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廟堂院家の双子の話5



町で噂の大富豪、廟堂院家には二人の息子がいた。
名前は千歳と千早。まだ幼い双子の兄弟だ。

この日、千歳はいつものように自分の部屋でゆったり紅茶を飲んでいた。
唯一、一緒にいる青年執事の襟元にキラリと光るゴールドバッジは執事長の証……
彼は現・執事長の上倉(かみくら)。執事長であると同時に、千歳の身の回りの世話もしていた。
背の高い、パッと見好青年の上倉はその見た目にふさわしい笑顔で千歳に話しかける。

「千歳様、最近、執事達の気になる噂を聞いたのですが……」
「なぁに?」
「毎週金曜日の夜に、千早様が執事一人ずつを寝室に呼び出しているそうです」
「金曜日?今日の夜……ああそっか……」
千歳は何かに気づいたようで、クスリと笑う。
「僕がいないから……」
「ええ。今宵は千歳様と私の“お勉強”の日です。
千早様は一人寝の寂しさを紛らわせるために執事達を呼び出しているのではないかと……」
「へぇ……それはそれで問題ないんじゃない?」
「ええ、そこまでは……。
問題は千早様が呼び出した執事を鞭で虐めていらっしゃる、という事です。
ご機嫌斜めですから、いつもの比じゃないくらいの虐めっぷりだとか。
あまり続くと……私は執事長として、仲間たちの体が心配で……」
心配そうな上倉に対して、千歳は平然と紅茶に口をつける。
やがてゆっくりとティーカップを置いて、優しい眼差しで上倉を見上げた。
「そうだね。執事さん達もお気の毒だ。
それに上倉が知ってるって事は、お父様の耳に入るもの時間の問題……
千早ちゃんが可哀想な事になる前に、釘を刺しておかないと……ねぇ、上倉?」
「はい」
「千早ちゃんを連れてきて」
「かしこまりました。ところで千歳様、私に一つ提案が……」
「いいよ。お前に任せる」
千歳の言葉に、上倉は爽やかに微笑んで部屋を後にした。

そして数分後……


「離せっ!離せこのド変態ッ!!」

廊下から聞こえてくる千早の声に、千歳はドアの方を見る。
丁度いいタイミングで、上倉と、彼に抱きかかえられた千早が入ってきた。
「兄様!!」
何故か装飾過多な可愛らしい白ワンピース姿の千早は、地面に下ろされた瞬間、
千歳の方に走っていこうとするが、すぐに上倉に止められる。
「ああ!暴れないで下さいまし千早様……!
まずは、敬愛するお兄様に素敵なドレスを見せてあげましょう!」
「やめっ……!!」
上倉が勢いよく左右に破いた白ワンピースから露わになったのは、
千早の裸体……に、網の目のように纏わりついた黒いリボン……
そのくせ、肝心なところはあまり隠せていなくて、所々に金属の繋ぎがあるそれは
いわゆるボンテージだった。しかも、かなり露出度高めだ。
「……ッ、うっ……」
顔を真っ赤にして目に涙を溜める千早。
しかし、キッと上倉を睨んで、千歳にすがりついた。
「兄様!!上倉が……上倉がオレにこんな酷い格好を!!
この男は変態です!有能な執事の皮をかぶった変質者です!今すぐクビにしましょう!」
「なるほど……確かに酷い趣味だね上倉。でも、提案としてはいいんじゃない?
執事を虐める悪い子をにはお似合いの卑しい格好だよ。
お仕置きするのが楽しくなりそう」

千歳がそう言うと、千早は驚いて完全に固まってしまった。
この状況で自分が冷たい反応をすれば千早がショックを受けるのは重々承知な
千歳だが、せっかくボンテージ姿なのでぞんざいに扱ってあげようと思ったのだ。
冷たい声で、残酷な笑顔で、さらに追い打ちをかける。
「千早ちゃん、上倉に何も聞いてないの?君は今から僕にお仕置きされるんだよ?」
千早は驚いた顔で固まったまま、全く反応がない。
その硬直具合が少し心配になった千歳は再度呼びかけて……
「千早ちゃん?」
「オレより……上倉の味方を……?」
意外な言葉に、今度は千歳が驚いた。
たった今、お仕置きを宣告したというのに、千早はそれより上倉の事を気にしている……
「千早ちゃん……まさか妬いてるの?」
千歳の言葉は的を射たようで、千早は悲しそうにはらはらと涙を流した。
「……だ、だって……っ、今日だって、オレを差し置いて上倉と……!!
毎週、毎週っ……う゛ぅっ……ちょっと兄様の世話係だからって……っ!!
上倉なんかっ……優秀だからってっ、どうしようもないド変態の上倉なんかにっ……!!」
「あぁ……千早様が……そんな格好で私を罵って……ゾクゾクします!!」
「上倉、出ていって」
すぐそこで歪んだ歓喜に身を震わせていた上倉は
千歳に退場を言い渡された瞬間、真顔で深々と頭を下げた。
「失礼いたしました。お坊ちゃま方、どうか楽しい午後を」
上倉が出ていっても、千早は相変わらず溢れる涙と格闘してる。
そんな弟の姿に、千歳は一気に愛しさが込み上げてきた。
あんな可愛らしいヤキモチを焼くなんて……
嬉しくて、抱きしめてあげたくて、それなのに、何だか思いっきりお仕置きしたい。
収拾のつかない気持ちは、少し顔が赤くなるほど焦れったくて堪らなかった。

「千早ちゃん……君は全然何も分かってないね。
ほら、早く床に四つん這いになってお尻を突き出して」
「こ、この恰好でですか……?」
「そうだよ、さぁ」
一瞬渋ったものの、千歳がいつもの鞭を取って促すと千早は素直に四つん這いになった。
いつもながら従順に自分に差し出されたお尻に、千歳も躊躇なく鞭を振るう。
その肌を打つ乾いた音を合図に、今日もお仕置きが始まったのだ。
「ひ、ぁっ……!!」
「さっきは卑しいなんて言っちゃったけど、その格好とっても可愛いよ千早ちゃん。
お尻もちょうど丸見えだし都合がいいよね。」

千早の格好は露出度の高いボンテージ。
後ろから見て、背中は何本か黒のラインが通っているだけで大方の素肌が丸見えだし、
下半身にいたっては、大事な部分をかろうじて
隠す気があるのか無いのか分からない黒紐が通っているだけ。Tバックに近い状態だった。
「うっ、ぅ……褒めていただいたのに……ぁ、恥ずかしくて、っ死にそうです……」
「大げさだね……じゃあ、褒めるのはやめて叱ってあげる」
バシッ!
「いっ!!」
千早が恥ずかしさに俯けた顔が跳ね上がるほど強い一発。
その後はまたゆるやかなリズムでお尻打ちが続く。
「まず一つ……。
僕が金曜日に君と寝られないのは“大切な勉強”があるからって説明したよね?」
「はいっ……ぁあっ……」
「君は僕の言葉を信用してないの?僕が上倉に特別な思い入れがあるとでも?」
「違っ……くぅっ、兄様を信じています……でもっ……!!
上倉は特別だから……特別な、ヤツなんでしょう?オレにはただの変態にしか見えないけれど……
だから、もしかしたら兄様も……上倉が気に入って……」
「話にならないね」
ぐっと力を込めて振るった鞭は、千早のお尻で勢いよく弾んで大きな音を響かせる。
それに比例するような鋭い痛みが千早を襲って、漏れる悲鳴も大きくなった。
「――ぁはあっ!!」
「確かに上倉は優秀だし、特別だよ?でも、だからって……執事風情が
僕の中で千早ちゃんより大切になるなんてあり得ない!」
バシィッ!
「いひあぁぁっ!!」
力強く断言するしたはずみで叩く手にも力が入って、千早がのけ反る。
千歳は千早が身をよじったり悲鳴を上げたりするたびに感じる心地よさで
だんだん頭がぼぉっとして、それでもその感情に呑まれないように頑張っていた。
「僕が一番大切なのは、愛してるのは……千早ちゃんなのに……
どうして分かってくれないの?」
「ごめん、なさい!はぁ、ごめんなさい兄様!!
オレはっ、こんなにも……兄様に愛されてるのに、はぁ、……上倉ごときに妬いたりして……っ、」
「そうだよ。あんな上倉ごときに……」
息を切らせている千早に対して、千歳は少し手を緩めて……
強くはないけど確実な痛みで千早を追いつめていた。
「大体、僕がちょっと上倉と勉強したぐらいで、ヤキモチ焼かれたら……
毎日とっかえひっかえ執事さんたちを虐めてる君はどうなの?
僕は毎日嫉妬に狂わなきゃいけないよ」
「あぁあっ!!そ、そんな……!!アイツらは。タダの玩具で……、気が向いたから遊んでるだけで!
オレが愛してるのは兄様だけです!」
「さぁ、どうだろう?」
「兄様ぁ……!!」
千早は困ったように甘ったるい声を出す。
お尻を真っ赤にしながら甘えてくる弟が可愛らしくも可笑しくて、
千歳は楽しそうに鞭を当てていた。
「ふふっ、可愛い声出しても無駄だよ?この浮気者……」
「やっ……お願いです!信じて下さい!オレが愛してるのは兄様だけです!!
あぁっ、兄様!愛してるのに……こんなにも愛してるのにぃ……っ!!
アイツらはただの玩具なんですぅっ!!」
「そう……玩具。
君にとっての大勢の執事さん達も、僕にとっての上倉も同じ……」
千歳はそう言って千早の赤いお尻にそっと触れる。
そのまま優しく撫でてあげると、千早は小さく息をのんで、体の力を抜いて……
もうすっかり千歳の手に身を委ねていた。
「分かってくれた?」
「はい……」
「そう。良かった。じゃあ二つ目……」
再び強くお尻を叩く千歳。
油断しきっていた千早が驚いて悲鳴をあげて
「ぁあああっ!!?」
「執事さん達を虐めるのは、ほどほどにしといた方がいいよ」
その反応に満足そうに微笑んんで、容赦なくバシバシと叩いていく。
「にぃ、様っぁ……もうっ……痛い……」
「ん?君が痛いかどうかなんて今聞いてないよね?
まだ反省してないのかなぁ、全く世話の焼ける子……」
「ご、ごめっ……!!」
バシィッ!!
慌てて謝る千早の言葉を最後まで聞かずに
一番赤くなっている所を思いっきり叩くと、千早が一気に泣き出してしまった。
「うわぁあああんっ!ごめん、なさい!あぁ、兄様ぁぁっ!!」
「もう……僕が今何て言ってたか聞いてた?」
「あぅ――、執事……虐めるのは良くないって……!!うぇぇっ……」
「あら……ちゃんと聞いてたんだ。
僕はね、千早ちゃんはちょっとワガママっぽい方が可愛いと思うんだけど……
僕の前ではいい子だし。ただ……」
そこで一旦言葉を切って、真剣な口調でこう続けた。
「お父様にバレたら厄介だよ?普段は甘やかすくせに、正義感だけは人一倍強い人だから。
きっと千早ちゃんお仕置きされちゃう……
嫌でしょう?千早ちゃんをお仕置きしていいのは……」
「やぁあああっ!にっ、兄様だけです!!あぁっ、あ!」
「そうだよ。僕だけ。例えお父様でもこれは譲らない……。
でも、あの人に動かれると僕のできることにも限界が……」
「わぁぁああんっ!!お父様なんか嫌だぁぁっ!兄様がいいっ!!ごめんなさい兄様ぁぁっ!!」
「ああもう、可愛い千早ちゃん。
分かったよ。お父様に叩かせない……僕がたくさんお仕置きしてあげるから、ねっ!」
痛がって泣いているくせに、それでも千早の愛情は自分に縋ってくる……
千歳にとって当たり前の事実が今は一段と嬉しい。
いよいよ堪らなくなって、千歳は遠慮なく鞭を振り下ろしていた。
「やだぁああっ!!わあああんっ!!ごめんなさぃぃぃっ!!」
「あれ?僕の方がいいんだよね?僕の事愛してるんでしょう?」
「あぁ、愛してますぅぅ!!兄様にお仕置きされるのもっ、でも……でもぉ!!
もうやぁぁ!あぁああああ!」
「……矛盾してるよ……!!」
千早の泣き声も真っ赤なお尻も厭らしい格好も……
全部が全部、千歳にとっては大好きで、この状況は幸せすぎて……
「やぁあああん!!兄様やめてぇえええっ!!うぇえええんっ!!」
「はぁ……泣き顔も可愛い千早ちゃん……」
千歳は恍惚とした表情で、熱い吐息を漏らした。
理性を呑みこんでしまいそうな幸せを、思う存分味いながら
千歳が飽きるまで続いたお仕置きが終わって、しばらく経つと千早もケロッと立ち直っている。
恥ずかしがっていたボンテージにもすっかり馴染んで、二人でベッドに座って語らっていた。

「千早ちゃん、僕の言った事理解できた?」
「はい!上倉はゴミ虫以下です!」
「間違っては無いんだけどね……それは本人に聞かせてあげようか……それと?」
「はい!お父様にはお仕置きされません!兄様にしかお仕置きされません!」
「……間違っては……ないんだけどね……」
千歳は何か言うべきかと迷ったが、
千早が生き生きしていたのでそれ以上突っ込まない事にした。
代わりに、千早の手をそっと握る。
「激しくしちゃって疲れたでしょう?
今から一緒にお昼寝でもする?夜は寂しくないように……」
「……今日もやっぱり上倉とお勉強があるんですか?」
「なぁに?まだお仕置きされ足りない?」
「いっ、いえ……ただ……
たった一日でも、兄様と一緒に眠れないのは寂しくて……」
「あはは、甘えん坊さん。気持ちは嬉しいけど、一日ぐらい我慢してもらわないと……おいで」
千歳がベッドの中にもぐって手招きをすると、千早は嬉しそうに隣に入って、
その後は、二人仲良く手をつないで眠っていた。



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