TOP小説
戻る 進む


姫神様フリーダム13
※シリーズ越え注意




ここは神々の住まう天の国。
この国の幼い皇子・立佳は本日、山にある茶屋“山の隠れ家”へ来ていた。

「もっもさっとちゃ〜〜ん
「あ、立佳様!いらっしゃいませ!」
走ってきた立佳に、桃里も笑顔を向ける。
そうすると、立佳は嬉しそうにデレデレと話しかけていた。
「いや〜〜今日も可愛いね!球里ったらこんなに可愛い妹さんがいる事、教えてくれないんだもん!!
ねぇねぇ、休憩時間いつ!?良かったらプチデートしようよ〜〜
「立佳様ったらまたそんな事……尊姫がいるんじゃないんですか?」
「うん!尊ちゃんはオレの大事なフィアンセだよ
初デートはここに来ようかと思って下見しに来たんだ〜〜!」
「だったら、私なんかにデレデレしちゃダメですよ!しっかり下見してください!
それに、言ってるじゃないですか!私、雪里と付き合ってるんです!」
「あーそうだった!!も〜困るよね〜雪里君!
お茶屋さんのアイドル看板娘を独り占めしちゃうなんてさ〜〜!!
オレも狐耳生やそうかな〜!ま、球里に免じて、オレは二人を祝福してるけどねっ♪」
「もう!調子いいんですから立佳様!」
二人で楽しそうに笑って、立佳がふと店の奥に目線をやって大声を上げる。
「桃里ちゃん!誰あの子!?」
「え……?ああ、恋心姫ちゃんですか?
近くに住んでる子みたいで、最近よく来てくれるんです」
店の奥に座って一人でお茶を飲んでいる小さな女の子。
立佳がまた懲りずに、デレデレと狙いを定めていた。
「あんな小っちゃい子が一人……保護者不在のチャンス!?
声かけちゃおっかなぁ〜〜 すっごく可愛い〜〜
「あ……でも、あの子は……」
桃里がそう言いかけた時、立佳の後ろに大きな影が立つ。
「可愛いよなぁ恋心姫は……」
「あ、お兄さんもそう思う?」
「あぁ。茶を飲む小さな口元が愛らしい。
瞳も綺麗な黄金色だし、薄桃色の長い髪が生糸のようで……存在自体が一つの宝だな」
「おおっ!言うねぇお兄さん!分かってるぅ〜〜っ!」
大柄な鬼の青年とも臆せず笑顔で話している立佳の傍で、桃里が何か言いたげに成り行きを見守っていた。
青年の赤い瞳が立佳をニヤリとみやって、さらに言葉を続ける。
「あと、尻とか太もものプニプニした柔らいラインがたまらん」
「ひゃぁぁ通だね――!恐れ入ったよ!あれ?でもこの位置からそんなところ見えな……」
言いかけたその時、立佳の頭にものすごい重圧がかかって、
驚いて青年を見た立佳と、立佳の頭を押さえつけて屈んだ青年の目が合う。
青年は恐ろしい笑顔で威圧しながら言った。
「俺の恋人だからな!見えずとも分かる!手を出したらタダでは済まさんぞ小僧!!」
「うぇぇえええっ!!?いや、オレは別にっ……!!」
さすがの立佳もしどろもどろになる中、話題の恋心姫が嬉しそうに走ってきた。
「煤鬼!やっと来たぁ!遅いですよぉ!!」
「おー恋心姫!すまんな待たせて!“ラブラブパフェ”でも食って帰るか?」
「いいですね!桃里……」
言いかけた恋心姫を、突然青年が抱きしめて口付ける。
唇が離れると、恋心姫は恥ずかしそうに笑った。
「もう、煤鬼ったら……せっかちさんですね
「注文したなら、どうせはやることだろ?桃里、“ラブラブパフェ”一つ、頼んだぞ?」
「は、はい!!」
赤くなって頷く桃里。
そこでふと目があった恋心姫へ、立佳がぎこちない笑顔で手を振る。
「かっ……カッコいいダーリンだね〜!仲よくね!?」
「ありがとうございます!!
恋心姫はご機嫌の笑顔で、青年に抱き上げられて二人で奥の席へ戻っていき、
立佳は残念そうに頭を抱えて叫んだ……
「あぁああああっ!オレも角生やそうかなぁぁ!!」
「一体どれだけ色んなものを頭に生やすつもりですか?」
「それより!“ラブラブパフェ”って何!?頼むとキスできるの!?
素敵メニュー過ぎるよ!これで尊ちゃんとキスが……詳しく教えて!!」
ものの、一瞬にして瞳を輝かせて立ち直っていて。
桃里は「立佳様の元気さ、私は好きですよ」と笑って、立佳を喜ばせていた。

*************************


それから数日後。
いつもよりおめかし気味の立佳がこっそりと出かけようとしていると……
「どこへ行くんですか兄上?」
「うわっ!?琳ちゃん……!!さ、散歩だよ!ちょっと散歩〜〜っ!!」
突然現れて、じーっと自分を見つめる琳姫に、立佳は慌てて誤魔化すけれど、
「そんなにオシャレして散歩……なわけないでしょう!?
尊姫に会うんですね!?そうなんでしょう!?わたくしも連れて行ってください!!」
琳姫に強く詰め寄られて慌てていた。
「そ、それは……今日は二人っきりで会う約束だから!琳ちゃんはまた今度一緒に行こう!ね!?」
「二人っきりぃぃっ!?」
琳姫は顔を真っ赤にして叫ぶ。
その後は余計に立佳に縋り付いて、あたふたしながら言った。
「そ、それって……デート!?だだだダメです!!まだ早いですよ!
絶対に許しません!わたくしも行きます!!」
「困るよ〜〜!!琳ちゃんと尊ちゃんが仲良くなって、ハーレムデートも一つの夢だけど!
それはもうちょっと後でもいいって言うか……」
「何なんですかハーレムデートって!兄上なんか大っ嫌い!!」
「ん〜〜じゃあさ、大っ嫌いな兄上の事は今はそっとしておいてくれないかな??
帰ってきたら、仲直りのラブラブタイムしよ〜〜
立佳が琳姫を抱きしめて頬ずりすると、琳姫は顔を真っ赤にしてもがく。
「はっ、離れなさい!!そんなんで誤魔化されませんよ!」
「じゃあ離れる♪行ってくるね!大丈夫!オレは琳ちゃんも大好きだから!」
あっさりと琳姫から離れた立佳は、全力ダッシュで行ってしまい、
琳姫は結局引き留められず……
「ま、待って……もう!バカ兄上!!こうしてはいられません!!」
琳姫も琳姫で、違う方向へと走って行く。



そして、琳姫を振り切った立佳の方は、無事に尊とのデートを楽しんでいた。
この前に下見したお茶屋への道を二人で歩く。
真っ赤になって俯く尊へ、嬉しそうな立佳がデレデレと話しかけていた。
「尊ちゃん、今日は一段と可愛いね〜〜っ
こんな可愛い女神様を連れて歩けるなんて、オレ幸せだなぁ
「こ、このドレス、この日の為にお母様や雪里と選んだんです!
だから、大切なドレスで……立佳様に喜んでいただけてすごく嬉しいですわ!!
立佳様こそ、今日は一段と凛々しくいらっしゃって……
あぁっ 直視できません!!私なんかが隣に並んでいいんでしょうか!?」
「何言ってるのさ!!君はオレのフィアンセなんだよ!?
むしろオレの隣は君しかいないくらいだよ!
あと、ドレスも可愛いけど、尊ちゃん自身も可愛いよ!」
「立佳様……
真っ赤になって顔を上げた尊の両手は、立佳にしっかりと握られていた。
立佳がニッコリと尊に笑いかけて言う。
「ふふっ♪手、繋いじゃった〜〜!このまま、歩いていいよね?」
「はっ……はい、ぜひ こうやって……立佳様と手を繋いで
デートができるなんて……嬉し過ぎて気絶しちゃいそうです
「あははっ!真っ赤になる尊ちゃんも可愛いけど、あんまり緊張しないで楽しんでね?
気絶されたら……オレ色々我慢できなくなっちゃうから頑張って
起きてる尊ちゃんとね、デート楽しみたいから
「はい 頑張ります!!」
そんな風に、仲よく歩いている二人を物陰からこっそり見つめる影……
琳姫は、手にしっかりと姫神式R−2UMB(小傘型レーザー砲)を握って、
出て行くに出て行けず、歯噛みしていた。
(兄上も、尊姫も、あんなにいい雰囲気で……!!
尊姫も可愛いドレスを着て浮かれて!!あれではまるで、まるで……!!)
仲よく歩いている立佳と尊姫の後ろ姿。
それが一瞬、父親と母親の姿に重なって、琳姫は慌てて首を振る。
(いいえ!わたくしは兄上のいやらしい魔の手から、尊姫を守るのです!!
その為に、姫神式だって取り戻したんですから!!)
そう意気込みながらも、尾行を続ける琳姫。


ふたりはやがて、山のお茶屋“山の隠れ家”へ到着する。
立佳は例のごとく桃里を見つけて嬉しそうにする。
「桃里ちゃん 今日も店番だったんだね!会えてラッキー♪」
「……立佳様ぁ?尊姫の御前ですよ?今日はデートじゃないんですか?」
呆れ顔の桃里を気にせず、ひたすら明るい立佳は、
尊を見せびらかす様に桃里の前へ優しく押し出す。
「そう!そうなの!今日の尊ちゃん可愛いでしょ〜〜??
どっかいい雰囲気になれる席ってある!?」
「う〜ん……外の席で食べるのが気持ちいいんじゃないでしょうか?
こんにちは、尊姫。雪里がいつもお世話になってます」
笑顔で尊へ挨拶する桃里に、尊も笑顔で挨拶を返す。
「こんにちは桃里さん。雪里にお世話になってるのは私の方よ。
彼、この前ね、貴女に仕事着を褒められたって、恥ずかしそうにすごく喜んでたわ
「えっ!やだっ……す、すみません!!
私っ……ああいうキリッとした服、本でしか見たこと無くて、はしゃいじゃって!!
そんな事、尊姫に言わなくったっていいのにあの子、バカぁぁぁっ……!!」
一瞬にして真っ赤になって顔を隠す桃里を見て、立佳と尊が楽しそうに会話した。
「赤くなる桃里ちゃんも可愛いねぇ!
二人がラブラブだって球里に教えてあげなきゃ!」
「そうですね立佳様!球里さんもきっと喜ぶわ!!」
「からかわないでください二人とも〜〜っ!!ほら!外の席でしょう!?案内します!!」
会話を無理やり終わらせた桃里に案内されて、立佳と尊は外の席に座った。

ルンルン気分の立佳が、隣の長椅子を見て……さっそく手を振りながら明るく話しかける。
「やっほ―綺麗なお姉さん!どっから来たの?隣の人、友達?俺はね、フィアンセとデート中
「えっ……!?あ、どうも……」
隣の桜の髪飾りをした“お姉さん”は戸惑い気味に笑って立佳に手を振り返し、
尊にメニュー表を渡した桃里が呆れつつフォローした。
「立佳様、見境無さすぎですよ!お隣もデート中です!ねっ、さくちゃん?」
「お姉さん“さくちゃん”っていうんだ〜〜!オレもそう呼んでいい!?
今度一緒にさぁ、ダブルデートのプランでも考えな〜〜い?」
「これ放っておいていいんですか尊姫!?」
桃里がついに尊に助けを求める。尊はにっこりと笑って……
「立佳様は博愛主義でいらっしゃるから……でも」
立佳の服をグイグイと引っ張ってしなだれかかる。
「立佳様ぁ!他の女性ばかり構ってないで尊にも構ってくださいまし!!」
「あ〜〜っ!ごめんね尊ちゃん!!オレってばこんなに素敵なフィアンセを放置するなんて!」
「私も、魅力的になれるよう努力しますけど、あまり浮気が酷いとおしおきですよ?
「わ〜〜っ どうしよう!尊ちゃんにならオシオキされちゃっていいかも〜〜
立佳と尊がいちゃいちゃしている横で、さくちゃんの方は、隣に座っていた青年に声をかけられる。
「桜太郎君、場所代わろっか?」
と、二人は座る位置を交換して、立佳の隣の位置には青年の方が座る。
また隣を見た立佳と目が合って、青年は気弱く笑いながら言った。
「ごめんね。“さくちゃん”、恥ずかしがり屋だから」
立佳の方は悪戯っぽくニヤリと笑ってこう返す。
「ハッキリ“オレのさくちゃんに手を出すな”って、言ってくれてもいいんだよ?おにーさん?
頭を潰されそうになるのは勘弁だけどね〜〜っ♪」
「へっ!?」
「お互いデート頑張ろう!ねぇねぇ尊ちゃん何食べる!?何食べたい!?」
真っ赤になる青年にくるりと背を向けて、尊に話しかける立佳。
尊の持っているメニューを覗き込んで……わざとらしく大声を出す。
「あー!こんなところに、カップル限定のパフェがある――!おいしそーう!
これにしよう!ぜひこれにしよう!」
「まぁ素敵!私、一度こういうの食べてみたかったんです!」
「本当!?やったぁ!じゃあ決まり!桃里ちゃん!“ラブラブパフェ”一つ!
例のやつ!ほら例のやつ!」
立佳がワクワクと桃里へ注文を通すと、桃里はため息をついて、笑いながら言った。
「全く……じゃ〜あ、『カップルの証拠としてキスしてください』!」
「きっ、キス……!!?」
真っ赤になる尊。
立佳の方はガッツポーズしながら白々しくしていた。
「えーっ!?そんなルールがあったのかぁ!!
でも、ルールならしかたない!ねっ!尊ちゃん
「立佳様…… 初デートで立佳様とキスできるなんて……
うっとりする尊と立佳の距離が近づく。
この“キス”に驚いたのは尊だけでは無く……
(キス!?なっ、なんていやらしい……!!
このままでは兄上と尊姫がキスを……! は、早く止めないと!!
っていうかイヤラシすぎる兄上に一発撃ちたい!)
陰で見ていた琳姫も、驚きと怒りに身を任せて姫神式R−2UMBを構える。
しかし、いつもと違って、構える手はかすかに震えていた。
その間にも立佳と尊の距離は縮まっていく。
「わ、私……ごめんなさい!心の準備が……!!」
「いいよ!いつまででも待ってるから……!」
琳姫の緊張も高まっていく。
(撃ち込みたい……けど、もし、尊姫が、周りの方が怪我をしたら……!?
それに、二人を、邪魔して……わたくし、は……!!)
姫神式R−2UMBは沈黙している。
しかし、
「も、もう大丈夫です……立佳様……
「尊ちゃん……
二人の唇が、近づく。
すると、琳姫もグッと目を閉じて、姫神式R−2UMBを――
「――ッ!!」
「何をしてるんですか?」
「あっ……!!」
突然取り上げられた姫神式R−2UMBは、ぐるりと琳姫の方を向いて……
「ちょっと琳姫様のお部屋までご同行願えます??」
姫神式R−2UMBを構える遊磨の怒った顔を見て、琳姫はビックリした顔のまま両手を上げる。
そのまま遊磨に連れて帰られてしまった。


そして、自分の部屋まで遊磨と帰ってきた琳姫は、
さっそくベッドに座った遊磨の膝の上で、スカートや下着を脱がされて……
「いやぁ!遊磨!許してください!撃ってない!撃ってないじゃないですかぁ!」
「撃とうとしてただけで十分問題なんです!!
大体姫神式R−2UMBって、まだ返してもらってないでしょう!?
勝手に持って行って!重罪ですよ!」
暴れても、お構いなく裸のお尻を叩かれてしまう。
バシッ!!
「うわぁあああん!痛い!」
「当たり前です!尊姫と仲よくするって言ったくせに!
遊磨が止めなければ確実に撃ってましたよね!?
意地悪なんてレベル超えてますよ……本気で危ないでしょう!?
今日は少々強く叩きますから、ね!」
ビシッ!!バシィッ!!
「うわぁあああん!!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!!」
「こんな事で本気を出さないといけないなんて、本当に残念です!!
この腕力は貴女を守る為にあるはずなのに!!」
バシッ!
遊磨はいつもより数を抑え目に叩いているけれど、一発一発は強めに叩いているため、
叩かれるたびに琳姫は泣きそうになりながら叫んで暴れる。
「やぁあああっ!もうしません!もうしませんんっ!!」
「琳姫様、この前も玲姫様にそう言ってたじゃないですか!
嘘吐きの悪い子は信用できません!」
「嘘じゃないですぅっ!やだ!やだぁぁっ!もう叩かないでぇっ!」
「嫌です!琳姫様が本当〜〜に、反省するまでやめませんからね!」
ビシッ!バシンッ!
「わぁああん!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!!反省しましたぁっ!」
「だから、琳姫様の言葉は信じないって言ってるでしょう!?
遊磨はねぇ、琳姫様の事見てれば分かるんです!
例えば、琳姫様のお尻は真っ赤になったら反省するですよ!」
「あぁあああん!やだぁあああっ!ごめんなさぁぁい!!違う!違いますぅぅ!!」
「違うんですか!?真っ赤になっても反省しないのかぁ……どうしたらいいんだろう?」
「いやぁあああっ!ちがっ……う、うわぁあああん!遊磨ぁぁっ!」
痛みと恐怖で言葉が満足に思い浮かばないらしい琳姫が泣き叫ぶ。
ひたすら足を振り上げて暴れている琳姫のお尻を、遊磨は辛そうに見ながらまた一つ強く叩いた。
バシッ!!
「うわぁああん!ごめんなさぁぁい!!ごめんなさい!もうやめてぇぇっ!!」
「足は……反抗的ですねぇ、反省してないんでしょうか?」
「反省してます!反省してますってば!痛いぃっ!わぁあああん!!」
「お尻もまだ赤いってほどでは無いし……まだまだ反省する時間はたくさんありますよ!」
「いやぁあああっ!ごめんなさぁぁい!反省してますぅぅっ!わぁああん!!」
ビシッ!ビシッ!!
琳姫を怖がらせるような声のかけ方をしつつ、ゆっくりしたペースで強く叩いていると、
小さなお尻は赤くなっていく。琳姫も完全にボロボロと泣いていた。
「やっ、うわぁああん!うわぁあああん!!」
「琳姫様、今からあんまり泣くと喉が痛くなっちゃいますよ?
境佳様や玲姫様にもお仕置きされるんでしょう?」
「っ!?うわぁあああん!!嫌です!嫌ですぅぅっ!!」
「だって、この前、玲姫様がそう言ってたじゃないですか。忘れちゃったんですか?
姫神式R−2UMBだって勝手に持ち出して、境佳様も怒るに決まってます!
遊磨にはもうどうしようもできないですよ〜〜……ご愁傷様!!」
バシッ!!
「うわぁああん!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!もうしませぇぇん!!
わぁああん!!もう危ない事しませんんっ!!」
「ん〜〜お尻は真っ赤ですけど……(やっばい……そろそろ胃の中がひっくり返りそう……!!)」
真っ赤なお尻で痛々しく泣き喚いている琳姫を叩いている遊磨の、
吐き気はもう限界だった。しかし、口元を押さえたい衝動を我慢して、最後の力を振り絞って言う。
「じゃあ、今からたくさん叩くので、それで許してあげます」
「うっ……うわぁあああん!!」
「泣いてもダメです!ほら、いきますよ!」
遊磨は琳姫をぎゅっと抱き直して平手を振るう。
ビシッ!バシッ!バシィッ!
「あぁあああん!痛い!痛いぃっ!ごめんなさぁぁい!遊磨ぁッ!!」
バシッ!バシッ!ビシィッ!
「うわぁああん!!もうしません反省しましたぁぁ〜〜っ!!」
ビシッ!バシッ!ビシッ!!
「あぁあああん!!ごめんなさぁぁい!うわぁああん!!」
パシッ!!
「あぅぅっ!!」
最後の一発で力が入らなくて、か細い悲鳴を上げた琳姫を膝から下ろして立たせ、
顔色を悟られないように遊磨は言う。
「……玲姫様や、境佳様には今日の事、黙っててあげます。
姫神式R−2UMBの事も……遊磨が返したって言ってあげます。ただし……」
遊磨は言いかけて、突然姫神式R−2UMBを手に取って琳姫に向け……
バシャァアアアッ!!
「きゃぁっ!!?」
噴射された大量の水が琳姫の体をびしょ濡れにしてしまった。
姫神式R−2UMB(水鉄砲)を琳姫に手渡して、遊磨は青白い顔で言う。
「この通り……これは、危ないから水鉄砲に改造されてます。
境佳様や玲姫様にバレないように、シャワー浴びに行ってくださいね。良い旅を」
「ゆ、遊磨ぁぁ!!いつものように、抱きしめては、くれないんですか!?」
涙目で甘える琳姫に、顔を押さえた遊磨は冷静に言う。
「琳姫様悪い子だったから、今はおあずけです。……無事に帰って来られたらね?」
「うっ、うっ……うわぁあああん!!」
走り去った琳姫を見送った後、遊磨も猛ダッシュでトイレに向かう。
(この吐き癖、治さないとなぁ……!!)
と、切実に思いながら。


一方、ずぶ濡れで廊下をションボリ歩いていた琳姫は、帰って来たらしい立佳と尊にはち合う。
「あっ!琳ちゃん!!どっ、どうしたの!?」
「琳姫様……!!」
ずぶ濡れの琳姫を見て驚く立佳や尊に、琳姫は一気に目に涙を溜めて、泣きながら叫んだ。
「貴方達のせいですよ!もうキスした癖に!キスした、なんて……!!
撃ってやれば良かった!水鉄砲だって分かってたら!撃ってやれば良かったですぅう!!
わっ、わたくし……っ、わたくし、遊磨にも怒られて、嫌われて……うわぁあああん!!」
その場でガクリと座り込んで泣く琳姫。
立佳がオロオロしつつ助け起こそうとする前に、
尊はいきなり琳姫の持っていた姫神式R−2UMBを奪って、自分に向けて撃った。
バシャァアアアッ!!
「尊ちゃん!!?」
「!!?」
驚く琳姫に向けて、尊はずぶ濡れながらも明るく笑って言う。
「うふふっ!これでお揃いですね琳姫様?一緒にお風呂に入ってくださいますか?」
「尊ちゃん……そのドレス、大切だって……」
呆然とする立佳にも、尊は笑顔を向けた。
「大丈夫!濡れただけです!
あ!今度、琳姫様と一緒に新しいドレスを買いに行きたいですね!
ね?琳姫様?ふふっ……琳姫様の気持ちも考えず、琳姫様と仲良くなる前に、
ズルして抜け駆けした罰が当たったんですわ……」
「尊……姫……!!」
一番びっくりして固まっている琳姫の傍へ、立佳が座り込んで強く手を握った。
「琳ちゃん!!尊ちゃん、このドレス、更様や雪里君と選んだって!
大切だって言ってたんだよ!?でも、琳ちゃんの為にこんなにしてくれたんだよ!?
琳ちゃんも、いい加減尊ちゃんと仲よくしよう!?お願い!!」
「あ……あ、ごめんなさい……!ごめんなさい!仲よくしますぅう……!!」
立佳の泣きそうな顔を見て、琳姫もまたしくしく泣き出して。
尊だけがひときわ明るく声を出す。
「なら、まずはお風呂に入らないと!立佳様、お借りしてもいいかしら?」
「もちろん!!よし!二人の親睦の為にオレも一肌脱いで……!」
「兄上は入って来ないで!!」
「え――――っ!!」
立佳と話しているうちに、だんだんいつもの雰囲気に戻っていく琳姫をニコニコと見つめる尊。
琳姫が立佳を必死で追い払って、尊と二人でお風呂へ向かう。


そして、大きな浴室の中で。
裸の琳姫が、バスタオルを巻いている尊へとしゅんとしながら言う。
「み、尊姫……!わたくし、色々貴女には酷い事をして……意地悪も言って……
で、でも!貴女の誠意ある姿に感動したんです!あの、あのっ……改めて……
わたくしとお友達になってください!!」
「もちろんですわ琳姫様!私は、てっきり貴女とはもうお友達というか……
姉妹だと思ってました ぜひ、仲よくしてくださいね
「はっ、はい……!!」
快く許してくれるどころか、フレンドリーに受け入れてくれた尊。
琳姫は表情を輝かせて嬉しそうにする。
その琳姫の喜び様を見ている尊も嬉しそうに笑って……
「じゃあ……お友達で姉妹な印。私も貴女と対等な立場に立たないと……
もう、隠し事も抜け駆けも無し。正々堂々と、私は立佳様の妻になる……」
バスタオルを外す。
「うふふっ これが裸のお付き合いってね
ニッコリと笑った尊を見た琳姫の表情が、驚愕に染まる。
「尊……姫……?貴女……あな、た……」
「私、立佳様とはまだキスしてないの。あの時、怖気づいてしまったみたいで……
立佳様、“本当に大切な女の子には、軽々しくキスできないね”って、
さりげなく気遣ってくださって……本当に、優しい立佳様……
ずっと前から、愛しかったの……
うっとりとする尊の言葉も耳に入っていないように、琳姫は目を見開いている。

そして

お風呂を覗いていた立佳は、その場から走り去った。





気に入ったら押してやってください
【作品番号】HS13
戻る 進む

TOP小説