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ホワイトデー小ネタ(相良&門屋+小二郎)



町で噂の大富豪、廟堂院家。
ホワイトデーの本日、執事の相良直文の元にやってきたのは意外にも……
「相良!」
「お?小二郎……?」
スカイブルーのメイド服を着て笑顔でやってきたのは元執事部隊のメイド、小二郎だ。
無邪気な笑顔で相良に小包を渡す。
「これ、ホワイトデーのお返し!オレとおにぃから!」
「ありがとう」
「ううん!お前のクッキー美味しかったよ!おにぃも喜んでた!オレも、あれくらい作れたらな……」
語尾はもごもごと口ごもり気味になる小二郎を元気づけるように相良が言う。
「で、お前は鷹森から何かもらったのか?」
「う、うん……絢音、可愛いハンカチくれた……」
「良かったじゃん!……ん?“絢音”?」
「あ!!」
瞬時に真っ赤になって“しまった!”と言わんばかりに目を見開く小二郎。
あまりにも分かりやすくて相良は笑うしかない。
「なるほど……お前ら、順調ってワケだな」
「うん……」
「羨ましい」
思わず本音を呟きつつ、相良も愛しい相手を思い浮かべてみる。
未だに苗字呼びを貫いてきて、キスさえ慣れてくれず、2,3分の説得を要する照れ屋(しかも照れ方が生意気)な恋人は
大方、“ホワイトデー”なんて覚えておらず仲間たちと楽しく過ごしていそうだ。
小二郎の方は、相良のその言葉を深い意味には受け取らなかったようで、こう聞き返してきた。
「相良は誰かと付き合ったりしないの?」
「付き合うっても……ここ、男ばっかりだし。出会いも無からな」
「そっか……執事部隊の中で付き合ってるヤツの噂とか聞くけど、相良はやっぱり女の子が好きなのか……
普通はそうだよな」
「どうだろう……?」
ここは“そうだ”と答えておけば無難なのに、どういうわけだか違う言葉を選んでいた。
相良は小二郎から顔を逸らして呟く。
「きっと、本当に好きな人ができたら、性別なんて簡単に踏み越えちゃうんだろうな……俺は」
なんて。言ってみてから自嘲気味な自分自身の声が聞こえる。
(生まれてこの方、男ばっかり好きになってるくせに何カッコつけてんだか……)
恥ずかしくなった相良は慌てて小二郎に付け足した。
「って、独り者がカッコつけても意味ないんだけど!」
「お前はそれでカッコつくからいいよ」
「はは……お褒めに預かり光栄です」
呆れ気味というか、困り顔の小二郎を見て、ますます恥ずかしくなった相良。
けれど小二郎はすぐに可愛らしい笑顔になってくれた。
「いいよな、相良に好きになってもらえる人は幸せそう!大切にしてもらえそうだもん!」
「そんな事言ったら鷹森が泣くぞ?」
「おっ、オレも絢音に大切にしてもらってるし、幸せだもん!!」
「あーはいはいごちそう様です。余計な事言うんじゃなかったわー」
「相良!もうバカ!からかうな!!」
「ごめんごめん」
真っ赤な顔で怒っている小二郎は、相良からすれば“妹”みたいなもので微笑ましいけれど、
あまり長い事話し込んでいるわけにもいかないので軽く頭を撫でながらこう言った。
「でもお前、そろそろ戻らないとサボりって事でお仕置きされるぞ?俺に」
「!!」
「あれ?逃げなくていいのか?」
「ご、ごめんなさい戻ります!!」
大慌てで戻っていく小二郎を、やっぱり微笑ましく思って笑顔になってしまう相良。
けれど、その後はふっと寂しさが襲う。
(準はマジでホワイトデー忘れてるんだろうか……)
それなら、それでお仕置きしてやりたい……相良の中にじれったい怒りが込み上げる。
(もし、もし……準がホワイトデーのプレゼントをくれたら……)
頭の中で思い描く。
ホワイトデーのプレゼントを持ってきてくれた愛しい恋人。

『相良、これ、ホワイトデーのお返し!ありがとな!』
たくさんキャンディーの入った可愛らしい容器を差し出して、笑顔でそう言ってくれる……
いや、間違ってもこんな風に素直な言葉は言ってくれないだろうけど。
でも自分はこう返したい。
『ありがとうございますリーダー。食べてもいいですか?』
『今か?怒られないかな?一個だけな?』
『ええ……』
適当に一つ口に放り込んで、こう聞きたい。
『リーダーも食べます?』
『うん。俺も……』
そう言って手を伸ばしてきたのを強引に取って無理やりキスしたい。
そして自分のキャンディーを口移しすると見せかけて奪ってを繰り返してキスしながら二人で味わいたい。
キャンディーの容器が落ちて、床に転がりまくる他のキャンディーは気にせず
恋人を壁に押し付けて無茶苦茶にキスしたい。
『ぁ……ふぁっ、なお……ふみ……!!』
ものすごく色っぽい涙目で下の名前で呼んでほしい。
むずがって身を捩るのを押さえ込んで甘い汁ばかり吸いたい。
『だめっ……んっ……誰かに見られぅ……』
『いいじゃ、ないですか……!俺はね、本当はアンタが……っ、俺の恋人だってこと……
皆に自慢したくて堪らないんですよ!!』
チュパチュパいわせながらこんな事とか言いたい。言ってしまいたい。
……本当に、屋敷の中でこんな事したら別れられるだろうけど……。
相良はため息をつく。
(何だこの酷い妄想……)

そう思った時だった。

「相良!」
「!!」
妄想ではなく現実に現れた恋人。
たくさんキャンディーの入った可愛らしい容器を差し出してくる。
真っ赤な顔をしながら。
「この前の、ケーキのお礼だよ!ま、まぁ素人にしては上手かったんじゃね!?
えっと……その、だから、ありがとう……」
(これって……正夢……いや、正妄想……?)
相良はドキドキしながらこう返してみた。
「ありがとうございますリーダー……。あの、食べてもいいですか?」
「えー今かよ!?怒られるぞ?後にしとけよ」
「……そうですよね」
現実の厳しさを知ってガッカリしながら諦めた相良。
門屋は嬉しそうに笑う。
「ったく、飴一つで喜んで食べたがるなんて、お前もガキだなぁ♪」
(どっちがガキだか教えてやりたい……!!)
門屋の言葉にカチンときて、
一瞬さっきの妄想がフラッシュバックしたけれどぐっと耐える。
どうせ、“食べてもいい”と言われたとしても、あの妄想通りの事なんてできなかっただろう。
その代わり仕返しに……
「今夜、貴方の部屋に行っていいですか?」
「は!?え!?あ、いや……き、来たきゃ来れば!?」
明らかに挙動不審になる恋人に、相良はにっこり笑って言う。
「飴よりいいものくださいね?」
「何言ってんだよ変態!!」
「ちょっとー言いがかりはよしてくださいよ……何勝手に変な想像してるんですかリーダー?」
あくまで困った顔で言ったつもりだ。
でも我慢できずにニヤけてしまったのかもしれない。
門屋に思いっきり足を蹴られたから。

けれど、この仕返しはなかなか効果があったらしく
真っ赤になりながら自分を罵倒してくる恋人を、やっぱり可愛いなと思ってしまう相良だった。




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