TOP小説
戻る 進む


姫神様フリーダムanother(ちっちゃ境佳編)




ここは今より昔の神々の住まう天の国。
この国の“皇子”である境佳(当時10歳)は本日、とんでもない話を耳にした。
「姉上が……お見合い……?」
「そうなの。父上が勝手に決めてしまったみたいで……」
「う、受けるのですか……?」
「断るわけにはいかなかったから……」
困った顔で笑う姉の玲姫(当時17歳)を境佳は呆然と見つめた。
その後、自分が何を話して何をしたかろくに覚えていない。
気がつけば見晴らしの良い草原でただ、『姉上がお見合いをする』と言う事をぐるぐると考えていた。

(姉上がお見合い……お見合いというと、他の男と……けっ、結婚を前提に……
付き合うかどうか、決める……姉上が……結婚……お付き合い……他の男と……)
考えるほどに絶望的な気分になってくる境佳。
しかし、落ち込まないように必死で自分を奮い立たせる。
(慌てるな!まだ、決まったわけではない!お見合いなど、いくらでも破談になる例がある!
相手が断れば……待て!姉上の様に美人でおしとやかな姫なら断る男がいるわけが無い!
だ、だか……姉上が相手を気に入らなければ!?そうだ!なら、大丈夫!
“この話は無かった事に”なるぞ!でも、もし気に入ってしまったら……?)
一度考え始めると境佳の妄想は止まらない。
(姉上がその男と、付き合う事になって……付き合うと、どっ、どうなるんだろう?
逢瀬を重ねて、手を繋いだり……そのうち、まさかキっ、キキ、キスとか……)
そこで境佳は思わず叫ぶ。
「嫌だッ!!」
「えっ!?そ、そんなに叫ぶほど嫌か“かくれんぼ”……?なら仕方ない、他の遊びを……」
むぅ、と考えこんでしまったのは、境佳の隣に座っている幼馴染の閻廷。
そういえば……今まで考えごとに夢中ですっかり存在を忘れてしまっていた。
境佳は申し訳なくなりながら訂正する。
「あ、いや、違うんだ。かくれんぼでも別にいいんだが……」
「いいのか!」
「はぁ……」
「……境佳?どうして元気が無いんだ?」
心配そうに顔を覗きこんでくる閻廷に、境佳は打ち明ける。
「姉上が、お見合いをするらしい……」
「おお!お見合いか!閻も申し込まれた事あるぞ!」
「……受けたか?」
「パパが断った!男の人だったからな!」
「…………」
「5時間説得したら、泣きながら諦めてくれたらしい!」
無邪気に笑う閻廷。我が子至上主義の両親に蝶よ花よと育てられ中の閻廷は
今日も派手好きの両親の意向で女物かと思う様な鮮やかで可愛らしい着物を着て、
流れる銀の長髪に、これまた煌びやかな花飾りを付けている。そして本人は愛らしい女顔。
道を踏み外す殿方もまぁ中にはいたという事だ。
しかも、微妙に話しが脱線している事に気づいて境佳はまた悲しく息を吐く。
つられる様に閻廷も悲しげな顔になった。
「姉上殿がお見合いするから元気が無いのか?じゃあ“お見合いしないで!”って言えばいいじゃないか!」
「そんな事が言えるものか。姉上の幸せを考えたらこれは、喜ぶべき事なんだ……」
「何でだ!?境佳は姉上殿が好きなんだろう!?境佳と姉上殿がお見合いすればいいじゃないか!」
「……そういう問題では……」
「じゃあ!閻と姉上殿がお見合いする!!」
「……いや、お前と姉上がお見合いしてどうする……」
「じゃあじゃあ!閻と境佳がお見合いする!!」
「……しない。話がどんどんおかしくなってるぞ?」
「う――っ!何でもいいから境佳元気出せ――っ!!」
そう叫びながらガバッと境佳に抱きつく閻廷。
どうやら彼なりに境佳を慰めようとしてくれていたらしい、その姿に
境佳はふと温かい気持ちになって閻廷の頭を撫でた。
「ありがとう閻廷。お前のおかげで元気になったよ」
「本当か!?」
「ああ」
「じゃあ境佳が鬼だ♪」
「はっ!?」
境佳が驚いたその一瞬で、閻廷は素早く立ち上がって適当な方向へ逃げていく。
途中で着物の裾をふわりとなびかせて振り返って、満面の笑みで手を叩く。
「おーにさーんこーちらー!!」
「このっ……勝手に決めて!待て閻廷!」
「あははっ!ツカマエテゴランナサ〜〜イ☆」
「何のセリフだそれは!言われなくても、すぐに捕まえてやる!!」
“かくれんぼ”はいつの間にか“おにごっこ”になっていたけれど……
境佳も明るい表情で駆けだして、二人の少年の楽しそうな鬼ごっこが夕暮れまで続いた。


そして城に戻って来た境佳。
閻廷と遊んでいた時には忘れていた“姉上のお見合い”の事が
また頭から離れなくなった。
(姉上……一体、どんな男とお見合いを……)
気になった。すごく気になった。
(そうだ!お見合いなら……“お見合い写真”みたいなものがあるのでは!?
姉上に頼めば見せていただけるかも!!)
境佳はいてもたってもいられずに玲姫の部屋へ駆け込んだ。


「姉上!!」
「境佳……?」
「あ、あのっ……!」
不思議そうな顔をする姉に、心臓をドキドキさせつつ境佳は言う。
「お見合い、写真を、見せていただきたくて!!」
「写真を?どうして……?」
「いえその……私の、未来の兄上になる、方かもしれませんから……顔を見ておきたくて」
「まぁ……!境佳ったら……」
玲姫は口に手を当てて驚きつつも優しく微笑む。
一方の境佳は自分の言葉に胸を締め付けられながらも返事を待つ。
しかし、姉の言葉は意外なものだった。
「ごめんなさい。境佳に見せてあげたいけれど……できないわ」
「え!?」
「わたくしね、相手の方の顔は当日まで見ない事にしたの。
見た目だけで先に勝手なイメージを持ちたくなくて……。
自分でも見たくなるといけないから、写真は隠してしまっているのよ」
「そ、そんな……」
「だから境佳も、もう少し我慢していてね?
良い方なら……もしお見合いが上手くいったら、きっと紹介するから」
「!!」
玲姫の言葉が境佳の胸に刺さる。
(そんな言葉は聞きたくなかった!)と心が叫ぶ。
泣きそうな顔で俯く境佳に玲姫は優しく言う。
「そんな顔をしないで?兄上が欲しくて楽しみなのは分かるけど、今は姉上で我慢してちょうだい?」
「い、いえ!そんなつもりでは……!」
「あら、優しい子。わたくし、少しお湯を浴びてくるから、この部屋で遊んでていいわよ?」
「あ、遊ぶって……子供扱いしないで下さい!!」
「うふふっ、ごめんなさい。また後でね?」
優雅に微笑んで部屋を出る姉の姿に見惚れてしまいそうになりながら、
境佳は部屋に取り残されてしまった。
そして気付く。自分の思惑がすっかり砕かれてしまった事に。
(何ていう事だ……写真が見られないなんて……!!)
ガッカリする境佳。しかし……
『この部屋に隠してあると……探せば見つかる?』
突如聞こえた誘惑の声。慌てて頭から声を振り払う。
(バカな……女子の部屋を探るなど、へっ、変態の所業だ……!!)
『お見合い相手が気になる……姉上は見せてくれない……こっそり見てしまえばバレない?』
(ダメだダメだ!!バカな事を考えるな私!!)
必死で、それこそ頭を抱えて邪念を振り払おうとするけれど、声はどんどん誘いをかけてくる。
『少しだけ探して……少し探して無ければ諦めればいい?』
(少しだけ……?)
『少しだけ』
(少しだけ……なら。そうだ!一か所!一か所だけ見てみよう!それでなければ、諦めよう!!)
境佳は決意して、キョロキョロと辺りを見回した。
そして大きな箪笥に目を付ける。横長の引き出しがたくさんある。
その一つを、当てずっぽうで勢いよく開けてみる。
ズッと引き出されたその中身に
「ひゃわっ!?」
思わず声が出た。
目に飛び込んできたのは色とりどりの下着。
境佳にとって予想外の光景に慌てて引き出しを戻そうとしたけれど……
(ま、待て……女子は、こういう触れにくいところに大事な物を隠しておくと
何かで見た様な気が……)
まさかこの色とりどりの下着の下にお見合い写真が!?と、考えてしまった境佳。
しかし、場所が場所なので葛藤が半端では無かった。
(け、けど……お見合い写真がこの下に眠っているとして、それを取りだすには
この下着を、退けなくてはいけなくて……つまり、手で触れて除去しないと
いけないという事で……その意味するところ、私が、姉上の下着に素手で触れるという事で……)
考えれば考えるほど顔が赤くなって混乱する境佳。
(こ、これは、普段、姉上の素肌に、触れているわけで……しかも、その、大事な、ところを
包み込んで……私が、軽々しく触れてもいいのだろうか!?)
目の前の下着達は小さく畳まれていて、色々な色があって、まるで小さな花畑の様だ……
などと思いつつ、境佳は天秤にかけた。
お見合い写真を見る事と、下着に触れる事。
(お見合い写真が、私は……どうしても……!!)
極度の緊張に、境佳は思わずゴクリと唾を飲み込む。
震える手を下着へと伸ばしていく。
(丁寧に、敬意を持って扱えば……少しくらい、許されるはずだ!ごめんなさい姉上!!)
境佳は真っ赤になりながらも、下着の一つを怖々掴む。
(ぎゃぁぁああ!柔らかい!フワフワする!!ツルツルするぅぅぅっ!!)
心の中で大パニックになりながら、落とさないようにしっかりと下着を握った。
反射的に下着を眺めそうになって慌てて目を逸らし、下着のあった地点を覗きこむ。
(……!!下に何もない!?)
残念ながら、お見合い写真は無かった。
念のため、指先で穴あき地点の左右の下着をずらしてみたりしたけれど、
やっぱり下着の下にお見合い写真らしき物は隠されてなかった。
境佳はドッと疲れて肩を落とした。
(あんなに緊張したのに……無駄だったか……)
しょぼくれて、下着を戻そうとした……
その時だった。

「境佳……?」
「!!?」
聞こえたのは玲姫の声。
振り返って姿を見た。
そして、玲姫の呆然とした瞳に映っているであろう自分の姿は……!
「っ……ぁ……!!」
混乱し過ぎて上手く声が出ない。
自分は姉の下着を持って、丁度下着達の入っていた空間を覗きこんでいたところだ。
だったら、姉にはこう見えた事だろう。
「……それに……興味があるの……?」
「……ぅ……」
「境佳……」
玲姫が頬を赤らめて、瞳に涙を溜めている。
(どうしよう!姉上を泣かせてしまった!!傷つけてしまった!
姉上に変態弟だと思われてしまった……!嫌われる!!)
そう思って、境佳の目にも涙が溢れる。
どうしていいか分からなくなって、次々と流れて落ちる。
「ごっ、ごめんなさい……!ごめんなさい姉上……!!」
泣きじゃくりながら、目を固く閉じて謝るしか無かった。
恥ずかしさのあまり消えてしまいたくなる境佳を、玲姫が勢いよく抱きしめる。
「境佳……!そんな物に興味を持つ年頃になってしまったのね……!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!違うんです!でも、私、私はっ……!」
「いいのよ!貴方を責めない!成長の証だもの!あぁ、わたくし……わたくし……!」
「姉上……姉上ぇぇぇぇっ!ごめんなさぁぁぁぁい!!」
「どうしましょう!どうしましょう!こんなに早く……!!」
泣き喚く境佳を抱きしめる玲姫もホロホロと涙を流す。しかし境佳と違って何だか幸せそうだ。
そんな玲姫の幸せな表情に気づいていない境佳は、泣きながら相変わらず謝り倒していた。
「あ、姉上!ごめんなさい!どんな罰でも受けます!だから、どうか……見損なわないで下さい!」
「わたくしが、境佳を見損なう?そんな……」
「お願いです……私を嫌いに、ならないで!姉上……!!」
渾身の想いを込めて、玲姫に抱きつく境佳。
そんな弟に驚いた表情をした玲姫だったけれど、すぐに穏やかな表情になって
「そうね。良くないわね、女の人の下着を勝手に漁るのは……。
良くない子はお仕置きをしなくてはね?」
「はい……!」
境佳の縋るような瞳に、玲姫はにっこり微笑んだ……
後、境佳を抱き上げてベッドまで連れていき、
膝の上に転がして下着を下ろすパワフルさを発揮する。
境佳は恥ずかしかったのだが、玲姫に
「貴方もわたくしの下着を見たんだから、おあいこでしょう?」
と言われたので何も言い返せなかった。

そうして、あっという間に無防備になってしまった境佳のお尻に
玲姫の平手が振り下ろされた。
ぱしっ!
「あぁっ!姉上……!」
ぐっと目を閉じて、最初の一打に耐える境佳。
その衝撃と痛みとはほど遠い、玲姫の優しい声が聞こえる。
「下着ぐらい、言ってくれればいくらでも見せてあげるのよ?」
「なっ……違います!!誤解なのです!!これには、訳が、お見合い写真を、探そうとして!」
「……わたしくの下着に興味があったんじゃなかったの?」
「違います!それは、断じて!!」
「…………」
確かにきちんと弁解をしたはずなのに、玲姫が黙りこんでしまった。
境佳が不思議に思って恐る恐る声をかける。
「姉……上……?」
「あぁ……貴方は本当にいけない子だわ……」
パシンッ!ピシャンッ!ピシャンッ!
「ひぃっ!?ふぇっ!?」
急にお尻に感じる痛みが強くなって境佳は驚き混じりの悲鳴を上げる。
「兄上ができそうだからって一人ではしゃいじゃって……
わたくしの気も、知らないで……」
「うっ、うぁぁああっ!?」
ビシッ!バシッ!ビシッ!
恨めしげな声で力を込めた平手を振るう姉が怖くなり、
それにお尻だって痛くなって、境佳は必死で謝った。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい姉上!」
「いいえ、ダメよ!わたくしちょっと傷ついたわ!」
(そ、そんな……何故!?下着の誤解は解けたと思ったのに!!)
バシッ!バシッ!バシッ!
ワケが分からないまま厳しくお尻を叩かれ続けたので
幼い双丘はすぐに赤く色づいてきて、大人しくしていられなくなる。
境佳は手足を動かしながら訴えた。
「は、ぁ、あねうえ……!痛い……!!」
「当たり前じゃないのお仕置きなんだから!何よ何よ!そんなに兄上がいいって言うの!?」
「あ、姉上落ち着……あぁうっ!!ごめんなさい!(何だかいつもの姉上じゃない!!?)」
普段の玲姫らしからぬ声の荒げっぷりに動揺して、
それに痛みから逃れたくて、誤解を解きたくて……境佳の方も思わず本音を叫んでしまう。
「ごめんなさい!わ、私は別に、兄上が欲しかったわけじゃなくて……!
姉上が、見知らぬ男とお見合いをするのが耐えられなくて!!」
「……え!?」
「姉上を、取られてしまう気がして……!!
私は……姉上にお見合いなどして欲しくなかったんです!!」
言い切って、境佳は“しまった!”と思った。
後悔のあまり心臓が嫌な感じにドキドキする。
(言ってしまった……こんな、自分勝手な事を……!
我がままだと思われただろうか!?子供っぽいと思われただろうか!?)
不安に駆られてぎゅっと両手を組む。
けれど……
「境佳?」
「あ……」
「どうして最初から正直な気持ちを話してくれなかったの?
このわたくしに本音を隠そうだなんて……本当に悪い子ね♪」
バシッ!
「ふぁうっ!!」
何故か楽しそうな声と共にキツイ一発がお尻に直撃する。
今までより強くなった様なそうでない様な……すでに真っ赤な境佳のお尻では
違いを感じる事ができなかった。ただ、“すごく痛い”。
バシッ!バシッ!バシッ!
「一言、わたくしに『お見合なんかしないで――!』って言ってくれたらすぐにでも断るのに」
「んくぅぅっ!そんな、私の我がままだけで、子供みたいな事は言えません!!」
「貴方はまだ子供だわ」
「姉上!だから、子供扱いはやめて下さい!!」
「うふふっ、そんなに言うなら思い知らせてあげる貴方が、子供だって事
玲姫が悪戯っぽくそう言った、次からだった。
バシィッ!バシッ!バシンッ!
バシッ!バシィッ!バシッ!バシンッ!
「んぁああああっ!!?いっ、痛い痛い!!姉上痛いです――――っ!!」
境佳が大絶叫するくらい激しくお尻を叩かれる。
まともな思考回路は吹き飛んで、だた本能的に暴れて泣き喚くしかできなくなる。
そんな痛みだった。
だから境佳は泣き叫んで真っ赤なお尻を振って暴れる。
「やだっ、痛い!もうヤダぁぁ!うわぁぁあああん!!」
「ほら、お尻をペンペンされてそんな風に泣くだなんて、子供以外の何者だって言うの?」
「うわぁああああん!!ごめんなさぁぁぁぁい!!」
壮絶な痛み+姉の一言に情けなくなって境佳はますます激しく泣いた。
しかし、そんな境佳を玲姫の声だけが優しく慰める。
「謝らないで。それでいいの。貴方は必要以上に我がままを抑えようとし過ぎだわ。
せっかく、歳の離れた可愛い弟なんだから……もっと姉上に甘えてちょうだい?」
「うえっ、うぇぇぇえええっ!」
バシッ!バシィッ!バシッ!バシンッ!
「あぁあああん!わかっ、分かりました!これからは、んっ、姉上に甘えますぅぅぅぅ!」
「あら嬉しい♪」
「うわぁぁああああん!!」
最後はまともに話せず泣くばかりだった境佳だけれど、
それからすぐにお仕置きは終わった。

膝から解放された境佳は玲姫に抱きしめられながら泣いた。
そこに恥ずかしさなど無かった。
そう、恥ずかしさは泣きやんでからやってくるのである。
泣きやんで、玲姫の隣に座っている境佳は、枝垂れ柳のように深く俯いて赤面していた。
あまりの落ち込み具合に玲姫がフォローするほど。
「境佳、そんなに恥ずかしがる事はないわ……姉弟じゃないの」
「しかし……恥ずかしい物は恥ずかしいです……あんな、子供の様な……」
「だから、貴方は子供でいいのよ……分からなかった?」
玲姫がにっこり笑って膝を指さすと、境佳が慌てて首を振る。
「いっ、いいえ!それは分かったのですが……あぁ、私がもっと大人だったら良かったのに……」
「あらあら、急がなくていいのに……」
「姉上とお見合いしても不自然じゃないくらい、大人だったら……」
その小さなつぶやきを聞き逃さずに、玲姫は言う。
「そうしたら、わたくしとお見合いしてくれるの?」
「え?!いやっ……!聞いて……!?」
「してくれるの……?」
切なげな表情で瞳を潤ませる玲姫に、境佳は赤くなりながらも
玲姫の両手をしっかりと握って力強く一言。
「必ず……!」

結局、嬉しそうな玲姫に抱きつかれて、
最後の最後まで真っ赤な顔をしていた境佳だった。






気に入ったら押してやってください
【作品番号】HSB15

戻る 進む

TOP小説