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執事部隊で一番腕相撲が強いのは?




町で噂の大富豪、廟堂院家。
この家の執事達の休憩室は今日もささやかに賑わっていた。
「ねぇ、執事部隊で誰が一番腕力強いか気になりません?」
そんな会話を切り出したのは執事長の上倉だった。
「そりゃ〜……やっぱ俺でしょ!!」
元気いっぱいに胸を反らしたのは門屋で、周りから一斉ブーイングが。
「無い無い無い無い!!」
「あり得ないですってリーダー!」
「たぶん下から二番目ぐらいですって!」
「あ゛ぁあああ!?舐めんじゃねーよお前らぁぁっ!!」
「私もそう思います」
「兄さんッッ!!」
CADの仲間と上倉から全否定されて苛立つ門屋はその勢いのまま近くにいた相良を指差す。
「おいちょっとそこの相良!!俺と腕相撲しろ!!」
「え……?」
急にご指名をくらった相良は少し驚いて、
「いいですけど……」
困り顔で笑う。
“お前、力比べじゃ俺に勝てないだろ?”と言いたげに。
歯切れの悪い言葉尻が余計に門屋をヒートアップさせた。
「いつも勝ってると思って調子乗んなよ!うっ、腕相撲は別だからなッ!!」
「おや、門屋君いつも何か負けてるんですか?」
「いいいいやっ!!コイツ紙相撲めっちゃ強いんすよ!」
「……やりましょうかリーダー」
門屋の変な言い訳を流す様に相良が勝負に持ち込む。
二人で向かい合いで座って肘をテーブルについて、手を握る。
「せーの!!」
門屋の掛け声で試合が始まる。
「ッ、」
「ぐぬぬぬぬぬッ!!」
二人の腕はピクリとも動かない。
と、いうか大げさに力んでいる門屋の腕を相良がせき止めている感じだ。
ぎゅーっと力を入れていた門屋は、相手を動かせないとなると喚きだす。
「おいふざけんな倒れろ!お前俺に勝ったらどうなるか分かってんだろうな!?」
「そう、言われても……」
このやりとりに、見ているCADメンバーが一気に湧く。
「早速勝てない気配だな」
「リーダー脅迫は反則ですよ!」
「うるせー!外野は黙ってろ!た、倒れろ相良この〜〜っ!!」
一生懸命、力を入れて相良の手を握る門屋。
見ている相良はだんだん妙な気分になってきた。
(準……こんな、一生懸命俺の手、握ってくれて……)
「んっ……うっ、くぅぅ……!!」
(何か、声も……)
「門屋君なんか声エロイですね」
「「!!?」」
ゴトンッ!!
上倉の声に二人同時に反応して、一瞬で勝負がついた。
「やっ……たぁああっ!勝った!勝ったぁぁっ!」
「……上倉さん?」
大喜びする門屋に、ため息をついた後赤い顔で上倉を睨みつける相良。
上倉の方は悪びれもせず笑っていた。
「相良君もそう思ったでしょ?」
「……ビックリして負けちゃいました」
「あっはは!ごめんなさい!次で私が勝って、君の仇を取りますから!
あの子の事、可愛い声で喘がせてあげますよ♥」
「変な言い方よしてください……アンタじゃ無理ですよ
「ん?」
「……結構、強かったですよ。うちのリーダー」
「何か怒ってます?相良君」
「別に」
相良と上倉が妙な空気になっている中、門屋がテンション高くはしゃいでいた。
「兄さん見ました!?やっぱ俺強いんですよ!」
「あぁそうですか〜、じゃあ次は私のお相手願えますか?」
「もちろんです!手加減しませんからね!?」
「望むところです」

そして、門屋は一瞬にして負けた。

「あぁああああっ!!兄さんズルイ!ズルいです!」
「何もズルくないですよ。あのね、大体、門屋君私にお仕置きされてるとき逃げ出せないでしょ?
腕力の差は歴然……」
「ぎゃぁああああっ!それここで言わなくてもいい話でしょ!?あぁもう!
イル君!イル君兄さんの事倒せますよね!?倒してくださいよ――!!」
騒がしい門屋が今度はイル君を引き込もうとする。
そして上倉もノリノリだ。
「おっ!やりますかイル君!」
「……いいえ。私、勝てない気がしますので」
イル君は冷静に首を振る。
周りは少し驚いていて、門屋は不満そうだ。
「えー!?何でですか!?イル君たぶん兄さんより力あるでしょ!?」
「上倉君に一生懸命手を握られたら、きっとドキドキして力が入りません」
「やだダーリンったら……♥」
上倉が頬を赤らめたところ、相良が一言。
「イル君、上倉さんこの前、大堂先生にセクハラしてましたよ」
「ぎゃぁああああっ!相良君ちょっと!!それここで言わなくてもいい話でしょ!?」
「……それはそれで、“腕相撲”で倒して済む話じゃありませんから」
「ひっ……!?と、とにかく!イル君が負けを認めたので、今一番強いのは私という事で……」
席を立って青ざめつつ後ずさりする上倉の、背中が誰かとぶつかる。
「ぁ!」
「おっと、ごめんね?」
「いえ、こちらこそ」
上倉が背面衝突したのは能瀬だった。
お互いにこやかに謝罪を交わし、上倉が言う。
「能瀬さんもやります?腕相撲、今のところ私がチャンピオンですよ!」
「へぇ……皆負けてくれてるのかな?優しいね」
「あ?」
笑顔の上倉の、声が一オクターブ下がる。
「ちょっと失礼じゃないですか能瀬さん……んな事言うなら一発やりましょうよ?
バキッと勝たせていただきますよバキッと!」
「いいけど……君を泣かせるのは心苦しいな」
余裕の笑みを崩さない能瀬と、笑顔で挑む気満々の上倉。
周りが焦り出す殺伐な空気。
腕相撲さえ優雅な能瀬と、上倉の勝負が始まると、
お互い声も出さずに、力の拮抗してるらしい腕だけが小刻みに震えていた。

しかし二人とも笑顔が爽やかな中、世間話でもするかのように声をかけたのは能瀬だ。
「ねぇ、どうしたの?もっと力入れてくれないと倒れられないけど、調子が悪いのかな?」
「貴方こそ、偉そうな事言った割に弱いんですね。一瞬で私を倒してくださるかと思ってましたけど」
「「……チッ」」
同時舌打ちで周りの空気がまた殺伐具合を増す。
しかし、腕はまだどちらにも傾かない。先に淡い疲れを見せたのは上倉だった。
それと同時に叫ぶ。
「だっ、誰か!!ヘルプヘルプ!!手貸してください!手!」
「ズルする気?後でお仕置きだね」
「――!」
ゴトンッ!!
勝負がついた。能瀬の勝利という形で。
「気は済んだ?」
能瀬はサッと髪を払って立ち去ってしまう。
上倉は呆然として……門屋が呆れ顔で声をかけた。
「……兄さん、アホでしょ?」
「うわぁああああん!!言わないでください!あんな奴の言葉に反応してしまうなんて〜〜っ!!」
机に突っ伏して嘆いている上倉。
そこへ……
「ん?どうしたんですかな上倉君は?」
「あ、四判さん!兄さんね、能瀬さんに腕相撲で負けて泣いてるんです」
「ほー腕相撲とは懐かしい。これ、上倉君元気を出しなさい」
やってきた四判がポンポン慰めるように上倉の肩を叩く。
それでも上倉は顔をあげない。門屋が上倉の頭を撫でながら言う。
「四判さんも兄さんと腕相撲してあげてくださいよ」
「四判さんに勝っても全然嬉しくないですよッ!!」
「おや?」
上倉の喚く声に、四判は楽しそうに反応した。
「どうして勝つ前提で話すんですか君は?」
「いやだって、いくらなんでも貴方に負けませんよ!私若いし!」
「なるほど……そこまで言うなら一戦交えましょうぞ上倉君。
私が負けたら君のお仕置きを無しにしてあげましょう」
「え!?」
上倉が勢いよく顔を上げる。四判と目が合うと慌てて反らした。
「私は君をお仕置きしようと思って呼びに来たんです。身に覚えは?」
「いや、ええと……」
「ありすぎて絞れない?」
「そっ、そんなこと無いです!!その……いや、私が勝てば済む話ですよね!」
真剣な表情で腕を差し出す上倉。笑いながら応じる四判。
上倉以外の全員が状況を心配している。
「上倉さんやめた方が……」
「無茶をして……」
「兄さんが言ったのに……」

――お仕置きされてるとき逃げ出せないでしょ?腕力の差は歴然……

「いっせーの!」
「フンッ!!」
掛け声をかけた瞬間に、上倉が感じたのはとんでもない重圧。
抵抗する暇さえなかった。
次の瞬間には、机に勢い良く叩きつけられた手が豪快な音を立てる。
ガンッ!
上倉も、見ていた者も呆然とした。
「か、解散!!皆仕事しよう!」
門屋がそう叫んで手を打って、皆がさざ波のようにその場から引いて、
取り残されそうになった上倉が一気に焦り出す。
「え、ちょっ……皆、待っ……ダーリン!」
「……ついでに貴方の浮気癖も治ればいいですね、ハニー」
「それ今関係なっ……」
「上倉君?」
四判に名前を呼ばれてビクンと身をすくませる上倉。
「私が勝ちました。大人しく一緒に来ていただきましょうか?」
「いや、わ、私はそんな約束一言も……!」
「ほう?」
その凄むような声色に上倉は逃げ回ろうとしていた言葉を失って、四判が冷静に言う。
「まぁいいでしょう。大人しく来ないのなら無理やり連れて行くまで……」
「まままま待ってください!私は貴方に叱られる事なんて身に覚えがありません!!」
「性懲りもなく大堂先生に失礼な事をしたでしょう!?詩月様から苦情が来てますよ!!」
「はぁ!?あのモンスターネフューめ!!」
「君は全く反省の色がありませんね!来なさい!!」
結局、いつものように調子に乗った挙句、連れて行かれてしまう上倉だった。



隣接する部屋でさっそくお仕置きされそうになっている上倉は
壁に手を付かされて、ズボンや下着を下ろされても一生懸命喚いている。
「待って!待ってください!あの人おかしいんです!
神経質なんです!言いがかりなんです!考えてもみて下さいよ!
健人様や健介様と同居なさってた時はそんな苦情、一言も入らなかったじゃないですか!」
「つまり君は……前々から大堂先生にいかがわしい行為を働いていたんですね!?」
バシィッ!!
「ひゃっ!!?ち、ちがっ……!」
ビシィッ!
「んっ!!」
丸出しになったお尻に思い切りパドルを打ちつけられて声を詰まらせた。
けれどもまた息を吸って大声で訴える。
「あぁっ!あん、なの!スキンシップの一環じゃないですかぁ!」
「小二郎君が同じ事をされてもそう言えますか!?」
「何ですって!?そんな輩は生かしてはおきません!!」
「このおバカ!!」
バシィッ!
「うわぁぁっ!」
強く打たれてのけ反ると同時に、じわじわと気持ち良さが広がっていく。
いつもなら身を委ねてしまうけれど、今日はぐっと堪えようとしていた。
「んんっ、小二郎は関係ないじゃないですか!!」
「同じ事です!詩月様が怒って当然でしょうが!!
さぁ、痛みに耐える覚悟をしなさい!今日こそ本気で反省してもらいますぞ!」
「嫌だやめてください!大事なところはちゃんと外してますぅぅ!」
「そういう問題じゃないでしょうが!!」
ビシィッ!バシィッ!バシィッ!
最初の最初から厳しめに叩かれて、さっそく上倉は涙目になっているけれど
その勢いを落とさずに何度も叩かれる。
お尻も赤に染まってきて、快感も降り積もってゆく。
「あっ、うぅっ!や、やめてください!本当、にぃぃっ……!!」
「そうやって謝りもぜず、痛がってもいない状況ではやめません!
反省させると言ったでしょう!?」
「ごめんなさい!もうしませんからぁぁ!!痛いです!今とっても痛いですってぇ!」
「今更謝っても遅い!」
ビシィッ!バシィッ!バチィンッ!!
「んぁあああああっ!!酷い!鬼!悪魔!!ひっ、ぅぅっ!」
「君って子は毎回毎回全然反省しませんな!?」
「ぃいったい!!反省はしてっ――やぁぁっ!!」
「泣かせないとしおらしい態度が取れないんですからもう……!!」
「んぁぁっ!そんな、やめてください!いやだぁぁっ変態〜〜っ!!」
「君の幼い暴言なんて痛くも痒くもありませんぞ!」
バシィッ!!
「うわぁああああん!」
思わず泣き出してしまうほどの痛みだった。
けれども快感の方はすでにドバドバに溢れていて、頭の中が朦朧とし始める。
「やっ、やだぁぁっ!ごめんなさっ……ごめんなさい!!もうやめっ、てぇぇぇっ!!
んぁっ、だ……めぇ……!!」
「上倉君!しっかり聞きなさい!」
バシィッ!ビシィッ!
その朦朧加減を覚まさせるかのようにまた強くパドルを振るわれていた。
「あぁあああああっ!!」
「今度やったら、私では手に負えないと判断して、千賀流様に叱ってもらいますからね!?」
「やっ、やめてぇぇっ!嫌!やめてください!ごめんなさぁぁい!!
うわぁああん!これっきりにしますぅぅっ!!」
「よろしい。やっと反省のみえる態度になってきましたね」
バチィンッ!!ビシィッ!ビシィッ!
この時点で、いくら気持ちいいといっても痛みの方が勝っていた上倉。
お尻も真っ赤になってしまって、縋り付くような想いで四判に訴える。
「だったら!だったらもう許してください!!我慢できません!」
「これ!すぐ調子に乗って!今からご挨拶をして数を数えるんですよ!?」
四判がそう怒鳴った途端、上倉は半狂乱で泣き喚いた。
「やぁぁあああっ!そんなの無理です!痛いぃっ!もう、嫌、です!!
ごめんなさいぃぃぃっ!!わぁああああん!!」
「早くしなさい!君はお仕置きされても先に興奮してしまうんだから、そこを越えないと!
まだまだたくさん叩きます!」
「うわぁああああん!やだぁぁあああっ!興奮なんてしてないもう痛いだけですぅぅ!
もうやめてぇぇっ!ごめんなさぁぁああい!」
「甘ったれた事を言うんじゃありません!!」
ビシィッ!バシィィッ!バシンッ!
いくら泣きながら謝っても許してもらえない。
けれど、四判の言うとおりにする気力も無い上倉は号泣しながら必死で頭を振った。
「やだ俺もう無理ぃぃぃぃっ!!」
「上倉!!」
「うわぁあああああん!!」
四判の方も、いくら赤いお尻を上から叩いても、怒鳴っても、
泣きながら首を左右に振るだけの上倉が哀れになって根負けしてしまった。
「本当に、今度からは大堂先生に失礼の無いようにするんですよ!?
もちろん他のお客様にも!君はもっと廟堂院家の執事としての自覚を持ちなさい!」
「ごめんなさい分かりましたぁぁぁっ!わぁああああん!」
「……一度も、膝をつかなかった事は褒めてあげます。もういいですよ」
「うぅっ、ぐすっ……!」
嗚咽している上倉の頭を四判が撫でる。
そうすると余計に泣き声が酷くなって……
結局は、また大号泣にもどった上倉を四判が抱きしめて落ち着かせることになったのであった。



【おまけ】

イル君「ふと思ったんですが、四判さんといる時の君は、君といる時の門屋君に似てますね」
上倉「えぇっ!?超私に失礼じゃないですかイル君!心外です!!」
門屋「その発言が俺に超失礼ですよ兄さんッ!!」
上倉「私はねぇ、言い訳したり、謝らなかったり、ご挨拶やカウントをダダこねて拒否したりしませんよ!!」
門屋「うわぁああっ!!いきなり何の話をしてるんですか!!」
相良「上倉さん、気づいてないかもしれないけど貴方の声って意外と通るんですよ?」
上倉「相良君この頃私にキツくないですか!?」
門屋「っていうか、それで許されてるんなら俺ちょっと納得いかないんですけど……!」
上倉「…………」
―上倉ダッシュ発動
門屋「あぁっ!ちょっと兄さん!!逃げるなんて卑怯ですよ!待てぇぇぇっ!!」
イル君「……相良君、彼が何かしたなら私が謝りますから、どうかお手柔らかに」
相良「……すみません」




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【作品番号 BSS32】

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