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姫神様フリーダムanother(ちっちゃ和編)




ここは神々住まう天の国。
の、ハロウィンの日。
神王の一人、和は自分の城の廊下を歩きながらため息をついた。

「まったく、お父様達の変な思い付きも困ったものだな……。
……うん、まぁ、皆喜んでいたし、たまの親孝行だと思えば……」
一人呟く和の仮装は、星空のようなラメの眩しい、紫と白が基調の魔女×カボチャパンツメイド服。
そして、それを着ていても違和感の無いような“少年”の姿だった。
こんな姿でいる理由は和がさっき呟いたように彼や彼の友人たちの父親の“思いつき”の所為だが、
少し恥ずかしかった“親孝行”タイムも終わり、一緒にいた友人達親子とも自分の父親とも別れて
さすがにそろそろ元の姿に戻りたいと自室へ戻るところである。
疲れていたので星のステッキをダラダラ振りながら歩いていると
「もう!見つけましたよ姫様!!」
「!?」
急な大声に驚いて振り向く。
走ってきた白い毛並みの狐耳巨乳美人女教師にすぐ追いつかれ、
彼女は困ったような顔をしつつ自分を叱ってきた。
「“女学園風のコスプレ”で遊んだらお勉強するって言ったでしょう?!
もう充分遊んだんだから、お勉強の時間です!逃げないで下さい!」
「えっ……!?(?、あ、雪里……なのか?)」
一瞬訳が分からなかったが、すぐに理解した。
目の前の狐耳美女は見慣れない姿だけれど、変化の術で化けた和の息子の従者だ。
加えて、“姫様”と呼びかけられたから自分を息子と勘違いしているのだろう。
息子は自分に良く似ている上に、今はこんな姿だし無理もない……
そう思って、速やかに誤解を解こうとする和。
「ゆ、雪里……違う、私は尊じゃなくて和だ。
尊の姿は見ていないが……勉強を逃げ出すなんて仕方のない子だな。
迷惑をかけて済まない。私も探すのを手伝おうか?」
「えぇっ!?ちょっと何言ってるんですか!?
そんな嘘に騙されるわけないでしょう!?服着替えただけじゃないですか!」
「えっ!?いやっ、違うんだ!本当に!!」
まさかの全く信じてもらえていない展開に、和は焦って顔の前で手をブンブン振る。
けれど雪里に余計に疑惑の眼差しで見つめ返されるだけだった。
「……姫様ぁ??本当にそれで私が引き下がると思ってるんですか??
言い訳が苦しすぎます!和様にも叱られますよ!?さぁ、お部屋に戻りましょう?」
「ちょっ、私が!私が和なんだ雪里!!信じてくれ!」
「まだ言うんですか!?どれだけお勉強が嫌なんでしょうねぇ、もう……!
いいから、行きましょう!あまりダダをこねるとお仕置きしますよぉ〜〜?」
「ゆ、雪里……!待ってくれ!私が一緒に行っても、意味が無いんだ……!
尊を探さないと!!」
ついには雪里が手を引いてくるので、和も焦りつつ抵抗する。
ここまで頑なに勘違いされるとは思わなかった。
和にしてみれば正当な抵抗なのだが、雪里にとっては“姫様の強情なワガママ”で、
それ相応の対応をされてしまう。
「こらぁ!姫様!いい加減にしてください!どうしたんですか今日は!?
本当の本当にお仕置きしますよ!?お尻ぺんぺんですよ!?いいんですか!?」
「よ、良くは無いけれど、しかし……!!」
口調はまだ優しげだが、本格的に叱ってきそうな様子の雪里に、和は少したじろぐ。
とはいえ、父親としても息子が勉強を放り出しているのを身代わりに行くわけにもいかない。
早く何とか誤解を解こうと一所懸命考えた。
(ど、どうしたら信じてもらえるんだ!?……そうだ!!)
閃いた和は逆に雪里の手を引っ張り返す。
そして、どびきりの“神皇子スマイル”でこう言った。
「……ふふっ、雪里……悪いがその格好でいくら誘惑されても……
更が同じ格好をした方が絶対魅力的だから、釣られてはやらないぞ?
(どうだ!尊はこんな事言うまい!?)」
「…………」
和のこの言葉に、雪里はさらに疑惑の視線を強めた後……
急に白いブラウスのボタンを2、3個外して和の前にかがみこむ。
そして、和を抱きしめながら蠱惑的な表情で言った。
「確かに……更様の美しさには敵いませんけれど……
この姿にはこの姿の魅力がありましてよ?姫様ならよくご存じでしょう?
少なくとも……胸の大きさなら多少勝てるんじゃないかしら?」
「!!?ひっ!?雪里!?」
「このスカートも大人っぽくてセクシーなつもりなんだけど。姫様お好きじゃなくて?」
「う、ぁっ……!!」
谷間を見せつけられた大きな胸に抱きしめられて、黒いタイトスカートの
深いスリットを強調されて、和は顔を真っ赤にする。
本気の女狐モードの雪里は、恐ろしいほど妖艶で美しい。
普段の気弱さからは想像もできない自信に満ち溢れた色香の攻撃に、
和が抵抗できないでいると……
「ってもう!何やらせるんですか!捕まえましたよ姫様!!
今日は変な嘘つくしワガママばっかり言って!!」
雪里はそう言って和を抱え上げ、器用に片手で支えてお尻を叩き始める。
パァンッ!!
「ひゃあああっ!?いっ、あっ!!」
「悪い子の姫様にはお仕置きをします!」
「ち、ちがっ、雪里!!信じてくれ!!私は、尊では……!!」
「いつまでその嘘続けるんですか!?絶対和様に言いつけますからね!」
パンッ!パンッ!パンッ!
「っあぁ!だからぁっ!!私が!私がぁぁッ!!」
「呆れた!素直に“ごめんなさい”と謝るまで許しませんから!」
和は叩かれながらも必死に“自分は尊ではなく和だ”と主張するが、
相変わらず全く信じてもらえない。
信じてもらえない上に理不尽に痛めつけられ、和は即座に考えを切り替えざるを得なかった。
(うぅ、まずとにかく!雪里に叩くのを止めてもらわないと……!!
誤解を解く解かないはその後だ!!)
“不本意”は本日2度目だが、意を決して叫ぶ。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい雪里!!反省したからやめて!」
「あ!やっと素直になってくれた!
最初からいい子にしていただかないとダメですよ姫様!」
「ごめんなさい!わ、分かった!これからは素直にするから!お願い許して!」
“尊のふり”をして謝ると雪里はほっとした様子だったけれど、
すぐに手を止めてくれるわけでも無かった。
「そんなすぐには許しません!姫様今日は強情だったんですから!
雪里だって厳しくしますよ!」
パンッ!パンッ!パンッ!
「やぁぁっ!そんなっ、痛いぃ!ごめんなさい雪里!もうやめてぇぇっ!
(あぁああこれ以上どう言えばぁぁっ……!!)」
和がお尻の痛みで苦しみながら参っていると……
「雪里!?」
そこへやってきた本物の尊が驚いた声を上げる。
清楚なセーラー風ワンピースを着ている彼は目を丸くしている。
「え?あら?何、してるの……??」
「えっ!!?姫様!?あれっ!?っあぁ……!!」
雪里の方はもっと驚いて混乱したようだったけれども、
状況を察したのか真っ青になり、すぐさま和を地面に下ろして―――
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁっ!!」
本気の土下座をきめていた。
「……いや、いいんだ雪里。顔を上げなさい」
和は務めて冷静に言う。
やっと、自分が自分である事を信じてもらえたのだった。


それから。
和は元の姿に戻って、
雪里も尊も和の部屋にやってきているわけだけれど……
「もう本当に……本当に、なんとお詫び申し上げて良いか……!!
あぁどんな罰でも与えてください和様……!!」
同じく元々の姿に戻った雪里が顔面真っ青のままガタガタ震えながら謝り倒していた。
それに対して、和は余裕の爽やかな笑みだった
「本当に気にしないでくれ雪里。
あんな状況は普通あり得ない事だし、自分が尊と似てる自覚もあるし、
雪里は尊を想ってああしてくれたんだろう。分かってる。……ただ……」
が、急に雪里の頭を持ってぐっと顔を近づけ、余裕をなくして口調を強めていた。
「私と尊は!!瞳の色が違うんだ!覚えておいてくれ!!」
「ひゃぁあああ本当だぁぁぁ!!肝に銘じますぅぅぅ!!」
雪里が涙目になった所で、傍にいた尊が恐々と声をかける。
「あ、あの……お父様……」
「どうした尊〜?お仕置きされる準備ができたのか?」
再び爽やかな笑顔に戻って尊を振り仰いだ和。
尊の方は謎に迫力のある父親に気圧されて、大慌てで弁解を始める。
「ちっ、違うの!いつも雪里に迷惑をかけてるわけじゃなくて!
お勉強だっていつもはちゃんとしてるし!今日は、可愛い服が着られて!
何だか嬉しくなっちゃって!雪里と鬼ごっこがしたくなったって言うか……!」
「そうか〜……そんな言い分が通ると思ってるのか!!
今日勉強せずに逃げ出して雪里を困らせたのが悪い子なんだろうが!こっちへ来なさい!」
「うわぁあああんお父様ごめんなさぁぁい!!」
尊が泣き声のように喚くけれど、和は動じずに椅子に腰かけて膝の上に尊の体を横たえる。
スカートを捲って下着を下ろして、お尻を丸出しにして叩いて叱る。
バシッ!バシィッ!
「泣きまねをしたってダメだぞ!全くお前は、泣けば私が強く怒らないと思って!
今日は父親として厳しくお仕置きしてやるからな!」
「いやぁぁぁっ!そんな事思ってません〜〜〜っ!!
やだぁお父様厳しくしないでぇぇっ!!」
バシィッ!ビシッ!ビシッ!!
和にお尻を打たれて悲鳴を上げる尊。
傍で見ている雪里も最大級にオロオロして、思わず声をかけていた。
「あぁああ……!和様ご慈悲を……!!
姫様から目を離した、雪里にもっ、責任があります……!
ど、どうか!姫様の罰を、代わりに雪里に……!」
「こら雪里も!そんなに言うなら後で少しお仕置きだからな!
甘やかすんじゃない!!」
「!!」
和にキッパリ叱られてしまって、雪里も彼の狐耳もうなだれる。
この後、尊はお尻が真っ赤になるまでお仕置きされて泣くことになったし、
雪里も尊ほどではないけれどお尻を叩かれることになった。

こんな風に、この日はお仕置きしたりされたりした和だった。



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【作品番号】HSB22

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