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廟堂院家の双子の話26




町で噂の大富豪、廟堂院家。
父は現当主、廟堂院千賀流。母はその妻、絵恋。そして二人の間には幼い双子の兄弟、千歳と千早。この4人家族。
そして屋敷には彼らを支える、たくさんの執事やメイドといった使用人達がいる。
そこへ新しいメンバーとして加わったのが、千歳と千早の家庭教師、高本正行(たかもと まさゆき)。一般人。
千歳と千早にの間の“秘密”を知った正行は、それを暴露した“悪魔”の正体を突き止めようと、
執事のイル君に聞き込みをしていたが……
「正行、先生……?」
「えっ!!?」
いつの間にか背後に立っていた執事の秋山貢に
「千早様と千歳様の秘密って……何ですか……?」
驚いた顔で質問されてしまう。
「そ、それは、あの……!!」
正行の方も驚いてしまい、とっさにこう答えた。
「千早君と千歳君がほら!おねしょしちゃったって話!!」
「……正行先生……」
秋山はますます驚いた顔で、真っ青になって震えた。
「よっ、よくもそんな事を口外できましたね!恐ろしい!!
……って、わけでもないのか……今の千歳様と千早様なら……」
その後、一瞬考え込むような表情をした後、ニッコリと笑う。
「正行先生が来てから、千歳様も千早様もすっかり子供らしくてお可愛らしくなられたし!
僕らも楽しく遊びのお相手ができるようになって、これって少し前までは考えられなかったんですよ!?
きっと正行先生のご指導のおかげです!先生はすごいですよ!!
まさに僕ら執事部隊のヒーローですね!」
「そ、そんな……ほめ過ぎだって……。俺は“指導”って言われるほどの事してないし……
千早君も千歳君も、警戒心が解けて、元々の素直でいい子な面を見せてくれるようになっただけだよ」
「くぅ〜〜っ!その上、謙虚だなんてますますカッコいいヒーローじゃないですか!!
いいなぁ!僕も先生みたいに、この廟堂院家を良い風に変えていきたいんです!!」
クルクルと表情を変える秋山の純粋な笑顔と言葉に、正行は心が明るくなる。
なので、秋山につられるように笑顔になって、明るく言う。
「そっか……うん!僕も千早君や千歳君が育つこの家は、いい環境であって欲しいと思う!
一緒に頑張ろうね?秋山君!」
「えっ……先生、僕の名前……!!わぁああ!ますます感激です!!」
「あはは!だから大げさだってば!俺だって執事さん皆の名前を憶えてるわけじゃないし!」
照れて手をヒラヒラさせる正行に、秋山は首を振って尊敬の眼差しを輝かせる。
「いいえ!僕なんて何の特徴もないし、地味だし顔も中の下って感じだし!
仕事だって……そんな、僕の名前を憶えてもらえてるってだけで感激なんです!!」
「秋山君……」
正行は一瞬困った様な顔をして、秋山に優しく笑いかけた。
「ね、何で俺が君の名前覚えたか教えてあげようか?
準君や相良君や……他の皆が楽しそうに、嬉しそうに君の事話してくれるからだよ?
君はすごく仲間に大切にされてるじゃない。“僕なんて”って、言わないで?」
「あっ……!!」
正行のその言葉に、秋山は顔を真っ赤にして、
恥ずかしそうに両手で頭を抱え、髪をグシャグシャと掻き回した。
「こっ、こういう所がダメなんですよね僕って!!ううう!
もっと堂々としてなきゃいつまでたっても能瀬さんに追いつけない!!
――あ!そう言えば能瀬さん、先生と話したがってましたよ〜〜?“懐かしい”って!」
またしてもコロッと表情を変えて楽しそうにする秋山。
正行も突然出てきた話題に気にせず乗っかった。
「能瀬さん……って、あぁ。辞めちゃった彼だよね。
なんだかすご〜〜く、非の打ちどころのない完璧イケメンだった事は覚えているような……」
「そうなんです!でも、もう次の就職先見つけたみたいですよ!?
能瀬さんなら経歴も実力も完璧で、引く手数多だろうし、どこでもやっていけますよね!」
秋山は少し頬を赤らめながら、とても嬉しそうに能瀬の話をしていて、
正行も話の内容に感心して頷いている。
「そうだよねぇ。でも、どうして能瀬さん辞めちゃったんだろう?」
「!!……さぁ??僕も教えてもらえませんでした!!
(正義の秘密任務だってことは内緒にしないと……!!)」
「!!?(何だ?この何か隠してる感じ……
そう言えば上倉さんも能瀬さんの話をした時、変な感じだったような……)」
お互いの心の内はつゆ知らず。秋山の態度を不審に思った正行。
慌てて秋山にこう言葉をかける。
「あ、秋山君!!俺も久しぶりに能瀬さんと話してみたくなっちゃった!良かったら連絡付けてもらえる?」
「もちろんです!能瀬さん喜びますよ〜〜!!」
秋山は快諾してくれて、やっぱり喜んでいて……
(能瀬さんが、“悪魔”なのか……?)
正行のこの結論は、確信を持てないまま宙に浮く。


そんな事があった、数日後。

千早は、相変わらず最近元気が無くて部屋に籠りがち、ベッドに伏しがちな千歳の“お見舞い”にやってきていた。
探しても見つからない正行に痺れを切らして、たった一人で。
「兄様……お加減はいかがですか?」
ベッドにくっついて心配そうに尋ねる千早に、ニッコリと微笑む千歳も一人。
上倉も部屋にはいない。
そんな二人きりの部屋の中……
「心配かけてごめんね千早ちゃん……大丈夫。
具合が悪い訳じゃないんだ。ただ……」
天使のような美しく、儚い笑顔で。千歳は千早に言った。

「君とやりたい」

「あっ……」
その一言で千早の頬は一気に紅潮し、明らかに動揺し始める。
「な、何で……前は、歯止めが効かないオレを、必死に叱って止めて下さってたのに……!!」
「そうだね……ごめん。……でも、僕も、耐えられなくなってきて……」
同じくらい真っ赤になって顔を俯ける、千歳の声は震えている。
千早はますます動揺して、狼狽して――興奮しているようだった。
「酷い……酷いです……!!せっかく、正行で遊んで、必死に誤魔化してたのに……
貴方に、そんな事を言われてしまったら、オレは……!!」
「千早ちゃん……君を、抱きたい……抱かれたい……!!もうどっちでもいい!!」
「兄様!!」
千早に勢いよく抱き付かれた千歳の体は、完全に期待を帯びて淡い快楽が走る。
しかし。
「……なんて。少し落ち着いてください兄様。
監視カメラの前ではしたないおねだりだなんて、お父様か四判が飛んできますよ?」
「!!?」
千歳が驚くほど、急に冷静になった千早の声が、強気に言葉を続ける。
「オレの部屋にあるんです……貴方の部屋に無いはずがない。
貴方ともあろう方が、知らなかったのですか?知っててさっきの言動なら相当な不用意だ……。
どのくらい音を拾うのかは知りませんが、発言には気を付けてください?」
「ち、千早ちゃん……??」
「“お仕置き”は性行為にはなりませんよね?
……当然です。お父様もオレ達にしてる事だ。文句なんて言わせない……!!」
「!!」
「さて、愛しい兄様?“そんなにオレと気持ちいい事がしたいなら、オレにお仕置きされればいいんです。
兄様はオレにお尻を叩かれて気持ち良くなっちゃう変態でしょう?
今の貴方はオレで興奮できれば何でもいい”……あ〜〜!オレ達似た者同士で良かったですね!!
双子万歳ですよ!!」
「あ……あぁ……!!」
千早の腕の中で、いつかの言葉をそっくりそのまま返されて、煽られて……千歳の興奮がまた沸き上がる。
まともな言葉を返せないまま、すっと千早の体が離れ、真っ赤な顔を真正面から見られながら、
哀れむような優しい笑顔を向けられる。
「呆れるくらい可哀想な兄様。
キスもセックスもして差し上げられない愚弟をお許しください……!
その代わり、そのはしたない体をお仕置きだけで満足させてみせますから……」
「っ……!!」
「オレはこんな素晴らしい役をまさゆきに譲った、あの時の貴方の気が知れない♪
……ほら、いいんですよ?“お仕置きして下さい”ってお願いしても」
もはや“あの時”とは状況が真逆だった。
こんな分かりやすいコピー挑発に乗ってしまわないとどうにもならないくらいに、興奮しきっているのは千歳の方で。
千早の勝ち誇ったような視線一つで息が上がってしまいそうだった。
そんな自分が情けなくなりながら、千歳は諦めたように笑う。
「ふ、ふふっ……千早ちゃんったらイジワルな子……後でまさゆき先生に言いつけちゃうからね?
……いいよ。あの時の君より、もっと素敵なおねだりをしてあげる……
そう言って、自分から下着を脱ぎ捨ててネグリジェの裾を捲って
ベッドに四つん這いになって、千早にお尻を向けて。
ついでに普段の完璧さや兄のプライドも捨てて。
欲望ダダ漏れの甘え声で言った。
「千早ちゃん……君が欲しくて仕方がない、いやらしいお兄ちゃんでごめんなさい。
何も許されないならせめて、お仕置きでもいいから君の愛を感じたいんだ。
だから、悪い子の千歳にいっぱいお仕置き……してください
「兄様……!!あぁあああきっと!!オレは一生貴方に敵いません!!」
当然、千早は大喜びでベッドに乗り上げて、差し出された千歳の裸のお尻を叩き始めた。
パァンッ!!
「あぁんっ!!」
「仰る通り、オレなんかよりずっと素敵なおねだりでした!
たくさんお仕置きしてあげたくなりましたよ、兄様!!
貴方の欲求不満も、オレの欲求不満も吹き飛んでしまうくらい!」
「あっ、ひゃうっ!千早ちゃぁんっ!!」
「欲しがりな兄様のお尻、真っ赤にしてしまいましょうね!
なんなら道具を使いましょうか?!」
パンッ!パンッ!パンッ!
かぶりつくように一心不乱に千歳のお尻を平手打つ、楽しそうな千早。
それだけの痛みを受ける千歳の方は、控えめにお尻を揺らしつつも悲鳴を上げる。
「やっ!やだぁぁっ!あぁああっ!」
「そうですか?大体道具を使うし、貴方も気持ち良さそうなのに」
「だっ、だって……!!千早ちゃんにお尻叩かれるとぉっ、痛いのにっ、興奮しちゃうんだもん!!」
「えぇ。貴方はそういう人ですよ。いいんです。そういう所が最高に可愛い
こうやって、正直に喘いでくださるところもね!!」
パンッ!パンッ!!
「んんぅっ!!も、もう、なりふり構ってられないの!!
千早ちゃんで気持ち良くなれる、貴重な時は……思いっきり気持ち良くなりたい!!
あぁっ!!ごめんなさい!こんなお兄ちゃんでごめんなさいっ!!」
「本当に、すっごく良さそうですね兄様……!」
叩かれている千歳もそうだけれど、叩いている千早の方も微かに息が上がっていた。
千歳が涙を滲ませながら、うっすらと笑って言う。
「う、羨ましかったら……今度、千早ちゃんも、お仕置きしてあげるよ?」
「結構です。オレはこうして兄様のお尻を叩いている方がたまらなく気持ちいいですから!
隙あらば生意気言う子はこうですよっ!!」
バシィッ!!
「ひゃああああっ!!」
千早が強くお尻を叩くと、千歳が大きな悲鳴を上げる。
真っ赤になっているお尻も、涙声も震わせる。
「ああああっ!!痛いぃ!痛いのにぃぃっ……!!」
「兄様、可愛いトコロを……見せつけないで……あぁ、オレは貴方のお尻を叩く事しかできないんですよ?
そんなに誘ってくるなんて悪いお尻ですね!!」
バシッ!ビシッ!!バシッ!!
盛り上がってくる千早の叩く手は強まってきて、
盛り上がってくる千歳はその痛みで泣き出してしまう。
けれど、二人は本当に幸せそう悦んで、お仕置きを続けていた。
「うぁあああんっ!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!!
そんなつもりないのぉ!うぅっ!ホントに痛いのにぃっ!たまんなくなっちゃうぅっ!!」
「あぁっ 自制心を失くした兄様もすごく魅力的で興奮します
もっともっと厳しくお仕置きしたら、もっともっと可愛く鳴いてくださいますか!?」
「あぁあああっ!やっ、やぁあああっ!!痛い痛い千早ちゃん痛いぃぃっ!!」
「お尻が真っ赤ですね兄様?ここからが本番でしょう!?」
バシッ!バシッ!ビシッ!!
「ひゃぁあああんっ!あぁっ!やめてぇっ!!うぅっ!痛いのにぃっ!
気持ちいいのに切ないよぉぉっ!物足りないよぉぉっ!!」
「!?」
「ふぇぇぇえっ!もうやだよぉぉっ!!こんな事いつまで続くのぉぉッ!!あぁあああん!!」
「……兄様……」
ふいに漏れた千歳の本音と悲しそうな涙に、千早も悲しげに手を止めて、
千歳のお尻を優しく撫でる。その上で、慰めるように優しく声をかけた。
「不毛な事を考えてはダメです。悲しくなると萎えますよ?
オレにお尻を叩かれて気持ち良くなるんでしょう?ほら……
お仕置きの途中で関係ない事を考えるなんて、いい度胸ですね!!」
千早は、千歳の快楽や興奮を……幸せを促す様に、再び強く叱ってきつくお尻を打った。
バシッ!ビシッ!!バシッ!!
「あぁあああんっ!!やっ、痛っ、ごめんなさぁああい!わああぁん!!」
「そんな悪い子はもっともっと厳しくお仕置きします!!
余計な事は考えられないようにね!」
「うわぁあああん!ごめんなさいやだぁぁっ!!あぁあああんっ!!」
バシッ!ビシィッ!!バシィッ!!
千歳は真っ赤なお尻でお仕置きに耐えながらも、必死で泣きながら謝っている。
それでも所々、興奮や悦びは隠せていなかったけれど。
「やぁああああんっ!ごめんなさい!千早ちゃんごめんなさぁぁい!!」
「許しませんよ〜?こうなったら貴方が絶頂するまでお仕置きですね
「うわぁあああん!!やだやだぁぁッ!!あぁあああん!!
バシッ!バシッ!バシンッ!!
こうしてたっぷりと二人の“お仕置きの時間”を楽しんだ双子。
気の済むまで千歳を泣かせた千早は手を止めて、兄の真っ赤なお尻を優しく撫で続けた。
それしかしなかった。
「ふっ、ぐっ……ち、千早ちゃぁぁん……!!」
「今の貴方を抱きしめたら本当に襲ってしまいそうです……これで許してくださいね……」
一しきりお尻を撫でて、名残惜しそうに部屋を出ようとした千早は、
最後に振り返って、輝く笑顔でこう言った。
「そうそう兄様!ご自分で慰めるなら、せめてもの当てつけに
思いっきり監視カメラの方を向いてしてやるといいですよ?オレもそうしてますし、部屋に戻ったらそうします♪」
手を振って出て行った千早に手を振りかえして見送った千歳。
扉が閉じてしまうと、寂しそうにうなだれて呟いた。
「……ふふ、名案。……千早ちゃんは強いなぁ……」
そうしてしばらく寂しさに浸っていたけれど、そのうち、
ぱっと顔を上げて部屋を見回した。
「……カメラはどっちだろう?千早ちゃんはどうやって見つけたのかなぁ?
ま、いっか。上倉に聞けば……今日は適当に……」
“適当に”。
カメラのありそうな場所に向かって、両足を惜しげもなく開いた千歳はニッコリと笑う。
「親愛なるお父様見てますか〜〜? 今日は変な角度でも許してくださいね?
カメラの位置が分からなくって。でも、覗きが大〜〜好きなお父様の為にぃ……
貴方の可愛い千歳のとっておきの姿をお見せしますから、ぜひ堪能してくださいね
この変態野郎が!!」
ワザとらしい媚び媚びの挨拶と共に、
愛しい弟の教えてくれたとっておきの“当てつけ”を始めるたのだった。


一方の千早は、廊下で息を切らせた正行に発見されていた。
「千早君!!よ、よかった!!いないと思ったら!!ここにいたの!?」
「……兄様のお見舞いに行ってた」
「そ、そっか!誘ってくれれば!上倉さんいた!?二人っきりじゃないよね!?」
驚いたような、焦った様な正行の言葉に、千早が小さく言う。
「……何が悪い……」
「……ぁ」
正行が何か言おうと口を開く前に、千早が掴みかかる。
感情が爆発したように目に涙を溜めて叫んだ。
「オレ達は兄弟なんだぞ!?二人っきりになる事だってあるだろうが!!
それの何が悪い!?それを大の大人が皆で!!寄ってたかって邪魔をして!引き離して!!
お前も!!――」
そう言いかけて、千早の怒った表情が、一瞬で侮蔑に変わる。
嘲る様な冷ややかな顔と声で続きを言った。
「お前も、目を離せばオレと兄様がセックスすると思って監視してるんだろう?」
「!!」
正行は青ざめて震える。
否定していた物がハッキリと輪郭を結びそうで、
せっかく懐いてくれていた千早の心がまた離れてしまいそうで……
「せっ、セックスなんて言葉……意味も分からず……」
焦って震えて言いかけて、正行は全てを振り払う。
(違う、違う!!千早君は意味が分かってる!僕が信じられなかった事……
上倉さんが言ってたことが、全部現実だ!!)
そして、千早を思い切り抱きしめた。
大声でハッキリと、叫んだ。
「意味が、分かってても……俺は千早君と千歳君の味方だからね!!」
「!?」
千早は驚いて、怖々と正行に尋ねた。
「ほ、本当か……?本当にお前は、オレと兄様の味方か……?」
「うん!俺は何があっても君達の味方だから!!」
「まさゆき……!!」
嬉しそうな千早の涙声。
正行はそれが何より嬉しくて、現実に怖気づかないように、しっかりと千早を抱きしめる。
「だったら、何でもしてくれるか……??」
「うん……!!」
震えてしまった声は少し自信なく響いただろうか?と、正行は歯痒くなる。
千早と千歳の味方でいる事は決めているのに、
これから千早は何を起こすのか、その時自分はどうするべきなのか……そんな迷いを抱えてしまって、
せめて、精一杯千早を抱きしめる正行だった。




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【作品番号】BS26

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