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廟堂院家の双子の話22



町で噂の大富豪、廟堂院家には二人の息子がいた。
名前は千歳と千早。まだ幼い双子の兄弟だ。
その双子の父親、廟堂院家現当主の廟堂院千賀流は深刻な顔をしてため息をついた。
元執事長で千賀流の子供の頃からの世話係、四判も心配そうに千賀流を見つめている。

「……千賀流様、落ち着かれましたか?」
「……うん、ごめんね……大丈夫……」
そう言いながら、顔色悪く額を押さえる千賀流はどう見ても“大丈夫”には見えない。
執事の能瀬が彼の息子達が“肉体関係を持っている”と暴露してからまだそんなに時間が経ってない。

「……麗が……麗美さんや麗亜さんの事で、私を恨んで……酷い嘘をついた。そう考えることもできる。
いや、そうに決まってる。千歳と千早が……あの子達はまだ幼いのに……
男の子同士、ましてや兄弟だ……そんな事、あり得る?あり得ない。あるはずがない。
だから、私が、事実を確認する必要も……手を打つ必要も……」
「千賀流様……」
「……でもね、四判……」
千賀流はひたすら辛そうに言う。
「私は……麗がそんな子じゃないっていうのも知ってるんだ。
もし、この話が本当だったら。放置してはダメだ。
私は、彼らを、止めてあげないと……!!四判……真実が知りたい。協力してくれる?」
「仰せのままに」
「……今にして思えば……千歳が最近ずっとチョーカーを付けてた……
外そうとしたら酷く怯えていた……あぁ、千歳、千早……!!」
両手で顔を覆う千賀流を見て、四判も辛そうにするのだった。


その夜、双子の寝室で。
「「乾杯!!」」
就寝前の双子はぶどうジュースの入ったワイングラス(樹脂製)を交わす。
白いネグリジェを来た千歳がジュースを飲みながら嬉しそうに言う。
「能瀬のあの、みっともない姿ったら最高だったよ!本当にありがとう千早ちゃん!!」
「いいえ。オレは兄様の為ならなんでもします」
「僕を“抱く為”ではなく?」
「兄様……ジュースで酔うなんてはしたないですよ?」
黒いガウン姿の千早が軽く窘めながら笑う。
「“貴方の為”です。抱く事も含めますがそれだけじゃない」
「ふふっ、そうだね。ごめんね。嬉しくて嬉しくてはしゃいでるのかも……。
ねぇ、またお父様にバレちゃったらどうしよう?」
「能瀬が自分でお父様に“千早様にお尻を叩かれていじめられました”って、
申告したならそれはそれで、間抜けで面白いですよね」
「そうだよね……あのプライドの塊がお父様にこんな事、言えるわけがない。
つまり、これから毎日いじめたい放題だね!」
「兄様ったら恐ろしい人ですね。まだやるつもりですか?」
「当然だよ。あのくらいじゃ僕の恨みは晴らしきれないもの。今度は僕も叩いてやりたい」
冗談を言い合うように軽く、平然とこんな会話をする双子。
千早が千歳にぐっと身を寄せながら尋ねた。
「あいつに何をされたんです?」
「それは……」
千歳は一瞬躊躇したが、千早の目を見て切なげに言う。
「僕に従順だった可愛い君を、奪われた」
そうすると千早は憐れむように笑って千歳を抱き寄せ、唇が触れそうなくらいに顔を近づけた。
「今のオレは可愛くないと?」
「可愛いよ……可愛過ぎてクラクラする……んんっ……
怯えたような、興奮したような千歳の震える声がたまらず、千早が強く千歳の唇を奪う。
唇を離した時の目を細めてうっとりする兄の姿が、千早の嗜虐心を煽った。
「オレの“奴隷”である事にまだ迷いがあるなら、それは断ち切っておかないと」
「ごめんね……怒った?迷ってるわけじゃないんだ。
ただ、どうしても、前の自分が忘れられない……」
「怒ってるわけではないと思いますが、ただひたすら貴方をお仕置きしたい気分です。
貴方が、下らない過去の栄光なんて投げ捨ててしまいたくなるほど」
「そうだね……僕もその方が楽かも……」
自分を納得させるようにそう言う千歳が、千早に甘えるように抱き付いた。
「千早ちゃん……僕の事たくさんお仕置きして。
君がお仕置きしてくれないと、僕やっぱり素直になれなくてダメなの……」
「喜んで」
千早が頭を撫でると、千歳は艶っぽく息を吐いた。

こうして今宵も千歳への“お仕置き”が始まる。
千歳はいつものようにベッドへ移動して、四つん這いになって、ふと、何かが光る気配を感じた。
(?、今何か……?)
一瞬気にはなったが、千早にネグリジェを捲られて下着を下ろされると
ドキドキしてそれどころではなくなってしまう。
裸になった千歳のお尻に、千早が笏状鞭を振るった。
「おねだり、上手にできましたね」
ビシッ!バシィッ!ビシッ!
「んっ!あっ……あぁんっ!!」
「今日の兄様はとっても素直なのでご褒美をあげますよ」
バシッ!ビシィッ!バシィッ!
「ひゃぁぁんっ!あっ、あぁっ!!」
口調こそ穏やかだけれど、千早は力いっぱい鞭を振るっていて、
千歳は打たれるたびに悲鳴を上げて身を震わせた。
しかしその悲鳴はどこか嬉しそうで、千早はご満悦だった。
「ふふっ、おおはしゃぎですね兄様
「だ、だってぇぇっ……ダメェっ、僕、
千早ちゃんにお尻叩かれると興奮しちゃう、イケナイ子になっちゃったかもぉ……!!」
「……本当に酔っていらっしゃいます?」
普段より興奮をさらけ出して痛がる千歳にそう尋ねながら、千早もだんだん興奮していた。
自然と鞭を振り下ろす手にも力が入って、千歳のお尻を赤く色づかせていく。
バシィッ!ビシッ!バシィッ!!
「うぁぁんっ!」
「今日も誓いますか?これからはオレの従順な奴隷になると」
バシィッ!ビシッ!!
「んぁああっ!!誓うぅ!誓うよ!」
千歳は半泣きになりながらそう叫ぶけれど、お尻の痛みは止まなかった。
ビシィッ!バシンッ!ビシッ!!
「ひっ、やぁあああん!千早ちゃぁぁん!!誓うって言ったのにぃ!!」
「えぇ。だから、ご褒美をあげるんです」
バシィッ!バシィッ!ビシィッ!!
「あぁっ、痛いのに、ご褒美なんてぇっ!!」
「好きなんでしょう?これが」
「んんっ、好きだけどぉっ……
千歳が甘ったるい涙声でそう言って、白い肌や赤いお尻がうねった時、
千早は鞭を捨てていきなり後ろから覆いかぶさっていた。
「ひゃぁっ!?な、何、千早ちゃん!?」
「兄様……オレも酔ってるみたいです……
今すぐ貴方を抱きたい……
千早が吐息まじりにそう言って、胸に手を這わせると、
千歳も気持ち良さそうに笑った。
「っ、あっ…… いい、よ……千早ちゃんの、好きにして……
双子にとっては、いつものお仕置き後の甘い時間が始まろうとしていた。
始まろうとしていたが……


「あぁあああ……!!」
彼らの父親にとってそれは絶望でしかなかった。
千賀流はモニターに映し出された、隠しカメラの映像から俯いて目を覆う。
色んな感情が次々と口から出てきた。
「何で!どうして!いつからっ……!!
私は、一体今まで何を……どうして、気づいてあげられなかったんだろう……!!
違う、そうだ、あの子達を、止めなきゃ……!!」
「千賀流様、私が……」
酷く錯乱しているのに、立ち上がろうとする千賀流を四判が留めようとするが、
千賀流が力強く首を振った。
「……いや、行かせて……お願い……!!」
千賀流の体は震えていたけれど、強い意志が感じられて、
四判はそれ以上止める事が出来なかった。


その後、双子の寝室では。
急に部屋の扉が開いて、双子は繋がったまま動きを止める。
「「!!?」」
「……何をしてるの?」
しかも入って来たのが父親で、双子は目を見開いて硬直した。
どちらも黙り込む息子達を見て、千賀流はショックを押し殺して穏やかに言う……
「……分かってるよ。私に言えない事をしてたんだよね?」
つもりだったけれど、いざ息子達の痴態を目の前にして、一気に涙が溢れる。
「お願いだから二度とこんな事しないで……!!」
涙声で怒鳴ると、双子は自然とお互い離れて俯く。
千賀流は千早の頭を撫でて言う。
「千早、自分の部屋で寝なさい」
千早は無言で部屋から走り去って、
それから、千賀流は千歳の頭を撫でて言う。
「お休み千歳」
「おやすみ、なさい……」
千歳は震える小さな声でそう言ったのを聞いて、
千賀流は部屋から出て行った。



「四判……!!……連絡を取って欲しい人がいる……頼める?」
顔色を悪くした千賀流がフラフラと戻ってきて、四判が前から体を支えた。
「もちろんです。千賀流様、遠慮せずに何でも仰って下さい。必ず貴方の力になりますから」
「ありがとう……私がしっかりしなきゃね……」
「いいえ。貴方が苦しい時に、泣き縋っていただくために私がいます」
四判のその一言で、
「うっ……ぁっ……うわぁあああああっ!!」
千賀流は泣きながら床に崩れ落ちた。
「何で!!どうしてこんな事に!!父親失格だ!!私はっ……!!」
「そんな事は決してございません。貴方は立派にやってこられた……」
四判は床に座り込む千賀流を強く抱きしめながら頭を撫でた。
「四判!!四判……!!」
千賀流は幼い頃のように、四判に縋り付いて泣き続けた。




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【作品番号】BS22

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