいにも限度がある……!身の程をわきまえろ!」
男の子に怒鳴られ、綴君はまたビクビクしますが、束君は負けません。
むぅっと頬を膨らませて言い返します。
「なにさ!オレ、犬さんじゃないもん!たばねだもん!
君ってば、ちーちゃんと全然似てなくてちょー意地悪だねッ!お顔はそっくりなくせに!
少しはちーちゃんを見習いなよ!」
「なっ……!」
束君の言葉に、男の子は顔を真っ赤にします。
「あ、当たり前だ!!オレが、兄様に似ているわけが無いだろう!
兄様はオレなんかよりずっとずっと素晴らしい方で……とにかく!!
お前ごときが気安く話しかけられる相手じゃない!さっさと消えろ雌犬!!」
「もう!だから犬さんじゃなくて“たばね”って呼んでよね!
君がなんて言おうと、ちーちゃんとは、もうお友達だも〜ん!」
「黙れ雌犬がっ!!」
男の子がそう叫んだ時でした。“ひっく”と、どこからか泣き声が聞こえました。
全員が声の方に注目すると、綴君がボロボロと泣いています。
「たばね、くんっ、いじめないで……くださっ……ひっく、
けっ、ケンカは、やめっ……ふぇっ……ぐすっ……」
この綴君の涙に、束君がますます怒って男の子に言います。
「ちょっとぉ!つづり泣いちゃったじゃん!君のせいだからね!謝んなよ!」
「うっ……そんなのっ……これだから女は!」
さっきまで束君に食ってかかっていた男の子は少し勢いを無くしながらも謝ろうとしません。
しかし千歳君に……
「千早ちゃん?ダメでしょう女の子を泣かせたりして……謝って」
「……!兄様……!!」
その一言で、しぶしぶながらも綴君に近付きます。
綴君はビクッと体を震わせますが、そっと手を取られて顔をあげます。
「わ、悪かった……お前を、泣かせたかったわけじゃない。泣き止め」
「…………」
悲しそうな顔で、そんな事を言う男の子。
近くで見るその顔は、千歳君に負けず劣らずカッコ良くて
黒の正装が凛々しい彼に良く似合っていて、まるで王子様……
周りにバラが咲き乱れる……のは、綴君の視覚エフェクトのよう。
綴君は急に恥ずかしくなって真っ赤になります。
「あの、ぼくも……急に泣いちゃってごめんなさい……貴方は、お優しい方なんですね……」
「――!!」
涙目でふんわりと微笑んだ綴君に、男の子は目を見開いて言葉を失います。
それを見て、千歳君も束君も嬉しそう。
「なーんだ!君って優しい子なの?じゃあお友達になろうよー!千早ちゃんだっけ?じゃあ、ちーちゃんね!」
束君の言葉に、男の子……改め千早君はまた怒鳴ります。
「うううううるさいッ!気安く呼ぶなッ!」
「あ、そっかぁ!ちーちゃんじゃ、ちーちゃんといっしょだからぁ、
ちーちゃんがちーくんで、千早ちゃんがちーちゃんでいいかな?」
「そ、そういう問題じゃない!オレをそのふざけた呼び方で呼ぶな!」
「あの……ちはや様……たばね君は、仲良くなりたいんだと思います……
たからその、許してあげて下さい……」
綴君にそっと手を両手で包み込まれ、千早君は怒鳴っていた声を和らげます。
「お前は、口のきき方をわきまえてるらしいな……つづり、だったか?
オレの玩具ぐらいになら、してやってもいいぞ?」
「お、おもちゃ……ですか……?その、えっと……良く、分からないけれど……
ちはや様に……遊んでいただけるなら、おもちゃ、なります……」
「お前……なかなか可愛いヤツだな……」
妙な絆を深めている綴君と千早君。
それを見た千歳君は(表面には分からないくらいに)不機嫌になって束君を抱きしめます。
拗ねたようにわざとらしい大声で言いました。
「あーあ!千早ちゃんたら女の子相手にいやらしい!
だったら……たばねちゃんは僕の玩具になってくれる?」
「うん!なるなる〜〜♪いっぱい遊ぼうね――!」
「もちろん。クセになるくらい、いーっぱい“遊んで”あげるよ?」
どこか妖艶な千歳君の笑みに気付かず、無邪気な束君。
そんな2人を千早君が黙って見ているはずがありません。
「ごごご誤解です兄様ッ!!こっ、こら雌犬!兄様から離れろ!!」
「えー。それなら、ちーちゃんこそ、つづりから離れなよ!」
「ほらっ!離れたぞ!」
千早君がバッと勢いよく手を振りほどくと……悲しげにしゅんとする綴君。
それをみた千早君が「うっ」と、気まずそうに顔をしかめて……
「にっ、兄様!!助けて下さい!」
と、千歳君に助けを求めましたが、千歳君はツンとそっぽを向いてしまいます。
「知らなーい。僕は新しい玩具で遊ぶから〜」
「あぁ見捨てないで下さい兄様!貴方の玩具はこのオレです!!」
「あらそう?じゃあ、たばねちゃん、つづりちゃん……皆で玩具で遊ぼうか?」
「えっ!?」
さらっと皆の“玩具”にされる事が決定して赤くなりながら青くなる千早君。
無邪気な束君が喜んでバンザイをします。
「わーい!ちーちゃん玩具だ――!」
「調子に乗るな雌犬!!お許しください兄様ぁぁっ!」
「女の子を泣かせたり(あと浮気)する玩具は皆でお仕置きしなきゃね?」
「そ……それは……!
せめて2人きりで!……っ、おいつづり!オレを助けろ!」
千早君、今度は綴君に助けを求めますが、綴君は真っ赤なほっぺに両手を添えて
うっとりとしながら下を向いています。聞いていません。
「ちはや様におしおき……おしり、ぺんぺんかな?そんな……ちはや様のお尻を
見ちゃうなんて、つづり恥ずかしいよ……!でもでもちはや様のお尻……
きっと素敵だろうなぁ……だ、ダメ!そんなの考えたらえっちだよぉ!」
「お……おい!何をブツブツ言ってる!?戻ってこいつづり!こら!お前はオレの玩具だろうが!!」
「……お仕置き、厳しくしなきゃね千早ちゃん……」
「何故ですか兄様!!?」
こうして、焦りまくりの千早君が報われる事なく、皆で遊んだのですが……
帰り道の綴君と束君がとてもニコニコと楽しそうだったので、
幼い二人が楽しい様な……普通の遊びだったようです。

さてさてさてさて、こうして帰って来た綴君と束君ですが、
帰って来て玄関の扉を開けると、大きな雷が落ちました。
「束!綴!こんな遅くまで遊ぶなんて……って何その格好!?」
ドレスへのツッコミもありましたが、双子のお母さんは2人の帰りが遅くて心配したようです。
夜からのパーティーでたっぷり遊んでしまって、もう夜も遅いですからね。
お母さんは怖い顔をしています。
「たかし君の家に電話したら来てないって言うし!二宮君のお家に電話したら
パーティーに行ってるって言うし!でもどこのパーティーか分からなくて……
なかなか帰って来ないから、お母さんとっても心配したのよ!」
「ごめんなさいママ……」
「お母さんごめんなさい……」
お母さんに怒られて双子達はしょんぼり。
そのお母さんは、怒鳴り疲れたのか「は――」と長い息を吐きましたが、ハッキリとこう言いました。
「いいえ!許しません!夜遊びする様な悪い子達はお尻ペンペンよ!ほら早くお尻出しなさい!」
お母さんは勢いよく双子達の体を床に押し付けて、お尻を並べて突き出させて、
スカートを捲ってパンツも下ろしてしまいました。
その間
「わぁぁぁんごめんなさぁぁい!」
「ふぇぇぇぇっ!」
と、束君が喚くのも綴君が泣きだすのも知らんぷりです。
すぐに丸裸になった小さなお尻達をぴしぴし叩き始めました。
「やぁぁっ!ママ痛いよぉ!」
「やっ……お母さんごめんなさぁい!」
ぴし!ぴしぴし!ぴし!
お母さんが代わる代わるお尻を叩くたびに、双子達は小さく跳ねて悲鳴をあげます。
でも、お母さんは
「ダメです!今日は貴方達がよく反省できるように、たくさんお尻を叩きますからね!」
といって、よけいに痛い平手打ちを双子のお尻に叩きつけていきます。
ぴし!ぴしぴし!
「「やぁぁぁぁん!ごめんなさぁぁぁい!」」
痛くて怖くて、双子はそろって悲鳴を上げました。
でもそれからも、お母さんは束君や綴君のお尻を叩き続けます。
ぴしゃんっ!
「ふぁぁん!痛いよぉっ!」
と、束君がお尻叩かれて悲鳴を上げた次は綴君のお尻に
ぴしゃん!
「あぁん!お、お母さん許してぇ!」
と、こんな感じで交互に悲鳴を上げながらお尻を叩かれ続けました。
お母さんも怒っているようで、一打一打がとっても痛くて
双子のお尻はみるみるうちにぴんく色になってしまいます。
「お母さん、いつも5時にお家に帰って来なさいって言ってるでしょ!
束とも約束したわよね!?お父さんのお家に行っても5時に帰って来なさいって!」
「んぁぁっ!約束したぁぁっ!」
「ふぇっ、うぇぇっ!約束しましたぁぁっ!」
ぴしゃん!ぴし!ぴしん!
「なのに、どうしてこんなに遅く帰ってくるの!夜にお外にいたら危ないのよ!
遅くなるならお母さんに言いなさいって、言ってるでしょ!」
「もうしない!もうしないよぉぉ!」
「もうしないからお母さぁぁん!」
ぴしゃん!ぴしゃん!ぴしゃん!
「まだ許しません!絶対“もうしない”って約束できるようにもっともっといっぱい叩きます!」
「やだぁぁっ!やだぁぁっ!」
「うぇぇぇっ!ぐすっ、痛いよぉぉ!」
綴君も束君も、痛くて痛くて涙が出てきました。
束君の方はついつい暴れてしまうのですが、お母さんが
「いい子にしてないと数を増やしますよ!」
と言って、ぴしゃん!と強く叩くので束君は抵抗もできませんし、綴君も怖くて動けません。
お母さんの手に厳しくお仕置きされ続けて、双子のお尻はついに真っ赤になってしまいます。
「ごめんなさぁぁぁい!ママぁ!痛いよぉぉ!」
「うわぁぁぁあん!お母さんごめんなさぁぁぁい!」
双子は我慢できなくてボロボロと泣いています。
ぴしゃん!ぴしゃん!ぴしゃん!
「「わぁぁぁあああん!」」
2人一緒に泣いても泣いても、お母さんは許してくれないようです。
一体いつになったら許してくれるのでしょう?
束君も綴君も不安になってきます。
(ママ、ずっと許してくれなかったらどうしよう……!)
(そ、そんなのやだぁぁっ!怖いよぉぉ!)
(大丈夫だよつづり!怖くないよ!)
束君が、手を伸ばして綴君の手をぎゅっと握ってくれました。
「ふぁっ……たばねくんっ……!」
その手をぎゅーっと握り返す綴君。
2人は何だか安心して、もう少しだけ、耐えられそうな気がしました。
((許してもらえるように、いっぱいごめんなさいしよう!))
心の中、お互いに頷き合った束君と綴君。
まだお仕置きの途中なのでお母さんの声が聞こえてきます。
「それに、束はお母さんに嘘をついて!綴はお熱が出たらどうするの!
本当に、今日は!貴方達なんて悪い子なのかしら!!」
ぴしゃん!ぴしゃん!ぴしゃん!
「わぁああああんごめんなさい――っ!もう嘘つかないよぉぉ!」
「ごめんなさい!ふぇぇっ!ごめんなさいぃぃ!」
泣きながら、真っ赤になったお尻で懸命にお仕置きに耐えながらも
2人は必死に“ごめんなさい”を繰り返しました。
痛いけれど、なるべく動かない様にぐっと我慢です。
ぴしゃん!ぴしゃん!ぴしゃん!
「うぇぇぇええん!ごめんなさいもうしません――!!痛い!痛いぃ!」
「あぁん!反省しましたぁ!ごめんなさい!もうしませんからぁぁっ!」
そうやって泣きじゃくる双子達を見てお母さんが、ふっと息をつきました。
で、束君のお尻を打ちます。
「束も!」
ぴしゃん!
「ひゃぁぁん!」
今度は綴君のお尻を打ちます。
「綴も!」
ぴしゃん!
「あぁぁぁん!」
そうやって呼びかけるように叩いて、最後に言います。
「これからはちゃんと5時に帰ってくるって、約束できるわね?!
それより遅くなるなら、きちんとお母さんに知らせること!
遊びに行く時は、ちゃんと、どこに行くか言わなきゃダメよ!?嘘つかないのよ!?」
ぴしゃん!ぴしゃん!ぴしゃん!
「「約束しますぅぅぅっ!ごめんなさぁぁぁい!」」
2人でそう叫んだら、やっとお母さんは許してくれました。

その後は、泣きながら2人でお母さんに思いっきり甘えて、
お母さんもたっぷり抱きしめて優しくしてくれました。
※余談ですが、束君はその日、綴君の家に泊っていきました。
酔っ払って大爆笑しながら束君を迎えに来たお父さんを、お母さんが追い返したのです。


さらにもう一つの余談ですが……

「あっ!あぁあああっ!兄様ぁ!」
薄暗い寝室の中。
あの素敵な正装はどこへやったのか、裸に網の目の様に張り巡らされた
ボンテージを身につけた千早君が壁に手をついて、真っ赤なお尻を振っています。
ビシィッ!!
「ひっ!」
真っ赤なお尻を無慈悲にいつもの笏状鞭で打たれて、千早君は悲鳴をあげます。
打っているのは正装のままの千早君でした。
いつもの可愛らしい笑顔は無く、表情を凍て付かせています。
「だって千早ちゃんが悪いんだよ?女なんかにデレデレするから……」
「ご、誤解です兄様!!オレは兄様が……」
ビシィッ!バシッ!
「んぁぁあああっ!」
千歳君が激しく叩くので、千早君は最後まで言えませんでした。
「口答えするなんて……やぁっぱり、今日は悪い子だね、千早ちゃん。
なんか僕、イライラしちゃうなぁ……」
「ごめんなさい兄様……!」
千早君はすぐ謝りました。
いつもより機嫌の悪そうな千歳君が怖いのです。
すぐにまた酷く叩かれるかと思ったけれど、なかなか次の一発はきません。
なので恐る恐る、千早君は言いました。
「お……お願いです!もう……もう、お許しください……!」
「そうだなぁ。今から僕が言う事、できたら許してあげる」
「は、はい!頑張ります!どうか、ご命令を!!」
やっと見えかけた希望の光。それに飛び付いた千早君ですが……
ビシッ!バシンッ!ビシィィッ!
「んあぁぁああああっ!」
何も返事のないまま再開されたキツイお仕置きに、千早君は混乱しながら悲鳴をあげます。
「あぁっ!兄様ぁ!兄様ごめんなさい!何でもします!何でもしますからぁぁッ!」
「うん……聞いてね千早ちゃんっ!もっともっと、泣きながら、可愛らしくっ!
僕に謝って謝って、懇願してよ許してってさぁ!」
「あぁっ!そんな兄様!お許し下さっ……あはぁぁぁんっ!」
ビシィッ!バシィッ!ビシィィッ!
千歳君は、この時やっと笑ったようでした。可愛らしいけれど残酷な笑顔で。
そんな笑顔で、真っ赤な千早君のお尻をもっと叩いて虐めて余計に泣かせてしまいます。
「うわぁあああん!兄様許して下さい!あぁああああん!」
「まだまだ!いーっぱいお仕置きしてあげるね!僕の玩具の千早ちゃん!」
ビシィッ!バシィッ!バシンッ!
千早君の泣き声をかき消す様に、千歳君の鞭の音が鳴り響きます。
このお仕置き、束君や綴君と……同じくらい長かったのでした。




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【作品番号】AB1125

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