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家政夫ごときじゃ救えない!? 第2話(前編) |
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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 田中温人(たなか はると)、現在執事……もとい、“家政夫”の求職中。 彼は、母校に推薦してもらった就職先の資料片手に町を歩く。 「う~ん……よし!“芽家(めいえ)”ってとこと“数住(すずみ)”ってとこの家に行ってみて、大きい方の家を今度の派遣先にしよう!」 先の名家、“皇極園家”への派遣は失敗したものの、あくまで大口狙いを諦めていない温人。 彼の双子の弟が知れば猛抗議が聞こえてきそうな結論を胸にそれぞれの家を視察する。 結果―― 「うん!芽家さんにしよっと♪」 “数住”の住所にあった、割とリッチそうな高層マンションを見上げた後、温人はそう結論付けてUターンしようとする。 ちなみに“芽家”の家は白を基調とした小さなお城のようなオシャレな一軒家だったりしたので、 温人はそっちへ行こうとしたのだが…… 「あの……もしかして田中、温人さん、ですか?」 「はい?」 背後から声をかけられて思わず振り返った温人。 人のよさそうな青年が、そんな温人の反応を見て、嬉しそうに手を打って微笑んだ。 「やっぱり!今度うちに来てくださる“家政夫の田中さん”ですよね!? いや~~っ、お待ちしていたんです!こんなに早く来ていただけるなんて! さぁ!こんな所で立ち話もなんですから!どうぞ家へあがってください!!」 「え、あ、ちょっ、僕は……!!」 「あ!申し遅れました!僕は“数住零座(すずみ れいざ)”と申します! 何だか思ったよりお若い方なんですね~~!!」 温人は、“零座”と名乗る青年に強引に連行されてしまう。 そして。 強制的にお邪魔したマンションの一室=数住家で、温人は事情説明を受けていた。 紅茶とクッキーをいただきながら。 零座はテーブルへ乗せた写真を温人の方へ差出して、指差しながら言う。 「今は僕しかいないのですが……この子が弟の一武(いぶ)、その弟の二那(にな)、そのまた弟の三羽(みう)で…… この子が末弟の四愛(しあ)。僕らは5人兄弟なんです」 「へぇ……」 今紹介された4人の男の子達が笑っている写真を見て、温人は微笑ましく思う。 遊園地かどこかで撮影されたらしき写真は、付け耳などを付けた兄達が四愛を囲んで楽しそうに映っていた。 「楽しそうですね」 「ええ」 「そういえば、他にもたくさん皆の写真が飾ってあって……兄弟仲がよろしいんですね」 「そうなんです……」 「零座さんがいつも撮影役なんですか?一番お兄さんだから大変ですよね」 「…………」 温人が何気なく言う。 見える範囲にあるたくさんの写真の、その全部に零座が写っていなかったからそう言ったのだけれど、 零座は顔を曇らせて言った。 「……いないんです」 「へ?」 「僕はほとんど……彼らが写真を撮った、その場にいないんです……」 「……えっ……??」 「田中さん!!」 零座が勢いよく身を乗り出した。 「聞いてください!!数住家が……僕が抱える大問題を!!」 温人が目を丸くする中、零座は語り始める。 「僕はこの家の長男として生まれ、その後一武が生まれました。 初めてできた弟はそれはもう可愛くて……色々世話を焼いたものです。 そして、二那が生まれました。僕も一武も、二那をとても可愛がりました。 その後、三羽が生まれました。二那も最初こそ、僕や一武が三羽を可愛がるとヤキモチを焼いていましたが、 次第に兄として、三羽を大切に可愛がりました。兄弟が増えるたび、僕らは絆を深めてきました。 ごく普通の、仲の良い兄弟だったんです。……次が、生まれるまでは……」 そこで、零座は一旦言葉を止め、頭を抱えて叫ぶ。 「五男の四愛が生まれた瞬間、すべてのバランスが崩壊したんです!! 僕の3人の弟達は、全員が狂ったように四愛に入れ込み始めた!! まるで崇拝するように、競うように四愛を可愛がって!!」 「か、可愛がってるならいい事なんじゃ……?」 「ええ、えぇ……それだけなら……!!」 零座は何度も頷きながら、それでも苦悩の色は隠せない。 頭を抱えたまま、絞り出す様に話を続ける。 「けれど……成長した彼らの膨大な愛情は…… 明らかに性的な含みを持って四愛に向けられるようになってきて……!!」 「!?」 「身内の恥さらし覚悟で言います!! 四愛は僕を除く兄全員から貞操を狙われている状態なんです!!」 「!!?」 驚き、青ざめる温人。 零座も相当参っている様子で言葉を紡ぎ続ける。 「弟達の行き過ぎた愛情を時々嗜めていたら、僕は3人に敵視されるようになりました。 “四愛へ愛情を注ぐのを妨害する邪魔者”だと。 ただでさえ、四愛を囲う彼らの結束は固くて……今や僕だけ完全にハブられ状態なんです!! 四愛も弟達が大好きなようで……僕も、弟全員が可愛いものですから、引き離す覚悟も無くて……!! いいえ、四愛の安全が第一、第一なんですが……!!」 そこでまた、零座は温人を見据えて、身を乗り出して懇願した。 「田中さん!!僕がいない間!! こう、家事をしに来る体で、弟達を見てやってはくれませんか!? 四愛とあの子達だけ、家に残しておくのが不安なんです!! どうにか、田中さんが助けて下さる間に……覚悟を決めて解決策を考えます!!」 「そ、それは、構いませんが……」 「うぅううっ、ありがとうございます……!! 僕、弟達皆が可愛くて……大好きで!最悪の事態だけは避けたいんです!!」 「……零座さん……」 最初こそ、勢いに押し負けて承諾した温人。 しかし、零座が安堵して涙ぐむ姿を見て……“力になりたい”と思い、そっと彼の手を取って微笑みかけた。 「零座さんの弟を想う気持ち、分かります。僕にも弟がいるんで。弟さん達の事、僕がしっかり守りますよ」 「田中さん!!本当にありがとう!!じゃあ! さっそく今日にでも、弟達が帰って来たら田中さんを紹介しますから! ……それまでお茶でもどうですか?」 こうして、晴れて“数住家の家政夫”となった温人。 その後は零座を元気づけながら、穏やかにお茶を飲む。 そして―― 「よし、皆揃ったね?」 夕方近くなって、温人は改めて零座の弟達と対面し、紹介される事となった。 零座が明るく声を張り上げる。 「えー、この方は!今日からこの家の事を手伝ってくれる家政夫の田中温人さんです! 掃除とか料理とか全部やってくれるんだよ!皆、仲よくしようね! 夜も、僕が戻るまでは皆と一緒にいてくれるから! 一武、二那、三羽、四愛、自己紹介と“宜しくお願いします”ってご挨拶して?」 「零座、何のつもりだ?」 真っ先に不満げな声を上げたのは眼鏡をかけた青年。次男の一武だった。 温人と零座を腕を組んで睨みつけながら言う。 「家事なら僕らが交代でやってる。人手は足りてるだろう?僕は家政夫なんて認めないぞ」 「交代ってか、お掃除やお料理はほ・と・ん・ど・俺が、一生懸命やってるんですけど~~。 それじゃ不満だからプロ雇うっての?零座ホンット感じ悪過ぎ! あ~~やだやだ!俺らへの当てつけで雇われたヤツとなんか仲よくできな~~い!」 一武に続けて、わざとらしい甘えた口調で拒絶するのは、一見女子のようにも見えるが三男の二那。 じとっとした不審な目で温人を見ている。そして…… 「べっつに夜が危険って歳でもねーし? 俺らがいればいいじゃん!部外者入れる方が危険じゃん! 要らねーよそんな奴!!」 ぶっきらぼうにそう言ったのは四男の三羽。一武や二那よりも体格がいい。 そんな彼は、零座や温人から顔を背け、視線の端だけで睨んでいた。 さっそく3兄弟からマイナス方向の洗礼を受けた温人が、 (こ、これは、相当嫌われてる……!!) と、どう無難に切り替えしたものかと考えていると…… 「はーい!すずみしあです!よろしくおねがいします!!」 「「「!!?」」」 突然、無邪気に響いた可愛らしい自己紹介…… 小さな可愛い女の子にしかみえない、稚い五男にして最強愛され末弟、 四愛の一言で、場の雰囲気は一転する。 一武、二那、三羽の三人は一瞬にして表情を緩め、頬を赤らめて口々に興奮気味に叫ぶ。 「びゃあああああっ!しーぽんの自己紹介かんわぃぃいいいっ!!」 「見ず知らずのおっさんに挨拶するとかしーちゃん天使!?天使なの!!?」 「四愛の素直さたまんねぇぇぇっ!!」 かと思えば素早く、抜群の団結力で手拍子と声をそろえてコールした。 「「「アンコール!!アンコール!!アンコール!!」」」 そんな3人を、零座が手慣れたように宥める 「はいはい静かに!ほら!四愛以外のお兄ちゃん達!ご挨拶は!?」 が…… 「は?毛根腐ってんのか邪魔すんな」 「ホンット、ハゲウゼェ」 「空気読めやクソハゲ」 またしても瞬時に態度の豹変した3兄弟にウザがられる。 しかし、この時ばかりは零座も黙ってはいなかった。 「……そっかそっか……お前らあとでお兄ちゃんと個人面談しよっか?」 笑顔(威圧)でそう言うと…… 「……数住一武です」 「スズミニナー」 「数住三羽」 一応、それぞれ“自己紹介”はしてくれた。 温人も、 「田中温人です。皆さん、よろしくお願いします」 と、ぎこちない笑顔で言うのが精一杯で。 「じゃあ皆、これからは田中さんの言う事聞いて、迷惑かけないように!」 との零座の言葉にも元気よく返事をするのは四愛だけで、 他は四愛に「ちゃんと“はい”しなきゃだめっ!」と言われてデレデレと(四愛に)「はぁぁい ![]() そんな、前途多難な数住家での家政夫の仕事が始まるのであった。 それから、家政夫としての生活が始まると、温人は懸命に数住3兄弟と打ち解けようと努力した。 しかし3兄弟はそんな温人を歓迎せず逆に…… ある日、おやつを作って四男の三羽に振る舞うと―― 「三羽君!ホットケーキ焼いたんだ!甘い物好き?」 「……あー!好き好き大好き!もらう!」 なかなかの好感触な返事に、温人はホッとして微笑みながら、 三羽にホットケーキの乗ったお皿を手渡す。 「よ、良かったぁ!足りなかったらもっと作るから、どんどん」 すると。 ガシャン! 「えっ……」 温人の目の前で、今しがた手渡したお皿が“叩き落ちる”。 ホットケーキと共に落ちた皿は割れ、温人は立ち尽くした。 三羽は悪びれる様子も無く、軽く言う。 「あ!ごっめーん!手ぇ滑った!うわー、ホットケーキ台無し!掃除も増やしちゃってごめーん!! えーでも、ホットケーキ食べたいなぁ!――なぁ、作り直してくんない?」 三羽のギラギラした目に射られて、明らかな悪意に温人はたじろいだ。 「(ど、どうしよう……これ絶対ワザとだよね……)あ、大丈夫、すぐ片付け……」 そうしてオロオロとしゃがみこむと、ちょうどタイミングよくリビングにやってきたのは四愛だった。 「みう!……どうしたの?あ!お皿落としちゃった??」 「四愛!?」 「仕方ないなぁ!しあも手伝ってあげるから拾って拾って!」 「いや、いいって!そいつが、四愛、危な……!!」 オロオロして四愛の腕を掴んで止める三羽。 その姿と、四愛の助けてくれようとした姿を見て……温人は自然な笑顔で言う。 「大丈夫だよ。僕が片付けておくから」 「本当!?ありがとう!良かったねみう!“ありがとう”は?」 「あ、ありがとう……」 四愛と温人を交互に観ながら、少し悔しげな三羽が言う。 その時には温人の心も完全に落ち着いて、自然と会話を続けられた。 「片付けたらホットケーキ、すぐ作り直すからね?」 「わぁ!ホットケーキだって! 良かったねみう!ホットケーキ大好きだもんね!一緒に食べよーね ![]() 「あ、あぁ……そうだなっ ![]() 最後には、嬉しそうにじゃれ合っている四愛と三羽を微笑ましく見つめていた。 またある日、洗濯をしていると三男の二那がやってきて―― 「あ、家政夫サンちょうど良かったぁ!これ全部洗濯してくんない?」 ドサッ!! 服がてんこ盛りに入った大カゴを温人の前に大げさに置いた。 その量と無茶な要求に温人も驚いて言葉を返す。 「これ、全部!?どうしたのこんなに!?」 「なんとな~く、洗いたい気分なんだよねぇ~~♪」 「……ほ、本当にこれ、全部洗濯するの?」 カゴの中の服は明らかにどれも着た形跡の無い物、つまり洗濯する必要の無い物で、 分かりやすい『嫌がらせ』の気配に、さすがの温人も粘ってみるが…… 二那は不機嫌そうに口調を強める。 「しーたーいーのぉー!ゴチャゴチャ言わずにやってよね!家政夫なんでしょ!?」 そんな時。 「にーなーちゃん!何してるの~~?あー!になちゃんのお洋服いっぱいだぁ!!」 タイミングよくやってきたのは四愛だった。 二那も可愛い弟の登場に、瞬時に顔を綻ばせて猫なで声を出す。 「し~ちゃぁぁん ![]() ![]() 向こうで遊ぼっか!!」 「うん!!しあ、になちゃんとファッションショーごっこした~~い!! そこのお洋服可愛いのいっぱいあるから、になちゃん全部着て着て!! しあはね、シンサインの人!」 「えっ…………そっかぁぁぁっ ![]() ![]() ![]() ![]() あ、お前、洗うの良いから。さぁ~~、しーちゃん向こうで遊ぼ遊ぼ~~っ ![]() ![]() 二那はご機嫌でカゴを持って四愛と一緒立ち去ってしまった。 こうして、温人に対する嫌がらせはまた一つ回避され…… またある日には、二男の一武が―― 「すみません家政夫さん?ホコリがまだ残ってるんですけど」 温人の掃除にケチをつける。 「あ!すみません!!すぐに……」 「ほら、ここにも……ふ~~っ、こんな雑な掃除をされるんじゃ、堪りませんねぇ。 弟達が健康被害に遭ってしまう……もう一度全室やり直した方がいいのでは?」 「す、すみません……!!」 温人がとにかく謝っていると、そこへタイミングよく 「いぶぽーん!しあもおそうじする~~!!」 と、“愛らしいメイド服”を着た四愛がやってきて……一武は顔を真っ赤にして絶叫した。 「ぎゃぁああああっ!しーぽん!しーぃぽん!!あががががが!!」 「どこおそうじするの?」 「そんな事よりも!今すぐ撮影会を!!」 「え、でも、かせいふさんのおそうじお手伝い……」 「そんな事もういいから!!貴方!もう掃除しなくていいですからっ!! だから行こうしーぽん!!これは最高のグッズが出来上がるぞ~~っ♪♪」 上機嫌で四愛を連れて行ってしまう一武。 そんな日々がありつつ…… まだ何の嫌がらせも無いこの日、家政夫中の温人は深いため息をついた。 (はぁ……何だか、お兄ちゃん3人組からは、露骨に嫌がらせされてるなぁ。 今日は誰が仕掛けてくるんだろ?シンデレラの気分……まぁ、すでに助けてくれる魔法使いがいるけど。 四愛君……いつも偶然、なのかな?) いつもタイミングよく現れて、兄達の嫌がらせの矛先を逸らしてくれる四愛の事を思い浮かべる。 四愛だけは、いつも温人に無邪気に笑いかけてくれて…… そんな事を考えて、無意識に頬が緩んでしまって、 「……何一人で笑ってんの?キモッ」 「!?」 いきなりの辛辣な言葉に一気に現実に引き戻される。 傍にいたのは二那で、裏のありそうな笑顔を温人に向けてあざとく小首をかしげる。 「ねぇニート、お話しよっか?」 「ニ、ニート!?」 「お前の事だよ。うちに入り浸ってるって事はお前二―トなんでしょ?」 「あはは、一応、“家政夫”って名目で仕事に来てるんだけどな……」 「俺はお前の事“家政夫”だなんて認めてねーし。それより……」 二那はそこで一気に距離を詰めて、温人の胸倉を掴む。 身長差の負けを感じさせない気迫で強気に温人を見上げて言った。 「お前、いつまでチョロチョロしてんの?さっさと家政夫辞めてくんないかな?どうせ零座の犬なんでしょ? 分かるよね?お前すっごい邪魔なの……しーちゃんと俺らの家に、お前も、零座の邪魔も要らない」 「そ、そんな脅しで、辞めると思う?」 温人も何とか言い返す。 が、二那がそれを嘲るように笑う。 「バカじゃなけりゃ辞めると思うけど?いい事教えてやろうかニート? 俺って、しーちゃん以外の兄弟の中では一番顔が良いけど、一番性格悪いの ![]() 人生にトラウマを刻みたくなかったら……今すぐ家政夫辞めろ」 そう言切った二那と、温人は睨み合う。 すると。 パリン!! 突然、何かの割れる音。 「ちょっと、何!?」 「行ってみよう!!」 「言われなくても……どいて!!」 二那は温人を押し除けて音の方へ走る。 温人もその後を追って……二人がダイニングで見たのは割れたコップの傍で慌てている四愛だった。 「し、しあじゃない!!しあじゃないよ!!」 兄と温人の存在に気付いて、四愛が必死で首を振る。 その瞬間、二那がポンと手を打って声を弾ませる。 「そっかぁ!じゃあニートだ!!」 「はぁっ!?」 「いやぁあああああっ!!誰か来てぇぇぇッ!!」 二那の悲鳴で駆け付ける、一武と三羽。 「どうした!?」 「何だ何だ!?」 「このニート家政夫がしーちゃんのカップ割っちゃったのぉぉぉっ!! もう最低!!しーちゃん、怪我は無い?!大丈夫?!」 「っ、うっ……!!」 二那は大げさにそう言って、心配そうに四愛の体を撫でる。 四愛の方は、居心地悪そうに何かを言いかけて口ごもった。 そして温人は当然無実を訴えようとする。 「ち、違います!!僕は……!!」 「貴様ァアァアアアアッ!!しーぽんの私物を損壊するとは何事だぁぁッ!! クビにしよう!こんな奴今すぐクビにしよう!!」 「あーあー……こりゃ救えねぇな。存在だけでも迷惑だったのに」 が、当然聞き入れてもらえない。 一武と三羽に犯人扱いされて睨まれる中、温人は再び無実を訴えようとするが、 「そん、な……き、聞いてください!!僕じゃ――」 「ねぇ、皆~~?こ~んな使えない、悪い家政夫には“体罰”が必要だと思わない? そうすれば、この身の程知らずのクソボケニート野郎も弁えて、きっと自主退職してくれるよ ![]() ![]() 二那がにんまりと笑いながら信じられない提案を出す。 その場にいる全員、一瞬驚いた表情になるものの、三羽と一武はすぐにニヤリと笑う。 「いいじゃんそれ。乗~~った♪!」 「ふふっ、名案だ二那」 「嘘だ……!!」 青ざめる温人。そこからの展開は早かった。 「それではさっそく……ニートさん?」 「ち、違う!!僕じゃないんです!信じて下さい!うわっ!!?」 「ギャーギャーうるせぇんだよニート。とっとと脱ぐモン脱げって」 「なっ!何するの?!三羽君やめ、てっ、やめて!!二那くっ……一武さん!!止めて下さい!」 「無能家政夫のくせに見苦しいですねぇ。お仕置きぐらいは優秀に受けたらいかがですかぁ?」 「うわ~~っ!面白ぉ~~い♪動画撮ろ~~っと ![]() ![]() 温人は三羽に押さえ込まれて、ズボンや下着を剥ぎ取られる。 一武にはニヤニヤと傍観されて、二那は面白がって携帯電話を向けている。 こうなってしまっては…… 「に、になちゃん、いぶぽん、みう……止め、てぇ……!!」 涙声で弱弱しく訴える四愛の声は誰にも届かない。 温人は、数住三兄弟の言いなりになるしかなくなってしまった。 壁に手をついて立っている温人の生尻を、三羽が思い切り叩く。 バシィッ!!ビシッ!! 「ひゃっ!あっ!!こ、こんな事ッ、犯罪ですよ!!?」 「はぁ?調子乗んな貧弱無能ニートのくせに」 ビシッ!バシッ!!バシッ!! 「うぁああっ!」 悲鳴を上げる温人を見ながら、一武や二那は好き勝手に会話している。 「これ犯罪だったら零座タイホだっつーの!まぁそれはそれでザマァだけど♪」 「僕らを通報するならお好きにどうぞ~~?しかしまぁ、“勤務先でお尻を叩かれました”だなんて、 マヌケな訴えで時間を割かれる警察の方々が不憫でなりませんが」 「そんな事自分からわざわざ警察に話すってマゾだよねマゾ!ウケる!」 バシッ!バシィッ!!ビシッ!! 「僕じゃない!本当に僕じゃないんです!!三羽君止めてよ!! せめて二那君のカメラ止めてぇっ!!」 一貫してバカにされた態度が悔しくて、そしてお尻を叩かれる痛みで、涙目になりながらも温人は必死で叫ぶ。 けれど、その言葉はやはり誰にも聞いてもらえず、二那が不機嫌そうに言う。 「……あのさぁ、ずっと気になってんだけど……何でお前、俺と三羽君にはタメ口なわけ?」 「あー!それ俺も気になってた!誰に向かって口きいてんだよ家政夫!!」 バシィッ!ビシィッ!! 「うぁあああっ!うぅっ!!」 三羽も二那に同調するようにそう言って、また温人のお尻を激しく叩く。 温人がもがいて悲鳴を上げると、また二那が言う。 「ニートさぁ、あんまりナメた態度だと、うっかり手が滑ってこの動画ネットに上げちゃうよ~~? お前のこんな情けない姿が世界中に晒されたら家族が泣いちゃうね!カワイソ~~!!」 「っ!!?」 その二那の言葉を聞いて、温人の頭に浮かんだのはいつも自分を励まし、気遣ってくれる温真の顔。 本気で悪寒がして叫ぶ。 「や、やめて!!それだけは!!本当にやめてください勘弁してください!!」 「うわ、ニート涙目じゃん!二那性格悪ッ!!」 「えー違うよ!三羽君が叩くから泣いてるんだって!」 三羽と二那の冗談を言い合うようなやり取りは、絶望する温人にはまともに聞こえていない。 温人はただ叩かれるがままで、本気で訴えていた。 「本当に僕じゃないんです!!うぁっ!ぁ!もう、やめて……!!撮らないで……うぅっ!!」 「「……ダッサ」」 「ううううっ!!あぁああ……!!」 年下コンビから本気の嘲り言葉に、温人は思わず泣きながら呻く。 そうすると、今度は一武が弟達に言った。 「やめないかお前達。俺達はあくまで“家政夫に罰を与えている”んだから。 ニートさん、安心してください?貴方が心から反省して、罰を受けて、もうこの家に関わらないと約束するなら、 二那も動画をこの世から抹消しますよ。なぁ二那?」 「かもね~~?」 「二~那~?」 「何さ~~一武のくせに偉そうにするのやめてくれる~~?」 「そうだそうだ一武のくせに!」 「お前らなぁ!!」 こんな状況なのに、信じられないくらい平和な兄弟間の軽口。 温人にしてみれば全くの別次元での出来事のようで……ひたすら痛みに耐えながら 体を揺すって悲鳴を上げていた。 ビシッ!バシィッ!バシッ!! 「んっあぁ!!痛!!もうやめてください!あっ!あぁあっ!!」 「あぁそういやニート、反省してんの?“ごめんなさい”は?」 取ってつけたような三羽の質問に、温人は泣き叫ぶように答えた。 「僕じゃない!!僕はやってないんです!信じて!もう許してください!!」 「なんだ。全然反省してないじゃん」 バシッ!バシィッ!バシッ!! 「うぁあああっ!違う!違うのにぃっ!!」 「ニートお前さ~~、“家政夫”とか向いてないんじゃね? 高校生にケツ叩かれて躾けられて、泣いてるくらいじゃ……普通たぶん逆!」 ビシッ!!バシッ!! 「あぁあああっ!!っ、う……!!」 三羽の言葉に温人の胸が締め付けられる。言葉が詰まる。 叩かれて、痛みで地面を蹴って、もうお尻も真っ赤で……思わず悲痛な声が零れ落ちた。 「何で……!!僕が!!こんな目にぃぃっ……!!」 「そりゃ簡単な事」 「そうそう、簡単」 「ええ、至極簡単」 温人の問いを瞬時に拾う三兄弟の回答は恐ろしいくらいにただ一つ。 「「「お前が四愛との楽園の邪魔をするから」」」 (だからって……ここまで……) あまりの異常さに温人の気が遠くなっているところへ、一武の声がした。 「さてぇ……いつまで経っても嘘吐きの悪いニートさんには、 そろそろ僕が代わってお仕置きをいたしましょうか?」 その言葉に反応を示すのは、弱っている温人より二那と三羽で……二人共コッソリと笑っていた。 「ぷっ、一武がなんかカッコつけてる!弱いくせに!ぷぷ!」 「つけてるつけてる!ヤバい無理笑う!痛くなさそっ!」 「聞こえてんぞおチビ共!!僕だって本気出せばなぁッ!!」 「一武!」 遮った二那の声はひときわ明るく、エールを送るように笑って…… 「無理す~~んなっ♪零座のアレ、拝借しちゃいなよ?イイ案でしょ?」 「あぁ……そうだね」 「二那怖っ!本気で性格悪過ぎて引くわ~~!」 そんな笑顔の兄弟達だけで通じ合った会話を、温人はぼんやりと聞いていたが…… すぐに意識ごと飛び起きる事になる。 一武の持ってきた結構なガッシリ系のパドルは、それになじみの無い温人にも、 一目で危険物だと、『これで打たれる。打たれたら一たまりも無い』と分かる代物だった。 「い、嫌だ……!!」 「はいは~~い!逃げたら田中温人さんが変態動画で世界デビューしますよぉ~~!!」 青ざめる温人は、二那の一言とカメラの存在で逃げる事も出来ず…… 「ぼっ……僕が……僕がやりました!!今まで嘘ついてごめんなさい! 反省してます!ごめんなさい!反省してますから!!」 もう何もかも投げ捨てて謝罪した。 「もう二度とここへは来ません!許してください!やめて!やめてくださいお願いします!!」 ただただ悪意と恐怖に屈して、夢を折って泥を被って泣き叫んで。 そんな自分への嫌悪感で涙が次々頬を伝う。 それに対し一武は…… 「ニートさぁん……どうして最初から素直に謝らないんですか?分かってますよね? 悪い事をした上に嘘をつく人にはどのみち、厳しいお仕置きです」 バシィッ!! 「うわぁああああん!!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!!」 嬉々として温人のお尻にパドルを振るう。 予想以上の痛みに温人は泣いてもがいて許しを乞う。 「あぁあああ!ごめんなさい!もうしませんから!あぁっ許してくださいぃぃっ!うわぁあああっ!!」 ビシッ!バシッ!!バシィッ!! そんな痛みの中で、更に温人の心を抉る声が聞こえてきて…… 「お、撮れてる!わぁ、マジ泣きマジ泣き!すげぇ!一武やるじゃん!」 「だね!お尻真っ赤っかでお猿みたい!超ウケる!」 三羽が二那の携帯電話を覗き込んで、二人で楽しそうにしていて。 「うあぁああああああっ!!」 温人はひたすら心と体の痛みで泣き叫んだ。 その後、やっと悪夢のような『お仕置き』が終わって、温人はしゃがみこんで泣いて……二那に縋り付いた。 「お願いです!動画は消してください!約束でしょう!?」 「触んな!!じゃあ、この場で零座に電話してよ“家政夫”やめるって!!」 「……っ!!」 二那に振り払われた温人は、勢いよく自分の携帯電話で言われた通り零座に連絡を取る。 「……零座さん、ですか?すみません……今日限りで家政夫辞めさせてください。本当にすみません。 お世話になりました!!本当にすみません!!」 迷いは無かった。困惑する零座の声を遮って一方的に話を切って電話も切って、 青白い顔で、小さく震えながら二那を見据える。 「い、言いましたよ!!これで……」 「この事、零座にチクんないよね?」 「そんな事するわけないじゃないですか!!早く消してください!!お願いですから!!」 「あはは!!必死過ぎ~~!……ほらよ」 ふわりと笑う二那が携帯電話の画面を見せながら例の動画を削除する。 温人は一気に脱力してまた涙を流す。 「……っ、うっ、うっ……」 「ニート……」 すると、二那が温人の手を優しく握って真剣に言う。 「今までありがとね?楽しかったよ!」 「ホットケーキ美味かったニート!お前絶対いい家政夫になれるよ!次のとこ頑張って!」 「寂しくなります……受けた御恩は、兄弟共々、一生忘れませんからね?どうかお達者で!」 まるでさっきまでとは別人のように、穏やかな優しい表情で、温かい言葉をくれる数住三兄弟。 「っ……!!」 温人はそんな彼らがただただ信じられずに恐ろしくて、その場から逃げるように数住家を出て行った。 そんな温人が出て行った扉へと、冷めた声の二那が吐き捨てる。 「ハッ、無視かよ」 「うわぁ無いわ」 「礼儀知らずも甚だしい……」 三羽、一武も好き勝手そう言って……そして皆が清々しい笑顔になった。 「あ~~スッキリした!そういや四愛は?」 「本当だ!しーちゃんどうしたんだろう?邪魔者もいなくなったし、一緒におやつ食べたいなぁ ![]() 「抜け駆けは無しだぞお前ら!しーぽん!どこ~~?一緒におやつ食べよ~~!!」 こうして、お気楽な数住3兄弟は最愛の末弟を探し始める。 一方…… 「あ!お帰り兄さん!!ねぇ、今日はどうだった?」 「…………!!」 「兄さん?え、どうしたの兄さん!!?」 帰るなり、ロクに顔も見せずに寝室に駆け込んだ双子の兄に、温真が驚かされる。 居ても立っていられず、温人の部屋のドアを何度も叩いた。 「兄さん!!ねぇどうしたの!?開けて!開けてってば!!何かあったんだね!? 大丈夫!?兄さ……温人!!温人入れて!!」 温人は暗い部屋の中、弟に心配をかけまいと声を殺して泣いていた。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 気に入ったら押してやってください あわよくば一言でも感想いただけたら励みになって更新の活力になりますヽ(*´∀`)ノ 【作品番号】kseihu2a TOP>小説> 戻る 進む |