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ヤツらの☆メリー・クリスマス……は、あまり関係ない(上倉&イル君ver.)




上倉大一郎は気が付くと、全裸で、丸くくり抜かれたたっぷりの各種フルーツに埋もれて
透明なボールに沈み込むように、足を投げ出して座っている……そんな体勢だった。
何だこれ、とフルーツを触ってみても混ざり合う爽やかで甘い香りが広がるだけ。
どうしたものかと考えていると、弟の真由が遠くから背丈より少し小さめの消防車を引いてやってくる。
「おにぃ!あったあった!」
何が?
「ソーダ水だよ!これがなくっちゃフルーツポンチは始まらない!」
いや、ちょっと待て。
「ふ――、じゃ、放水するぞ――!」
素敵な笑顔の真由。
よく分からないけど、特に困る事でも無さそうだけど、最悪風呂に入ったら解決しそうだけど……!
大一郎はとてつもなく焦って、止めたかった。
「ま、真由!ちょっとまっ……」
「放水開始――――!!」
真由がこちらに向ける消防車のホースから、勢いよくピンク色の水が放たれる。
あ、イチゴ味か。
そんなどうでもいい事を最後に思った。

* * * * *

(おかしいだろ!!)
上倉大一郎が盛大に心の中で叫んで起き上がると、そこはベッドの上。
町で噂の大富豪・廟堂院家……の、執事寮のイル君の部屋だ。
確か昨日はクリスマスで、自分は恋人のイル君の部屋で過ごして……
現に、目線を横に移せば、やや離れたところに背中を向けたイル君が眠っている。
しかしここで、大一郎は違和感に気付く。
「あれ……」
濡れている。下着からズボンを貫通して。気持ち悪いくらいの湿り気。
「えっ……」
吹き出す冷や汗。この感覚、覚えがあるのは遠い過去の事。
あってはならない緊急事態。
「うっそ……!!」
焦って思わずかけ布団を捲って確認した。
悲しい事にベッドマットも下半身も完全アウト。

お久しぶりの“おねしょ”だった。

「いやちょっ……と、これどうしたら……!!」
ついつい独り言が多くなる。
と、同時にバッと勢いよく隣を確認して、彼が寝ている事にホッとする。
そして急いでこれからどうするか考え始めた。
(着替えて、イル君が起きたら、とりあえず謝って……色々洗濯すれば、いいか)
即解決。簡単な事だった。
子供の頃でもあるまいし、落ち着いて考えれば何も焦り惑う必要はないのだ。
穏やかで優しい恋人は素直に謝れば、冷静沈着に許してくれるはず。
いや、
(……お仕置き、されるかもだけど)
これをネタにお仕置き展開に持ち込まれる可能性もある。
それにしたって、むしろ大歓迎ではある。さっそくゾクゾクしてきた。
(どうしよう、考えただけで……イル君起こそうかな……いや、まてよ?)

ここで大一郎、名案を思いつく。

(普通に謝ったら、たぶんイル君にお仕置きされる……けど、もし隠蔽しようとしたら?)
きっと、素直に謝るより怒られる。
たぶんそういうものだから。
(よっし!イル君が起きるまで暇だし隠蔽工作しよう!!)
そうと決まればさっそく方法を考えた。
(どうしたらいいかな〜とりあえず、バレる事前提の甘めの隠蔽が目的だろ?
濡れたズボンとか下着はベッドの下に隠して着替えて……)
考えながらも、まずは着ているのが気持ち悪いズボンや下着を替えて、汚れ物は計画通り
ベッドの下へ適当に、むしろ見えるくらいに突っ込んでおく。
次はベッドの方の隠蔽、メイン工作なわけだが……
(ん〜……真由は色々どうしてたっけなぁ?アイツは、へったクソな隠蔽のプロだったけど……)
そうやってバレてよく母親に怒られていたものだ。
対して大一郎は、自己申告して謝って許してもらっていた賢い子供だった。
その正しい生き方がここで仇になるとは。
(ドライヤーで乾かす……うん、いけそう。音で起こせそうだし。
まてよ、上から水をかけて誤魔化すとか……その際、誤ってイル君にかけてしまうと即起せて一石二鳥!
あ、こっちの方がいいかも!)
水作戦で決定した。
「あー……喉が渇いたなぁ、水でも飲みたいなぁっと……」
眠っている恋人には聞こえてはいなさそうだけど、一人でそう言ってベッドを降りた。
大きなコップにたっぷりめに冷たい水を汲んで戻ってくる。
あとはこれを……
(いっそイル君にぶっかけたら良くね?)
だんだん雑になってきた。
大一郎はイル君の寝顔を覗き込む。
(意外と、今日は良く眠ってるよな……大体俺より早く起きてるのに……)
つい、マジマジと見つめてしまう。
すると……
「んっ……」
「ぅあっ!!」
バシャッ!!
「っぷふ!!?」
「あ……」
わずか2秒ほどの出来事だった。
大量の水が顔面直撃して、驚いて顔を伏せたイル君は、必死に手で顔を拭いながら、咳き込んでいる。
「ゲホッ……うっ……!!」
「だっ……大丈夫ですか!?」
何とも白々しいセリフだけれど、さすがに驚いた勢いで水をかけてしまったので
大一郎も焦っている様子。
けれど、苦しそうながらも目覚めたイル君は冷静だった。
無言でムックリ起き上がる。
大一郎の方がおずおずと話しかけたくらいだ。
「ごめんなさい……か、顔……洗ってきます……?」
「えぇ……」
イル君は洗面台に向かって行った。
(ビックリした……手が滑ったけど……でも、イル君起きた……)
残された大一郎は、空のコップを片づけてひたすらドキドキしていた。
だって、もうすぐ待望のお仕置きタイムだろうから。
イル君は顔を洗うほかに髪も乾かしていたらしく時間を取ったけれど、
再び大一郎の前に姿を現して濡れた服を着替え始める。
それをベッドに座って眺めながら、すっかりワクワクしている大一郎が途切れ途切れに言う。
「い、イル君ごめんなさい、あの……」
「昨日の事、覚えてます?」
「え!?いえ……?」
唐突に話題を振られて大一郎は驚いた。
今度はイル君の方が話し始める。
「“飲み比べをしよう”って君が。最初はお互い和やかで良かったんですけど
だんだん君がおかしくなってきて、私が止めるのに全然聞かなくて……
しまいに酔っ払って脱ぎだして、全裸で“来い地球!!”とか喚いてましたよ?
あんなにガバガバ飲んでしまうから……」
「そ、そうでした……っけ?」
「そのまま、“イチゴ味!メロン味!ソーダ味!”とかなんとか叫びながら、ベッドで一しきり飛び跳ねた後寝てました。
風邪を引くとまずいと思って服は着せたのですが……着せた傍から汚してしまったようで。
ちょっと疲れてたので放置させていただきました。ごめんなさい」
「え゛……」
「……まさか、あんなに慌てて隠そうとするなんて。
可愛らしいところがあるんですね。君の意外な一面を見た気がします」
「はぁっ!?」
元からバレていた上に、恥ずかしい誤解をされていたものだから大一郎は慌てて立ち上がって……
「ちっ、違うから!!隠せばイル君にもっと叱ってもらえるかと思って隠したっ、隠したんですよ!?
別に本気で慌てて隠そうとしてたわけじゃないんですよ!?」
「なんと斬新な言い訳」
「マジだって!!それに、起きていただなんて……」
全部、最初から知られていただなんて。
「人がお悪い……」
少し勢いを無くして、シュンと恥ずかしそうにイル君に詰め寄る。
イル君は目を細めたほんのり笑顔で大一郎の頭を撫でた。
「ごめんなさい。ちょっと君がどう動くか、興味が出てきて……」
「うぅ。さぞ滑稽だったでしょうね……演技ですからね!?」
「もちろん。……弟がいたらこんな感じでしょうか……」
「演・技・で・す・か・ら・ねッ!?」
頑なに“子ども扱い”してくるイル君にムッとした大一郎は、
大胆にイル君に擦り寄って、首に手を回して絡みつく。
そして、妖艶な視線でイル君に微笑みかける。
「全く、貴方の最高にエロイ恋人を“弟”扱いだなんて……♥今すぐ撤回したくなるほど貪り合います?」
「オネショしちゃうような坊やが何をおっしゃいますやら」
「ぅえぇ!?ちょっと!このタイミングでその路線やめましょうよ!!」
攻撃したつもりで、思わぬ切り返しを受けた大一郎は真っ赤になる。
イル君はいつもよりほんの少し顔に出して楽しそうだ。
「叱って欲しいんなら、叱ってあげますよ。
今日の君は可愛らしいからたくさん虐めてしまいそうだ」
「その人を小バカにした“可愛い”は大変不服ですがッ!いいですよ!ワタクシ“幼児プレイ”も大歓迎ですッ!!」
「おいで。おねしょを隠そうとする子はお尻ぺんぺんしてあげますから」
「〜〜っ、その溢れる父性を千早様にお向けになれば少しは屋敷が平和になるのでは!?」
「何を言います。千早様は神ですよ?」
くっついていた大一郎を引っ張ってきてベッドに座って。容易く膝に乗せて。
いつもみたいに裸のお尻を丸出しにして。
さっそくイル君のお仕置が始まる。のだが……
ぺちっ!
「ひっ……!」
声は出したものの、痛みはあまりない。
「やっ、やだ……!イル君……!」
「我慢なさい。どうして正直に言わないんですか?」
(うわぁぁ抜け抜けと!こんな、緩いの我慢できるに決まって……)
ぺちっ!ぴしっ!ぺちっ!
(嫌だできない!!)
逆の意味で。
明らかに焦らすような弱いお尻打ちだった。
大一郎にしてみれば物足りなくて身じろぎしてしまう。
「んっ、んんっ……!!」
「じっとして!数をふやしますよ!」
「うぅ……!!(数じゃなくて威力を増やしてほしい……!)」
ぴしっ!ぺちっ!ぺちっ!
語気は強まるものの、相変わらずの弱い平手打ち。
大一郎は早くもイル君に懇願していた。
「い、イル君!お願い、もっと、強く叩いて……!」
「どうして?」
「意地悪……!だって、こんな、あっ……いっぱい、反省したいんです!!」
文句を言おうとして、軌道修正した。結果
「なるほど……でもダメですよ、お仕置きだから。君の嫌がる事をしましょう」
「そんなぁ……!」
交渉失敗。
引き続き緩く緩く叩かれる。
ぴしっ!ぺちっ!ぱんっ!
「いやぁぁっ……!お願いです、から……あんっ!」
「ダメですよ、寝る前にあんなガブ飲みして」
「ご、ごめんなさい!もうしません!考えてぇ、お酒飲みますから……んっ、ぅ!」
「しかも、人のベッドにおねしょするなんて。いい大人がみっともない」
「あ、んっ気を付けます、本当に……気を付けますからぁ!!
もっと、きつくお仕置き、っ、してください!お、願いします……!!」
「ダメです。悪い子の言う事は聞けません。もう千歳様や千早様を笑えませんよね?」
「いやぁぁっ……それ、言わないでください……!!」
ぺちっ!ぺちっ!ぺちっ!
確かに少しは痛い。けれどもそれを上回るじれったさと、恥ずかしさで色々パンクしそうになる。
こんなお仕置きは嫌なはずなのに、股間のドMアンテナはいつも通り超元気なのが憎い。
大一郎は息も絶え絶えに一生懸命に謝っていた。
「こ、こんなの、あ、ぅ、もう、いやですっ……!!
ごめんなさい!何でもしますからぁ!んんっ、あぁっ!」
「いつものお仕置きよりこっちの方が効きそうですね。画期的な方法を発見してしまった……!」
「ち、違いますっ……こんぁの、全然、平気……うぅ、平気なのにぃ!!
はぁっ、もう、やぁぁ……気が狂うっ……!!」
「私に泣き落としは効きませんよ」
ぴしっ!ぺちんっ!
「ひぁっ!ぅ、くっ、わざとじゃ、あっ、ないんですおねしょ〜〜っ!!」
「だから、素直に謝れば許してあげたのに。隠そうとするからこうなる……こうして、欲しかったんでしょう?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!違うんです!!
もうしませんからぁ!もう絶対しませんからぁっ!
いい子にします……あぁ、おっ、お願いです!もっと強くぅぅ!!」
目にうっすら涙が溜まる。身体的な切なさで泣きそうになって声が震える。
「も、もう耐えられないんです……!」
「…………痛いお仕置きが欲しいんですね?」
見るに見かねたのか、気が変わったのか。
イル君がそう声をかけると、大一郎は本当に嬉しそうに何度も頷いた。
「は、はいっ!はい!欲しいです!強く、いっぱい、お尻、叩いてください!!
それで……反省しますから!!」
「分かりました。自分で言った事、良く覚えておいてくださいよ……?」
淡々とした返事。
けれどその変化には凄まじかった。
バシィッ!
「ひぁぁぁっ!」
ビシッ!バシッ!バシッ!!
「あぁっ!ありがとうございます!!
いっ、痛っ……痛い!!痛いぃっ!ごめんなさぁぁい!!」
何度も本気で叩かれる。
段違いに痛いはずなのに、大一郎は苦しがりながらも満足そうに悲鳴を上げている。
「あぁああっ!本当に、ぃいったいのにぃ……!!
んぁあああっ、いぃいっ!こっちの方が全っっ然いいぃぃぃっ!」
「何を喜んでるんですかお仕置きなのに」
バシィッ!ビシッ!バシッ!
「ごめんなさい!反省してます!あぁぁんっ反省してますぅぅぅっ!!」
ビシッ!バシッ!バシッ!
「んはぁあああっ、もう、ごめんなさぁぁい!うっ……」
本当に嬉しいはずだった。
けれど、急激に厳しさを増したお尻叩きで、大一郎のお尻はあっという間に赤いに染められていく。
当然痛みもすぐに我慢できる限界を超えて
「あぁっ、う、わぁああああん!!ごめんなさぁぁい!もうしませんからぁぁっ!」
泣き出してしまう。
泣きながら身を捩ってしまう。
「やだぁぁぁっ!ごめんなさぁぁい!!痛い!痛いぃぃぃっ!!うわぁああああん!!」
「自分で言い出したんですよ“痛いのがいい”って!」
バシィッ!バシッ!バシッ!
「あぁあああああん!!言いましたぁ!言いましたけどっ、でもっ……あぁああっ!」
「ギブアップが早くないですか!?」
「ごめんなさぁぁぁい!!ぃ痛い!ダメぇ!我慢できないくらい痛いんです!!うわぁあああん!
朝一でこれはキツイぃぃぃっ!!」
「仕方のない子ですね……!」
ぺしぃっ!
「ひ、ぃ!?」
急に緩くなった平手打ち。そのまま続く、極小の痛み。
ぺちっ!ぴしっ!ぺちっ!
「あ……あ、嘘……!!」
最悪の展開を予想して、涙だけがバラバラと零れた。
そしてその展開を告げるイル君の声。
「おねしょ野郎がワガママばっかり言って。
せっかくなので君の可愛い真っ赤なお尻を眺めながら、“もうワンセット”」
「うぁあああああっ……やめて!!もう、終わらせてください……!」
「昨日時間を取れなかった分まで、たっぷり嬲らせてくださいね、大一郎?」
「うわぁあああああん!!」
ぴしっ!ぺちっ!ぺちっ!
迫力が無い打音の割に悲鳴は大きく響いて。
もうしばらく続いた“お仕置き”に、色んな意味で泣かされてしまった大一郎だった。


【おまけ】


大一郎「あの、この話……絶対真由には内緒ですよ!?」
イル君「えぇ」
大一郎「絶対ですからね!?あと、能瀬さんにも!
     あの人に“よ〜ぉ、おねしょ野郎!”とか声かけられたら殴り飛ばしたくなるから!」
イル君「分かりました。(彼はそんな挑発はしてこない……
     と、いうか君に関する話題を一切聞いてくれないと思いますが)」←※この前惚気話を全力で拒否されました。
大一郎「あ、門屋君は大丈夫です。このネタでからかってきた瞬間に土下座させます♪」
イル君「……門屋君に言うと、自動で小二郎君に漏れると思いますけど」
大一郎「じゃあ言わないで!!」
イル君「心配しなくても、誰にも言いませんから」




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【作品番号 BSS31】

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