TOP>小説 戻る 進む |
佐藤の里帰り(木村付き) |
※弱エロ?注意 ここは、町で噂の大富豪、廟堂院家……ではなく。 「「ただいまー」」 「「おかえりなさい泉!! お兄ちゃん!!」」 その廟堂院家の執事、佐藤泉の実家である。 出迎えてくれたのは佐藤の父親と弟の雪。 そして、今回佐藤の実家に帰ってきたのは佐藤自身だけではなく…… 「あ、たっちゃん!!」 「こんにちはー!元気だったか雪?お邪魔しますお父さん!」 佐藤の恋人の木村も一緒に帰ってきた。なぜなら家が隣だから。 2人は母親同士が仲良しで、幼稚園から一緒の筋金入りの幼馴染だ。 「ゆき、元気だったよ――!」 雪が元気よく返事をする横で父親はフルフルと震え…… 「きっ、君に“お父さん”と呼ばれるいわれは無――――い!!」 「え――。今まで普通に呼んでたじゃないですかお父さん」 「だってだって!君が泉とつ、付き合……ええいパパは認めん!認めんぞ――っ!!」 「お父さん!!」 ここで怒った声を出したのは佐藤だ。 「何度も言うけど、俺はたっちゃんと付き合ってるんだからね! たっちゃんにキツイ事ばっかり言うと、お父さんの事嫌いになるから!!」 「いやー、すいませんねーお父さん」 「うっ、うわぁぁぁん!僕のフェアリーがぁぁぁぁっ!!ゆきぃぃぃぃぃっ!!パパを慰めてぇぇぇぇっ!!」 「パパ、よしよし、いい子いい子♪」 雪に頬ずりする父親と、それをのほほんと撫でる雪。 佐藤は木村と付き合ってから彼を実家に連れて来るたびの、毎度の光景に深くため息をついた。 「はぁ……お父さんってば相変わらずなんだから……」 「あっ!!」 父親を撫でていた雪がここでハッとした声を上げるので、佐藤も首をかしげた。 「どうしたの雪?」 「忘れてた!ゆき、パパと一緒に、たっちゃんやっつけるんだった!」 「えぇっ!?」 「お?」 佐藤も木村も目を丸くして……佐藤はまた父親を怒鳴りつける。 「ちょっとお父さん!!雪まで変な事に巻き込まないでよ!」 「ぐすんっ、巻き込んでないもん……雪が言い出したんだもん……」 「え……雪、本当に?」 戸惑う佐藤に、雪は駄々っ子気味に言う。 「だってだって!たっちゃんが、いっつもお兄ちゃんの事、取っちゃうんだもん! たっちゃんの方が、いつもお兄ちゃんと一緒にいるのにズルイズルイ!! お兄ちゃんがゆきにちゅーしてくれなくなったの、たっちゃんのせいだもん!!」 「ハハッ!そっかそっかー!雪が俺をやっつけるのかー!怖いなー!」 「ガオー!怖かったら降参していいよ!ガオー!」 当の木村はケラケラ笑って、雪の威嚇を受け流していた。 そしてこんな事を言い出す。 「よーし、じゃあ、たっちゃんが雪にちゅーしてあげよう!」 「え?」 「ちょっと、たっちゃん!!バカな事言わないで!!」 大慌てで止める佐藤に、木村はニヤニヤして 「何だよ泉……妬いてるのか?」 「ち、違っ……!雪はもう高校生なんだからね!?軽々しくキスしたら事案発生だよ!犯罪になるから!」 「いいじゃんいいじゃん!俺ら家族みたいなもんだし!なぁ雪?」 「う〜ん……たっちゃんのちゅーは、別に要らない」 「え――……」 「ほ、ほら……!雪だってこう言ってるし!」 微妙な表情の雪に、少しガッカリしている木村に、ホッとする佐藤。 そしてすっかり蚊帳の外だがもう一人…… 「木村拓未君?ちょっと表出ようか?表出て、オジサンと殴り合おうか?」 怒れる笑顔で、親指で玄関を指差す佐藤父。 木村はあっけらかんと言う。 「あ、すみませんお父さん!今、お父さんと殴り合いとかする気分じゃないんで」 「お父さんもう俺に口きかないでね?」 「うわぁあああああん!!ごめんなさぁああああい!!ゆきいいいぃぃぃぃ!!」 「パパいい子いい子♪」 そして、佐藤に怒られて雪に撫でられていた。 やっと佐藤と木村が一息つけたのは、佐藤の部屋の中だ。 ベッドに並んで座って、佐藤がまたため息をつく。 「はぁ〜〜……ごめんねたっちゃん……」 「いいよー、お父さんも雪も前からあんなだし。 俺が可愛い可愛い泉を恋人にしちゃったから悪いんだよ♪」 「や、やだ、たっちゃん……!!」 急に身を寄せて、いやらしく体に手を這わせてきた木村に、佐藤は真っ赤になって弱く抵抗する。 そして、声を小さくして抗議した。 「ダメだよ……雪もお父さんもいるのに……!!」 「泉が声出さなきゃバレないよ……」 木村も声のトーンを落とすと、一気に艶めかしい雰囲気になってしまう。 くすぐったい感覚だけでも甘い声が出て…… 「んっ、たっちゃん……本当にダメ……!!」 「大丈夫、大丈夫……お父さんは部屋で泣いてるだろうし、雪には何してるか分かんないって」 「雪は、あんなでも思春期だし……勘付くよ……!!」 「平気平気……キスして泉……」 そうねだっておいて、木村は自分から強引に佐藤の唇を奪う。 焦らす様な弱い吸引で、確実に水音を響かせて、雰囲気を煽っていく。 それでも佐藤は甘えてくる恋人を拒んでいた。 「んっ、……たっちゃん、ダメだってば……!」 「可愛いな泉……興奮してる♥」 「たっちゃん……たっ……あっ……♥」 股間に手を這わされた瞬間、弱腰だった佐藤はついに―― 「もう!!ダメって言ってるでしょ!?」 ベシッ!! 「んぶっ!!?」 木村の顔面を真正面から張り手していた。 顔を覆ってフラフラする木村に真っ赤な顔で怒鳴っていた。 「たっちゃん!!ここラブホじゃないの!俺の実家なんだよ!?自重しなさいヘンタイヤロウ!!」 「あははっ!何その可愛い罵倒!ちょっと興奮する〜♪」 「たっちゃんったら、いけない子だね……!」 恥ずかしそうな顔をしていた佐藤は、ここで少し余裕を取り戻して微笑む。 「だったら雪にバレても差し支えない方法で、愛し合う?」 「え?」 「お仕置きだよたっちゃん!」 ヘラヘラしていた木村を強引に自分の膝に引き倒して、佐藤はその尻を軽く叩く。 パシッ! 「わっ!!」 ラブシーンがいつの間にかお仕置きシーンになって、木村は慌てて佐藤に言う。 「い、泉、俺こういう趣味は……!!」 「さっき俺の罵倒で“興奮する”って言ったじゃない。それに、本当にこれお仕置きなんだからね!」 ピシッ!ピシッ! そうは言うものの、服の上からで、佐藤もそれほど力を入れていないのだろう。 痛みも切羽詰ったものではなく、木村は戸惑いながら声を上げる。 「い、痛いよ泉……!」 「全然痛そうに聞こえない。たっちゃん反省した?」 「うん。ゴメン俺エロくて……」 「エロくてもいいけど、節操なしのたっちゃんはダメだよ」 パシッ!ピシッ!ピシッ! 「節操なくてごめん……!泉ぃ、これ、恥ずかしいよやめよう?!」 「…………」 膝の上で狼狽えるように体をもぞもぞさせて、声を震わせる木村。 普段は明るい彼のこんな姿に、今度は佐藤の方のスイッチが入ってしまったらしい。 少し手を強めて木村に言う。 パシッ!パシッ! 「ねぇたっちゃん……今日は俺が男役ね?」 「えっ!?やっ、だって今日まだジャンケンしてな……」 「たっちゃんが言う事聞かなくて悪い子だったから、俺が男役ね!?」 バシィッ! 「ひゃっ!?うぅっ……!!」 強く叩かれてのけ反った木村が呻く。 ピシッ!ピシッ!パシィッ!! 「ず、ズルい!これはズルい!謝ったじゃん!それとこれとは別だよぉッ!」 「だって、たっちゃんが可愛いから……ベッドの上でもお仕置きしてあげたくなっちゃった♥」 「あう……さっきまでの恥じらいボーイと同一人物のセリフとは思えないぜ……!!」 「ねぇたっちゃん、“いいよ”って言ってよ!」 パシッ!ピシッ!パシッ! 木村の答えを急かす様に佐藤が強めに尻を叩く。 けれど木村も気力を振り絞って耐えていた。 「やだよ!俺だって泉をこう、メロメロのグチョグチョにして可愛がるのを楽しみにしてたんだ!! だ、だからジャンケンするまでは!」 「そう。じゃあ許してあげなーい」 ピシッ!パシッ!パシンッ! しれっとそう言って、木村の尻をお仕置きし続ける佐藤。 叩かれ続けて痛みが積もってきたのか、 木村の抵抗に徐々に必死さが滲み出てきた。 「あっ、泉、やめっ……本当に、痛くなってきた……!!」 「やっとお仕置きになるね」 「泉ぃっ!!」 「たっちゃんのお尻赤くなってるか見てあげようか?そんで続きは裸のお尻にお仕置きしてあげようか?」 「や、やめっ……こんな所で本気のお仕置きって、シャレにならないって!!」 「だったら、たっちゃん?」 優しい声が答えを誘導していた。木村は、悔しそうに唸りつつ望まれているであろう答えを差し出す。 「ぐぬぬぬぬ……わ、分かったよ……今日は俺が女役だ……」 「やったぁ!」 「悪かったよ泉!もう許してくれ!お仕置き、終わりだろ?」 「そうだね。これで、おー終い!」 バシッ!! 「うわっ!!?」 最後に強く叩かれて、木村のお仕置きタイムは終わった。 しかし、 「とりゃ!コノヤロウ!!」 「ひゃっ!!?」 勢いよく膝から飛び起きた木村が佐藤を押し倒す。 形勢一気に逆転だ。 「よーくも俺をいじめてくれたな泉ィィ〜〜!!」 「お、お仕置きだって、言ったでしょたっちゃん……!!」 木村の笑顔はおちゃらけながらも怒っているようで、目を丸くする佐藤。 「分かったよ俺も自重が足らなかったよ!今は紳士的に振る舞う! その分、夜はハッスルさせてもらうぜ〜〜?」 「い、いいよ……可愛い声いっぱい聞かせてね……?」 何だか嫌な予感がした佐藤はそう牽制してみるが…… 「ああいいぜ。恥ずかしいけどたぶんそうなる。 でも、まさか……夜戦は一回きりとか野暮な事は言わないよな?」 「!!?」 「当然、二回戦は俺が男役なわけだ!」 「そ、そこはジャンケン……!!」 「あん?」 木村の声はただならぬ威圧感を放っていて、佐藤は口を閉じた。 いざとなったら腕力は木村の方が上なのだ。 しかし木村は、次の瞬間にはデレデレの笑顔で佐藤に頬ずりしてきた。 「はぁ〜〜楽しみだな〜〜夜が超楽しみだな〜〜♪ 今日は俺の家に泊まろうな!?ラブラブないじめ合いっこしよう♥」 「もう!たっちゃんの変態!!」 「変態で結構!人間だって動物なんだよ!今日から君も……アニマルだ!!」 「たっちゃんのバカァァァァァアッ!!」 佐藤が真っ赤になって叫ぶと、部屋の扉が勢いよく開いて、 小さな来客が堂々と怒鳴る。 「こら――!お兄ちゃんもたっちゃんもケンカしちゃダメなんだからね!」 「ゆっ、雪……!!」 弟にこんな体勢を見られてますます赤面する佐藤だが、雪は不機嫌そうに眉を寄せて 「あ――っ!またたっちゃんがお兄ちゃんと寝てる――っ!ずるいゆきも――っ!!」 無邪気に佐藤の上に乗り上げてきて、木村のように抱き付いてきて…… 木村は雪の頭を撫でながら、軽く場所を譲って明るく笑っているし、 佐藤も恥ずかしさを誤魔化す様に笑うしかなかった。 ――佐藤父がそんな微笑ましい(?)3人を物陰から見つめて歯ぎしりしていた。 |
気に入ったら押してやってください 【作品番号 BSS34】 戻る 進む TOP>小説 |