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二鬼夫婦生活
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ここは、ある日の妖怪御殿……ではなく、むしろ神の国でも無く。
人間の世界の、とある神域の山奥。
北西部223団の鬼たちが住む集落だった。

団長の剛鬼の家では、本日も賑やかな食事会が行われている。
「毎日騒がしくして申し訳ないなぁ灯美鬼姐さん!新婚なのに!」
「若いモンが気ィ遣うんじゃないよ!皆、剛鬼を慕って来てくれてんなら、オイラも嬉しいんだから!」
軽々と両手に持っている大皿の料理を食卓に追加しながら、剛鬼の妻・灯美鬼は笑う。
そうすると、剛鬼も嬉しそうに笑った。
「いい事言うじゃねぇか灯美鬼!さすがは俺の女房!」
「アンタは飲みすぎないようにしておくんなよ?」
ほろ酔い気味の剛鬼には呆れた視線を送りつつ、灯美鬼はまた厨房に戻って、
料理を手伝ってくれている他の女鬼へ声をかけた。
「ごめんねぇ!アンタ等もあんまり食べてなくてお腹すいただろう?
後はオイラ一人でどうにかなるから、席に戻っておくれよ!」
北西部223団の合併前から灯美鬼と同じ北部178団所属で、気心も知れている女鬼達は、困り顔で返事をする。
「何言ってんだよ灯美鬼!そりゃアンタだって同じだろ?ウチらに気なんか使わないでよ水くさい!」
「そうだよぉ!灯美鬼、“団長の女房”になったからって、あんまり無理して気張っちゃダメだからね!?
何かあったら、ウチらにすぐ相談すんだよ!?」
「あ、ありがとう……大丈夫!別に気張っちゃいないよ!オイラはオイラで気ままにやってるさ!」
照れくさそうに笑った灯美鬼に、女鬼達も“本当かい?”と言いつつも、ホッとしたように笑う。

こうして、この日も夜まで続いた賑やかな食事会はお開きとなり、片づけも女鬼達が手伝ってくれつつ無事終わり。
剛鬼と一緒に眠る時になって、灯美鬼はやっとホッと一息ついた。
「はぁ……」
「毎日悪いな。疲れたか?」
仲間といる時よりは幾分か落ち着いた声で、剛鬼が灯美鬼の頬を撫でて済まなそうに笑った。
灯美鬼は少し頬を赤らめて、剛鬼の手に手を添えて笑う。
「舐めんじゃないよ。このくらいでヘタばるもんか」
「はは、そうかい。なら……今夜も遠慮なく交われそうだな
「あっ、ちょっと!珍しく優しいと思ったらそっちが目当てだね!?」
「んん?確かにこっちはいつも優しくしてやれんなぁ?」
「もう!バカ!!」
と、すぐ18禁展開が始まってしまうのは鬼のご愛嬌。
剛鬼から逃げるように背を向けても、後ろから抱きしめられて胸を揉みしだかれて、
息を切らせながら灯美鬼は言う。
「ね、ねぇ……オイラ、っ 料理はあんまり、得意じゃないんだけど……皆、美味いって食ってる……?」
「ンなもん、腹に入りゃ皆一緒だし、味なんて細かい事気にするヤツぁいねぇよ
「……そうかい……」
「あぁでも!俺はあの肉団子が美味かったな!」
「……ありゃ、沙鬼(さき)が作ったんだ……礼を言っとくよ……」
剛鬼の言葉一つ一つに、小さくイラついて……灯美鬼は勢いよく剛鬼の方を向く。
「もう!本当に!調子に乗るんじゃないよ!!」
「おっ!やっとその気になったか?」
この日も、嬉しそうな剛鬼と騒がしく夫婦の親睦を深めて夜は過ぎた。


それからも毎日、日が暮れると剛鬼の家には彼を慕う仲間達が集まって食事会が催された。
“剛鬼を慕って仲間が来てくれるなら、嬉しい”。灯美鬼の言葉は嘘じゃない。
しかし、昼間も色々と忙しく出かけ回っている剛鬼と、一緒にゆっくりできる時間が夜だけだという状況に、
灯美鬼には寂しさのような、不満のような、複雑な感情が芽生えてくる。
しかも、その肝心の夜は……
「お、オイラ今日はちょっと……」
「何言ってんだ!こんな時しか愛し合えないだろうが!」
「あぁあん嫌だっつってんのにこのドスケベぇぇっ!!」
拒否しようにも、結局は自分もまんざらでもなく
激しく“愛し合って”しまい、記憶が曖昧というか、実感が無い。


ついに、灯美鬼は仲間に相談しつつ、泣きついた。
「ごめん!ごめんねぇ!アンタ等もいつも手伝ってくれてるのに!!
でも、でもオイラ……もっとこう……剛鬼と……!!」
「いいんだ!いいんだよ灯美鬼!心配だったんだ!話してくれて嬉しいよ!」
「男連中は抱いときゃいいって思ってるトコあるよね!自分らはそれで満足かもしんないけどさ!」
女鬼達は大いに哀れがって、慰めてくれた。
そして……
「そんならさ、灯美鬼!旦那と二人でゆっくり温泉でも行ってきなよ!これあげるから!」
「そうそう!それ持って剛鬼誘ってみな!」
“温泉のパンフレット”をくれた。
灯美鬼も嬉しそうにそれを受け取る。
「あ、ありがとう!!本当、ありがとうね!誘ってみる!」

そして、大事にそれを持ち帰って、お互いの時間が空いた夜にさっそく、
パンフレットを持って、剛鬼を誘ってみた。
「ねぇ、剛鬼……」
「ん〜〜?」
「こ、今度さ……ここ、行かない?」
「おおっ!いいじゃねぇか!」
「だろ!?」
剛鬼も明るい乗り気で頷いたので、灯美鬼も一気に嬉しくなるが……
「きっと皆も喜ぶな!団で旅行するなんて滅多に無いし!」
「……そうだね!」
もう笑うしかなかった。
しかし、剛鬼の方はその笑顔に少し違和感を感じたらしく、訝しげにしている。
「灯美鬼?」
「細かい話は今度にしてさ、もう寝ようよ!」
「……あぁ」
妙な空気の中、二人は一緒に床に就く。
剛鬼に背を向けた灯美鬼が、暗闇の中でぽつりと呟く。
「……今日は何もしないんだ?」
「してほしいのか?」
「絶対触んな」
「何だよ。何か怒ってんだろ?」
「別に」
「……じゃあもう寝ろ」
「……(泣くもんか!絶対泣くもんか……!!)」
灯美鬼はギュッと目を閉じて無理やり眠った。


――翌朝
厨房には、ヤケクソ気味に朝食の準備をする灯美鬼の姿があった。
(よくよく考えれば!何でオイラがあれこれ考えて落ち込まなきゃなんないんだい!?
剛鬼はああいう奴だよ!分かってたじゃないか!オイラがやるべき事は!)
取り分けた食事の、量の多い方に調味料を異常に足しながら、灯美鬼は決意する。
(あのアホ鈍鬼に仕返しして憂さ晴らししてやる事だよ!それで全部チャラだ!)

こうして出来上がった、灯美鬼特製の朝食を……
「おお!朝から豪華だな!いただきます!!」
嬉しそうに食べ始めた剛鬼は……
「んぐっ!!?うぇっ、何っっだこれ辛っ!!?」
激辛のおかずに驚いて汁物に手を伸ばし……
「げほっ、ごほっ、うっ、こっちもかよ!!?ま、まさか……」
塩味が効きすぎている汁物に咽て……
「んがぁぁっ!これもかぁぁあああっ!!」
酸っぱすぎるご飯に絶望していた。
そんな、一人で盛り上がっている夫に、灯美鬼が涼しい顔で言う。
「うるさいねぇ。静かに食べなよ」
「ひ、灯美鬼……どうしたんだよ舌が狂ったのか!?」
「おや、アンタ“味なんて細かい事気にする”タマだったのかい?
“腹に入りゃ皆一緒”だって、 言ってたじゃないか」
ニヤリと笑った灯美鬼に、剛鬼はピクリと眉を吊り上げる。
「……あ?まさかお前これ……ワザとか!?お前は何で平気なんだよ!?」
「オイラは繊細だから、アンタのとは味付けを変えてんだ」
「めんどくせぇ事しやがる……!!朝っぱらから何のつもりだ!!」
剛鬼に怒鳴られても灯美鬼は怯むことなく、怒鳴り返す。
「いいからさっさと完食おしよ!!まさか、せっかく作ったもの残す気じゃないだろうねぇ!?
アンタが料理の味付け一つでゴチャゴチャうるさい、そんな度量の狭い男だって聞いたら煤鬼がガッカリするだろうさ!」
「はっ!言ってみろ!俺にこんな嫌がらせをした事、煤鬼が知ったらアイツは震えあがるぞ!
“命知らずだ”ってなぁ!ったく、とりあえず……これは片づけねーと……」
剛鬼は目の前に並んだ食事を見つめて唸りつつ……超スピードで口の中に掻き込んで、
所々咽ながらも食べきっていた。
そして、フラフラと灯美鬼の傍に来て、手首を強く握りながら言う。
「はぁっ、はぁ……灯美鬼ぃぃ〜〜……俺はこれから出かけるけどなぁ……
帰ってきたらたっぷり報いを受けさせてやるから、覚悟しとけよぉぉ……」
「あぁ、楽しみにしてる」
「減らず口が……!」
ニッコリ笑っている灯美鬼に、ため息をつきながら剛鬼が離れる。
灯美鬼があっ!と気付いて、そんな剛鬼を呼び止める。
「ちょっと!今日は皆何時から来るんだい?」
「あ゛ぁっ!!?今日は来ないに決まってんだろ!お前に折檻しなきゃならんのに!
全裸で正座して待ってろ!!」
「待ってるわけないだろ!何さ変態!」
また怒鳴られたので怒鳴り返す灯美鬼。
結局、剛鬼は怒り気味に出かけてしまい、灯美鬼は一人家に残された。

(剛鬼……怒らせちまった……はは、ざまぁみろだね!
不味さに驚く剛鬼の顔ったら……!!)
クスクス笑っても気が晴れず。
気を紛らわせようと、家事をしてみても、一人でいると色々と考えてしまう。
(あんまり、スッキリはしなかったけど……これで仕返ししたし、また頑張ろうと思ったのに……
今日は皆……来ないんだ……)
イマイチ、やっている事に身が入らない。
チラッと時計を見れば全然進んでいない。それでも、頭の中は考え事をやめてくれない。
(……“折檻”なんて言ってたけど、オイラ何されるんだろう?……いやいや、剛鬼は性格サッパリしてるし、
帰ってくる頃にはどうでも良くなってたり……ほら、3歩歩いたら色々忘れてそうだし……!!)
だんだん、後の事が怖くもなってきた。
“団長”を任されるくらいの夫の体格と腕っぷしの強さは灯美鬼が一番よく分かっている。
(けど……食い物の恨みは恐ろしいって言うし、オイラ逃げた方がいいんじゃ……!?
いや、どこへって感じだし……逃げたところで連れ戻されたら同じだし、余計酷い折檻されるかもだし……!!)
全然進んでくれない時計は、けれど確実に時を刻んでいく。
時が進めば進むほど、灯美鬼は余計にいてもたってもいられなくなってくる。
(こんな!家の中に籠ってるから色々考えちまうんだ!外の空気を吸って来よう!
そうしたら少しは気が晴れるかも!大丈夫!逃げるんじゃない!これは、逃げるんじゃなくて……!!)
灯美鬼はせかせかと靴を引っかけて、外に飛び出そうとする。
が。
「おう、どこ行くんだ?出かけんのか?」
同時に、扉から入って来た剛鬼に阻まれる。
灯美鬼は、予定より早すぎる夫に帰宅に呆然としながら、ぼんやりと考えた。
(でも……今日はせっかく皆来ないのに……せっかく、二人っきりなのに……)
「まさか、逃げようってんじゃねぇだろうな?」
脅しかけるように笑う夫の顔が、声が、頭に入ってきたと同時に……
(何で、こんな事になっちまうんだろう……?)
灯美鬼の目からは無意識に涙が流れていた。
剛鬼が表情を緩めて、身をかがめて灯美鬼を覗き込む。
「何だ。お前でも泣くんだな?」
「っ、失望、しただろ!?アンタが思うほど御大層な女じゃないんだ!
団長の、女房が務まるほどの、女じゃ……!!」
「それ以上言うなって。泣くほど、俺が追いつめたって事だろう?すまなかった」
顔を逸らして、隠すように必死で涙を拭う灯美鬼の頭を剛鬼が撫でながら言う。
「食事会、無しにしたら……皆に言われちまって。
“新婚家庭に毎日お邪魔したら悪い悪いと思ってたけど、剛鬼兄さんに誘われたら断り辛かった”って。
“灯美鬼が寂しがってるから、たまには二人っきりで大切にしてやってくれ”って。それで今日は無理やり帰らされてな。
俺も実は……女房ができた途端、食事会を減らしたら皆に悪いかなぁと思って、無理やり開いてたトコもあったんだ。
こんな事なら、最初から正直に皆に言えば良かったよ。“今日は灯美鬼と二人がいいから、食事会は無し”って」
「剛鬼……」
「けど、お前だって俺に正直に言ってくれたら良かったじゃねぇか……。
昨日から怒ってたのはその所為か?飯にあんな事されても分かんねぇよ」
「ご、ごめん……!ごめんよぉっ!!」
困った顔で笑う剛鬼に、感極まった灯美鬼は抱き付いた。
抱き付いて、泣きながら叫んだ。
「本当だよね!言えば良かったんだ!
たまにはアンタと二人でいたいって、言えば良かったんだ!
剛鬼は食べるの大好きなのに!!あんなもの食わせてごめんよぉぉっ!!」
「反省してるか?」
「うん、してる!!」
「んじゃあ、大人しくしてろよ?」
「うぁっ!!?」
剛鬼は軽々と灯美鬼を抱き上げて家の中に入ると、適当に胡坐をかいて灯美鬼の体を横たえた。
驚いた灯美鬼が涙も引っ込めてキョロキョロしていた。
「やっ……!?な、何だいコレ!?」
「言ったろうが。“帰ってきたらたっぷり報いを受けさせてやる”って。
俺はなぁ、食べ物で遊ぶ奴にはそこそこ厳しいぞ?」
言いながら剛鬼が、灯美鬼の着物の裾を捲って、下着を下ろして、
裸のお尻に手を振り下ろす。
バシィッ!
「ひゃぁぁっ!!?べっ、別に遊んだわけじゃ……!
アンタに、嫌がらせしてやろうって……!」
「なお悪い!……とはいえ、今回は俺も悪いし、“半分”くらいで勘弁してやるよ。
ほら、歯ぁ食いしばんな!」
ビシッ!バシッ!!バシィッ!
剛鬼は力が強いだけに、少し叩かれただけでも痛みで堪らなくなって、
灯美鬼は悲鳴を上げて暴れた。
「いやぁあああっ!痛い!痛いよやめてぇっ!!」
「旦那に嫌がらせするような女房には、躾が必要……そうだろ灯美鬼よぉ?」
「そっ、そうだけど……!!アンタがオイラにもっと構ってくれてたら!
オイラだってあんな事しなかったよ!!」
「ははっ!それを言うなって!悪かった、悪かったよ!反省する!
だからお前も反省しろ!」
バシッ!ビシッ!バシィッ!!
「やぁあああっ!あ、あぅ……!!
わ、わかったよ、反省したからさ……もうやめてよ……!!」
「こんなちょろっとで反省したのか?そんな事無いだろう?」
バシィッ!!ビシィッ!!バシッ!
“反省した”と主張しても許してもらえず、しつこく叩かれたので
灯美鬼は涙目になって、余計大声で叫ぶ。
「あぁあああん!本当にしたんだってばぁぁっ!
もう食べ物に変な事しないからぁぁッ!!何でオイラがこんなガキみたいな事ぉぉっ!!」
「ガキみたいな嫌がらせしたんだから、ガキにするみたいな折檻で十分!
……あと、それ以上の事をして愛する女房に怪我させたくないしな」
「あぁっ!くそう!!カッコつけんじゃないよぉぉっ!!」
こんな時でも少しドキッとしてしまう自分にイラッとしつつも、そのイライラをぶつけるように叫ぶと、
剛鬼が呆れ声で言った。
「お前もなぁ、生意気ばっかり言ってないで、ちっとはしおらしく謝ったらどうだ?
でないと、許してやらんぞ!」
バシィッ!ビシッ!ビシッ!!
また繰り返しお尻を打たれる。
すでにお尻が真っ赤になっていた灯美鬼は痛みと闘いながら必死で言うとおりに謝ってみるけれど、
「やぁあぁっ!わかっ、分かったぁ!オイラも悪かったよ!謝るから!だから!
本当にもうやめてぇっ!」
「……違うなぁ。反省してるなら“ごめんなさい”だろうが?」
バシィッ!!
「いやぁぁっ!ごめんなさぁぁい!!」
そんなところで、強く叩かれれば一たまりも無かった。
あっけなく泣き出しながら、謝りながら、剛鬼に駄々をこねるように許しを乞う。
「はぁんっ!半分って、ぃ言ったじゃないかぁぁっ!
どんぐらいだよ半分ってぇぇっ!うぁああん!もう勘弁しておくれよぉぉっ!!」
しかし、剛鬼の返事は……
「……灯美鬼お前……泣いてるとこ可愛いなぁ?」
「なっ……!!?」
「もっと叩いててもいいだろう?」
予想外の一言に、一瞬、痛みも忘れて顔を真っ赤にする灯美鬼。
けれど、再び叩かれている事に意識が戻ると、痛みと恥ずかしさで余計に暴れた。
バシッ!ビシッ!バシィッ!!
「ヤダよ!離せ!うわぁあああん!バカァッ!バカぁあああっ!!」
「バカって何だバカって!さては、全然反省しとらんな〜〜?♪」
「ごっ、ごめんなさっ……あぁあああ!謝るのもバカらしいよ!オイラで遊ぶなぁぁッ!!」
「遊んでない遊んでない!これは折檻だぞ!分かってんのか♪!?」
「うわぁあああん!嬉しそうにしてんじゃないよぉぉぉぉっ!!あぁあああん!!」
バシィッ!バシッ!バシンッ!!
結局、灯美鬼がどんなに暴れても、それを軽々押さえつけていられる剛鬼からは逃げられず、
最後は嬉しそうな剛鬼の遊び半分みたいになりつつも、きっちりと“折檻”されてしまった。
そして……やっと膝から下ろしてもらえて、優しく泣き止ませられた。

ところ、ニコニコする剛鬼が満足そうに言う。
「よーし!これで、もう二度と俺に遠回しな嫌がらせはできんな!」
「あ、あぁ……悔しいけど、懲りたよ……」
正面にちょこんと正座しつつ、恥ずかしそうに涙目の顔を逸らす灯美鬼。
剛鬼が腕を組んでうんうんと頷く。
「結構結構!俺もこれに懲りて、お前をもっと大切にするからな!」
「ハイハイ、どうだかねぇ……」
「疑うのか?温泉に連れてってやろうってのに!無論、二人だけで!」
「アンタ……!!」
灯美鬼が驚いて感激していると、いきなり剛鬼が抱きしめてくる。
そして、真剣に囁いた。
「灯美鬼……愛してる……」
「ちょっ……いきなり何さ!?」
一気に恥ずかしくなって耳まで真っ赤になる灯美鬼に、
剛鬼は追い打ちをかけるように言葉を続けた。
「お前に惚れてるって言ってんだよ……聞こえてるくせに」
「や、やめてって……やめて……!!」
剛鬼の体温から、言葉から離れようにも、ガッチリ抱きしめられているので身を捩る事しかできない。
抱きしめる腕が、だんだんと快楽を誘うように体を撫でまわす。
「こういう事を、きちんと伝えるのを横着したから、俺はお前を傷つけちまったんだろ?
やっぱり言葉は大事なんだよ……なぁ灯美鬼?常々、俺の女房はお前しかいねぇって思ってるよ……」
「か、勘弁しておくんなって……そんな事、されながら、言われたら……ふゃっ!?」
二人で床に雪崩れ込んだ衝撃に驚きながらも、灯美鬼は剛鬼を見上げて、
目が合うと逸らして、弱弱しく言う。
「興奮、しちまうだろ……!!」
そんな灯美鬼の様子に、剛鬼はニヤリと笑う。
「お前が興奮して何か問題があんのか?むしろありがてぇな!」
「あぁ剛鬼ぃっ
やっぱり、すぐ18禁展開が始まってしまうのは鬼のご愛嬌。
この日も、嬉しそうな剛鬼と灯美鬼が夫婦の親睦を深めて……ゆっくり一緒に時間を過ごせたのだった。



【おまけ】

灯美鬼「沙鬼―!沙鬼お願いだよ!アンタが前作ってた肉団子の作り方教えて!!
     剛鬼があれ美味いって言ってたから!!」
沙鬼「ああ!お安い御用だよ!(灯美鬼って案外尽くすタイプだよね……)」



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【作品番号】onihuhu

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