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家政ごときじゃ救えない!?
第3話
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“Lilly room”と描いた金色のプレートがオシャレな部屋の前に佇む一人の少女。
白い扉の鍵穴に、アンティークなハートのキーを差し込んで開錠する。
そして、恍惚とした表情でうっとりと微笑んだ。
「新しいお手伝いさんはどんな男性(ヒト)かなぁ?イケメンだといいなぁ
今度は≪禁断の扉≫(キミ)の誘惑に耐えられる人だと思う?
楽しみだね、≪もう一人のボク≫(リリ)?」

*****************

田中温人(たなか はると)、現在執事……もとい、“家政夫”の求職中。
彼は、母校に推薦してもらった就職先、皇極園家、数住家へ家政夫として派遣されてみたものの
どちらの派遣先でもトラブルに見舞われて家政夫を続けることができなかった。
残るは芽家家、影井家の二件だが……温人が起死回生を狙ってやってきたのは……
「はぁぁ……やってきたぞ芽家家!!」
白を基調とした小さなお城のようなオシャレな一軒家。
先日、来ようとして予定を変更した芽家家だったりする。
緊張の面持ちでチャイムを鳴らす温人。
そんな温人を迎えてくれたのは……


「ようこそお越しくださいました……!」
「わぁああい!新しいお手伝いさんだ!」
美しい若奥様と、その娘らしき金髪碧眼の愛らしい女の子。
勢いよく温人に抱き付いた少女を、母親は優しい笑顔で窘める。
「まぁ、リリったら……いきなり抱き付いたら失礼でしょう?」
「だぁって!どんなお兄さんが来てくれるのか、とっても楽しみだったんだもん!!
うふふ カッコいいお兄さんで良かったぁぁ
「ごめんなさいねぇ?この娘ったら、お手伝いさんを雇うたびにこうなの」
「い、いえあの……僕は褒められて嬉しいです」
可愛い女の子に“カッコいい”と評価された温人が照れくさそうに笑う。
家の外観もそうだが、内装も西洋風の高級家具で上品に彩られ、
母子の美しいドレス姿も相まって、まるで物語の中の貴族の屋敷に来たようだと温人は思った。
女の子は上機嫌でずっと温人の腕を取ったまま離れず、温人は彼女をくっつけたまま
屋敷の奥方から仕事の内容を聞くことになる。
奥方がふんわり言うには、“家を開けがちな自分達夫婦と、帰り時間のマチマチな息子のいない間、
娘が一人なのが心配なので、面倒を見て欲しい”との事だった。
“娘の相手さえしてもらえれば、どう過ごしてくれても構わない”という……いわば
可愛い女の子と遊ぶだけで報酬がもらえるという、夢のような仕事だった。
「これから、よろしくね、お手伝いさん
ひたすら温人を気に入ってくれたような少女を見て、本当に天国のような職場だと温人は思う。

こうして、今までになく幸先のいいスタートな温人の家政夫生活が始まった。

「リリちゃん、今日は何をしようか?」
「“リリ”って呼び捨てにしてくれていいよ!リリもお手伝いさんの事、“ハルト”って呼んでいい?」
「もちろん」
「やったぁ!ハルト!ねぇねぇ、ハルトは彼女いる?どんな女の子がタイプなの??」
「え!?彼女はいないけど……そうだなぁ……優しい女の子が好きかな?」
「そっかぁ……!じゃあ、リリ、ハルトにすっごく優しくしてあげる
「あはは、ありがとう」
初日からよく懐いてくるリリと仲良く過ごす温人。
温人が面倒を見る事になった女の子、“リリ”は本当にいい子で、
少しおしゃまなところがあって温人を困らせるけれど、そんな所も可愛らしかった。

幾日も、一緒に勉強をしたり、本を読んだり、ゲームをしたり……楽しい時間を過ごす。
そうしているうちに、リリはやたらと温人と恋人のように過ごしたがった。
“リリちゃん”と呼ぶと“リリ”と呼ぶようにと根気よく訂正してきた。
「ねぇ、ハルトはリリと一緒にいて楽しい?」
「楽しいよ。リリちゃん……」
「“リリ”!!」
「リリ、とってもいい子だし」
「嬉しい!!ねぇ、だったらリリの事、彼女にしてくれる?!」
「う〜ん……それは……」
「えーっ!何がダメなの!?何でもハルトの好み通りにするから!ねぇ……
拗ねたような上目使いに、温人は子供相手だと分かっていてもドキッとしてしまう。
それでも、温人にその気は無かったのでやんわりとリリの言葉をかわしていた。
「僕、年上が好きなんだ……」
「嘘!?ヤダそんなの反則ぅぅ〜〜〜っ!!うう、大人っぽくなればチャンスある!?」
「リリは可愛いんだから、僕なんかより学校とかのカッコいい男の子の方がお似合いだって」
「リリはハルトが好きなの!学校の男子は子供っぽくて嫌!」
「……ええと……ごめん!トイレ!」
「!?逃げるのハルト!?」
「違う違う!本当に!」
「もう!ムードが無いんだから!!」
苦し紛れに、リリの部屋から出る温人。
一応本当にトイレを済ませて、リリの部屋に戻ろうとした時……ふと、行った事の無い方角が気になった。
昼間なのに、隠されるように薄暗いその方向へ、温人は好奇心から足を向ける。
廊下の突き当たりに一つの部屋があった。
見覚えのある扉。
“Lilly room”と描いた金色のプレートがオシャレな白い扉は、リリの部屋のものと全く同じだった。
一瞬、ドクンと温人の心臓が跳ねる。

(??ここも、リリちゃんの部屋のなのかな?)

不思議に思って、扉を見つめる温人。どうしてだか目が離せず、しばらく見ていると……
「ハルト」
「!!」
落ち着いた声で呼びかけられ、慌てて振り向くと、いつの間にかリリが立っていた。
彼女は笑っているけどどこか無表情のような顔で温人に言う。
「悪い子ね。その部屋は家族以外入っちゃいけない部屋だよ?
ママがうっかり言い忘れたみたいだけど」
「そ、そうなんだ!ごめん、見てただけで、何の部屋だろうって……!
あ、何のっていうか!リリ、の部屋だよね?」
「そうなの」
「だよね!」
「違う」
「!?」
「どっちを答えたらハルトは興味を失う?そのお部屋に入るとクビになっちゃうの。
今までのお手伝いさん全員そう。やっぱりダメって言われると男の子って抑えがきかなくなっちゃうのかな?
ハルトがいなくなったらリリ、寂しい……」
薄っすらとした笑みを張り付けたまま、リリは淡々と言葉を紡ぐ。
温人はいつもと違うリリの不気味さに声が出なかった。
「…………」
「ハルトは、言いつけを守れるヒトだよね?」
「……う、うん……」
「だよね!ハルトは他の男とは一味違うって思ってたの!!」
リリはいつもの調子で明るく言って、温人の緊張も少し解けた。
そのまま、リリは温人の横をすり抜けて軽やかに扉に近づきながら
「まぁでも、この部屋はいつも鍵が……」
ガチャッと、大げさにドアノブを回して。けれども決して扉は開けず。
「あら?鍵が開いてる……ママったら鍵をかけ忘れるなんてうっかりさん!それともパパかな?
うっかり夫婦で困っちゃう!」
驚いたようにそう言って、当然のようにポケットから鍵を取り出して扉を施錠する。
そして、温人に見せつけるように鍵を持って蠱惑的に笑う。
「今日は運が良かったねハルト!うっかり開けたらハルト、クビだったし!リリに感謝してね♪」
リリの一挙一動を見て、温人の心臓がドクドクと脈打つ。
そんな温人の動揺を見透かしたように、リリはますます楽しそうに笑う。
「ハルト……変な顔してるけど大丈夫?気になってきた?
またここに来て、扉を開けてみようかなぁって、思ってない??」
「お、思ってないよ!!」
「ふふふ……♪もし、ここを開けたら、
他の皆みたいにハルトもリリがお仕置きだからね?
泣くまでお尻丸出しにしてぺんぺん
「え!?」
「――って、言ったら悪い事は出来なくなるでしょう?!♪」
「からかわないでよリリ!!」
真っ赤な顔で上ずった声を上げるハルトに、リリが音も無く唇を動かして。
その後、また元気よく言う。
「あはははは!!お部屋に戻ろうハルト!!」
「リリの意地悪〜っ!」
「ふふ、ごめんなさい!もうハルトが困る事は言わないから!」
そうして、温人とリリは部屋に戻っていつも通り楽しく過ごした。


けれどその夜、自宅で眠る温人は思い出していた。あの時のリリの唇。その意味は――
“ほ ん と う だ よ”
そして、寝つけない夜を過ごした。

それからも変わらず、芽家家での家政夫生活は続く。
温人はリリと楽しく過ごしつつ“あの扉”の事は考えないように過ごした。
一方リリのアプローチも相変わらずで、しかし、だんだん彼女の兄が助けに来てくれるようになった。
“ユーゴ”と言う名のリリの兄は高校生の爽やかな好青年で、リリとも仲が良さそうだった。
もっとも、温人との“いい雰囲気”を壊される時は決まって「ノックぐらいしてよお兄ちゃん!」と怒っているけれど。
ある時、温人は思い切ってユーゴの方にあの部屋の事を聞いてみる。
「ユーゴ君、あのさ……この家の奥の方にリリちゃんの部屋がもう一つあるよね?
あの部屋、どうなってるかちょっと気になって……全然、入りたいとかじゃなくて!!
家族の大切な部屋なんだよね?でも、大丈夫だったらちょこっと教えてほしいな、なんて……」
その瞬間、普段は爽やかスマイルなユーゴの顔が曇る。
「……気になります?」
「え、あ!ごめん!ダメならもう聞かない!!」
「僕も、あの部屋は他の人にどう説明していいか分からないんです。
父と母には死ぬほど大切な部屋でしょうけど、僕はあんな部屋燃えて無くなればいいと思う。
あそこにはこの世の地獄と絶望と狂気が詰まってます……」
「え……」
暗い表情のユーゴから放たれる物騒ワードの数々に温人は青ざめる。
ユーゴは心配そうに言葉をつづけた。
「気になりました?今、気になりました?でもね、ハルトさん……
あの部屋に入るくらいなら、今すぐこの家に辞表を叩きつけて去った方がいいと思います。
その時、僕がいなかったら貴方を助けられる者は誰もいない。
僕……リリの相手は女性にさせるべきだと思うんです。両親はリリに甘いから……」
「……あの……」
「……ワケ分からない事言って、ごめんなさい。
とにかく、あの部屋には関わらない方がいいです。
あと、リリにセクハラされたら、突き飛ばして怒鳴っていいですからね?」
「あ、あはは……セクハラってほどでも……僕の方こそ、変な事聞いてごめんなさい」
消化不良な会話を苦笑いで打ち切った温人とユーゴ。
そんな二人を、階上からリリが無表情で見つめていた。


そこからそんなに日が経たずして、それはいきなり起こる。
温人とリリは本当にいつも通り過ごしていた。
楽しく遊んで、おやつを食べて、リリに口説かれて……そして。
会話が途切れたその次の瞬間、リリがやや暗い声で切り出す。
「……ハルト、お兄ちゃんにあの部屋の事聞いたでしょ?」
「!!う、うん……いけなかった?」
温人は動揺しつつも正直に答える。
すると、リリの返事は意外な物だった。
「……気になるなら、見せてあげようか?」
「え!?」
「ハルトは他の男とは違う気がするし……今まで、よく我慢してくれたから。
知ってた?あの部屋、ハルトのいる時はいつも開いてたの」
リリはポケットからあの時のハートの鍵を取り出して、ハルトの目の前に置く。
温人は謎が解ける予感にドギマギしたけれど、同時に底知れぬ恐ろしさも感じていた。
“この世の地獄と絶望と狂気が詰まっている”という、ユーゴの言葉を思い出す。
そして、目の前のリリが言う。
「一緒に行こうハルト?見せてあげる……“私達の地獄”」
「…………」
温人は鍵を見つめて、震えながら返す。
「……行かない……」
「どうして?興味があるんじゃないの?ひょっとして怖い?」
リリの言葉に温人は反応できない。それでも、リリは気にせず話を続ける。
「臆病なのねハルト……別に死体とかがあるわけじゃないよ?
もっともっと、おぞましい……けどね、とっても素敵な部屋なの!!あの部屋には天使がいるのよ!?」
だんだんと早口になっていくリリの口調も表情も、明らかに興奮していた。
それがますます温人を尻込みさせる。
反対にリリは温人にぐっと近づいて捲し立てる。
「行こうハルト!!アレを見た貴方がどんな顔をするか見たい!!
リリが誘ったからお仕置きは出来ないけど!でも待って!ハルト……!!
逆に……!意気地の無い子は“しっかりしなさい!”って、お仕置きしたくなっちゃうわ……
ここまでくると温人は少女相手に本気で身の危険を感じ始めていた。
リリにしがみつかれながら青ざめて、動けない。
「リリ、ちゃん……!!」
「ほらもう!!そういうの!ハルトは年上が好きって、厳しいお姉様に叱られたいとかそういう事?!
いいよハルト!リリの事“お姉様”って呼んで!?」
「ひぃぃいいい!?」
興奮で息を切らせるリリが服を脱ぎ始める。
服を脱ぎ捨てた彼女はセクシーなベビードール姿になってそして……

股間の一物をギンギンに勃起させていた。

「リリちゃ、えぇええええっ!!?」
「ビックリした!?でもこっちの扉はいつでも開けていいのよ!?Open the door!!」
りりは全く悪びれる様子も躊躇する様子も無く、雄全開♂で温人に伸し掛かる勢いで、
「いやぁああああああっ!!誰か助けてぇぇぇっ!!」
温人が乙女のような悲鳴を上げたその時……
部屋の扉が勢いよく開き、王子様が駆けつける。
「リリ!!」
「きゃぁああああお兄ちゃん!?ノックぐらいしてっていつも言ってるでしょ!?」
「嫌な予感がすると思ったらお前この痴漢!!ハルトさんに何やってるんだ!!」


ユーゴはリリを勢いよく捕まえて膝の上に乗せると、そのまま下着を下ろして
リリのお尻を叩き始める。
ビシッ!バシッ!!ビシィッ!!
「うわぁあああん!お兄ちゃんやめてごめんなさぁぁい!!」
悲鳴を上げて暴れるリリを、ユーゴは叩きながら叱りつける。
「お前は若い男に興奮するとすぐこれだ!セクハラは犯罪なんだよ!?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ハルトが可愛いからついぃぃぃぃっ!!あぁああん!!」
温人は驚きながらもただ目の前で繰り広げられるリリのお尻叩きを呆然と見ている事しかできない。
バシィッ!ビシッ!バシッ!!
「お兄ちゃん痛いもうしないからぁぁぁ〜〜っ!!」
「ハルトさんに謝りなさい!」
「あぁああん!ハルトごめんなさぁぁい!!」
リリは厳しく叩かれながら、体をビクつかせて必死に謝る。
「ボクっ……ボク!!ある時気付いてしまったの……!!
弱そうな若い男が絶望する顔とかお尻を叩かれる姿が興奮すると言う事に!!
最初は、からかってやろうと思って、お仕置きしたら思いのほかハマってしまってぇぇぇ!!
ハルトは……あぁっ、ボク好みの弱そう具合の男だったからぁぁっ!!」
「本当に弟がこんな……お恥ずかしい限りです!!精一杯反省させますので!!」
「うわぁあああん!!ごめんなさいぃっ!!」
(弱、そう……)
バシッ!バシッ!ビシッ!!
温人はリリの本音にショックを受けつつ、痛がって必死に謝るリリを見て早々に可哀想になってくる。
まだ混乱の治まらないまま、それでもリリを許す言葉を口にしていた。
「……い、いや……反省してくれたなら僕はそれでいいです……。
リリちゃんが、叩かれてるところも可愛いと思うし、だからリリちゃんの気持ちも分かるって言うか……」
混乱のあまり斜め上のフォローをかます温人。
これにはリリも赤面して恥ずかしそうになる。
「い、やだハルト……!そんな目で見ないで!!」
「そうですね!良く考えたら今のリリは信じられないくらいはしたない格好だ……!!
こんないやらしい下着姿、パパやママが見たら卒倒しちゃうよ!!」
「あぁお兄ちゃんまで!!い、言わないでぇぇぇっ!いやぁああっ!うぁああっ!」
バシッ!バシッ!ビシィッ!!
ワザとか天然か温人の援護射撃をしながら、ユーゴは思いついたように言う。
「そうだ!ハルトさんもリリのお尻を叩いてやってください!
そうしたらリリもお手伝いさんに手を出すのを懲りるかもしれない!」
「「!!?」」
このユーゴのアイデアに温人もリリも目を見開く。
お尻を叩いていた手を止め、ユーゴは驚くリリを温人の方へと差し出した。
「お願いします!絶望と恥辱まみれて散っていった可哀想な前任者たちの分も!!」
「そんなぁっ!!は、ハルト……」
リリは恥ずかしそうな、怯えた表情で身を引くけれども、
ユーゴが押し出しているので思うように後ずされない。
涙を流しながら、必死に温人に懇願する。
「お、お願いやめて……!もうしない……!若いお兄さんをお仕置きするのはやめるから……!!
うぅ、痛いよ……!!今、お尻叩かれたところがジンジンする……!!
これ以上叩かれたらボク……ハルト許して……!」
「リリ往生際が悪いよ!」
「お兄ちゃんは黙っててよぉ他人事だと思ってぇぇっ!!」
本気で怯えてるようなリリに温人は少し考える。
そして……
「…………リリちゃんさっき、僕、情けないけど本気で怖かった……。
だから、リリちゃん事怒ってるかも……」
「あぁ嘘……!!ハルト、ボク本当に反省してるのに……!」
「可哀想だけど、君が欲望に任せて叩いたお手伝いさん諸兄の無念を思い知るべきだよ……」
「うぅごめんなさ……」
リリが顔を覆って泣き出すのを温人は引き寄せて膝の上に乗せる。
少し気の毒そうな顔をした後、もう赤くなっているお尻に手を振り下ろした。
パァンッ!!
「いぃっ!!ごめんなさぁぁい!!うわぁあああん!!」
「弱そうだからって可哀想な事しないであげて!弱そうな男性を代表して異議申し立てるよ!めっ!」
「うわぁあああん!ごめんなさぁぁい!
これからは弱そうなお兄さんにも興奮せずぅっ!理性をもって優しくしますぅぅ!!」
バシッ!バシッ!バシィッ!!
「リリちゃんが彼らをどの程度痛めつけたか分からないけど!僕も手加減しないで叩くから!
その人たちの事を思い出した時に興奮するんじゃなくて申し訳なくなるくらい!」
「うわぁああん!痛いぃっ!ごめんなさい!ごめんなさい反省しました!あぁああん!!
あぁああハルトも皆もごめんなさぁぁい!!」
リリは暴れながら泣き喚いて、心底悔いたように謝り続けた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ボク、ごめんなさいうわぁあああん!!」
「リリちゃん……もうしないね?」
温人は手を止めて、リリを膝から下ろす。
リリはしゃくりあげつつも、必死に頷く。
「うん、もうしない……!ボク……大人の男を侮ってた……!」
「分かってくれて良かった。いい子」
「ハルト……!!」
温人が抱き付くリリの頭を優しく撫でる。
ユーゴもホッとしたように二人を眺めて、この場は丸く収まった。

そして……
心を入れ替えたリリは彼女(彼)なりの解決法を思いついたらしい。
「ハルト!思いついたの!リリみたいに男のお手伝いさんに女の子の恰好をしてもらえば、
こう、女同士みたいな感じになって、リリも邪な感情を抱かなくなると思う!
だからハルト!メイドか女教師に変身しましょう!きっと似合うわ!」
「リリ……!自分で欲望を抑える解決法を見出すなんて立派になって……!!」
「え……??」
その結果、温人はしばらく女装家政夫として芽家家で活躍したが、
羞恥心と揺らぐ男としてのアイデンティに耐えきれず……
「すみません……!!僕この職場辞めさせて頂きます……ッッ!!」
芽家兄弟に惜しまれつつも屋敷の家政夫を辞する事となった。

そして、思う。
結局、“あの部屋”には何があったのだろう……
中を見た時、自分はどうなってしまったのだろう……と。
それは、永遠に謎に包まれるのであった。


【おまけ】

温真「兄さん結局、芽家もダメだったんだね。あんなに嬉しそうで調子良かったのに……」
温人「うん……へへ。でも、温真は嫌だったんでしょ?ずっと何か機嫌悪かったし。
    結局はあそこも僕に合わなかったんだと思う。これはこの結果で胸に刻むよ……」
温真「!!……ご、ごめん……俺……兄さんの話聞いてて……リリって子に、
    その、嫉妬、してたのかも……ごめん……大人げなくて……」
温人「温真ってば……僕、職業柄色んな子のお兄ちゃんみたいになるけど、
    温真は僕の一番大切な弟に変わりないんだよ?」
温真「〜〜〜っ、嬉しいけど……兄さんのそういうとこ本当嫌い……!!」
温人「えぇえええっ!?何で!?今の言葉の何がダメ!?」
温真「嬉しいってば!もう!ダメじゃないよ気にしないで!!」
温人「???」



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【作品番号】kseihu3

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