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姫神様フリーダムanother(ラブラブ親子編)
閻廷&閻濡カップルアンケート一位作品



ここは神々住まう天の国。
自称この国随一のラブラブ父娘、閻廷と閻濡の城。

閻濡はコソコソと、ある部屋にやってくる。
彼女の目的はトルソーのマネキンに綺麗に飾られてるケープ付きの可愛らしい和風ドレス。
自分のドレスをスルリと脱ぎ捨て、その和風ドレスを身にまとう。
胸元のアクセサリーをカチッと鳴らしてケープを留めると、部屋にある全身鏡の前に立つ。
「ママ……」
鏡に映った自分の姿にそっと指を触れて、閻濡は考える。
(ぼくはママに似てるらしいけど……ママはこんな感じだったのかな?)
閻濡の今着ているドレスは母親の物だった。
この城に残っている最後の一着。他のは家臣達が処分してしまったらしい。
閻濡は母親の姿を写真でしか知らない。
周りは自分に生き写しだというけれど、閻濡にはどうもしっくりこなかった。
写真の中の母親は自分よりもずっと可愛らしいお姫様にみえたのだ。
そして父親と並んで笑っていると、とてもお似合いだと思った。
(ぼくも……ママみたいに、パパとお似合いのお姫様になりたいな……)
じっと鏡の中の自分を見る。悲しいような虚しいような、でも嬉しいような不思議な気分になってくる。
そもそも、閻濡がこのドレスを身につけたのは、単にデザインが彼女好みで着てみたかったからだ。
そして、コソコソしていた理由は父親にこの事を知られたくなかったから。
前に無邪気に“このドレスを着てみたい”と言ったところ、悲しげな笑顔で首を横に振られてしまったから。
いつも明るい父親にあんな顔をされては、閻濡もそれ以上ダダをこねる事はできなかった。
しかし、それからもこのドレスを見るたびに湧き上がる、着てみたいという欲求を抑える事が出来なかった。
その念願のドレスが着られたのは嬉しいのに、母親の事を考えてしまって切ない気持になる。
母親との思い出なんて持ってないに等しいのに。いや、だからこそ、胸が締め付けられた。
じんわりと目に涙が溜まってくる。
(ど、どうしよう……もう脱ごうかな……)
そう思って、ケープの留めているアクセサリーに手をかけた時、部屋の扉が開く。
「閻濡……!!」
「あ……!」
入ってきたのは閻濡の父親の閻廷だった。
閻廷は驚きに目を見開く。それは閻濡の方も同じだった。
(ど、どうしよう!!パパに怒られる!!)
とっさにそう考えて、閻濡は反射的に言ってしまった。
「閻廷様!!光濡が……戻って、参りました!!」
言ってしまってから、閻濡は内心真っ青になる。なんて不謹慎な嘘をついてしまったんだろうと。
冗談で誤魔化すにしてもタチが悪過ぎた。だから言い訳もできずに口をつぐんで、恐怖に震える。
(絶対、パパに怒られる……お尻、ぺんぺんされちゃう……!!)
閻廷が無言で近づいてくる。閻濡はすぐにでも捕まえられると思ってぎゅっと目を瞑った。
しかし……
「おかえり。光濡……」
優しい声と一緒にぎゅっと抱きしめられた。いつも閻廷がそうしてくれるように。
「え……?」
閻濡は驚いて閻廷を見た。彼は優しく閻濡の頭を撫でて言う。
「戻ってくれて嬉しい。久しぶりにデートでもしようか?」
「あ、あの……!」
閻濡は混乱した。自分の嘘を信じたのか?そんなにも自分は母親に似ているのだろうか?
分からない。けれど、ただ、閻廷の笑顔と彼の言った“デート”という言葉に胸が高鳴る。
(パパと……デート……パパと!)
閻廷は普段、自分と出かける事を“デート”だなんて言わない。
(閻濡からすれば)妙に大人な響きを含んだその言葉にすっかりのぼせあがって、閻濡はついつい赤くなって頷く。
父親の誤解を解こうともせずに。

閻廷はにっこり笑って、従者を呼びつけて言う。
「車を出してくれ。デートに行く」
こうして閻濡と閻廷は“デート”に出かける事になった。


車に揺られながら、母親のフリをした閻濡は閻廷と談笑した。
最初は、『下手な事言ってパパに嘘がバレたらどうしよう!』と緊張していたが、
閻廷が閻濡に話すのは思い出話ばかりで、閻濡は「ええ」とか、「そうでしたわね」とか適当に相槌を打っていれば
いいだけの内容だった。なので、すっかり閻濡の緊張はほぐれている。
閻濡が気を付けると言えば、自分を『光濡』、閻廷を『閻廷様』と呼び、いつもよりおしとやかに喋ると言う事だけだった。

そうして、二人がやってきたのは景色のいい湖だ。
周りには色とりどりの花が咲いていて、気持ちのいい風が吹く。
閻濡ははしゃいで駆けだしてしまいそうになるのを必死でこらえて、お淑やかに歩く。
母親がこんな時どうするのかは見当もつかないけれど、閻濡のイメージではこれが正解だった。
二人でしばらく歩いて、湖を眺める。水面がキラキラ輝いて綺麗だった。
「ここに来るのは2回目だな!光濡」
「そうですわね。閻廷様……」
「もう一度お前と来たかったんだ」
「ええ。光濡も嬉しいです」
「お!あそこに親子の鳥がいるぞ!」
「まぁ!可愛らしい!」
「…………」
たわいのない会話。
しかし、不意にそっと体を引き寄せられ、唇を重ねられる。
「光濡……愛してる」
いつものテンションの高い感じではなく、落ち着いた音色で真剣に。
閻濡はいつもと違う扱いにドキドキしっぱなしだった。
(これが……大人のデート!!)
真っ赤な顔を俯けて、感動で瞳を潤ませて、無意識に頬が緩んでしまう閻濡。
同時に胸の奥底が痛むのに彼女はまだ気付いていない。

次に二人が向かったのはアクセサリーの店だった。
綺麗なアクセサリーに瞳を輝かせる閻濡だけれど、ここでも決してはしゃいだりしない。
意識してお淑やかに微笑んでいた。
「今日の記念にどれか買って帰ろう」
そう言う閻廷に促され、閻濡は一つ首飾りを選んだ。
母親なら何を選ぶだろうかと考えてみたものの、さっぱり分からなかったので、仕方なく自分の好みで選んでみた。
それを指さすと、閻廷は本気で驚いた顔をしたので選択を間違ってしまったかと焦った閻濡だが、閻廷がその後すぐに
「――お前なら、それを選ぶと思ってた」
と笑ってくれたので、ほっと胸を撫で下ろす。
そして閻廷は店員に言う。
「これをもらえるか?妻にプレゼントするんだ」
(妻!!)
その自然な言葉に閻濡はまたしても胸の高鳴りを抑えられない。
閻廷が、自分を“妻”だと言う。
将来の夢=パパのお嫁さん、な閻濡にとっては夢にまで見たシチュエーションだ。
ドキドキと頬を赤らめて夢見心地で閻廷を見つめていると、店員が言う。
「閻廷様は、本当に今でも光濡様を愛していらっしゃるんですね」
「当然だろう」
閻廷は笑顔で言う。
「よろしゅうございましたね、閻濡様」
「!!」
店員にそう笑顔を向けられて、閻濡の心臓が止まりそうになる。
閻廷は、店員の言葉も閻濡の動揺も気にする様子もなく、買ったアクセサリーの包みを受け取ると
サッと閻濡の肩を抱いて店を出た。
そして閻濡の耳元で囁く。
「お前が閻濡に似ているから間違えたらしい。まぁ、皆は光濡は死んだと知っているからな」
「閻廷様……」
閻濡は青ざめ、空恐ろしい気持ちになった。
同時に心の中に黒い不安がわき上がる。
“閻廷様は、本当に今でも光濡様を愛していらっしゃるんですね”
“よろしゅうございましたね、閻濡様”
店員のあの言葉で、閻濡は気づいてしまった。
自分は“閻濡”であり“光濡”ではない。
心躍らせた優しい言葉も仕草も、全部自分ではなく、母親に向けられたものなのだと。
そして、閻廷はもしかして、自分よりも母親を愛しているのではないかという恐怖に駆られる。


その後、ちょうど日も傾いていたので閻廷と閻濡はレストランに入った。
閻濡のイメージする“大人のデート”の最たるような高級なレストランだ。
デート最初の頃の閻濡なら、嬉しさのあまり卒倒するはずだったこの状況だが、
今の彼女は真っ青な顔で俯いてほとんど食事に手を付けていない。
「どうした光濡?全然食べてないじゃないか」
「……ごめんなさい。食欲が、無くて……」
“光濡”。そう呼ばれるたび、閻濡の恐怖は募っていく。
閻廷を騙しているという恐怖。そして、閻廷の愛をすべて奪われるのではないかという恐怖。
そんな閻濡に閻廷は心配そうな顔をした。
「それはいけないな。食事は早く切り上げて帰ろうか?」
「ごめんなさい……」
閻濡はもう何に謝っているのか分からない。ただ、青い顔で俯いた。
いっそ泣きそうになる。最初はあんなに楽しかったのに……と。
閻廷は、本当に食事を早く切り上げて閻濡を車に乗せる。
デートは閻濡の自覚の無い間に終わってしまった。


あっという間に城に戻って、閻濡は父親にお姫様の様に抱きかかえられて、ゆっくりと寝台に横たえられる。
彼女の顔はまだ真っ青で、涙が浮かんでいた。
閻廷は閻濡を心配そうに撫でながら言う。
「本当に具合が悪そうだな光濡……そんな顔をしないで笑ってくれ。今日は楽しくなかったか?」
(嫌っ……!!)
閻濡は無意識に閻廷から、“光濡”の呼び名から顔を背ける。ぎゅっと瞑った目から涙が一筋零れ落ちた。
しかし心の奥底で『演じなければ!』という声がする。
なので閻濡は、ぎこちない笑顔を作って、頑張って閻廷を真っ直ぐ見据えて、震える声で言う。
「いい、え……今日は、とても楽しかったです……愛してます。閻廷様……」
その瞬間、閻廷が驚いた顔をして、その顔はすぐに泣きそうに歪んで、
すごい勢いで閻濡に抱きついた。胸元に顔をうずめて泣き叫ぶように声を上げる。
「――いしてる、愛してる愛してる愛してる!光濡!済まない!済まなかった!私も、愛してる光濡!!私も、私も愛してる!」
(パパ!?嫌っ!!ダメ!!!)
閻濡は驚いて、そして直感した。“これは自分の受け取っていい言葉では無い”と。
次の瞬間、すごい勢いで父親の体を押しのけて泣き叫んでいた。
「やめて!やめてやめてやめて!ぼくはママじゃない!!パパはぼくとママ、どっちを愛してるの!?」
癇癪を起こした様に泣く閻濡。
閻廷は胸から顔を離して、潤んだ瞳で閻濡に優しく微笑んで言う。
「私も光濡も、お前を一番愛してるよ」
「あ……」
閻濡は一気に後悔する。
自分は何て幼稚な質問をしてしまったんだろうと思うと、ますます涙が止まらなくなった。
「ごっ、ごめんなさい……!ごめんなさい!パパに、嘘ついて……騙して、傷つけた……!」
「いや、騙しては無い。最初から知ってた。むしろ、騙されたふりをして、騙したの私だな。ごめんな、閻濡……」
「違う!ぼくが悪いの……!ぼくが、怒られると思って、最初にパパに嘘ついて……!
こんな事、しちゃいけなかったのに……!」
「閻濡……本当に光濡とデートしてるみたいで、楽しかった。ありがとう。
けど……やっぱりこういうのはやめよう。何だか虚しい」
「ごめんなさいっ……パパごめんなさい!!」
お互いに啜り泣きながら抱き合う二人。
しばらく抱き合って、やがて閻濡が泣きぬれた顔で閻廷を見上げて言う。
「パパ……ぼく、パパにちゃんと謝りたい!ちゃんと許して欲しい!だから……!」
「ん。じゃあ、最後までいい子で我慢できるか?」
二人は最後まで言わなくても通じ合ったみたいだ。
閻廷の言葉に頷いた閻濡はどこかホッとした表情だった。



それから、閻濡はドレスを脱いだ下着姿でベッドに座る閻廷の膝に横たわる。
ドレスは閻濡の意思で脱いだ。ママのドレスがシワになるのが怖いと言って。
下着姿の閻濡は、その下着さえもスルリと脱がされて限りなく裸に近くなる。
もう身につけている物はブラジャーしか残ってない。それでも、閻濡は何も言わずに大人しくしていた。
ここで自分が少しでも怯えると、優しいパパはお仕置きを躊躇したり手を抜いたりするのではないかと思ったから。
(パパの気が済むようにお仕置きしてもらわなくちゃ……)
閻濡はただ、口を閉ざしてじっとしていた。
怖くないわけでは無くて、ただ、強い覚悟だけで恐怖を殺してそうしていた。
「あのドレスは……」
閻廷の声に閻濡は一気に怖くなる。
始まるんだ。
その予感は当たった。
パァンッ!!
乾いた音がしてお尻に痛みが走る。
「ぴゃっ!?」
容易く声が出てしまって、慌てて息を止めるように口を閉じる閻濡。
しかし、お仕置きがたった一発なわけが無い。
パン!パン!パン!
同じ痛みが等間隔で続く。そして閻廷の声も。
「あのドレスは、前に着ないでくれって言ったのに」
「あっ、あぁっ!いやぁっ!ごめんなさい!」
パン!パン!パン!
痛みと衝撃に揺られながら、閻濡は必死に息を止める。
声を止めようとして必死になって息まで止めていた。
けれどそれはあまりにも無駄な努力だった。
パン!パン!パン!
「ぱぁっ、はっ、あぁんっ!やぁぁっ!」
閻廷の叩く力は強い。痛みのあまり、声を留めておく事が出来ない。
(声を、止めなきゃ!声を……頑張って!でないと、パパが、怒れないんだもん!)
叫んでは息を止め、叫んでは息を止め……
「ひっ、ぐぅっ、んんっ……ぷはぁっ!!ひゃぁんっ!」
そして叫んで。
それを繰り返す閻濡。
いくら息を止めても、吐いても止めても、閻廷の平手打ちは弱まらなかった。
いつもなら、最初は戸惑いがちに、甘やかす様に優しく叩いてくれるパパだ。
けれど今日はこの時点で本気で叩きつけていた。
痛くて痛くて堪らない。
パン!パン!パン!
(ああ、パパ……怒ってるんだね……)
閻濡は呼吸を乱して、頬を赤らめて、涙を滲ませる。
けれど、こんな風に本気で叱られている事に安堵した。
今日は100%自分が悪い。重すぎるぐらいの大罪だ。だから、パパには思いっきり怒って欲しかった。
「んんっ、ぱぁっ、あはぁんっ、んぅ!!むっ!」
「閻濡……」
閻廷の穏やかな声が耳に届く。
「息を楽にして。我慢しなくていい」
「あっ、でもっ……でもぉぉっ!ひゃぅんっ!」
優しい声の優しい言葉に、閻濡は一気に涙が溢れた。
我慢していた悲鳴は情けない泣き声になって出てくる。
(ダメなのに!泣いたらパパが遠慮しちゃうのに!ぼく、泣かないもん!)
心ではそう強く思っても、声は思う様にくっきりと出てくれない。
「はぁぁっ、泣いたら!パパがぁッ!怒れないんだもっ!ふぇぇっ!」
パン!パン!パン!
痛かった。
痛くて痛くて、泣くどころか抵抗さえしてしまう閻濡。
無理もない。閻濡のお尻は赤くなっていた。
「あぁああん!パパ、思いっきり、怒って、欲しくてぇぇっ!
ぼくが、ふぇぇぇんっ、泣いたら、パパ怒れないぃぃ!!」
言葉が完全にチグハグで、自分の体が自分の思う様に動いてくれなくて……
混乱してますます泣き喚いてしまう閻濡。
閻廷はそんな娘に愛おしそうに目を細める。手は緩めないまま。
「優しいなぁ、閻濡は……」
「優しくないよぉっ!ぼく悪い子だもぉぉぉん!」
「ああ、悪い子だ。でも、お前は優しいよ。私の閻濡……」
パン!パン!パン!
「あぁあああんっ!パパぁぁぁぁっ!!」
閻濡はのけ反って大声を上げる。それでも、閻廷は手を緩めない。
「無理に息を我慢して、閻濡が窒息したらと思うと……その方が心配で
思いっきりお尻をペンペンできない。だから閻濡、息を楽に……」
「はぁっ、はぁっ、パパぁ……」
「というか、もう大丈夫そうだけどな」
パン!パン!パン!
「あぁぁあああん!!ごめんなさい!ごめんなさいパパぁ!!」
閻濡はもう息を止めるどころではなく、大声で叫んでいた。
それでも本人は、健気に閻廷の膝にぎゅっとしがみついて抵抗を自制しようとしているのだが
真っ赤なお尻を何度も叩くとすぐに足をばたつかせる。
「パパぁ!パパ!うぇぇぇぇっ!ごめんなさいぃぃっ!」
「もう許して欲しいか?」
「ふぁぁっ、ダメぇぇっ!パパが、いいって言うまでぇぇぇっ!!」
「パパはもういい」
「ダメぇぇぇぇぇっ!!ふぇぇぇぇぇんっ!!」
矛盾した事を喚きながら激しく泣く閻濡。
閻廷は苦笑した。しかし閻濡にはその顔は見えない。
自分が与えてしまった、父親の悲しみや怒りを、癒したい。それだけが閻濡の望みだった。
そして、娘が望むからいつまでも強めに彼女のお尻を叩き続ける閻廷だった。
「じゃあ、言ってみなさい閻濡。今日、お前がどう悪い子だったか……」
パン!パン!パン!
「あっ、あんっ……パパ……っ!」
色の白いお尻に赤い跡は目立つ。それはそのまま、彼女の感じる苦しみの色だ。
それでも、閻濡は泣き声の合間を縫って健気に答える。
「あの、あのねっ、パパが、ダメって言ったのに、ママのドレス、着てっ……あぁああんっ!
それでね、パパに嘘ついて、あんっ、ママのフリして、デートして……!!ふぁぁああっ!」
パン!パン!パン!
「パパと、デートしたかったのっ!パパの、はぁっ、お嫁さんになったみたいで、嬉しかったの!!
でも……パパが、ぼくよりママを愛してたらって思ったら、怖かったぁぁぁっ!」
「閻濡……」
閻廷は一層叩く力を強めた。怒っているわけじゃない。
そろそろ終わりにしてやりたかった。娘ばかりが罰を受ける状況は。
パァンッ!ビシッ!パシッ!
「本当に、お前は光濡にそっくりなんだ」
「ひゃぁぁああん!やだぁぁっ!うわぁあああん!」
閻濡はさっきより激しく泣きだす。閻廷も泣きそうだった。
「でも、大丈夫だ!お前は閻濡だ!愛してる“閻濡”!いつもそう言ってるじゃないか」
「うん……うんっ!ごめんなさい!ごめんなさいパパぁぁぁ!」
「あの時すぐに、お前を捕まえてお尻ぺんぺんしてやれば良かったな。ごめんな閻濡」
「うぇぇぇええっ!いい!いいのぉっ!パパ悪くないぃぃっ!!」
どこまでも、“悪いのは自分”だと。そう閻濡は言う。
閻廷はこれ以上閻濡を叩く事は出来なかった。
「よし、じゃあ閻濡はいっぱい“ごめんなさい”したし、お仕置き終わり!」
バシッ!
「ぴゃぁぁああっ!」
最後勢いよく叩いて、閻濡は膝から解放された。
閻濡は大声で泣いて、閻廷に縋りついた。
閻廷はそんな娘をずっと抱きしめていた。


そしてしばらくして閻濡が落ち着いた頃に、閻濡の頬を両手で包み込んで
その桃色の瞳を覗きこんで言った。
「閻濡……今日の事は、パパも悪かった。お前にたくさん謝らないといけない。
私は知っていたのに、光濡じゃないと知って、お前に騙されたフリをした。
本当に光濡が帰ってきたみたいだったんだ。嘘でも、光濡と話がしたかった……」
閻廷の顔はどこか悲しそうで、閻濡は胸が苦しくなった。
閻廷は真剣な声で続ける。
「でも、私のワガママでお前を苦しめた。お前は光濡の身代わりなんかじゃない。
これだけは信じてくれ。愛してる。閻濡……」
「パパ……」
閻濡は、閻廷と同じような悲しい顔をしていたけれど……
すぐにニッコリ笑って言う。
「いいよ。ぼくはいつだってパパを信じてる。良かった……パパにそう言ってもらえて安心した」
「ズルイなぁ。お前はパパを叱ってくれないのか?」
「ん……」
閻濡は困った様に少し考えて、そしてキッと閻廷を睨みつけて……
「パパ!めっ、だよ!」
コツンと、閻廷の額を拳で突く。超手加減して。
その娘の叱り仕草に閻廷は……
「ああもうっ!!閻濡可愛過ぎるぞ〜〜!!」
「やぁんっ!パパってば!」
すっかりいつもの調子に戻って、テンション高く娘に抱きついた。
閻濡も嬉しそうに抱きつかれて笑っていて、そこで閻廷は何かを思い出したように顔を輝かせた。
「あ!そうだ!閻濡、とってもいい知らせがある!」
そう言って、もったいぶって小声で閻濡に耳打ちする。
「今日お前が選んで買った首飾り……実はパパとママもお揃いだ♪」
「え……?」
「若い時にママとパパとお揃いで買ったんだ!3人でお揃いだ!
こんな素敵な事は無い!“お前なら、それを選ぶと思ってた”!」
「――うん!ぼく嬉しい!!」
閻廷と閻濡は、抱き合いながら、笑いながら……
ベッドの上をコロコロと転がっていた。

近くの写真立ての中の光濡が、そんな二人に向かって微笑んでいた。




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【作品番号】HSB14

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