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小二郎がやらかしたようです


※弱エロ?注意

愛のひしめく場所、廟堂院家。
ここにも一人、愛を隠して過ごす執事がいた。
平執事の門屋準だ。

ある日の門屋準、物陰で蠢く怪しい影を偶然発見してしまう。
「んっ……泉っ……!!」
「んぅ……たっちゃ……だ、ダメ……こんな、ところで……ぁっ!!」
リップ音も情熱的にアダルトなキスを繰り返すのは、木村と佐藤のカップル。
2人共、門屋の遊び仲間で、門屋にしてみたら驚き&見たくなかった事この上なかった。
(うわぁあああ!!真昼間から何してんだアイツら!?)
しかも仕事中だ。
すぐにでも大声を上げたかった門屋だが、こういう時は逆に声が出なくなるという現象に見舞われていた。
門屋が見てるとも知らない木村と佐藤のイチャ付きは激しさを増してくる。
息の荒い木村が佐藤の下半身に手を伸ばした。
「はぁ、ハァッ、な、なぁ……いいだろ泉……?俺、もう我慢できないんだ……!!」
(完全に変態じゃねぇか木村あの野郎!!)
「たっちゃん、お願い……抑えて……!!これ以上は、見つかったらヤバいよ……!!
俺だってもっと、したいけど……!!」
(断るふりして煽ってんじゃねぇぞ佐藤!!)
心の中で散々に野次を飛ばしながら二人を見ている門屋。
木村が佐藤の上着を肌蹴ながら、またしても深くねちっこく口付けを交わす二人。
見ている門屋が恥ずかしくなってくる。
「んっ、ちゅっ、いずみ……!!」
「ふぁっ……んむっ……たっ……んんっ!!」
最初は消極的だった佐藤までもが、我を忘れれば最後だった。
2人はますます体をぶつけ合いながら貪るように口付け、お互いの舌を絡ませ、唾液をすする。
木村の両手に至っては佐藤の尻をまさぐってやりたい放題だ。
(アイツら……あ、あんな激しく……!!)
門屋の背中にゾクゾクした何かが這い回る。
今見ている行為がいかに“気持ちいい”か、何となく分かってしまう。
無意識に自分の事に置き換えてしまって頭を振った。顔から火が出そうだ。
(クソッ!クソ!!普段はあんまイチャ付かないし、常識ある奴らかなと思ったらとんだハレンチ野郎共だぜ!!
特に木村!俺はお前を見損ってやる〜〜ッ!!)
目の毒をシャットアウトすべくギュッと目を閉じて、とにかく、あの卑猥な行為を止めさせなければ、
大声を出さなければ、と呼吸を整える。
すると意外な会話が聞こえてきた。
「ぁ、はっ、たっちゃ、ん……、お、俺達やっぱり変だよっ……!!さっき食べた、アレのせいかな……!!」
(ん?“さっき食べたアレ”……?)
「変じゃないよお前は可愛いよ泉……!大丈夫、上倉さんだってイル君とこの前、陰でエロイ事してた……!!
ほら、分かるだろ?もう、お前が可愛いからこんなになって……」
「えぇっ……!!?あぁっ……そんなっ♥そんなに、たっちゃんに求められたら、俺っ……俺ぇぇっ……!!」
(木村いい加減にしとけよテメェぇぇッ!!!あと兄さんもぉぉぉぉ!!)
木村のNGゾーンに無理やり手をあてがわれた佐藤はトロンとした涙目で震えていた。
今にも理性もベルトも解いて頷いてしまいそうだ。
見ている門屋も、この状況も限界だった。NGだ。これ以上は確実にNGシーンだ。
意を決し、門屋は声を張り上げる。
「とっ――鳥の襲来だ―――――っ!!!」
そしてヤケクソ気味に二人の前に勢いよく飛び出す。
「おいお前ら!!何やってんだよ!今すぐやめろ!人を呼ぶぞ!!」
「「リーダー!!?」」「あぁ最悪だ……!!」「ご、ごめんなさい!!」
門屋に驚いた後、顔を覆って天を仰いだ木村に、縮こまって頭を下げた佐藤。
「木村ぁぁっ!!テメェだけは後で尻100叩きの刑だからなッ!!何やってんだよ佐藤!!」
怒鳴り散らす門屋は木村をビシッと指差した後、佐藤の肩を揺さぶる。すると……
「んっ……!!」
「!!?」
「す、すんませんリーダー……!!俺達、なんか、急に、変になっちゃって……!!」
「そう言えば……」
先ほど聞いた佐藤の言葉が門屋の頭の中に浮かぶ。
“お、俺達やっぱり変だよっ……!!さっき食べた、アレのせいかな……!!”
肩に触れただけで悩ましげな声を上げる佐藤は、確かに様子がおかしい。
佐藤から手を離して門屋は尋ねる。
「おい佐藤!お前ら一体何を食べたんだよ!?」
「そ、それが……でも、勘違いかもしれないし……た、たっちゃんと俺が、ヤラシイだけなのかも……」
「ねぇ!リーダー見逃してくださいよ!学校でとか職場でとか、
こういうのって、男なら妄想するじゃないですか!?俺昨日ジャンケン負けたんですよ!」
「黙れ木村!!尻出して待ってろ!
なぁ佐藤、ハッキリしないなんてお前らしくないって!何があったんだ!?」
「……………」
佐藤は眉毛をハの字にして、しばらく言葉に詰まった後、躊躇いがちに言った。

「小二郎ちゃんに、お菓子もらって……それを、二人で食べたんです」


門屋は唖然とした。
(小二郎が、エロになるお菓子を持ってて、知らずにバラ撒いてるなら大変な事だぞ……!!)
純粋に、親切心でこちらの仲間にお菓子を分け与えているであろう“妹分”を心配したのだ。
なぜそのお菓子が心を眩ませる危険物なのかは分からないけれど。
いや……
(まさか、奥様……?)
“奥様は密かに媚薬を作っている”。この屋敷の数ある噂の一つだ。
真偽は分からないけれど、とにかく小二郎に確かめるしかないと思った。
(待ってろよ小二郎!!)
門屋は小二郎の元へ駆けだした。



そして、すぐに彼がいそうなところで小二郎を見つけた。
主にメイド部隊が働くゾーンの花壇地帯だ。
「小二郎!!」
「あ、門屋??」
「お前、お菓子持ってるって本当か!?今すぐ全部こっちに渡せ!!」
「!!」
小二郎は驚いた顔になって、慌てて首を振る。
「や、ヤダよ!!オレのお菓子だ!」
「あ……いや、お前の持ってるお菓子はヤバいモンなんだって!
お前木村と佐藤に渡したろ!?アイツらその……とにかく!そのお菓子は危険だ!
誰も食べちゃダメだ!こっちに渡せって!代わりのお菓子やるから!な!?」
「あ、アイツら……!後で食べるって約束したのに……!」
「あ?」
小さな呟きを門屋は聞き逃さなかった。
小二郎は頑なに、困り気味ながらも、必死に言う。
「嫌だ……絶対嫌だ!代わりのお菓子なんか要らない!
オレの、お菓子だもん!その、あのっ、帰れよ!」
「お、おい……まさか……」
小二郎の態度から察するに、小二郎は“お菓子の正体を知っていた”?
門屋も厳しめに詰め寄る。
「お前、それが何か知っててばら撒いてんのか!?」
「ばら撒いてなんかない!!だって、木村が甘いものが欲しいってしつこいから!
佐藤は……止めてくれたけど、オレ……断れなくて……!!」
「お前なぁっ!!佐藤と木村は知らなかったんだぞ!?」
「ひっ……!!」
怯える小二郎。
しかし、彼は次の瞬間大声を上げる。
「た、助けて――っ!!」
「なっ!!?」
次の瞬間だった。その場に人数が増えたのは。
「あ、門屋じゃん。まだ、しつこくしてこじろーをイジメてるの?あーちゃん怒っちゃうんだけど」
「全く、勝手に入って来ないでほしいわ。雄猿臭くなるじゃない。出て行きなさい。
死にたくなければ」
殺気をこめて見つめてくるのは先輩メイドの朝陽と日向だ。
いくらなんでもこの二人相手に勝てそうにない。
門屋はたじろいだ。
「くっ……!!」
「た、助けて!!あーちゃん!日向さん!」
「小二郎お前っ!!」
「門屋……」
「!!」
今までで一番体温の下がる声が自分の名を呼ぶ。
最速でラスボスの……メイド長・月夜の登場だ。
「何のつもりだ?小二郎に手を出すならこちらも容赦しないぞ?」
自分に向けられる殺気は三つになったが、門屋はフッと息を吐いて小二郎に向かって言う。腕組みをして。
「俺を嵌めるなんて、随分したたかになったよな小二郎?
兄さんに似てきたか?ハハッ、頼もしいこった!」
「…………」
小二郎も気まずそうに視線を斜め下に落として黙っている。
「けどな、俺は舐められるのが大っ嫌いなんだよ!
こんな事して……覚悟はできてんだろうな?後で覚えとけ?
ま、お前がメイド部隊で可愛がられてるみたいで安心したぜ」
「ご、ごめっ……」
「遅いんだよ。続きは膝の上で聞かせな。それとも兄さんに自首するか?」
ますます泣きそうに困惑する小二郎からそっけなく視線を外して、
門屋はにっこり笑顔で三人の先輩メイドに降伏を示す様に両手を上げた。
「ハーイ♪美人のお姉様方!心配しなくても、優秀な弟執事の門屋君は
妹分の働きっぷりをちょっと偵察しに来ただけで、今すぐ、さっさと帰りま〜す!!
お疲れ様でした〜〜!!」
流れるようにそれだけ言って脱兎の勢いで逃げ帰っていく。
月夜も日向も朝陽も、呆れたようにため息をつく。
「何だったのアイツ?こじろー、ケンカしてたの?」
「何でもいいわ。もう、雄猿には不用意に近づかせないように気を付けなさいよ小二郎!」
「……小二郎……何かあったか?」
小二郎は深呼吸して、駆けつけて守ってくれた先輩達に笑顔で言った。
「な、何でも無いです」
ポケットを、ぎゅっと握って。



一方、無傷で生還した門屋はと言うと……
(チクショウ小二郎の奴……!俺を、嵌めやがった!この俺を……裏切って!!
危険にさらしやがった!心配してやったのに!あの悪ガキ〜〜ッ!!)
ショックとイライラをダブルで味わいながらも廊下を歩いていた。
(……くっ、兄さんに、チクるかはあいつの出方を待ってから……
……いや、アイツに勝手にお仕置きしたら、俺は悪くないのに
兄さんにどんなお仕置きをされるか……お伺いは立てた方がいいな)
そんな事を考えていると、とある人物が駆け寄ってきた。
「リーダー!!」
「よぉ変態。お仕置きされる覚悟はできてるか?」
「ゆ、許してくださいよ……お見苦しいところを、お見せしました」
「全くだぜ」
すっかり興奮の冷めきった木村が門屋に深々と頭を下げた。
門屋は呆れたようなため息をついて手をヒラヒラ振る。
「まぁ、いい。事件の黒幕は名探偵門屋様が見つけたんだ。
お前のお仕置きは、今回に限り無しにしてやる」
「えっ!?あ、……ハハ、やった!いやぁリーダーは優しいなぁ!
どうやって泉を許してもらおうかって考えてたんですよ!」
「佐藤に関しては最初から無罪だよ。変態に襲われた可哀想な一般人だ」
「うぅっ……言わないで下さいよリーダー……俺、素面じゃなかったんですって。
今となっては黒歴史ですよぉ……はぁ」
ガックリと肩を落とす木村が可笑しくなって、門屋は笑う。
「あははっ、お前の弱みゲットだな♪」
「ついてないなぁ。上倉さんにも『お仕置きされるか、昨日の君達の情事内容を全部話すか選びなさい』
なんて言われるし……昨日はジャンケン、負けたのに……
まぁ、泉を守るためなら……アイツも、半泣きで恥ずかしがってけど」
「何だ。兄さんに見つかったのか。お前らお仕置きされた方が良かったんじゃね?」
「リーダーってば他人事だと思って〜〜……」
気が付けば、ひたすら恥ずかしそうに困っている木村を、
励ます様に背中を叩きつつ逆に慰めていた門屋だった。


そして門屋が次にやる事は……
「兄さんちょっと!どうなってるんですかお宅の悪ガキ妹!!」
「は??」
「いやすいません!これには深い訳が!!」
上倉に笑顔で威圧され、門屋は青ざめて両手を振る。
しかし、さっと体勢を立て直して毅然と言った。
「アイツ、信じられない、許されない事をしましたよ!
俺がお仕置きしてやってもいいですよね!?」
「……冗談じゃない。何の権限があって、君が私の可愛い弟をお仕置きするんです?」
「えぇっ!!?」
「――と、言いたいところですが……」
上倉は一度短く俯いて、顔を上げると困り笑顔で言った。
「罪状次第ですね。詳しく聞かせてください」
「は、はい!!」
こうして門屋は悲しかった胸の内を一生懸命訴えた。
上倉は驚いた顔をして、すごくガックリしながらも、門屋に許可出しGOサインをくれたのだった。


と、言うわけでその夜、執事寮での事。
「うわぁあああああんっ!!」
「オラァ!大人しくしやがれ悪ガキ!!甘い顔してたら調子に乗りやがって!」
「やだぁぁっ!やだぁあああっ!!」
私服での追いかけっこの末に門屋に捕まった小二郎が怯えて泣いていた。
たまたま通りかかった相良が呆れている。
「……どう見ても、『暴漢に襲われる美少女』の図なんですけど」
「うるせーよ!頭ン中『オイタの酷い妹分をお仕置きするカッコいい兄貴分』に訂正しとけ!
こっちは兄さんの許可が出てんだ!徹底的に絞ってやる!」
「そうなんですか?色々珍しい……でも、ほどほどにしてやって下さいよ?」
「んなもん、コイツの態度しだい……」
「うぇっ……ぐすっ……!ごめん、なさい、ごめんなさい……!」
泣きながら弱弱しく謝る小二郎の声が割って入ると、
門屋はやりにくそうに俯いてフルフル震える。
「う、うぅっ……あぁあああっ!!チックショウ!バカ!そんな大泣きすんなって!
いい子にしてたらすぐ終わらせてやるから!ほ、ほら……行くぞ?」
真っ赤な顔で、語気を弱めて、門屋は幾分か優しく小二郎の手を引いて行った。
相良はクスクス笑いながら「あれなら大丈夫そうだな」と呟いた。


こうして、門屋と小二郎のお仕置きタイムが始まるわけだけれど――
ベッドに座って→小二郎の短パンを下ろして→下着の上からお尻をぶっているわけだけれど。
(俺の部屋に小二郎を連れ込めない……小二郎の部屋に俺が入り込むわけにもいかない……
けど、この部屋は何かなぁ……)
ビシィッ!!
「ひゃぁんっ!」
(見張られてるみたいで、やりにくい……)
バシィッ!!ビシッ!!
「やぁぁっ!!う、うぅ、痛い……!!門屋……!」
この“上倉(兄)の部屋”が醸しだす謎の威圧感にげんなりしながらも、
門屋は膝の上の小二郎に応える。
「おいこら!反省したか?よくも俺の仲間に変なモン寄越したな!」
「ご、ごめんなさい……!!木村がしつこいし!疲れてるって言うし!
後で食べるって、約束したし!いいかなって思って……!!」
「ヤバいお菓子だって教えてやれよ!!」
バシッ!!
「あぁん!!ごめんなさぁい!そ、そんな事言ったら取り上げられると思ったんだ!!」
「…………なぁ、一つ聞いていいか?」
ビシッ!バシィッ!!
すごく嫌な予感がしながらも、門屋は小二郎のお尻を叩きながら聞いてみる。
「ひぁっ!な、何!?」
「お前さ、あのお菓子持っておきたいみたいだけど……食うつもりか?」
「!!……お、お前には関係ないもん……!」
「生意気!!」
ピシャンッ!!
「うぁあああんっ!!」
「お前、なんかに……(食ってどうするつもりだ食ってどうするつもりだ食ってどうするつもりだ……!?)」
門屋が見た木村と佐藤の乱れっぷり。
あれを小二郎に置き換えるだなんて、悪い意味で鳥肌が立ちそうだ。
可愛い妹分が、自分から薬で欲情を煽って、あんな風に……いや、あれ以上に!?
小二郎が、“兄さんの妹”という事実が嫌でも悪夢を見せて……
門屋の怒りが爆発していた。
「お前なんかに、あんなエロお菓子は100万年早いんだよ!!」
ビシィッ!バシィッ!!バシンッ!!
「ひゃぁあああっ!!?うぁん、うわぁあああああんっ!!」
小二郎の悲鳴が大きくなるほど、門屋は小二郎のお尻をいっそう強く叩く。叩き続ける。
苛立ちと言うか、嫌悪感と言うか、複雑な感情を乗せて思い切り打ち続ける。
気が付けば怒鳴っていた。
「あぁクソッ!酒も飲めないガキが色気づいてんなよ!?没収だからな!?
お前の持ってるあのお菓子全部没収だからなぁぁっ!!」
「やぁああっ!?な、何だよそれぇぇ!!ひ、ヒドイ!!うわぁあああああん!!
バカ自分勝手ぇぇぇっ!」
「うるせぇっ!!お前の色ボケ根性叩き直してやる!!」
「やぁああああっ!痛い痛いぃぃっ!意地悪ぅぅぅ!!おにぃに言うもぉぉぉん!!」
「おーおー言ってみろ!兄さんだって……っ」
言いかけ、門屋はやっぱり考え直した。
(ダメだ!!兄さんなら、喜んで根掘り葉掘り聞き出した挙句、怒りもぜずに赤飯を炊きそうだ……!!)
ビシィィッ!バシッ!!バシンッ!!
そう結論付け、門屋は言い直した。
「と、とにかく!!お前は全然反省してないみたいだから、もっとキツく叩かないとな!」
「やぁあああああん!!ヤダァァ!!わぁああああん!」
「甘えた声出しても無駄だぜ!?」
熱を持っている小二郎のお尻は、下着から少し見えるお尻も赤い。
小二郎の泣き声まじりの悲鳴も、色めいてきたけれど門屋は続けて小二郎のお尻を叩いていた。
完全に、小二郎のスイッチが入って叩き続けられなくなる前に。
ビシッ!バシィッ!!ビシィッ!!
「ごめんなさぁぁい!!あぁん!やんっ、もう仕事中に変な、
お菓子持ち歩いたり、誰かに渡したりしないからぁぁっ!!ふぇぇっ!!」
「そうだよ!俺を見習って健全にしやがれ!!」
「うぅっ、はぅっ、ごめんなさぁぁぁい!!」
「ったく、変な声、出しやがって……!」
「わぁああん!お、オレだって出したくないぃっ!!やぁぁんっ……!!」
さすがに、喘ぎ声に近い悲鳴を出されたら……
ここまで来たら、手を止めるしかない。
本当言うと、小二郎の恋愛事情に口を出す権利も無くて、
決して小二郎に未練があるわけでは無いけれど……
ただ、小二郎が……“妹分”が、悪戯に色欲に耽っていくのは止めたかったのだ。
もう少し。
門屋は意を決しては下ろさなかった下着をガバッと下ろす。
「――ッ!!?門屋!!」
「おい、良く聞けよ?」
バシィィッ!!
「ひやぁあああっ!!?」
裸のお尻を思いっきりぶたれて悲鳴を上げる小二郎に、門屋は言った。
「兄さんが、俺にお仕置きの許可を出したって事は、兄さんだってお前が変な薬を持ってる事には
反対って事だ。佐藤と木村に流した事だって怒ってるぞ?
どのみち、お前の薬は取り上げられるよ!」
「そんなぁっ!!」
「だ、大体!愛し合うっていう事は、そんな薬で盛り上げるもんじゃないだろ!?
お互い、大切にし合って育むもんだろ!?お前ら若いんだし……ッ、節度を、弁えてだな!
地道にステップアップしろよヒヨッコ同士のくせに!!」
自分で言いながら恥ずかしくなる門屋。でもお尻だけはきちんと叩いていた。
バシィッ!バシィィッ!!
「や、やぁぁっ!!ご、ごめんなさい!!ごめんなさぁぁい!!はぁん!!」
「あんまり調子に乗ってたら、お前のヘタレ彼氏も同じ目に遭わせてやるからな!」
「ダメェェ!!ごめんなさぁい!もう薬は全部おにぃに渡しますぅぅっ!!わぁあああああん!!」
「分かれば、いいんだよ!!」
ビシッ!!
「ひゃうっ!!うわぁああああん!!」
最後に、思いっきり打って門屋は手を止める。
そして膝の上で泣いている小二郎の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「はぁ、もう終わったぞ!は、早く泣き止んでくれないと、俺が兄さんにどやされるんだからな!」
「うぇっ、ぐすっ……ううっ!!ごめんなさい……!」
「(抱きしめるのは、ダメな気がするし……!!)もう怒ってねぇよ……」
しゃくりあげる小二郎を、撫でる手を最初よりゆっくり優しくして……宥めていると、
「小二郎!ちゃんと反省しましたか!?」
いきなりドアを開けて上倉が入ってくる。
「うわわっ!兄さんッ!!」
「うわぁああああん!おにぃごめんなさぁぁい!!」
小二郎は入って来た上倉に抱き付いて、上倉はそんな小二郎を撫でてあやしている。
「まったく、媚薬なんてお前には100万年早いですよ!」
「門屋にも言われたぁぁ……!!」
(兄さんさすが!!)
門屋もホッと胸を撫でおろした。けれど……
「若いんですから、テクを磨きなさいテクを。
初体験は済ませてるからって、慢心はいけません!今は二人できちんとお互いの」
(……は……?)
信じられない単語が耳に入る。
(えっ……ちょっ……そん、な……!!!)
“初体験は済ませてる”?
え?小二郎がアイツと……?俺はまだなのに?
色々な思いが渦巻いて、上倉兄妹が何を話してるか、門屋はもう聞こえなかった。
「――ね?分かりましたか?」
「う、うん……分かった。二人で頑張る」
「よろしい。ちゃんと、門屋君にお礼をいいなさい」
「門屋……あの、今日はありがとう……」
しゅんとした、頬のピンクな小二郎がそう言っても門屋は震えるだけだった。
色々な意味の絶望に。
「う、うっ……うわぁあああああああっ!!」
門屋は部屋を飛び出して廊下を全力疾走する。

見たくない事ばかり見た、ちょっぴり切ない今日の門屋だった。





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【作品番号 BSS33】

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