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家政ごときじゃ救えない!?
第2話(後編)
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「おいで。四愛にもお仕置きはしなくちゃね」
「う、うん……そだよね。分かってる」
不安げな四愛は、ベッドに座る零座の膝の上でお尻を丸出しにされて、叩かれる。
ぱしぃっ!!
「きゃぁっ!ご、ごめんなさい!!しあのせいで〜〜っ!!」
ぴしっ!ぱしんっ!
「うぇぇん!ごめんなさい零座お兄ちゃぁぁあん!」
「正直に話してくれてありがとう四愛。今までずっと、辛かったね」
「しあ、ずっともやもやしてたぁぁっ!ごめんなさい!あぁああん!」
「嘘をつくのは悪い事だって分かったでしょう?」
「うん!!しあね、ふぇっ、もう、ウソ言わない!うっ、あぁごめんなさぁぁい!!」
「うん。四愛は素直に反省できて偉いね。もう少し頑張っていい子になろうね」
ぱしぃっ!ぱんっ!ぱんっ!!
「あぁあああん!ごめんなさいもうしませんん〜〜っ!!」
「優しくていい子の四愛。お前のおかげで、皆がいい子になれるよ。ありがとう」
「うわぁあああああん!ごめんなさぁぁい!!」
四愛は愛情多めのお仕置きで、真っ赤なお尻をもうしばらく叩かれたのだった。

***********************


俺の夢……。
思い出す、幼い頃の記憶。確か小学生くらいだったと思う。
『ねーねー、はるまは大きくなったら何になりたい?
僕はね〜、ケーキ屋さんと、サッカー選手と、宇宙飛行士と……』
この頃から相変わらずおっとり屋で夢見がちだった温人が、嬉しそうに言う。
けど、この頃から――
『お嫁さん……』
『え?』
『はるとの、お嫁さん……』
この頃から、あろうことか実の、しかも双子の兄に良からぬ感情を抱いていた俺は、
幼さゆえの無謀というか……とにかくこの時、思い切って温人に気持ちを打ち明けていた。
『…………』
幼いながらも自分自身、この気持ちの異常さは感じていたようで、黙ってしまった温人の返事が少し怖かった。
けど、優しい温人なら、俺を“気持ち悪い”と罵ったり、距離を取られる事は無いと、どこかで信頼してたのかもしれない。
それに、万が一……万が一、あぁ、温人も俺と同じ気持ちでいてくれたなら……
『はるま……男の子同士も、兄弟同士も、ケッコンできないんだよ?』
温人は純粋に困ったような顔で、物知らずな弟を諭す様にそう言った。
その瞬間、俺は理解した。
“温人に全くその気は無い”
一瞬でも、いや、何度も何度も幸福な瞬間を夢見た俺がバカだった。
温人にとって俺はただの双子の弟。当たり前の事。
その時の俺は自分の愚かさが恥ずかしくなって思わず泣き出していた。
『は、はるま!!泣かないで!!そうだよね、知らなかったよね!ごめんね!!』
温人は慌てて俺を慰めてくれて……
『大丈夫!ケッコンできなくても、僕とはるまは、ずーっと一緒だからね?
だって、双子の兄弟だもん!!ありがとうはるま……
僕のお嫁さんになりたいって、言ってくれて嬉しかったよ?』
今と変わらない、優しい笑顔でそう言ってくた。
そう……温人の優しさは子供の頃からずっと変わらない……
俺の気持ちも。

「ご、ごめんね急に引きこもっちゃって……ほら、今まで家政夫に行ってたところ、やっぱり上手くいかなくて……。
僕って執事……じゃない、家政夫の才能ないのかなぁ〜なんて、思ったら悲しくなっちゃって。
それだけ。何でも無いんだ……本当に、心配しないでね温真?」

だから……

「……っ、うっ、実は……!!」

温人を傷つける奴は、誰であろうと絶対に許さない。


爽やかな朝。
現在執事……もとい、“家政夫”の求職中の田中温人(たなか はると)は少し遅めに起床した。
「う〜〜ん、眠い……おはよー温真ぁ……」
「“おそよう”兄さん。俺もう朝ごはん食べちゃったよ?今から少し出かけて来るから、留守番ヨロシク」
「ん、いいけど……どこ行くの〜〜?あれぇ!?それ僕の服!?」
「ごめん、借りちゃった☆」
ニコリと悪戯っぽく笑った温真は、大きめのカバンを持ってさっさと出かけて行く。
「遅くなるなら電話かメール、入れるから」
「えぇっ!?ちょっと温真!?だからどこ行……もぉ〜〜……」
質問に答えてもらえなかった温人が、困った顔で取り残され……
「仕方ないなぁ……次の勤め先でも探そうかな?あ、一応、零座さんに改めて連絡……
あんな挨拶でバックレたらさすがに失礼だもんね。ええと、僕の携帯……は??あれ??」
温人が傍で見つけたのは“温真”の携帯で、
『ごめん兄さん。携帯も借りてくね?帰ったら返すから』
と、メッセージが入っていた。
「え――っ!!?何それ!?温真何がしたいのぉぉ〜〜……??
まぁいいやぁ、資料資料……っと、皇極園はダメだった……あとは、芽家と影井……あれ?数住は?」
と、温人がパジャマ姿でぽやんと資料と格闘していた。


その数時間後。
大学から帰宅して、自宅マンションの近くまできた数住二那は、ふいに前から声をかけられる。
「二那君」
二那は、そこにいた温人の姿を見ると一瞬驚いて……
「誰お前〜〜?何でいんの?」
と、明らかに意地の悪い笑みで温人を見る。
温人はそんな二那に動じることなく、彼の手を掴んで冷静に言う。
「謝ってよ」
「はぁ?謝るって何にぃ〜〜?全部お前の自業自得だろーが!!
離せよ!つか帰れ!ストーカーみたいな事してんじゃねーよマジでキモ……――」
そこまで好き放題言った二那はグッと温人にグッと引き寄せられ……
「お前が相変わらずのクズで安心したよ数住二那」
温人に感情の無い目で睨みつけられ、抑揚のない声で宣言される。
「同じ目に遭わせてやるからなクソガキ?」
「な……に、言っ、て……」
温人の剣幕に二那が呆然としていると、コロッと笑顔になった温人が言う。
「あはっ☆驚かせてごめんね二那君!
二那君の帰りが遅いから心配になって降りて来ちゃった!
ほらほら早く行こう!零座さんも一武さんも三羽君も、二那君の事待ってるよ?」
「はぁ!?ホント何なの!?帰れよお前!!二度と来んなって言っただろ!?」
「この前、勢いであんな電話したから、零座さんすっごく心配してくれてね!
でも、詳しいいきさつを洗いざらい話したらすごく同情してくれて……」
動揺している二那の叫び声を無視して、温人は話を続け、
「“弟達からも詳しく事情を聞きたい”って……」
勝ち誇った様な笑みを浮かべる。
二那が一瞬青ざめたが、
「それで勝った気になってんじゃねーぞクソニート……!!」
対抗するように温人を睨みつけて笑った。


そして……
「おかえり、二那と田中さん」
「ちょっと外でニート拾って気分サイアクなんですけど〜〜……」
笑顔で出迎えた零座に嫌そうな顔をする二那。
すまし顔でスッと横を通り抜けながら、ダルそうに話す。
「しーちゃんはぁ〜〜〜〜??」
「四愛は遊びに行ってるよ」
「えぇ〜〜零座いるわしーちゃんいないわニート拾うわ、もうガン萎えじゃん……
あ゛――!帰って来ないでサクとどっかで遊べばよかったぁぁ……」
「ダメだよ二那。今から大事な話があるんだから。分かってるんでしょ?」
「知らねーし」
冷たい表情で一瞬零座を振り仰いだ二那は、すぐにリビングの戸を開けて中に入っていった。
「一武!三羽君!」
「「二那!!」」
すでにそこにいた一武と三羽が不安げな顔で二那に反応する。
二那は不機嫌そうに兄弟に言う。
「もう、どうなってんの!?二人も何か言ってやった!?
どうせクソニートがある事ない事、俺らが悪いみたいに零座に吹き込んだんでしょ!?」
その言葉を聞いても、一武と三羽は沈痛な面持ちを崩さない。
「二那……ダメだ……」
「四愛が、全部……零座に……」
「……嘘………」
一瞬で二人の言葉の意味を理解した二那が、その場にへたり込む。
そして……――
「あぁああああ!しーぽんの心の清らかさが!優しさが!!五大陸に響き渡るぅぅううぁぁぁ!!」
「口止め無駄とか……!純真過ぎるだろ四愛!心臓クリスタルでできてんのかよ涙出る!!」
「もうヤダ!!しーちゃん天使過ぎ!!大好き!!」
各々例のごとく、四愛に対する愛情メーターが振り切れたところで、零座が三人に問う。
「四愛の言った事……田中さんに嫌がらせした事、全部認めるんだね?」
返事は満場一致で
「「「しーぽん
  しーちゃん が嘘つくわけないだろクソハゲッ!!」」」
  四愛
との事。
零座は軽く額を押さえながらもキッパリと叫んだ。
「……そんな悪い子のお前らには!僕が責任を持って、田中さんと同等の苦痛を与えてお仕置きしてやろうと思っいますッ!!
まずは二那!!」
「っぁ!?――ぁにすんだよ離せよ!!」
さっそく零座に引っ掴まった二那が叫んで暴れる。
しかし零座はそれを押さえ込みながら怒鳴り返す。
「お前が一番最低最悪!!覚悟しろよ!?一武!二那の携帯でお仕置きするとこ動画撮って!!」
「はぁ!?アッッタマおかしいんじゃねェの変態!?」
「それならお前も頭おかしい変態だろうが!!一武早く!!」
「嫌だ!ふざけんな離せぇぇっ!嫌だぁぁっ!!」
揉みあう二人を、というよりは“必死に嫌がる二那”見ている一武は動けずに動揺している。
「零座……兄さん……それは、さすがに……!!」
「一武!さっさとしないとずっと苦しむのは二那だからね!?
動画が撮れてない限りずっとお仕置きを続けます!!」
「ぅっ……くそっ……!!」
一武は悔しそうに、転がっている二那のカバンから二那の携帯を取り出して、動画機能を起動した。
そのカメラを辛そうに、すでに下の服を脱がされてお尻を丸出しにされている二那に向けて、言いにくそうに言う。
「と、撮ってるよ兄さん!!」
「やめてぇぇっ!!」
「いい子一武!!さぁ二那もカメラの前でいい子になって!
二那可愛いから、この動画ネットに上げたらきっと可愛い男の子が大好きなお友達が大喜びだね!?」
「嫌ぁあああああっ!!」
二那はとうとう床に座った零座の膝に無理やり腹這いにさせられ、そしてお尻を打たれ始める。
バシィッ!!
「ひゃぁぁあっ!?ふっざけんなぁぁっ!弟売るとか正気かよぉっ!!?
それが人間のすることかぁぁぁっ!!」
「二那も田中さんに同じ事しただろう!?悪いと思ってないの!?」
「うるせぇっ!テメェが二―トなんか連れて来なきゃこんな事にならなかったんだろうがぁぁッ!!」
「あぁそうですか!とりあえずその汚い口調が直るまではお尻ぺんぺんでお仕置きかな?!」
バシッ!ビシッ!バシィッ!!
「痛ぁい!!ふっ、やめろ!!やめろ!キモイ!!キモイんだよ変たぁあああい!!」
「変態じゃありません!悪い弟に清く正しいお仕置きを行ってるお兄ちゃんです!!」
「ウザいぃぃいいいいっ!!痛いぃっ!!」
叩かれ始めてからも、相変わらず悪口を叫びまくってる二那へ、
零座は慣れたように流してお仕置きを続ける。
二那が何を叫ぼうが、無視してお尻を強めに叩き続けた。
バシッ!ビシッ!ビシンッ!!
「変態!いたっ、クソっ!変態ぃぃっ!!離せよ!やめろぉぉおおっ!!」
ビシッ!バシィッ!ビシッ!!
「やめろ!やめっ……あぁああっ!」
バシィッ!バシンッ!バシッ!!
「いやっ、もうやだぁっ!はなっ……痛い!痛いってばやめてぇぇっ!!」
ビシンッ!ビシィッ!バシッ!
「や、やだぁぁっ!痛い!ほんとに痛いぃっ!やめてよ零座お兄ちゃぁぁん!!」
あれだけ悪態をついていた二那も、ずっと叩かれ続けると辛くなってきたようで、
赤くなったお尻で別人のように可愛らしく許しを乞い始める。
零座は手を止めずに尋ねた。
バシッ!バシィッ!!
「……反省したのか?」
「反省したからぁッ!もう、やめて!!」
「なら、全部謝れほら!!」
バシンッ!ビシィッ!バシッ!!
「あぁああっ!ごめんなさい!ニートいじめてごめんなさい!お尻叩いて動画撮ったりしてごめんなさぁぁあい!」
二那はうっすら涙目のになりながら、もがきながら必死で謝り続けた。
「ごめんなさぁい!!今までの事っ、全部ごめんなさいお願い許してぇぇッ!!」
「……だ、そうですけど、いかがですか田中さん?」
ここで零座からそう振られた温人は、ニッコリと笑って答えた。
「うん。謝ってくれてありがとう二那君。お尻、お猿さんみたいで可愛いね。絶対許さない」
「ぶっ殺してやる!!」
憎悪てんこ盛りの二那のこの暴言が許されるわけも無く。
「二那!」
バシッ!ピシィッ!!バシィッ!!
また零座に厳しく叩かれて悲鳴を上げる事になる。
「あぁああん!死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇ!!うぁああああん!!」
「あーあー!今までの“ごめんなさい”が全部台無し!まったく仕方ない奴だなぁ!!」
もはや泣き叫び状態の二那のお尻を困ったようにお仕置きし続ける零座へと、温人が声をかけた。
「零座さん、すみません。僕、二那君も、この3バカ共、全員許す気ないんで。
でも、しっかりお仕置きして下さってる零座さんの誠意には感謝してるんです。
零座さんのさじ加減でお仕置き終わってあげてください」
どこまでもふんわりと笑う温人に、零座は複雑な笑顔を返す。
「そうですか……じゃあ、全然反省してないし暴言ばっかりの二那は……
もっと特別仕様のお仕置きが必要かな?」
「っ……嫌!!もう嫌!!うぁあああん!仕方ないじゃん!ニートが煽るんじゃんかぁぁっ!!」
「二那……どいて」
お尻を赤くして涙を流しながらも、あまり態度の改善が見られない二那に痺れを切らしたように、
零座が膝から二那を退けて立ち上がる。
「いい加減にしな。本気で反省させてあげる」
「い……や……ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさい!!全部嘘です!!反省してます!!
お願い!零座お兄ちゃん!!いい子になりますからぁぁ!!ごめんなさいやめてぇぇっ!!」
二那が半狂乱で零座の足に縋り付く。が。
「うるさいなぁ口八丁下衆野郎」
「ひっ……!!」
めんどくさそうにかがんだ零座に、乱暴に胸倉を引っ張り上げられて怯えたように言葉を失う。
そして、普段とは別人のような冷たい目をした零座が、二那を睨みつけて言った。
「そのご自慢の可愛い顔をぶん殴るのは勘弁してやってんでしょ?言え。
『悪い子の二那をお仕置きしてくれてありがとうございます。いっぱいお尻叩いて下さい』だ」
「……こ、の……なを……ぁ……」
「聞こえませ〜〜んが?」
「悪い子の二那をお仕置きしてくれてありがとうございます!!いっぱい、っ、お尻叩いて下さい!!」
「……よし」
ヤケクソ気味に叫んだ二那の頭を撫でて、改めて零座が持ってきたのは、
やっぱり先日温人が暴力に使用されたパドル。
それを持った上での零座に再び膝の上に乗せられて、二那が相当泣き叫んでいた。
「うわぁああん!もうやだぁ痛いぃっ!あぁあああん!!」
「まだ何もしてないだろう二那?それに、痛いのは当たり前です!お願いだから心から反省して!」
バシッ!ビシィッ!バシッ!!
「うわぁああああん!ごめんなさい!ごめんなさぁぁああい!!痛い痛いぃぃっ!!」
バシッ!バシィッ!ビシンッ!!
「もうしませんんっ!あぁああああっ!ごめんなさぁぁい!うわぁあああん!!
零座お兄ちゃんごめんなさぁぁああい!うわぁあああん!やめてぇぇっ!もうしませんんんっ!!
あぁあああああん!!」
叩く前から大号泣の二那は、叩かれてからも大号泣で、
それでも容赦ゼロで叩かれまくって、思う存分泣かされていた。
そして……そのまましばらく叩かれ、やっと膝から下ろされたけれど、悪夢は終わらない。
「うん、よく撮れてる……」
一武から携帯を回収した零座が、撮れた動画を確認しながら笑う。
二那は座り込んだまま、それにすら反応できないほど泣いていたが、
「二那、学校楽しい?」
「……っ、ぇ……?」
零座の意味深な問いに、思わず泣き濡れた顔を上げる。
「二那はお友達がいっぱいいるみたいだもんねぇ……へぇ、ここに動画とか載せるとお友達の皆が見れるんだぁ……」
「や、やめ……」
青ざめる二那が思わず手を伸ばすも――
「はい、送、信、っと!」
ササッと携帯をいじる零座がしれっとそう言うのを聞いて、
「いっ……いやぁあああああああっ!!」
二那は叫びながらその場に突っ伏して泣崩れた。
「うわぁあああん!!うわぁあああああああっ!!」

そんな二那は放置して、零座が次のお仕置きターゲットに近づく。
「つ〜〜ぎ、三羽??」
「ひ、酷い!!酷い……!!二那、可哀想、だろ……!!」
「……何で二那の為に泣けるのに、田中さんにあんなひどい事したかなぁ?」
零座が頭をなでると、三羽が余計ボロボロと泣き出す。
「や、やめて……誰か、助けてぇぇっ……!!」
「泣いてもダメだよ?……でも、お兄ちゃんの悪いお手本見たから、三羽はいい子にできるかな?
自分でお尻出して反省できる?」
「うっ……!うぅっ……!!」
泣きながら、のろのろとズボンや下着を脱いで四つん這いになって、零座へお尻を向ける三羽。
「いい子。一武、仕事」
軽くそう言って、再び一武へ二那の携帯を投げる零座。
一武は携帯をキャッチして目を固く瞑って震えて、それでも、カメラを今度は三羽へ向ける。
三羽はすでにボロボロに泣いていた。
「うぇっ、ぐすっ……!!」
「さて……三羽は、実行犯、だっけ!?」
バシィッ!!
「うわぁああああん!!」
「ほら三羽、ほら!痛い!?ほらっ!!」
ビシッ!バシィッ!!ビシッ!!
零座が三羽のお尻に何度もパドルを振り下ろして、三羽がそのたびに泣き喚く。
逃げようとしたので、膝に乗せられてしまった。
「ごめんなさい痛いぃぃぃっ!!うわぁああん!!」
「痛いよね!?叩かれたら痛いよね!?田中さんにこういう事しちゃダメです!!」
「ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!!あぁああああっ!!」
「腕力のある奴が暴力振るうのはシャレにならないの!
三羽は“痛い”って事の恐ろしさを良く覚えて!田中さんも三羽みたいに泣くほど“痛かった”んだよ!?」
バシッ!ビシィッ!バシッ!!
パドルで最初から飛ばし気味に叩かれている三羽のお尻は早くも真っ赤で、
しかも最初から泣き通しで、今や泣き喚いて謝るを繰り返している状態になっている。
「ごめんなさい!うわぁああああん!!ごめんなさぁぁああい!!」
「うん、そう。三羽のした事はむちゃくちゃ悪い事だから何回も“ごめんなさい”しなきゃね?
田中さん、言ってたでしょう“許す気ない”って。お兄ちゃんの好きなだけお仕置きしていいって……
だから、悪い子の三羽はお尻が真っ赤になってもたくさん叩きます!」
「やだぁぁぁっ!ごめんなさい!零座お兄ちゃんごめんなさぁぁい!!やぁああああっ!!」
「仕方ないよねぇ、三羽も好きなだけ相手を痛めつけたんだから!!」
バシィッ!ビシッ!!バシィッ!!
「ごめんなさい!ごめんなさいぃいい!!痛いやだぁぁぁあああ!うわぁあああん!」
嫌がって泣いて暴れる三羽へ、まだパドルを緩めることなく振るう零座。
けれど、ここでお尻を叩きながら尋ねた。
バシンッ!ビシィッ!パァンッ!!
「三羽反省した!?」
「ごめんなさぁぁい!!わぁあああん!!」
ビシッ!ビシッ!バシッ!!
「もうしない!?」
「うわぁああん!!ごめんなさぁぁい!!」
三羽は“ごめんなさい”しか言えていないものの、零座は少し表情を和らげて、優しめに言う。
「……分かった。三羽は素直だね。じゃあ……」
零座がパドルを手放したので、三羽はホッとした表情になるが、
「今度はお兄ちゃんの手でお仕置きしてあげるから反省して」
「うわぁああああああん!ごめんなさぁぁい!!やだもういいぃいいいいっ!!」
また喚かされるのだった。
今度は零座の手で散々、赤いお尻を叩かれる。
パァンッ!ビシッ!バシィッ!!
「やぁああああ!!うわぁあああん!!痛い!痛いぃごめんなさいうわぁあああああん!!」
バシッ!バシィッ!ピシィッ!!
「ごめんなさぁぁい!!もうしなっ、反省したぁぁっ!!あぁああああん!!零座お兄ちゃぁぁあん!!」
と、大泣きながらもまたしばらくお尻を叩かれて、三羽もお仕置きから解放された。
二那と同じくその場で服も整えずに泣いていて……


零座は最後のお仕置きターゲットへと近づく。
「さて、覚悟は十分にできてるよねぇ、一武?」
「……態度はどうあれ、弟達は耐えたんだ……僕が逃げ隠れするわけにはいかないよ……」
「そう。いい心がけだよ。来て」
「いいけどさ、僕が行ったら誰が動画を撮るの?」
一武が泣きそうな笑顔でそう言うと、温人が近づいて、手を差し伸べた。
「あ、僕代わりますよ?」
「………」
その直後。
一武が温人を思いっきり殴りつける。
そして狂ったように叫んだ。
「お前さえ!いなければ!お前さえいなければ!!お前さえいなければぁぁぁ!!」
「一武!!」
慌てて一武を羽交い絞めにして止める零座は、そのまま怒鳴りつけた。
「やってくれるね……お前!!
お前は!後で特別枠でお仕置きしてあげる!!分かった!?」
「――……分かりました……零座兄さん……」
一武はあっさりとうなだれて、そのままへたり込んだ。
そして……
「……田中さん……」
座り込む弟達の中で、一人堂々と立っている零座が、
「本当に、うちの愚弟どもがご迷惑をおかけしました。
こんな感じのお仕置きで許して……いや、勘弁していただけますか?」
堂々と、どこかおぞましいような笑みをうっすらと浮かべて言う。
「十分です。ありがとうございました」
温人はそれに対しても、ニコニコと笑って答えて、お辞儀をした。


そして、数住家から帰る時。
マンションの入り口まで送ってくれた零座が言う。
「田中さん、この際だから聞いちゃいますけど……その髪、ウイッグですよね?」
「え?」
「誰なんです、貴方?」
「…………」
温人は一瞬だけ無表情になって……
「やだなぁ。僕は“田中温人”ですよ。この髪だって地毛です」
ふにゃりと困ったように笑う。髪を弄りながら。
すると零座もニコニコと穏やかな笑顔になった。
「……ですよね!いやぁ、何だか今日は雰囲気が違うような気がしたから!」
「ふふっ、零座さんったら!あ、動画ありがとうございました!絶対悪用しませんから!
僕があの子達に嫌がらせや暴力を受けた事話したら、弟がすごく怒っちゃって……。
彼にあの子達がちゃんと反省したよって、見せて納得してもらうだけなんで!」
「ええ。田中さんを信頼して託します」
「後で一武さんのも送ってもらえるんですか?」
「厳しいなぁ田中さん……分かりました。後で送ります。
こんな形でお別れになって、本当に申し訳ありませんでした」
「いいえ。ここでの経験も、次に生かしていきたいと思います」
そんな会話を交わして、お辞儀をして別れた。


その夜

「ひ、酷い……!!」
自身の携帯電話から流れる動画の中の阿鼻叫喚を見ながら、温人は真っ青になる。
一方の温真がすまし顔で言う。
「兄さんは本当に優しいんだね……俺は胸がスカッとしたけど」
「温真!!こんなの!勝手に!!だっ、だって!!二那君!これから学校どうするの!?
三羽君だってまだ高校生なのに、こんな!!」
「二那君のアレは、懲りさせるための嘘に決まってるでしょう?零座さんもそう言ってたよ」
「可哀想だよ!!」
涙目で声を荒げる温人に、温真がしゅんとする。
「……兄さん怒ったの?ごめんなさい……兄さんが酷い事されて、どうしても許せなかった……」
「あ……」
それを見て、温人の方も勢いを無くして、
「ち、違う……温真の、気持ちは嬉しい……だけど……」
「兄さん……ここで彼らを正しておかないと、他の犠牲者が出るかもしれないんだよ?」
「そうだけど……やっぱり……」
携帯電話を抱きしめて、涙を流した。
「僕が、きちんと彼らと向き合わなかったからだ……ごめんね、皆……」
「……俺の事、見損なった?」
元気の無い温真が尋ねる。
すると、温人は首を振って笑った。
「ううん。泣き寝入りも良くなかったと思うし……。ありがとう、温真。温真の行動力と度胸にはホントに感心しちゃう……。
け、けど……零座さん、あんなに優しそうな人なのに、怒ったら怖いんだね……」
「優しそう、ね……」
温真が呟く。
その言葉の続きは……
(俺はあの人、一番ヤバいと思うけど……)
兄に見せる前に削除した一武のお仕置き動画の中身を思い出して、胸の中でぼんやりと思った。


***********************


「あ――……一武も二那も三羽も四愛も可愛い――……
アイツらが四愛にがっつくのを阻止したかったけど思わぬ収穫
深夜。
自室のパソコン画面を、だらしない恍惚顔で、ヘッドホンをして見つめているのは数住家長兄、零座だった。
ループで映し出されているのは、今日撮って軽く編集した弟達の『お仕置き動画』だ。
その傍には“没収”の名目で手に入れた二那の携帯が無造作に転がっている。
「どうしよっかなぁ……もう一人くらい、誰か雇ったら、またアイツらお仕置きできるかなぁ……
けどなぁ……もうあいつらが四愛をどうこうするのも時間の問題だと思うんだよなぁ――……
告げ口のえっちな報復〜〜とか、やるかもしれないしなぁ――……
画面の中で手枷足枷をした全裸の一武が上半身を突っ伏しているのは、この部屋のローテーブルだ。
真っ赤なお尻をパドルで打たれて泣いている。
「……ならもう、いっそ、さっさと全員お兄ちゃんのモンにしちゃってもいいかなぁ――……
『こうして、お兄ちゃん大好きな可愛い弟達は、全員お兄ちゃんのお嫁さんになりましたとさ めでたしめでたし
……フフッ
ブツブツ独り言を言いながら、ニヤケ顔で画面を見る零座は幸せそうに呟く。
「一武、二那、三羽、四愛……お前ら全員愛してる
だから、お前等も全員お兄ちゃんを好きになってくれないと、な
画面は、またループを繰り返して冒頭に戻り、四愛のお仕置きシーンを再生し始めた。



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【作品番号】kseihu2b

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