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姫神様フリーダム14




ここは神々の住まう天の国。
この国の幼い皇子・立佳は最近、尊という可愛い姫君に熱烈に告白され、
フィアンセができて浮かれていたのだけれど……。
その尊と、立佳の妹の琳姫がお風呂に入るのを当然のように覗いて、ショックを受けていた。

従者の球里がお風呂から出てきた尊を立佳の部屋に連れて来て、出て行く。
尊はいつも通り嬉しそうに立佳に話しかけた。
「立佳様っ!お待たせしてしまってすみません!!」
「あぁ、うん……」
明らかにテンションが低い立佳に、尊は不思議そうな顔をする。
「立佳、様?どうかなさしました?」
「尊……姫……一つ聞いていい?」
「はい!何なりと!」
「君さ……男の子、なの……?」
ぎこちなく、そう尋ねた立佳に対して尊は……
キリッと勇ましくこう答えた。
「心は立派な女の子ですわ!!」
「いやそれって体は男の子だよね!?結局男の子なんでしょう!?
何でそんな大事な事黙ってたの!?」
ツッコミ気味に叫んだ立佳に、尊はしゅんとしながら言う。
「ごっ、ごめんなさい……!立佳様と恋仲になれたのが嬉しくて……!!
言うタイミングを逃してしまったと言うか……!!」
「あーそう!うん!分かった!オレ、君が黙ってたのは気にしないから!
でもアレ、無しね?恋人とかフィアンセとか結婚とかその話、全部白紙に戻してね?」
参ってしまいながら、キッパリとそう言った立佳。
尊がショックを受けながら慌てて縋りつく。
「そ、そんな!立佳様!愛があれば性別なんて!!」
「ちょっ、や、やめてって!何でそんなポジティブなの!?君が良くてもオレが無理なの!!
あーもう、こんな……」
縋りついてくる尊を遠慮気味に剥がしながら、何か言いたげな立佳は言葉を濁して……
困ったように尊に言う。
「……君もさぁ、皇子なんだよね?もっとちゃんと男の子っぽくした方がいいんじゃない?
そんな女の子ごっこしてたら、和様が心配するのも分かるよ?」
「!!」
立佳のその言葉に尊は愕然として、ポロポロと涙を流しながら笑った。
「……そ、そうですね……立佳様は……やっぱり大人ですね……」
「ごめんね。意地悪言ってるわけじゃなくて……オレ、女の子じゃなきゃ無理なんだ。分かってよ……」
「っ……今までごめんなさい!!」
泣きながら走り去って部屋を出て行った尊。
一人残された立佳は、長い息を吐いて頭を抱えた。


その後少しして、慌てて立佳の部屋に駆け込んできたのは球里だ。
「立佳様!!尊姫に何をしたんですか!?泣きながら帰るって……」
「はぁあああああっ!!?何でオレが悪いみたいに言うの!!?
アイツ男だったんだよ!?騙されたのはこっちなんだよ!?
やっと彼女ができたと思ったのにこんな事ってないよぉおおおっ!!うわぁあああああん!!」
「っ!?立佳様……!!」
キレ気味に叫んで大泣きし始めた立佳を、球里は慌てて抱きしめる。
立佳は泣きじゃくりながら叫び続けた。
「もっと酷い事言ってやりたかったよ!言いそうになったよ!!でも我慢したよ!!
だって悪い子じゃないんだろうし!あの子はオレの事本気で好きなんだろうけど!
男と付き合うなんて無理だよ!!もう許してよ……!!」
「そんな……尊姫が……!!」
球里も困惑しながら、一生懸命立佳を宥める。
そしてその後……

「あぁ、和殿?直接会って話したい事があるんだ。尊姫の事で、そうだな……3時間ほどいただけないだろうか?」

境佳が、穏やかなブチギレボイスで和を震え上がらせる電話をかけていた。


一方、自分の城に帰った尊は……
「やだっ!!私って本気で男の子の恰好したら、ますますお父様にそっくり!!うぅ、複雑な気分……!!」
髪を全部下ろして、いつもの可愛らしいドレスではなく皇子らしい服を着て、
全身鏡を被りつくように見ながらげんなりしていた。
傍では従者の雪里が心配そうに見守っている。
「姫様……」
「ふふっ、お父様からもらった服……あの時は大喧嘩になっちゃったけど、
勢いで捨ててしまわなくて良かったわ♪雪里、どうかしら?似合う?」
「えぇ、とても……しかし、本当によろしいのですか?」
心配そうに笑う雪里に、尊も悲しそうににこりと微笑んで、明るい声で言った。
「失恋すると、大人になれるのね!
私もそろそろ、あの世渡り下手なお父様を安心させてあげなくちゃ!
きっと私がちゃんとした“皇子”になれば、お父様も、お母様も、あの方だって守る事ができる……!!
もっと真剣に考えるべきだったわ。お父様が私を必死で“皇子”にしたがった理由……
王位を継がせたがっていた理由を……私が生まれてきた理由を……」
「姫様!!」
雪里が叫ぶ。
驚く尊に縋り付いて、必死で言葉を続けた。
「違います!!姫様は王位を継がされるために産まれてきたわけじゃない!!
姫様は!和様と更様に純粋に望まれて生まれてきて!自分の為に、自分の好きなように生きる権利があって……!!」
言いながら、ボロボロと涙を零す雪里を見て、尊がまた悲しそうに、困ったように笑いながら、
袖で雪里の涙を拭ってあげていた。
「雪里、何で貴方が泣くの?相変わらず優しい子……でも、その“姫様”呼びは今後封印しなきゃね?」
「姫ッ……尊、様……本当に、それで……!!」
言いかけた雪里の言葉は……
「尊……!!」
部屋に入って来た、父親の和の声に掻き消される。
尊は明るい笑顔で和の方を向いて言った。
「あらお父様!今更だけど誕生日プレゼント、着させてもらったわ!
可愛さは足りないけれど……まぁ、許してあげる!」
「……お前……」
複雑な顔をして押し黙る和に、尊は真剣に言う。
「立佳様に振られてしまって、決心がついたの。
今まで、たくさん心配をかけてしまってごめんなさい。これからは……
ちゃんと“息子”っぽくなれるように努力するわ……でなくて、努力、します」
「……あぁ、尊……!!ありがとう……!!」
和は心底嬉しそうに、安心したように、腰を落として尊を抱きしめる。
そしてそのまま尊の背中を撫でながら、切なげな笑顔で尊を慰めた。
「立佳皇子の事は……今は辛いかもしれないけれど、長い目で見ればお前の為なんだ……。
大丈夫、きっとお前にはすぐにお前に相応しい妃が……」
言いかけて、和ははたと何かに気付いたように言葉に詰まる。
絞り出すように続ける言葉が、大きく震えてくる。
「見つ、かって……お前の為には、早く、相応しい、妃を……」
「……お父様も、そう言われたの?」
「っ、私は……どうして……済まない、尊……!!」
俯いて震えて、今にも泣き出しそうな父親の頭を尊が優しく撫でる。
そうして、優しく見つめながら言葉をかけた。
「本当、どうしようもないお父様ね……いいの。歴史ってのは繰り返すものよ?
お母様みたいな素敵なお妃様が見つかるなら、私、将来が楽しみだわ♪」
言い切った尊を、和が強く抱きしめる。
「尊……愛するお前に、愛しているからこそ、私の王位を授けたかった。
お前の晴れ姿をずっと夢に見てたんだ。きっと、更も。
良かった。お前はきっと、私よりずっとずっと立派な王になれるぞ?」
「ふふっ、当たり前です」
和に抱きしめられる温もりの中で、尊は目尻に涙を浮かべて微笑んだ。



その後。
尊は皇子スタイルのまま、ぼーっとバルコニーから外を見ていた。
頭に浮かぶのは、悲しい別れ方をした立佳の事だ。
(立佳様……きっと怒ってらっしゃるわよね……。
だって、私……あの方を騙していたんだもの……)
そう思うと、胸が苦しくなる。
尊はギュッと胸元を握って俯いた。
(あぁ、まだ立佳様を想うと胸が苦しい……でも、大丈夫。
きっとこの恋心、いずれ消せるわ……あ、女の子言葉も少しずつ抜かなくちゃ……
ふふ、これは苦労しそう……)
ふと笑顔が零れて、そんな自分にホッとして……
(お父様……本当に嬉しそうだった。今の私には、それで十分……)
その、胸の温もりで思考を締めくくって、部屋に戻ろうと後ろを向くと……

「……へぇ、美少女ってのは男装も似合うんだ?」

突然聞こえたその声に、目の前の姿に、尊は驚いて固まった。
「えっ!?」
「なんてね♪」
目の前でにっこりと笑うのは、紛れもなく尊の想い人、立佳で、
尊は驚きのあまり出せない声をどうにか絞り出す。
「立、佳……さ……ど、どう、して……?」
「何ていうかさー……あんな別れ方じゃ、気になっちゃって。
それに琳ちゃんにも、君を泣かせた事怒られて。
“男の子でも女の子でも関係ありません!尊姫はわたくしのお友達です!”って。カッコいいよね!」
「琳姫様……」
尊が、“女の子同士の友情”に感動したところで、立佳が困り気味の笑顔でこう言った。
「でさ、相談なんだけど……オレ達も、友達じゃダメなの?」
そして、空気を軽くするように続けてペラペラ喋りだす。
「ほら、オレってそういえば、イケメンカリスマ皇子の割に年の近い友達いなかったし!
困るんだよね〜〜オレより女の子にモテそうな男の子が現われるって!
君って顔もオレほどじゃないけど美少年だし、優しくて性格もいいし、大人だし、
変に積極的なトコもあるし、女心だって分かってそうだし!わー!何このモテ条件揃ってる感じ!
だから、今のうちに友達になっておけばいいかなって!」
思いもよらなかった立佳のこの申し出に、尊は驚きと感動で瞳を潤ませた。
「わ、私の事……怒って、無いんですか……?
こんな私と友達に、なって、くれるんですか……?」
「そりゃ、“オレの喜びを返せ――!”って感じだけど……まぁ、オレ心が広いから☆」
「……立佳様!!」
感極まった尊が立佳に抱き付くと、立佳は笑いながらも、今度はしっかりと受け入れる。
「も〜〜男に抱き付かれるシュミ無いんだよ〜〜?今だけサービスね?」
「ごっ、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「うんうん。これからは気を付けたまえ、友よ!」
「……はい!ありがとうございますっ まずはお友達からってことですね
「――は?」
――が。
急に復活した尊のラブラブモードに戸惑う事になる。
尊はすっかりかつてのように頬を紅潮させ、瞳を愛の光で煌めかせて、早口で盛り上がっていく。
「あぁっやっぱり立佳様は優しくてカッコよくて!諦めるなんてできません!!
私は一体、何を弱気になっていたのでしょう!?性別など越えて、振り向かせてみせますわ!!」
「えっ……やる気出されても無理だよ?オレ、男は。話聞いてたよね?」
「はいもちろん!ですが!そこは男の子を越えて!女の子より魅力的になれば済む話です!」
「いや、無理だからね?君が何を頑張っても友達止まりだからね?」
「うふふ〜〜 そう言っていられるのも今のうちでしてよ立佳様っ
「……父上が時々さ……」
最初は引き気味だった立佳は、ここで珍しくイラついた表情を出す。
「パパ様に怒ってるの、ちょっと分かった気がした……
話をとことん聞いてもらえないとイライラするよね?」
「あぁっ 怒った立佳様も素敵ですわ 流石私の愛しい人
「だっかっら!男は無理だっての!!心配して損した!!
もう友達なんてやめやめ!騙された憂さ晴らしだけして帰ってやるぅぅっ!」
立佳が尊に掴みかかると、尊は嬉しそうな悲鳴を上げる。
「きゃっ!!立佳様ったら大胆っ
「違うッ!!お仕置きだよ!さっさと後ろ向いて手をついて!」


無理やり後ろを向かされて、バルコニーの柵に捕まった尊は頬を赤くして喚いていた。
「ああんっ!ダメです立佳様ぁぁっ!今日は勝負下着じゃないのにぃぃっ!!」
「うん!全く興味ないから安心して!!男の服なんて捲らないよ!」
パシッ!!
立佳が服の上から尊のお尻を叩くと、尊は驚いたような悲鳴を上げる。
「ひゃんっ!!」
「男のくせに男心を弄ぶなんて許せない!
何で最初から言ってくれなかったのさ小悪魔め!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
服の上からでも続けざまに叩くと、尊は痛そうに身を捩って、叫ぶ。
「ひゃぁんっ!立佳様が優しくしてくれたのが嬉しかったんですぅぅっ!!
恋人のように、扱ってくれるのが嬉しくて……!!つい、幸せに溺れてしまってぇぇ!!
立佳様を弄んでなんかいません!私、立佳様の事は本気ですぅぅっ!!」
「ちょ、ちょっと……叩きづらくなる事言うのやめてよ……」
尊の言葉に同情と言うか、複雑な気分になった立佳は手を止める。
けれど、そんな立佳に尊が言った。
「うぅ、いいんです……!いいんですよ立佳様……!!
立佳様が遠慮する必要なんてありません……!!
理由はどうあれ、貴方を騙していたのですから……お仕置き、されて当然です!!
私は……自分の欲望の為に貴方を傷つけた、自分が許せない……!!
だから、気の済むまで私をお仕置きしてくれていいんです……!!」
「いや、その言い方も色々叩きづらいんだけど……う〜〜ん……」
立佳は悩みながらも、再び手を振り下ろし始める。
パンッ!パンッ!パンッ!!
「とにかく、オレの友達を名乗りたいなら今後は隠し事は無しね!?
もう隠してる大事な事は無い!?」
「ひゃぁああんっ!もうありません!こ、これからは……
何もかも愛する立佳様に晒しますぅぅっ!!」
「あ、あんまり色々曝け出されても困るんだけど……あとオレは何度も言うけど男は無理だから!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「やぁあああん!何度叩かれても、私の愛だけは諦めきれませんわ〜〜っ!!」
尊の心からの叫びに、立佳はげんなりしながらも諦めた。
「ああ、もう……そういうネタだと思う事にしてあげるね……」
「うぅ……酷いです立佳様ぁぁ……本気なのにぃぃ……!!
でも……貴方に嘘をついた事は反省したんです!!」
「あ、そ……じゃあ話を聞かない所も反省して!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「あぁん!は、話は聞いてますよぉぉっ!!でも私は立佳様を愛してぇぇ〜〜!!」
意地でも自分への愛は貫こうとする尊に、立佳も意地でも態度を変えない。
叩く手は強めながらも言い返した。
「ハイハイもうそういうスタンスできてていいよ!オレは受け流すから!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「酷いです立佳様ぁぁああっ!でも愛してるぅぅっ!!」
「オレは、無理!!」
「わぁああああん!!」
こうして、お互いの主張は平行線のまま、お仕置きは終わる。


涙目の尊が、おずおずと言った。
「うっ……うぅっ。立佳様……また、会ってくださいますか……?」
「……いいよ。友達だから」
「やったぁぁっとびっきりおめかししていきますね!」
「あ―ハイハイ好きにして。……ま、男の子の格好して暗い顔してるよりは、
女の子の恰好で楽しそうにしてる方が、君らしいと思うよ?」
「!!」
「“女の子の格好似合うじゃん。父上にちゃんと嫌だって言えば大丈夫だよ”って……
君に言うのは二回目だっけ??」
「立、佳、様……!!」
尊は、信じられないといった表情で瞳を潤ませる。
頭の中に蘇る大切な思い出と、変わらない笑顔が目の前にあって……
立佳も照れくさそうに笑って言った。
「男の子の顔なんて覚えてなくてさ……美少女として再会しちゃったなら、なおさら分かんないよ。
“もっとちゃんと男の子っぽくした方がいい”なんて、言ってごめん。オレの事、ずっと覚えててくれてありがとう。
友達としては、君に悲しい顔してほしくないから。君は君らしく。いいね?
ただし、父君の胃痛を加速させるのもほどほどに☆……って、オレも偉そうに言えないけど♪」
「私、私ぃぃっ、あの時の立佳様の言葉が、ずっと支えでぇぇ!!あぁっ……うぁあああんっ!!」
またしても、感極まって大号泣で立佳に抱き付く尊。
立佳もまた、笑いながら尊を抱きしめていた。
「はぁぁも〜〜っ、抱き付き癖でもあるの〜〜??友達サービスだからね?変な気起こさないでよ〜〜?」

こうして、立佳と尊は無事絆を復活させ、友人として新たなスタートを切る。


その、次の日。

「み、尊……お前……それ……」
和は尊の姿を見て愕然とする。
昨日は立派に着こなしてくれていた、誕生日に贈った皇子服が、
フリル・レース・リボンのフルコンボ+アクセサリー増し増しで
まるでドレスのように可愛らしく改造されて、すっかり“姫”っぽさが復活した息子に着られていた。
当の本人は本当に嬉しそうに和に微笑みかける。
「あっ!お父様!!可愛いでしょ!?どうして気付かなかったのかしら!
お父様にもらった味気ない服も!可愛くしちゃえば楽しく着られるし、お父様のプレゼントも無駄にしないって!」
「昨日……言った事……」
「やっぱり私は私らしく生きるべきだと思うの!立佳様もそう言ってくださったし!
まだ立佳様の事も諦めきれないけれど……王位の事も前向きに考えようかと思って!
最近『オネェ系』って流行ってるんでしょ!?私、『オネェ系神王』って目指してみようと思って!!
応援してねお父様っ!だから、ねぇ、私が立佳様と結婚して王位も継げる方法考えてよ!」
「うぁああああああ尊ぉぉおおおおおおっ!!」
頭を抱えて叫ぶ和。
すると、そこへ王妃の更がひょこっと顔を出して遠慮気味に言う。
「あ、あの和様……そろそろ境佳様がお見えに……」
「ひっ!!?あ、あぁそうだった……!!み、尊は後で話があるからな!!」
慌ただしく出て行く父親に優雅に手を振って……尊は言う。
「……お父様ったら、仲良しの境佳様がいらっしゃるのに何で顔色が悪いのかしら?変なの。
ね、雪里?」
「はい!姫様!!」
声をかけられた雪里も、嬉しそうに笑っていた。


【おまけ】

境佳「いやぁ……申し訳ない、和殿。こんな立派な椅子を用意してもらって……。
    和殿?どうして床に正座なんかしてるんだ?まだ椅子はあるんだから貴方も座るといい」
和 「……いや、私は……ここで……境佳殿……本当に……」 ガタガタガタガタ
境佳「……はぁ。何も、貴方を叱りつけようとここへ来たわけじゃない。私は貴方の友人として、
    大事な事を隠されて悲しいだけだ。誉皇子の事といい……和殿、私はまだ貴方の友人になって
    日が浅いかもしれないけれど、言い辛いような困った事でも、相談してくれていいんだ。」
和 「境佳殿……ご、ごめんなさい……ありがとう……」
境佳「誉皇子は“尊皇子”の性別の事は知っているのか?……本当の意味での“正当後継者”がいたとなると、
    また心象も違ってくるだろう……」
和 「……誉には、折を見て、話そうと……」
境佳「和殿〜〜〜……」
和 「うっ……うぅっ……」
境佳「……打ち明けるなら、誉皇子の為にも、貴方の息子達の兄弟仲の為にも、早めをお勧めする。
    和殿、もう隠している事は無いか?例えば……貴方が実は女性である、とか……」
和 「!!?境佳殿!!それはっ、それは流石に、無礼だ……!!」
境佳「そのくらいの事実が出てきても驚かない、という例えだ。無礼だったなら謝る」
和 「無い!もう隠し事なんて無い!!
   私が男だという事は!私と一緒に風呂に入ってくれればすぐにでも証明できる事だ!!」
境佳「なら今度、閻廷も入れて我々の家族皆で温泉旅行にでも行くとしようか?
    我々は、もっと友人としての新密度を上げる必要がありそうだから」
和 「あっ……ありが、とう……境佳殿……」





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【作品番号】HS14
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