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姫神様フリーダムanother(閻廷とパパ編)





「……も、もしもし……?」
『おおおおお閻濡か!?おじいちゃんだぞ〜〜!閻濡も閻廷も元気か!?』
「う、うん……!!ぼくもパパも元気だよ!!」
『そうかそうか!それは何よりだ!あぁ〜〜 閻濡と閻廷に会いたくなってくるなぁ!』
「……っ……ぅっ、おじいちゃん……!!」
『!?どうした閻濡!?』
「ごめんなさい……!!何でも無い、何でもないの……!!」
『……どうした?おじいちゃんに話してみなさい』
「本当に、何でも……」
『大丈夫。二人だけの秘密だ。閻濡のパパにも言わないから』
「……おじいちゃん……!パパが、怪我して……
パパも、皆も、事故って、偶然って、言うけど……それであんな風になるわけない……!!
おじいちゃんにもおじ様にも、黙っててって言うし、パパ……きっと……っ!!
ふぇっ、ぼく……どうしたらいいの……!?」
『…………閻廷は仕方のない子だなぁ……。閻濡、大丈夫。
おじいちゃんがすぐ行って、どうにかしてあげるから。安心しなさい』
「ぅう、おじいちゃん……!!」
『大丈夫だ、泣かないでくれ閻濡。どうか、笑顔であの子の傍に。
可愛いお前達の事は、おじいちゃんが絶対助けてやるからな?』


******************

ここは神々の住まう天の国。
の、仲良し親子、閻廷と閻濡の城。
つい先日、閻廷が足に“原因不明”の怪我をしてしまって安静にさせられていた。
ベッドに横たわる閻廷の傍で、閻濡が椅子に座っている。
「皆、大げさだなぁ。閻濡、パパは平気だから遊びに行ってもいいんだぞ?」
「ううん。パパの傍にいる。遊びに行っても楽しめないと思うから……」
「うぅ〜……本当に心配をかけてすまない、閻濡……」
しゅんとする閻廷に、閻濡はニッコリと笑う。
「いいんだよ。パパの足が早く良くなるように、ぼく、一生懸命看病するね!」
「閻濡愛してる!!」
お約束のやりとりをしたところで、
ドアが勢いよく開き、突然の来客がやってきた。
「閻廷!!怪我をしたんだって!!?」
「パパ!!?」
「あぁああああ私の宝物に傷がついてしまっただなんて!!
何てことだ!!閻濡も大丈夫か!?気をしっかり持つんだぞ!?
よしよし、パパが来たからにはもう大丈夫だ!!」
騒がしく部屋に入ってきたのは閻廷の父の閻舞。
閻濡の手を取ってしっかり握り、上半身を跳ね起きた閻廷の頭を撫でる。
「パパ、な、何で!?」
「“何で”?いつものごとく、可愛いお前と閻濡の顔を見に来たに決まってるじゃないか!
まさか怪我をしているとは思わなかった!!痛くないか閻廷!?」
「う、うん。大した、怪我じゃない……」
「それならいいが……」
ぎこちなく笑う息子に、優しく笑いかける閻舞。
そして、また明るく言う。
「そうだ閻濡!!お土産をたっっくさん持ってきたんだぞ!!
服も靴もお菓子も!何か好きなお菓子を選んで持っておいで!」
「わ、わぁ!ありがとうおじいちゃん!選んでくる!!」
「閻濡……!!」
嬉しそうに部屋を出る閻濡に、閻廷は手を伸ばす。
が、扉が閉まって父親と二人きりになってしまった。
「…………」
「どうした閻廷?随分気まずそうだな?パパと二人きりは嫌か?」
「っ、そんな事は無い!来てくれて嬉しいぞパパ!」
「ありがとう愛しい閻廷 露骨に媚びるお前も可愛らしいなぁ
……どうしてまた怪我なんてした?パパに見せてみなさい」
「!!……」
閻廷はおずおずと上布団をずらして着物を捲って、包帯を巻いた足を見せる。
それを見た閻舞は大げさに悲しんだ。
「あぁ、何て痛々しい……!!可哀想に!」
「大丈夫!!ただの事故――……」
「まるで自分で足に刃物を突き立てたかのような怪我じゃないか!!」
「……パ、パパ……誰に……!!」
被せ気味の閻舞の言葉に、閻廷はいよいよ焦る。
しかし、閻舞は憐れむような笑顔で閻廷に近づいて頬を撫でた。
「……可哀想な閻廷……まだ苦しみを引きずっているんだな?」
「っ!?……」

「――あんな虚弱な女を、可愛いお前にあてがうんじゃなかった」

ゾッとするような声音でそう言って、閻舞は優しい笑顔で閻廷を撫で続ける。
「お前の望む通り!“可愛くて・優しくて・守ってあげたくなる”ような姫君を連れてきたつもりだった!
もちろん!健康面も含めお前に相応しいか完璧に調べた!つもりだったが……あんな事になるとは……
パパの見込み違いを許してくれ……」
「なっ……」
「大丈夫、もう苦しまなくていい閻廷……パパが助けてやる……
“あんな女の事は忘れさせて”、またお前の望むような新しい妃を連れて来てやろう!」
「パ、パ……?……何……を……?」
困惑気味に怯えはじめる閻廷に、閻舞はさらりと言う。
「あの女に関する記憶を全部消す。これでお前を苦しめるものは無くなる。
閻濡に関する記憶も一緒に消すことになるが、いたし方あるまい。
閻濡もきっと分かってくれる……」
「そ、そんな!嫌だ!!」
「閻濡の事なら心配するな。どこなりと養子に出して……
そう言えば!お前が前に同じような事をしまくっていた時期に
境佳の所で育てる話が無かったか!?それでもいいじゃないか!
後はパパが、何不自由無い暮らしをサポートしてやる。
あんな可愛くて気立ての良い子なら、嫁ぎ先もすぐ見つかるだろう。
あぁ!“新しい妃”という体にしてお前に嫁がせてもいいけれど……
それは、閻濡が耐えられないだろうなぁ?ふむ、やっぱり可哀想か」
「パパ!!バカな事を言わないでくれ!嫌だ!絶対嫌だ!!」
閻廷が青ざめていくら喚いても、閻舞は平気な顔でニコニコしていた。
「パパは大真面目だ閻廷。お前を救えるなら私はどんな事でもする」
「嫌だ、嫌だパパ……やめて……!!」
「大丈夫だ閻廷。忘れてしまうんだから悲しみも苦しみも無い。
今度こそ、お前を幸せにする良い妃を見付けてやる」
「私は光濡が妃で十分幸せだ!!光濡も閻濡も忘れたくない!!
閻濡は私の娘だ境佳になんかやらない!!
お願いだからやめてくれ!お願いだからぁぁッ!!」
「閻廷……」
「嫌だぁぁぁっ!!うわぁあああん!!」
閻舞に手を取られた閻廷が泣き喚くと、閻舞の背後周りを突然出現した“鏡”が取り囲む。
が、閻舞はチラリとそれを見て、さして気にしない様子だ。
「これは驚いたな……パパを攻撃するつもりか?」
「だって!だって……!!」
「で……ここから、どうするつもりだ?」
その言葉と同時に、閻廷の鏡は粉々に砕けて消える。
閻廷は驚いて、いよいよ必死になって泣き喚いた。
「うわぁああああん!ごめんなさい!もうしないから!もうしないからぁぁっ!!
やめてパパやめてぇぇぇっ!!何でもするからぁぁぁっ!」
そんな息子を見て、閻舞はやっと真面目な顔で言う。
「…………反省したか?」
「しましたぁ!!ごめんなさぁぁい!!わぁああああん!!」
「閻廷……パパは“お前を救えるならどんな事でもする”。
けれど、“お前を悲しませるような事は絶対にしない”」
「パパっ……!!」
「だからお前も、閻濡を悲しませるような事は絶対にするな」
「うわぁあああん!ごめんなさぁぁい!!」
自分に縋り付いて泣く息子を愛おしそうに撫で、閻舞はまたいつもの調子で言う。
「ん〜〜よしよし。お前は泣いていても愛らしいなぁ
可愛くて悪い子の愛しい閻廷
続きはパパのお膝の上で色々詳しく聞かせてもらえるか?」
「いっ、いいけど……私はもう大きいからお膝抱っこは難しいと思うぞ……?」
「……そういう、おバカな所も最高に可愛いぞ私の閻廷♪」
そう言ってニッコリ笑った閻舞は……

ベッドに乗り上げて、驚く閻廷を自身の膝の上に乗せて。
着物を捲り上げて下着を取り払って、丸裸にしたお尻を叩いていた。

何度も叩かれて、閻廷は駄々っ子のように泣いて体を揺する。
バシィッ!!バシィッ!ビシィッ!!
「痛ぁぁあい!ごめんなさい!ごめんなさいパパぁぁっ!
うわぁあああんやだぁぁぁっ!!」
「お前も閻濡にこういうお仕置きをするだろう?」
バシィッ!ビシィッ!バシィッ!!
「えっ、閻濡にはもっと優しくするぞ!!」
「本当か〜〜?まぁ……閻濡は女の子だからな!」
バシィッ!
「うわぁあああん!!」
泣き喚く息子に手加減する様子もなくまた一つ叩いて、閻舞が尋ねる。
「で、どうしてまたこんな事をしたんだ?」
「うっ、う……どうしても、確かめたくなって……!!私はまだ……」
閻廷は少し言い辛そうに一拍おいて、こう続けた。

「光濡に、守られてるのかなって……!!」

「…………」
「光濡が死んですぐの頃……私はあの子の後を追おうとして……そうしたら、
何をしてもあの子の鎖に阻まれて……守られて……そんな事が、あったから……
今も“それ”は続いてるのかなって……!!」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ閻廷。
閻舞が黙って聞いていると、声を強めて必死に言う。
「ただ、確かめたかっただけなんだ!それだけで!その他の意味は全く無い!
別に結果だってどっちでも良かった!あの子の加護が今、あっても、無くても私は……!!
確かに光濡の事を思い出して悲しくなる事はあるけれど!
私には閻濡がいるし、もうあの時みたいに光濡の所へ行こうなんて考えたりしない!」
「そうか……」
バシィッ!!
「うわぁああんごめんなさぁぁい!!」
また強くお尻を叩かれた閻廷が悲鳴を上げるが、閻舞は落ち着いた声で言った。
「それにしたって……もし嫁御殿が守ってくれなかったとしたら、
私や皆がどれだけ悲しんで心配するかという事は考えなかったわけだ」
「かっ、考えなかったわけじゃないけど……!!」
ビシィッ!バシッ!バシィッ!!
「ごめんなさい!!どうしてもっ、どうしても止まらなくなってぇぇっ……!!
も、もう結果は分かったから!光濡の加護は切れていた!私は私を傷つける事ができる!
けどっ、もうしない絶対しないぃぃっ!!」
「……嫁御殿の守りは今は無かった……とも、言い切れないぞ閻廷?」
「ふ、ぇっ!?」
「だって、私がこの事を知ってここへ来た。そしてこうしてお仕置きしている。
お前が“隠そうとしていた”のに……」
バシィッ!
「いっ、あぁああごめんなさぁぁい!!」
「皆に口止めなんて、ずる賢い事をしたなぁ閻廷?」
少し脅すようにそう言うと、閻廷が余計に怯えて足をバタつかせる。
「うわぁぁん!ごめんなさいごめんなさあぁぁい!!嫌だぁぁっ!」
「泣いて謝っても済まないぞ。悪い子め」
ビシッ!バシィッ!バシィッ!!
閻廷の赤くなってきているお尻をまた散々に叩きながら、閻舞が言った。
「嫁御殿と、閻濡に感謝しなさい閻廷。お前は彼女らに守られてる。
何度も言うが、悲しませるような事をするんじゃない。今叱られてるみたいな事をな」
「うわぁああん分かってるぅ!もうしないからぁぁっ!」
「そうかぁ、分かってるならいいんだが……
閻廷はとっても悪い子だったから、まだまだお尻を叩くからな
「やだぁああああっ!!痛い痛いごめんなさぁぁい!!」
バシィッ!ビシッ!ビシィッ!
「うわぁあああん!パパもう許してぇぇッ!!」
「私だってお前をものすごく愛してるんだ!
お前がこういう事するとパパはものすごく悲しい!!」
「ごめんなさい!ごめんなさいぃっ!あぁあああん!!
もう絶対しないぃぃっ!!パパごめんなさぁぁい!!」
閻廷が痛みに泣きながら懸命に許しを請ってもまたしばらくは
思いっきり叩かれて……
ビシッ!バシィッ!バシッ!!
「あぁあああっ!!うわぁああんパパぁぁ〜〜っ!!うわぁあああん!!」
まともな謝罪ができなくなった頃にやっと――
「閻廷反省したか?」
「もうずっとしてるぅぅっ!!うぇえええんっ!!」
「ふふ、そうだな。お尻も真っ赤だしそろそろ許してやろう
お許しいただけた。

膝の上から逃れられた閻廷は泣きながら父親に縋り付く。
「パパぁぁぁ!!ごめんなさぁぁい!!」
「よしよし閻廷……いい子だ
閻舞もそれを落ち着かせるように撫でる。が……
「……けれど同じような事をもしまたやったら……
今度こそ嫁御殿と閻濡の記憶を全消去して!即退位させて!
一生パパの傍で可愛がられて暮らしてもらうぞ?」
「……は、はい……」
妙な迫力のある閻舞の笑顔と言葉に、青ざめて頷く閻廷だった。


その後。
閻濡が閻廷の元にやってきて……
「パパ……!!」
「閻濡、本当にお前には心配を……」
「ううん!ぼくが、頑張るから……!!
ママがいなくても、パパが寂しくないように、もっと頑張るから!!
だから……だからっ……!お願い、ぼくと一緒にいてぇ……っ!!」
「閻濡……!!」
目に涙を溜めて懸命に訴える。
閻廷もその健気な姿に一気に涙目になって……
「違う!!違う閻濡!!閻濡は頑張らなくても、今まで傍にいてくれるだけで……!!
どれだけパパの支えになってくれた事か!!あぁ済まない閻濡!!
お前にそんな事を言わせてしまって私は……!!
うわぁああああん閻濡ごめんなさい愛してるぅぅぅっ!!」
「パパぁああああっ!!うわぁああああん!!」

泣いている閻濡を抱きしめながら泣いた閻廷は、さらに深く反省したのだった。


【おまけ】


閻廷「パパ……光濡の事……私を悲しませたって、悪く思ってるのか?嫌いなのか?」
閻舞「……そんな事は無い。この前はお前を反省させるためにわざとああ言ったんだ。済まなかった。
   お前をパパの次に……いや、一番幸せにしてくれた女の子なんだから。大好きだし、感謝してるよ」
閻廷「パパ大好き!!」



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【作品番号】HSB21

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