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町で噂の大富豪、廟堂院家には二人の息子がいた。 名前は千歳と千早。まだ幼い双子の兄弟だ。 その双子の父親、廟堂院家現当主の廟堂院千賀流は深刻な顔をしてため息をついた。 元執事長で千賀流の子供の頃からの世話係、四判も心配そうに千賀流を見つめている。 「……千賀流様、落ち着かれましたか?」 「……うん、ごめんね……大丈夫……」 そう言いながら、顔色悪く額を押さえる千賀流はどう見ても“大丈夫”には見えない。 執事の能瀬が彼の息子達が“肉体関係を持っている”と暴露してからまだそんなに時間が経ってない。 「……麗が……麗美さんや麗亜さんの事で、私を恨んで……酷い嘘をついた。そう考えることもできる。 いや、そうに決まってる。千歳と千早が……あの子達はまだ幼いのに…… 男の子同士、ましてや兄弟だ……そんな事、あり得る?あり得ない。あるはずがない。 だから、私が、事実を確認する必要も……手を打つ必要も……」 「千賀流様……」 「……でもね、四判……」 千賀流はひたすら辛そうに言う。 「私は……麗がそんな子じゃないっていうのも知ってるんだ。 もし、この話が本当だったら。放置してはダメだ。 私は、彼らを、止めてあげないと……!!四判……真実が知りたい。協力してくれる?」 「仰せのままに」 「……今にして思えば……千歳が最近ずっとチョーカーを付けてた…… 外そうとしたら酷く怯えていた……あぁ、千歳、千早……!!」 両手で顔を覆う千賀流を見て、四判も辛そうにするのだった。 その夜、双子の寝室で。 「「乾杯!!」」 就寝前の双子はぶどうジュースの入ったワイングラス(樹脂製)を交わす。 白いネグリジェを来た千歳がジュースを飲みながら嬉しそうに言う。 「能瀬のあの、みっともない姿ったら最高だったよ!本当にありがとう千早ちゃん!!」 「いいえ。オレは兄様の為ならなんでもします」 「僕を“抱く為”ではなく?」 「兄様……ジュースで酔うなんてはしたないですよ?」 黒いガウン姿の千早が軽く窘めながら笑う。 「“貴方の為”です。抱く事も含めますがそれだけじゃない」 「ふふっ、そうだね。ごめんね。嬉しくて嬉しくてはしゃいでるのかも……。 ねぇ、またお父様にバレちゃったらどうしよう?」 「能瀬が自分でお父様に“千早様にお尻を叩かれていじめられました”って、 申告したならそれはそれで、間抜けで面白いですよね」 「そうだよね……あのプライドの塊がお父様にこんな事、言えるわけがない。 つまり、これから毎日いじめたい放題だね!」 「兄様ったら恐ろしい人ですね。まだやるつもりですか?」 「当然だよ。あのくらいじゃ僕の恨みは晴らしきれないもの。今度は僕も叩いてやりたい」 冗談を言い合うように軽く、平然とこんな会話をする双子。 千早が千歳にぐっと身を寄せながら尋ねた。 「あいつに何をされたんです?」 「それは……」 千歳は一瞬躊躇したが、千早の目を見て切なげに言う。 「僕に従順だった可愛い君を、奪われた」 そうすると千早は憐れむように笑って千歳を抱き寄せ、唇が触れそうなくらいに顔を近づけた。 「今のオレは可愛くないと?」 「可愛いよ……可愛過ぎてクラクラする……んんっ…… ![]() 怯えたような、興奮したような千歳の震える声がたまらず、千早が強く千歳の唇を奪う。 唇を離した時の目を細めてうっとりする兄の姿が、千早の嗜虐心を煽った。 「オレの“奴隷”である事にまだ迷いがあるなら、それは断ち切っておかないと」 「ごめんね……怒った?迷ってるわけじゃないんだ。 ただ、どうしても、前の自分が忘れられない……」 「怒ってるわけではないと思いますが、ただひたすら貴方をお仕置きしたい気分です。 貴方が、下らない過去の栄光なんて投げ捨ててしまいたくなるほど」 「そうだね……僕もその方が楽かも……」 自分を納得させるようにそう言う千歳が、千早に甘えるように抱き付いた。 「千早ちゃん……僕の事たくさんお仕置きして。 君がお仕置きしてくれないと、僕やっぱり素直になれなくてダメなの……」 「喜んで」 千早が頭を撫でると、千歳は艶っぽく息を吐いた。 こうして今宵も千歳への“お仕置き”が始まる。 千歳はいつものようにベッドへ移動して、四つん這いになって、ふと、何かが光る気配を感じた。 (?、今何か……?) 一瞬気にはなったが、千早にネグリジェを捲られて下着を下ろされると ドキドキしてそれどころではなくなってしまう。 裸になった千歳のお尻に、千早が笏状鞭を振るった。 「おねだり、上手にできましたね」 ビシッ!バシィッ!ビシッ! 「んっ!あっ……あぁんっ!!」 「今日の兄様はとっても素直なのでご褒美をあげますよ」 バシッ!ビシィッ!バシィッ! 「ひゃぁぁんっ!あっ、あぁっ!!」 口調こそ穏やかだけれど、千早は力いっぱい鞭を振るっていて、 千歳は打たれるたびに悲鳴を上げて身を震わせた。 しかしその悲鳴はどこか嬉しそうで、千早はご満悦だった。 「ふふっ、おおはしゃぎですね兄様 ![]() 「だ、だってぇぇっ……ダメェっ、僕、 千早ちゃんにお尻叩かれると興奮しちゃう、イケナイ子になっちゃったかもぉ……!!」 「……本当に酔っていらっしゃいます?」 普段より興奮をさらけ出して痛がる千歳にそう尋ねながら、千早もだんだん興奮していた。 自然と鞭を振り下ろす手にも力が入って、千歳のお尻を赤く色づかせていく。 バシィッ!ビシッ!バシィッ!! 「うぁぁんっ!」 「今日も誓いますか?これからはオレの従順な奴隷になると」 バシィッ!ビシッ!! 「んぁああっ!!誓うぅ!誓うよ!」 千歳は半泣きになりながらそう叫ぶけれど、お尻の痛みは止まなかった。 ビシィッ!バシンッ!ビシッ!! 「ひっ、やぁあああん!千早ちゃぁぁん!!誓うって言ったのにぃ!!」 「えぇ。だから、ご褒美をあげるんです」 バシィッ!バシィッ!ビシィッ!! 「あぁっ、痛いのに、ご褒美なんてぇっ!!」 「好きなんでしょう?これが」 「んんっ、好きだけどぉっ…… ![]() 千歳が甘ったるい涙声でそう言って、白い肌や赤いお尻がうねった時、 千早は鞭を捨てていきなり後ろから覆いかぶさっていた。 「ひゃぁっ!?な、何、千早ちゃん!?」 「兄様……オレも酔ってるみたいです…… 今すぐ貴方を抱きたい…… ![]() 千早が吐息まじりにそう言って、胸に手を這わせると、 千歳も気持ち良さそうに笑った。 「っ、あっ…… ![]() ![]() 双子にとっては、いつものお仕置き後の甘い時間が始まろうとしていた。 始まろうとしていたが…… 「あぁあああ……!!」 彼らの父親にとってそれは絶望でしかなかった。 千賀流はモニターに映し出された、隠しカメラの映像から俯いて目を覆う。 色んな感情が次々と口から出てきた。 「何で!どうして!いつからっ……!! 私は、一体今まで何を……どうして、気づいてあげられなかったんだろう……!! 違う、そうだ、あの子達を、止めなきゃ……!!」 「千賀流様、私が……」 酷く錯乱しているのに、立ち上がろうとする千賀流を四判が留めようとするが、 千賀流が力強く首を振った。 「……いや、行かせて……お願い……!!」 千賀流の体は震えていたけれど、強い意志が感じられて、 四判はそれ以上止める事が出来なかった。 その後、双子の寝室では。 急に部屋の扉が開いて、双子は繋がったまま動きを止める。 「「!!?」」 「……何をしてるの?」 しかも入って来たのが父親で、双子は目を見開いて硬直した。 どちらも黙り込む息子達を見て、千賀流はショックを押し殺して穏やかに言う…… 「……分かってるよ。私に言えない事をしてたんだよね?」 つもりだったけれど、いざ息子達の痴態を目の前にして、一気に涙が溢れる。 「お願いだから二度とこんな事しないで……!!」 涙声で怒鳴ると、双子は自然とお互い離れて俯く。 千賀流は千早の頭を撫でて言う。 「千早、自分の部屋で寝なさい」 千早は無言で部屋から走り去って、 それから、千賀流は千歳の頭を撫でて言う。 「お休み千歳」 「おやすみ、なさい……」 千歳は震える小さな声でそう言ったのを聞いて、 千賀流は部屋から出て行った。 「四判……!!……連絡を取って欲しい人がいる……頼める?」 顔色を悪くした千賀流がフラフラと戻ってきて、四判が前から体を支えた。 「もちろんです。千賀流様、遠慮せずに何でも仰って下さい。必ず貴方の力になりますから」 「ありがとう……私がしっかりしなきゃね……」 「いいえ。貴方が苦しい時に、泣き縋っていただくために私がいます」 四判のその一言で、 「うっ……ぁっ……うわぁあああああっ!!」 千賀流は泣きながら床に崩れ落ちた。 「何で!!どうしてこんな事に!!父親失格だ!!私はっ……!!」 「そんな事は決してございません。貴方は立派にやってこられた……」 四判は床に座り込む千賀流を強く抱きしめながら頭を撫でた。 「四判!!四判……!!」 千賀流は幼い頃のように、四判に縋り付いて泣き続けた。 |
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