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執事部隊の料理勝負




『さぁ!やって参りました第1回執事部隊対抗“料理対決”!
今日は暇なので皆でお料理対決でもしようぜ、ってことでね!
司会はわたくし、執事部隊の人間国宝!門屋準がお送りしま〜す!
……はーい!何ボサっとしてるんですか〜〜皆さん?
ここで盛大な拍手ですよ〜〜?』
司会が言うと、会場から思い出したように盛大な拍手が沸き起こった。
あまり大きくは無い部屋で、20人くらいの観客がいる。
全員執事部隊で今日暇で、モノ好きの青年達(私服姿)である。
『ではでは、ここで選手の紹介をいたしましょう。
相良直文選手・鷹森絢音選手・上倉大一郎選手・出雲入選手です!
この4人にはそれぞれ1人ずつ、自由に料理を作っていただきます!
そして単純に手料理の美味しさを競っていただきましょうね!』
それぞれ紹介された選手が頭を下げて、会場からは拍手が沸き起ったり応援うちわが上がったりしていた。
『審査員は執事部隊中堅どころの、お腹が減っている4人の皆さん!
全員、趣味は妄想です!あぁ、あと……スペシャルゲストで小二郎が来てくれました!』
ここで、拍手と“小二郎ちゃーん!!”コールと、“LOVE小二郎”の
うちわや横断幕が上がっていた。それをまた司会が宥める。
『はいはーい!CADの皆さんは気持ちは分かるけど落ち着いて―!
審査員の方は1人持ち点10点で、手元のスイッチを押して得点を入れて下さい。
1回押すと1点入る連打方式ですので、入れたい得点分だけ押して下さいね。
思わず連打したくなる大きめのスイッチですが、10点以上は入りません!
あ、ちなみに小二郎はゲストなので、得点を持っていません。
俺は持っていましたが、あらかじめ鷹森選手以外に3点ずつ入れて、残り1点は
ゴミ箱に捨てておきました〜〜!』
「ええっ!?」
『鷹森選手黙って下さ〜〜い!さぁ!サクッと料理の方いきましょう!
どんな料理が出てくるか、楽しみですね!』

【1人目・相良直文】

相良が料理を始めてしばらくすると、審査員席がざわめき始める。
「お、おい……お前、見ててどう思う?」
「どっ……どうって……アイツ料理してるトコめちゃめちゃカッコいいぞ?!
付き合ってる彼氏に家来てアレされたら一発で惚れ直すぞ!?」
「そして今度は両親がいない時に呼ぶぞ?!」
「どうしよう!彼が料理できるって知らなかった!!カッコいい!!ってなるぞ!?」
審査員が相良の意外な一面に驚いているところ、司会はブチギレていた。
『お前何でいちいちカッコイイの!?カッコつけなの!?ふざけんなよ!俺の3点返せよ!!』
「いや、別にカッコつけてませんって……っていうか、彼氏って何ですか……」
相良が審査員の妄想と門屋のいちゃもんに困った顔をする。
すると、小二郎が最大の爆弾発言を……
「相良……なんか今日カッコいいな……」
ガタガタガタッ!!
急に観客席のCADメンバーが立ち上がった。
「おい今の誰か録音したか!?」
「音声班!音声は――ん!至急今の音源の“相良”の部分を
完璧に消した上で着ボイスに――ッ!!」
「俺、目覚まし時計にしよっと♪」
『CAD黙れッ!!あと相良お前、後で全力でしばくからな!?』
騒ぐCADと怒り狂う司会。そして、密かに落ち込む鷹森。
それにため息をつきながら相良は料理を無事終えた。

出来上がったのはやっぱりカッコ良さ気なトマトの冷静パスタ。
トマトの赤と飾りバジルの緑のコントラストがオシャレである。
もちろん味は「美味しい」と高評価。

得点も高評価の35点……イメージ票も少し入っていそうではある。
門屋の3点は奪われてゴミ箱に捨てられた。

【2人目・鷹森絢音】

調理姿と料理がカッコいいと好評だった相良の後なので
(そして小二郎の“相良カッコイイ”発言で落ち込んだ後なので)
鷹森は自信無さ気にぺこりと頭を下げる。
「あ、あの……相良さんみたいに上手くできるか分からないけど、
頑張りますっ!よろしくお願いします!」
ガコッ!ガコガコ!
『娘の晴れ舞台を見守る父親みたいないい笑顔で得点入れないで下さーい!!
まだ得点入れる時間じゃないです!あと、小二郎は机叩いても得点入らねぇからな!?』
すでにパラパラと得点ボタンを押した審査員+エア得点ボタンを押した小二郎を
宥めつつ、司会は鷹森を怒鳴りつけた。
『鷹森テメェ小細工すんじゃねーよ!3点返せ!!』
「僕もらってないです!!」
と、こんな感じで料理が始まって……
しばらくすると観客席は相良の時とは違った様子でざわめきはじめる。
「あぁっ!ほら、野菜を切る時は“ねこさんの手”だぞ!?」
「大丈夫だお前!ちゃんとできてる!でも、火傷するなよ〜〜?心配だなぁ……」
「ちょっと危なっかしいけど、思ったよりしっかり料理できてるな……。
あの子はできる子なんだよ……」
「こらこら!お前ら心配し過ぎだって!信じてやろうぜ、俺達の……」
『ここは保護者席か!!』
司会の華麗なるツッコミ。
親族席と化した審査員席に見守られ……小二郎にもハラハラしながら見守られ、鷹森は料理を終えた。

出来上がったのは綺麗なオムライス。
味は「意外と美味しい」と高評価。
得点は18点。元々21点だったけれど、理不尽な3点がマイナスされた結果である。
最後に小二郎が真っ赤になりながら
『おっ、オレの為に毎日オムライスをっ……』と口走っていたのは
司会に綺麗に遮られた。そして、小二郎の頭上に伸びてきたクレーンの様なマイクも撤去された。
しかし、ここで司会が一言……
『お前、不器用のくせに、結構まともなもん作れるんだな。石炭みたいなの出してくるかと思ってたけど』
とのコメントに対して鷹森が……
「あ、はい。僕……小さい頃にお母さんが病気だった時、
少しだけご飯作ってたので、簡単な料理だけはできるんです……」
と、恥ずかしそうにはにかんだところ……
ガコガコッ!ガコガコッ!ガコガコガガガコッ!!
『こらぁぁぁっ!連打し過ぎですよ!同情票は無効です――――っ!!
小二郎は机叩くなって言ってんだろ――――!!』
と、司会が注意するほど勢いよく得点が跳ね上がって
37点になってしまった。きっと後で調整される。

【3人目・上倉大一郎】

料理する前から
『さぁ!皆さんお待ちかね……
優勝候補の上倉選手です!どんな華麗な料理が飛び出すのか!!』
と、司会に持ち上げられ、審査員席や観客席から期待の眼差しを向けられていた上倉。
いつもの爽やかな笑顔でギャラリーに答える。
「あまり大したものは作れませんよ?あぁでも……デザートはわ・た・し・を食べ……」
『得点がマイナスになる前に早く始めてください!!』
司会に遮られて上倉は料理を始める。
料理が始まって、審査員席の温度がだんだん落ち着いてくる。
上倉は本当に手際よく料理をしているのだが……
「……あれ、ってさぁ……」
「うん。たぶん……」
「普通に……」
「……だよなぁ?」
と、審査員席が首をかしげ合う予感的中で、
出来上がったのは一般的な、お家で作る様なハンバーグ。
味も……
「うん。美味しいけど普通だな」
「まぁ……手作りっぽい味だけど……」
「ソースはちょっと甘めか?」
「……美味しい事は美味しいけどなぁ……」
最初のハードルが高かっただけに、拍子抜け気味になる審査員席。
そんな中……
「おいしい!!」
と、いう小二郎の一言が場の空気を変える。
小二郎は、本当に嬉しそうなキラキラした笑顔で言うのだ。
「昔とおんなじ味だ!おにぃのハンバーグだぁいすき!!」
「そっか……いっぱい食べな?」
『「「「「!!?」」」」』
上倉が、小二郎に微笑みかけるその愛情あふれる笑顔に会場が震撼する。
司会が息を飲んで、恐る恐る声を出す。
『な、何でしょう……まるで清らかな人物であるかのような上倉選手の笑顔……
会場はざわめいております!!』
「……私が清らかな人物じゃないって言いたいんですか?
失礼な……否定はしません♪」
そうおどけてみせた上倉だが、その後急に切なげな表情で静かに言う。
「うちは父を亡くして……母は働いていたもので、食事は私が作っていたんです。
料理にあまり興味は無かったのですが、小二郎の好物だけは頑張って覚えましたよ」
ガコガコッ!ガコガコッ!ガコガコガガガコッ!!
ドスドスッ!ドスッ!
『だから同情票は入りませんってば!!号泣しながら連打しないで下さい!!
拳で連打やめてください!こ、小二郎!ハンカチ貸してやるから涙拭けって!
(うぅ〜〜っ!でも俺も泣きそう!!)』
司会の叫びでやっと連打は止まる。

得点は涙涙の43点満点。たぶん後で調整が入るだろうと予想される。

【4人目・出雲入】

この空気の中、イル君はぺこっと黙礼をして淡々と料理を始める。
手際良く料理をする姿に、審査員席ではヒソヒソと会話が飛び交う。
「どんな料理でくるか全く想像できないよな?けど……割烹着は新鮮でいいな……」
「きっと頭の中には世界中の料理のレシピが完璧に
インプットされていて……しかし立ち姿は純和風ッ!!」
「イル君ってさ、女にしたら貞淑な和風妻って感じだよな?
こう……夫から3歩下がって歩く、みたいな」
「喋らないからな、ミステリアスさが……東洋の神秘??
や、ヤバい!!割烹着からミステリアスな色香が……!」
『はいはいはいはいッ!審査員席は危ない妄想やめてくださ――い!』
と、司会が宥めても審査員席は謎の興奮に包まれていた。
そして……

それは、出来上がったお味噌汁を審査員が味わった瞬間に爆発する。
「イル子さん!私と結婚して下さい!!」
「俺の為に毎日美味しいみそ汁を作って下さいイル子さん!!」
「貴女を幸せにするぞイル子さ――――んッ!!」
「イル子さん!もう僕には貴女しか考えられないッ!!」
『おいぃぃぃぃっ!!審査員席暴走す……』
司会が暴走を止めようとすると、上倉がマイクを奪った。
『イル子さんと結婚もいいでしょう!しかし!貴方達の奥さんは……』
そこでもったいつけるように黙り、そしてカッと目を見開いて上倉は言う。
『富豪の息子の首輪付きですよ?』
「なっ、何だって……まさかの寝取られ属性!?」
「くそぅっ、ありだ!その昼ドラ展開は全然ありだ!」
「イル子……!!僕が必ず君を助け出す……!それまで、どうか貞操は守って!!」
「あぁぁっ、うちが貧乏なばっかりにイル子が若い金持ちの愛人に〜〜っ!!」
上倉の注いだ油でますますヒートアップする審査員席。
司会が慌ててマイクを奪いかえして叫ぶ。
『落ち着けよ審査員席!イル子って何だよ!?イル君は男だ!!
もう!兄さんが変に煽るから!イル君も何か言い返していいですよ!?』
イル君はそう振られ、パッと目を見開いて驚いた後、
頬を染めて恥ずかしそうに視線を落とし……
「ご、ごめんなさいアナタ……
体は千早様に持っていかれたけれど、心はアナタの傍にいるから……」
「「「「イル子ぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
『変なノリの良さを発揮するんじゃねぇぇェェッ!!』
審査員席の雄叫びと、司会のツッコミでこの茶番は終幕した。
ちなみに、審査員の(×おじさん ○お兄さん)方がうるさかったので、
実は小二郎が薔薇色の頬で「イル子!イル子!」と興奮していたのは誰も気づかなかった。

点数は43点満点。
妄想爆発した審査員席の結果である。これも後で調整されそうだ。

こうして、何だか相良が可哀想な展開で終わったこの料理対決だが、
公平に点数を調整したところ、優勝者は……相良だった。
そしてこの結果に、司会がまたブチギレていた。
『何でお前が優勝してんの!?くそっ……カッコいいところばっかり見せやがってぇぇぇッ!!』
「……司会の仕事して下さいよリーダー……」
『う、ぐぐぐ……優勝者は相良!景品は無し!終わり!全員解散!』
「適当だなぁ」
相良が苦笑して、観客や審査員は「面白かった―!」と、ぞろぞろと帰っていく。
そんな中、上倉がニコニコしながら鷹森を引きつれて、相良に声をかけた。
「相良君!優勝おめでとうございます!」
「おめでとうございます相良さん!」
「あぁ、どうも……」
目を丸くしている相良に、上倉が鷹森の体を相良に近付けながら言う。
「景品なしってのも寂しいでしょう?だから“鷹森君をお仕置きする権利”をあげようと思って!」
「えっ!?え!?」
「今週はたくさん反省する事がありましたよね?鷹森君?」
「う……ぁ……」
最初は上倉の発言に驚いていた鷹森も、身に覚えがあるのかしおしおと俯いてしまった。
相良は気の毒そうに鷹森を見て、上倉に言う。
「鷹森が……俺じゃ嫌がってません?」
「そっ、そんな事ないですっ!!」
「え!?鷹森って相良が好きだったのか!じゃあお前ら付き合えよ!」
と、嬉しそうに言いながら輪に入ってきた門屋の耳を思いっきり引っ張る相良。
「リーダーは、上倉さんにお仕置きされた方がいいですね!」
「痛い!なっ、何怒ってんだよお前!?俺は別にお仕置きされる様な事してねぇし!」
「そうですか?じゃあ、これからの分でもお仕置きされとけばいいんじゃないですか?」
相良は門屋を冷ややかに睨みつけ、鷹森の手を引いてさっさと歩いて行ってしまった。


空き部屋に鷹森を引っ張りこんできて、手を離して振り返ると
鷹森が涙目になって手首を握っていたので、
無意識に強く引っ張ってきたんだと申し訳ない気分になった相良。
「ごめんな。無理に引っ張って……」
「い、いえ!平気です!」
慌てて顔を上げて手首から手を離す鷹森に思わず笑ってしまった。
「お前何したの?」
「え……あ……いっ、命だけは助けて下さい!」
「そんな大それた事したの!?と、とにかく言ってみろよ……」
「うぅっ……その、あのぉ……」
涙目でオロオロしている鷹森は、なかなか罪状を言おうとしない。
なので、相良はベッドまで無理やり引っ張っていって強引に膝に乗せてしまった。
小さく跳ねて膝に倒れ込みながら、鷹森は涙声で謝っていた。
「あぁっ!ごめんなさい相良さん!!」
「何したか言ってくれないと、許すに許せないけど?」
「あの、あの……どうか、怒らないで聞いて下さいね……」
相良はじれったく思いながら、鷹森のズボンや下着を脱がす。
「で?何したの?」
苛立った言い方になってしまったのを少し後悔した。
怯えたらしい鷹森が「うっ……!」と声を詰まらせてしまったから。
けれども、このままでは埒が明かないので相良は鷹森のお尻を思いっきり打った。
パァンッ!!
「うぁっ!!」
「ごめんなぁ鷹森?上倉さんなら気長に待ってくれるかもしれないけど、
俺、どっちかというとリーダーに……門屋に近い人種だぜ?
さっさと話してくれないと怒るかも」
半分脅しで半分は本音。でそう言うと、鷹森が慌てた声で答えた。
「ごっ、ごめんなさい!!僕っ、仕事中に小二郎君と……
ちょっと、話しこんじゃって……!そういう事が、何回かあって、その……
上倉さんが怒ってたんだと、思い……ます……」
「……ああ」
相良は気の抜けた声になってしまった。
あんなに言い渋るから何事かと思ったら、あまり大したことでは無かった。
と、結論付けてから相良は思い直す。
(いや……CADのメンバーとしてみたら、大事か……)
他のメンバーなら嫉妬が入って厳しくなってしまっても仕方がない理由。
だからこそ、鷹森もなかなか言わなかったのだろう。
「そうだな……(俺はそんなに小二郎に執着は無いしな……)」
相良はどう反応しようかと迷って……
「とりあえず……死刑な?」
「うわぁああああん!!」
「大丈夫。優しいコース」
「や、優しい死刑って何ですか!?じわじわ苦しむのは嫌です!!
せめてひと思いにやってください――――!!」
(まぁ、こんなところか……)
CADのメンバーとしてはなかなかの反応が取れただろう。
後は普通にお仕置きしようと、相良は再び手を振り下ろす。
パン!パン!パン!
「ひゃぁっ!相良さん!相良さぁぁん!」
「お前あんまり暴れないから楽だわ」
「んっ、ぁあっ、暴れた方がいいですか!?」
「ケンカ売ってる?」
そんなつもりはないと知っているけど、あえて聞いてみる相良。
「ひぇぇっ!!ごっ、ごめんなさい違います!!あぁんっ!」
面白いほど過剰反応の鷹森に笑いそうになりながらそれを堪えた。
「じゃあ、そのままじっとしてろよ?」
と、声をかければ鷹森はコクコクと首だけ動かして頷いた。
そして、言いつけどおり必死でじっとしようと頑張っている。
(これはちょっと感動するな……!)
暴れてこない。悪口が聞こえてこない。自分の言う事を聞いてくれる。
抵抗慣れしている相良からすれば感動的な出来事だった。
そのまま、スムーズにお仕置きを続けて行く。
パン!パン!パン!
「ひっ、あぁっ!ご、ごめっ、なさい!」
「そうだな。サボりなんて」
「うっ、くっ……ぁぁあ!!」
「お前は年下なんだから、たくさん働いて色々覚えないと」
「はっ、はい!ごめんなさい!!ひぅっ……!」
パン!パン!パン!
大した抵抗も無いのでお尻はどんどん叩ける。
そしてだんだん赤くなってくる。
自分の言う事は飲みこむように素直に聞いてくれる。
「反省したか?」
「はっ、はい!!」
「もうしないな?」
「うぅ、もうしません!」
(……もうこの流れまで来たぞ?終わってよくね?)
体感的にはいつもの半分くらいの労力で終盤の流れまで来てしまった相良。
終わっていいものかと迷いながらお尻を叩き続ける。
「んっ、んんっ……!相良さん……!許して下さい!もう、しませんから!」
(もう、いいかな?)
苦しそうな吐息と、真っ赤なお尻が可哀想になって相良は
手を止めて鷹森を膝から下ろしてみる。
「ほら、これからはちゃんと仕事しろよ?」
「あ……!」
顔を上げさせると、鷹森は驚いたように相良を見て……
「ありがとうございます!相良さんって優しいんですね!」
と、とても可愛らしい笑顔で言ってくれた。
それを見た相良は……
乱暴に鷹森の体を掴んで再び鷹森を膝に乗せた。
「ぅぇえええっ!?さ、相良さん!?」
「ごめんな。足りなかったな」
「そんな事なっ……」
バシィッ!
「っあぁああっ!」
さっきまでより強めに叩くと、鷹森は大げさに跳ねる。
けれど、相良はそのままの強さで叩き続けた。
鷹森が全然反省していなさそうだと思ったからだ。
ビシッ!バシッ!バシッ!
「あぁあっ!やだぁっ!ごめんなさい!」
「“優しい”って、普段はもっと叩かれてるって事だろ?何あのいい笑顔?俺ナメられた?」
相良はあえて鷹森が怯えそうな凄み方をした。
効果はやっぱり面白いほど表れて、鷹森は怯えたような涙声を出す。
「ちっ、違います!!やぁぁっ!許して下さいナメてません――――!!」
「あんな顔してるようじゃ、絶対またやるって。
そういや、何回もサボったんだっけ?怒られたのにサボったって事か?」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!」
「へぇ、お前大人しい顔して結構図太いんだ〜〜……?」
ビシッ!バシッ!バシッ!
「わぁあああん!やだぁっ!やだぁぁあっ!ごめんなさい!」
痛みが限界に来たのか、鷹森は目に見えて抵抗しだした。
真っ赤なお尻が逃げようともがいているけれど、相良にとっては簡単に押さえつけられる程度の抵抗だ。
相良はわざと大声で鷹森を怒鳴りつける。
「ふざけんなよ!上倉さんもそうやって大人しいフリして騙してんじゃねぇだろうな!?」
「うわぁああああん!!」
鷹森は大泣してしまった。
それでも相良は赤いお尻を強めに叩き続ける。
ビシッ!バシッ!バシッ!
「ごっ、ごめんなさぁぁぁい!騙してません!本当に反省してますぅぅぅっ!
もうしません!もうさぼりませんからぁぁぁぁっ!!」
ビシッ!バシッ!バシッ!
「わぁぁあああん!やだぁぁっ!痛いですごめんなさいぃぃっ!」
「まだ“優しい”なんて思われてたら、お前またサボるだろ!?
とことん痛めつけて先輩の恐ろしさ覚えさせてやるよ!」
「やっ……やだぁぁあっ!もう十分怖いです!反省しましたぁぁっ!怖いぃッ!!」
鷹森が手足でもがいて、泣き叫ぶ。
完全に赤に染まったお尻と合わせて見てみると可哀想になってきた相良。
(こんだけビビらせれば大丈夫かな……)
「うわぁあああん!ごめんなさい!もうしません――――!!わぁぁぁあああん!
うぅっ、えっ……あぁあああん!!」
(ものすごく泣いてるしな……)
最後、手を乗せるようにピシッと叩いて、相良は鷹森を膝から下ろす。
「反省したか?」
「うっ……しましたぁ……!っ、ごめんなさい……!」
頬を赤くして、ボロボロ泣きながら何度も頷く鷹森。
今度こそ反省していそうなので、相良はそっと彼の頭を撫でた。
「じゃあもういいから。な?泣くな」
「はいっ!ごっ、ごめんなさっ……!!」
「あー……違うか、逆だな……」
相良は鷹森をガバッと自分の方に引き寄せて抱き締めて。
「あ……」
「ほら、泣けよ」
「うっ……うわぁあああああああっ!!」
再び大泣きし出した鷹森をずっと抱きしめてあげていた。

そして鷹森を落ち着かせて部屋に送った帰り。
相良は後ろから声をかけられた。
「相良!」
振り返るとそこにいたのは門屋。
相良は先ほどの事もあり、むすっとした顔で答える。
「何ですか?」
「悪かったよ……お前、なんか怒ってたからさ……」
門屋は照れと不機嫌の中間のような表情で視線を逸らしながら謝ってくる。
相良はため息をついた。言っても無駄だと思いつつ、不満を言ってみる。
「少しは俺の気持ち、考えたらどうなんです……」
「だから、悪かったってば!鷹森なんかと付き合いたくないよな?
冗談でも言い過ぎたよ。俺も、アイツと付き合うのなんかヤダし……」
(ダメだこの人……)
相良はますます気分が沈みつつも、投げやりに言った。
「鷹森、素直で可愛いヤツですよ。少なくとも、アンタよりは」
「あ?俺が鷹森よりダメって事かよ!?」
「ダメダメですね」
相良がさっさと歩きだすと、門屋はまたギャーギャー騒ぎながら追いかけてくる。
(何でこんな奴を好きになったんだろう……俺……)
相良はまた小さくため息をついた。




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【作品番号 BSS18】

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