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ホテルで一泊しました



お早うございます!廟堂院家執事部隊の鷹森絢音です!
本日12月25日……僕は、休暇を利用して小二郎君と遊びに出掛ける事になっています!
あああどうしよう!?クリスマスに二人っきりで出かけるなんて、デートみたいだ!!
ででででも、僕らまだ恋人とかそういうのじゃないし、ダメダメ、自惚れはダメだよ僕!
今は朝の10時。執事寮の小二郎君の部屋まで迎えに来たんだけど……緊張する!
いや、今日はカッコ良く小二郎君をエスコートするって決めたんだ!!最初が肝心!
僕は思い切ってドアをノックする。
コンコン
「こ、小二郎君!迎えにきたよ!」
「たっ、鷹森!?ちょっと待って!」
慌てたような小二郎君の声。しまった!まだ準備中かな!?
約束の時間ジャストに来たらまずかったかな!?5分くらい余裕を……
僕も慌てたら小二郎君がドアから顔だけ覗かせた。
「ご、ごめん!まだ準備中だった!?」
僕の言葉に小二郎君は首を振る。
「ううん。準備は一時間前からできてた……笑わない?」
「え!?あ、うん……?」
いきなり“笑わない?”なんて聞かれたから、何の事だか分からなくてとりあえず頷く。
そしたら小二郎君がドアを開けてくれた。
「きょっ、今日は誘ってくれてありがとう……」
「…………」
僕は小二郎君の姿に絶句した。
彼女はふわふわした白の長袖に、裾にレースの付いた明るいブラウンのチェック柄ミニスカートを穿いている。
それで、髪を下ろしてふわふわのついたカチューシャをしているもんだから完全なる女の子スタイル。
本当に見惚れるくらい可愛くて言葉が出なかった。
それがいけなかったのか、小二郎君は顔を真っ赤にして部屋の中に向かって叫ぶ。
「ほらぁっ!だからオレにこんなの似合わないって言ったじゃん!!
た、鷹森ごめん!こんなもん見せて本当にごめん!やっぱ……っ、着替えてくる!」
「ま、待って小二郎君!」
とっさにスカートを翻して部屋に戻ろうとした小二郎君の手を取った。
「似合ってる……すごく、可愛いから声が出なくて……。僕は、あの……そのままで、いてほしいな……」
恥ずかしくてスラスラ言えなかったけど、そう言った。本心だから。そしたら小二郎君はますます赤くなった。
「鷹森……」
小二郎君が僕を見つめてくる……ああ、今日の小二郎君可愛いからいつも以上にドキドキだよ!!
思わず、1歩、2歩と小二郎君に近付いたら……
「な〜〜真由?俺の言った通りだろ?」
「うわぁっ!?」
奥から急に上倉さんが出てきたもんだから、僕はビックリして声を上げちゃった。
いつもの執事服を着た上倉さんは僕の反応を気にするようでもなく笑顔だったけど。
「おはようございます鷹森君。今日は真由がお世話になります」
「おはっ、お早うございます!こ、小二郎君……いえ、真由ちゃんの事は僕が責任を持って……」
「責任を取るだなんて何と頼もしい!いやぁ〜、そう言ってくれると思って貴方達の為に
素敵なクリスマスプレゼントを用意したんですよ?はい、これ」
「えっ!?そんなわざわざ……すいません!」
ペコぺコしながら、僕は渡された細長い紙切れ見てみると……
『プレミアムホテルディナーつきペア宿泊券』……ええええっ!?
「宿泊?!ホテル泊まれるの!?すっげー!おにぃありがとう!」
「どういたしまして。ディナー付きだから、美味しいご飯も食べれるぞ〜〜?」
「やった!おにぃ大好き!」
小二郎君が無邪気な声で喜んでいる。
ま、待って……ペア宿泊!?二人っきりでしゅくはく!?確かに僕は明日も休みだけど!!
「かかか上倉さん!!僕、外泊届出してないんですけど!?」
「大丈夫。寮長には私から話しておきますから」
「あ……ありがとうございます……」
……じゃなくて!!僕は『小二郎君と一泊なんて心の準備が!』とか
『妹が男と一晩明かすのはお兄さん的にOKなんですか!?』とか色々言いたかったんだけど
上倉さんがサクサク話を進めていくよ!
「そうそう。これもプレゼントです。ホテルで2人で見てくださいね?」
「わぁ!カラフルレンジャーのDVDだ――!おにぃ本当にありがとう!!」
す、すでにホテルに泊まる事が決定事項に……けれどここで、僕はピンときた。
(ハッ!ホテルで見るのに、ムード盛り上げ要素の少ない『カラフルレンジャー』のDVDを渡すって事は……
きっと『妹に変なマネするなよ?』っていう上倉さんからの隠されたメッセージだ!!
ホテルだって、クリスマスに小二郎君が友達と長く過ごせるようにっていう兄心……さすが優しい!
分かりました上倉さん!小二郎君に不埒なマネはしませんからご安心を!!)
僕はそう誓って上倉さんを見た。僕と目が合った上倉さんはちょこちょこと寄ってきて……
「真由は子供っぽくて困ってしまいますね。あんなにはしゃいで。
けれど鷹森君は大人ですから、クリスマスにホテルに2人っきりで泊まるという意味は……十分承知ですよねぇ?」
(あれぇぇぇ!?逆にプレッシャー!?そもそも僕は告白もまだなんですけど!?)
僕は混乱して、返事は笑う事しかできなかった……ど、どうすればいいの今日……?
分からないまま出発の時。
「鷹森君、真由の事よろしくお願いしますね?色々と」
「は、はい!(色々!?)」
「真由はハンカチとティッシュ持ったか?車に気を付けて、ちゃんと鷹森君の言う事聞くんだぞ?」
「うん!分かった!」
「それでは……」
上倉さんは急にピッと姿勢を正して……
「絢音様、真由様、どうぞお気を付けていってらっしゃいませ」
完璧に綺麗なお辞儀で、見事な執事スタイルでお見送りしてくれた。
「か、上倉さん……!ありがとうございます!行ってきます!」
「あはははっ!おにぃありがと!行ってきます!」
僕は感激、小二郎君は大喜びで出発したのだった。


それで……その後は、新しくできたショッピングモールを探検しようって事で
ぶらぶら色々な物を見て回って、お互いのクリスマスプレゼントを買ったりして楽しかった。本当に楽しかったんだ。
そう、楽しい時間はあっという間。
そしてついに時が来てしまった……『プレミアムホテル』に来てしまった!!

“ディナー”は美味しかった!ホテルの最上階で食べる感じになってたんだけど
店内はほど良くオシャレで居づらい雰囲気でもなくて、それでコース料理!
でも何が出てきたとか何を話したかとか全く覚えてなくて……とにかく今部屋にいるよ!
部屋も広くて綺麗だよ!でも大きなベッドが一つだよ!!
(落ち着け落ち着け落ち着け……とにかく僕はソファーで寝て……)
小二郎君は嬉しそうにベッドに座って飛び跳ねている。ベッドの柔らかさを実感してるんだきっと……!
「なぁ鷹森!おにぃにもらったカラフルレンジャーのDVD見よ?」
「そうだね!それナイス!小二郎君ナイス!」
なんでこんなに返事が威勢いいの!?テンパり過ぎだよ僕!!
でも、カラフルレンジャーを見れば落ち着くかもしれない!
そう考えると少し安心して、それでもドキドキしてるけどとにかく、小二郎君からDVDを受け取ってデッキに入れたんだ。
そしてDVDが始まった。僕らは並んでベッドに腰掛けながらそれを見た。
何故か出てきたタイトルテロップは『純情なる秘蜜』。
え?サブタイトル?メインタイトルは?
何故か開始5分ほどでいい雰囲気になる男女。
え?男の人が赤レンジャーで女の人がピンクレンジャー?確かに二人が恋人の設定はあったけど……
何故か赤レンジャーとピンクレンジャーが即ベッドイン。
え?これ子供向け……
何故か喘ぎ絡み合う赤レンジャーとピンクレンジャー。モザイクだらけの大胆なカメラワーク。
え?何これぇぇぇぇっ!!?
「「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」」
僕と小二郎君の悲鳴が共鳴する。
小二郎君は画面から顔を背けるようにベッドに突っ伏して、僕は大慌てでリモコンを取って画面を消す。
「カラフルレンジャーと違うじゃん!おにぃバッカじゃねーのッ!?」
「そうだよ!この間違いは許せないよ!帰ったら即刻抗議すべきだッ!!」
二人して思いっきり動揺してしまった。無音の空間が気まずい!!
僕は恐る恐る小二郎君を見る。
「こ、小二郎君……」
「こっち見るな!!」
「ごめん!!」
ベッドに突っ伏したままの小二郎君から慌てて顔を背ける。
あああ参った。顔が熱いすっごく熱い。でもやっぱり、ここは僕がしっかりしなきゃ……!
『見るな』って言われたけれど、そ〜っと小二郎君を見た。まだ突っ伏したままだ。
「こ、この部屋暑いね……な、何か飲む?冷蔵庫があるから、きっと中に何かジュースが入ってるよ……」
「だ……ダメ……オレ起きられない……」
小二郎君の声は震えていた。手がぎゅっとシーツを握っている。
さっきの映像がよっぽどショックだったんだ。た、助けてあげないと!
僕は助け起こそうとして小二郎君の体に触れた。その瞬間、小二郎君の体がビクンと跳ねる。
「あ、あの、大丈夫?」
「……鷹森ごめん……オレ、今すっごく変な事考えてる……」
「!!」
心拍数が一気に上がった。
だって今、こんな状況で、か細い声でこんな事言われたら……
『ね、ねぇ、チャンスだよ?このまま覆いかぶさっていいよね?
小二郎君の事好きなんでしょう?上倉さんだって言ってたじゃない……いっちゃいなよ!』
頭の中でオドオドした悪魔が囁く。それについてオドオドした天使が反論してるけど良く聞こえない。
だから僕は、小二郎君に触れる手に力を込めた。
「小二郎君、顔を見せて……」
「あ……」
小二郎君の肩を持って無理やり仰向けにした。
うわぁ、この格好……僕が押し倒したみたいだ……!!
恥ずかしそうに視線を彷徨わせている小二郎君がすごく可愛い!
「鷹森見ないで……!オレ変な事考えてるって言ったじゃん……」
「だ、大丈夫……僕も、変な事考えてる……きっと小二郎君と同じ事……。
だから、その、考えてる事……やろう!」
言っちゃったぁぁぁっ!言っちゃいました上倉さん!
ああ、星空の向こうで上倉さんが親指を立ててウインクしてる!気がする!
僕は心臓が張り裂けそうになりながら小二郎君の返事を待った。
「鷹森……!それじゃあ……」
嬉しそうな小二郎君……これは、いける!?キスも告白もまだだけど一足飛びに小二郎君と……!!
「それじゃあ、オレのケツ、叩いてくれるの……?!」
「エッ!?」
素っ頓狂な声が出た。あれ!?え!?そ……っち!?
僕はきっと呆然としていたんだと思う。小二郎君が不安そうな顔をしたから。
「……違った?鷹森は違う事考えてた?」
「え!?あははっ!そんな、まさか!もちろん、小二郎君のお尻叩いちゃおうかなって思ってたよ!」
「……えへへ」
まぁ、いいや。小二郎君が嬉しそうに笑ってるからいいや。
僕も予習なんてしてなかったし。お尻なら叩いた事あるしね。うん、いいや。
何だか急に心が落ち着いた。じゃあとりあえず……スカートは取っちゃってもいいのかな?
「小二郎君、スカート脱がすね?」
お仕置き……って、これを『お仕置き』と呼んでいいのか微妙だけど、そう思うと服を脱がせるのも恥ずかしくないかな。
でも僕がスカートに手をかけた瞬間、小二郎君が慌てた。
「あ!待って!!」
「え!?」
タイミングが合わなかった。
小二郎君が止める前に僕はスカートを下ろしちゃって、そしたら……
「ごめん……なさい……!!」
両手で顔を覆う小二郎君。原因は可愛らしい苺柄のレース下着を押し上げる突起物。
……もうフルスタンド状態だったんだ小二郎君。こっちまで恥ずかしくなっちゃった。
小二郎君が指の隙間から恐る恐る僕を見ている。
「……怒った?」
「え!?や、別に……あ、いや、ちょっと……怒った、かも……」
本当は、全然怒ってなんか無かったんだけど……
小二郎君の声とか視線が期待してるように感じたから。僕の勘違いかもしれないけど。
でも少しでもお仕置きっぽくした方がいいかと思って、僕も頑張ってみる。
「お仕置きなのに、こんな状態じゃ、あの、ダメだよね?これじゃ、悪い子だよ……」
「うん……オレ、悪い子だから……いっぱい、お仕置きしてね……?」
恥ずかしげにそう言った小二郎君を見て、正直ドキッというよりゾクッとした。
何だろうこの気持ち……分からないけど、分からないけど……小二郎君が可愛過ぎて今すぐお仕置きしたい!!
「小二郎君!!」
「ひゃんっ!?」
普通ならここで小二郎君にダイビングする展開だけど今日は違うんだ。
僕はベッドに座る+小二郎君を膝に乗せるを素早く同時にやっただけ。
何この下着邪魔!!って、苺柄の下着も勢いよく下ろした。今日はどうしたんだろう僕……。
「た、鷹森……!」
「大丈夫!!いっぱいお仕置きしてあげるね!」
何が大丈夫なのかは僕も分からないです!
けど、とにかく僕は小二郎君のお尻に思いっきり平手を叩きつけた。
パァンッ!!
「や、ぁ……!!」
パン!パン!パン!
「んっ、はぁ、ぁあん……!」
(うっ……声が……!!)
小二郎君の声がすごく色っぽい……さっき下着もあんなだったし、やっぱり……興奮してるのかな?
考えてる間にも小二郎君は絶好調で悲鳴を上げている。
「ぁくっ……んっ……ふぁ、ぁ……!!」
(ヤバいヤバいヤバいヤバい……!!)
色っぽい悲鳴を聞いてたら頭がクラクラしてきた……!
顔が火照って思わず目を閉じてヤケみたいに叩く。
ビシ!バシ!バシィッ!!
「あぁんっ!たかもり、痛っ……ひぅぅっ!!」
「あっ、ご……」
『ごめん』って言いかけて引っ込めた。僕が謝ってどうする!
これは形式上『お仕置き』なんだからちゃんとしてあげないと!しっかりしろ鷹森絢音!!
自分を叱咤してゴクリと唾を飲み込む。今まで無言で叩いてるけど、やっぱり何か言った方がいい?
でも何て言ったら……!!し、しかも力加減もどうしよう!?今のはちょっと強かったみたいだけど……
(も、元に戻してあげようかな……最初から飛ばしても辛いだろうし)
パン!パン!パン!
「……ふぅっ、ぁ、やぁ……!!」
力加減を戻したら、緊張が解けたみたいに息を吐く小二郎君。
でも相変わらず声は色っぽいよ……本当のお仕置きをした時と全然違う。
「ね、ねぇ小二郎君……興奮してるの?そんな声出して……」
うわぁぁ!!単純に聞いてみたかっただけなのに、口に出すと何だかイヤらしい言い方になっちゃったよ!!
「うっ、んぅっ……っぅ……!!」
小二郎君が弱弱しく首を振っている……もっと思いっきり振らなきゃ説得力無いよ小二郎君!
「だって、さっき、下着もあんなになっちゃってたし……興奮してるのかなって思って……」
「ぁ、いや……っ、言わないで……ふぁぁ!!」
「(ごめん)だって、き、気になるから……教えてよ……」
パン!パン!パン!
「やっ、そんなっ……そ、な、事っ……!!」
信じてください!僕は純粋に疑問をぶつけてるだけなんです!でも、この会話……
僕がどんどん最低な男になり下がってる気がするッ!!
もう、お尻を叩く音と艶めかしい悲鳴が混じり合って僕何か変な感じになってきちゃった!!
っていうか変な感じになってきちゃったのは僕だけじゃないみたい!!
「ご、ごめんっ、鷹森、オレ……んっ、鷹森にぃ、ケツ叩かれるって思ったら、
すごいっ……、ドキドキして、自分でも押さえられなくって……興奮、してるかも……!ふぁっ!」
「そっ、そっか……興奮、してるんだ……」
小二郎君がすごいカミングアウト始めちゃって、そしたら僕まで興奮してきて……
(ぼ、僕も勃っちゃったらどうしよう……!!)
そんな不安が……不安すぎる!!わ、分かった!これは忘れて小二郎君に集中するんだ!
僕は不安を振り払う様に小二郎君に声をかけた。
「ダメじゃない……お仕置きされてるのに興奮なんてしてたら、い、イケナイ子だね……」
「ごめっ、ごめんなさい……ぁふっ、オレぇぇ……」
「そういう、イケナイ子には、もっと……いっぱい、お仕置きしなくっちゃ……」
僕もっとしっかり喋ればいいのに!声が震えるなら言わなきゃいいのに!
神様許してください!僕は自分でも何でこんな事言いだしてるのか分からないんです!
分からないけどここまできたらやるしかないかなって!!
「い、ぁぁ……鷹森ぃぃ……!!」
小二郎君の声は震えていた。でも、どこか嬉しそうで……少なくとも今の僕にはそう聞こえた。
だからどんどん彼女のお尻を叩いてしまう。
パン!パン!パン!
「んくぅぅっ、ひぁぁっ……あっ、んっ!!」
しきりにモジモジしてる小二郎君のお尻は赤みを帯びていて
見た目には痛そうだけど、小二郎君の反応からは微塵もそんな感じはしない。
むしろ、何て言うか……もっと欲しそう。
(これで勘違いだったらとんでもない事になる……!)
僕今日は変だ!絶対変だ!だって小二郎君が喜んでるとか、物欲しそうとか、そんな見方ばっかり!!
「はぁ、はぁっ、ぁん、はぁ、はぁ……」
小二郎君の吐息が耳をくすぐる。
膝にのしかかってる柔らかい重みとか、呼吸に合わせて上下する滑らかな肌とか、赤いお尻とか、
全部が全部、欲望を刺激すると言うか……
(僕は今、小二郎君をイヤらしい目で見ている……)
漠然とそう感じた瞬間、一気に込み上げてきた。小二郎君のこんな姿が、もっと見たいって本能。
それと全力で土下座したいくらいの情けなさ。
(ごめん!ごめんね小二郎君!エッチな事はしないから!叩くだけ許して!)
気持ちが押さえられなかった。もう何もかもが、我慢の限界!
僕は力いっぱい平手を振り下ろしていた。
ビシ!バシ!バシィッ!!
「あぁあっ!!やぁっ、鷹森ぃっ!!痛いぃ!!」
「(すいませんごめんなさい本当に申し訳ないです!)これくらい、しないと反省しないでしょ?
だ、だって小二郎君はお尻叩かれると興奮しちゃうんだもん」
「ごめんなさい!ごめんなさい鷹森!あぁああんっ!んやぁぁぁっ!」
全力出したら本当に痛がってる小二郎君。
でも僕には分かる。小二郎君は今だって興奮してるんだ。
ビシィッ!バシ!ビシ!
「たっ、たか……やだぁっ、痛い!痛いよぉ!!あはぁああんっ!」
「でもさ、お仕置きして欲しいんでしょ?!もっとたくさん叩いて欲しいんでしょ?!」
「あぁあああっ!!もっとしてぇっ!!」
ああダメだ!僕ってば完全にテンション上がっちゃってる!バッシンバッシン叩いちゃってるよ!
ううう!可哀想なのに止められない!!って、小二郎君がどさくさに紛れて『もっとして』って言ってる!!
小二郎君のお尻、もう熱いんだけど……僕らもヒートアップしています!
ビシ!バシ!ビシ!
「あぁう、ごめんなさぁい!オレぇ、ケツ叩かれるのが好きな悪い子でごめんなさいぃ!
でもぉ、鷹森に叩かれてると、痛いけどドキドキしてぇぇ!!ごめんなさいぁああっ!!」
「ダメだよ許せない!もっと小二郎君を叩いていたいんだ!」
「鷹森っ、んんぅ!!ダメぇそんなにされたらぁっ!!ひゃぁあああんっ!痛いのに気持ちぃぃっ!!」
お互い本音ダダ漏れだよ!でも、僕らものすごく興奮してる!こんなのもアリだと思う!
小二郎君は泣きながら悶えて、そんな姿もすごく可愛いんだもん!
「あぁはぁん鷹森ぃ!やぁああ痛いぃぃっ!ごめんなさいぃうわぁぁああん!」
「君は可愛い!すごく可愛い!」
「あぁああああんっ!ごめんなさぁあああい!やぁああああっ!!」
ビシ!バシ!ビシ!
すでに会話になってないんだけど、いいよもう!!
「やぁあああ!!鷹森ダメぇ!!許してぇ!オレ、オレこれ以上はぁぁぁぁっ!」
「小二郎君、僕は、僕は!!」
お互い、もう興奮の絶頂。限界だった。
きっと僕も小二郎君もわけが分からなくなってたんだと思う。
だから――
「僕は君が好きだ――――――――っ!!」
ビシィィィンッ!!
「あぁあああああんっ!!」
僕の声と小二郎君の声と平手打ちの音と、ほとんど同時だった。
その後は静寂。何故って僕が叩くのを止めたから。止めたって言うか、我に返った。
(うわぁああああっ!!勢いで小二郎君に告白してしまったぁあぁっ!!!)
もう本当に心臓が止まるかと、思ったんだけど……
「うっ、ぇっ……ふぇぇっ……うわぁああああん!!」
「あ……小二郎君!」
小二郎君の泣き声でハッとした。
そうだ、僕の事より小二郎君を……膝から解放して思いっきり抱きしめる。
「痛かったぁぁぁぁっ!!鷹森痛かったぁぁぁ!!」
「ご、ごめんね!!痛かったね!本当、ごめん……僕、君に酷い事……」
「謝るなぁぁっ!!」
小二郎君が必死で首を振る。
「酷くない!ひっく、オレが言いだしたんだもん!ぐすっ、鷹森、悪くないもん!!
それにオレ、痛かったけど本当に気持ち良かったんだ……」
「こ、小二郎君……!!」
胸がキュンとした。
酷く叩いてしまったのに、こんな事言ってくれるなんて何て優しいんだ小二郎君……!
思わずそっと、彼女を抱きしめる。
「ありがとう小二郎君……」
「うっ、うん……」
僕らは静かに抱き合った。心が安らぐ。
しばらく泣いていた小二郎君も抱きしめているうちに落ち着いたみたい。
小二郎君の温かさを感じていると、その小二郎君が思いだしたように言う。
「あ、そうだ鷹森!あのさ……最後何か言った?」
「え?」
「ん〜と……ほら、最後にオレのケツ叩いた時。オレさ……痛くて気持ちよくて
頭が真っ白になっちゃって……よく聞こえなかったんだ。ごめん。『僕は』何とかって言わなかった?」
ココで僕は一気に頭が茹りそうになった。
小二郎君が言ってるのってまさか……思わず叫んじゃった『僕は君が好きだ――――――――っ!!』ってヤツじゃ……
「え〜っと、たぶん……僕は何とかだ―――――!!って叫んでなかった?」
ビンゴだ―――ッ!!うわぁああああ!!き、聞こえて無かったんだ!
それはそれで恥ずかしいよ!どどどどどどうしよう!?言えばいい!?今言えばいいの!?
「それはね、それは……あの……」
声が出せない!この肝心な時に!このヘタレさ本当に何とかしたい!
心臓がドックンドックン鳴りだして、顔ばっかり赤くなってる気がする。
(言え!言うんだ!神様……僕に、勇気を!!)
僕は思いっきり息を吸い込んで、口を開ける。
「あのっ……また今度言うよ!!」
大きな声で言えたけど……神様なんかいやしない!!
「……そっか!」
小二郎君が明るく笑う。
うわぁあああああっ!!誤魔化しちゃったよぉぉぉぉっ!!僕の根性無しぃぃぃっ!!
情けなさのあまり心の中ではもうひとりの自分が床にガンガン拳を打ち付けてる。
ぽそっと小二郎君が呟いた。
好きって聞こえたけど……やっぱオレの勘違いかな……」
「え?」
「何でもない!あ〜あ、いい汗かいた!そろそろお風呂入って寝ようぜ?」
「……うん」
僕も大事なところが聞きとれなかったよ……小二郎君は何て聞こえたんだろう?
(いつか、ちゃんと『好きだ』って伝えられたらいいな……)
小二郎君の笑顔を見て、そう思った。そして『お風呂入って寝ようぜ』のセリフに軽く動揺していた。
「小二郎君、先にお風呂入っちゃいなよ!」
「いいの?」
「もちろんもちろん!!(小二郎君と入れ替わりで素早く入って、とにかく僕はソファーで寝て……)」
やや強引に小二郎君を先にお風呂に行かせたのは良かったんだけど……
「なぁ鷹森―――!このシャワーどうやって使うの――――??」
まさかのお呼び出しがかかって僕は服のままヘルプに入ったんだけど……
「こ、ここっこれはね!だぶんここをこうやると……ぎゃぁあああああっ!!」
「わっ!た、鷹森大丈夫か!?」
「あ、はは!平気平気!お湯だったから!」
持ち前の不器用さでシャワーが僕に直撃。服がびっしょり濡れた。
服が濡れた事より裸の小二郎君に動揺してたから早くお風呂を出ようとしたんだけど……
「じゃあ、小二郎君ごゆっくり!ちなみに、これがシャンプーでこっちがリンスで
こっちがボディーソープだからね!?ボトルの裏に書いてあるから!」
「分かったけど、そんなびしょびしょで外にいたら風邪ひくって!も、もうこのまま、は……入っちゃえば?
オレは……平気だから……」
そう言って顔を赤くして伏し目がちになる小二郎君。表情と台詞が一致してないよ!!
でもね……結局は一緒に入ったんだ。
あと、寝る時も一緒にベッドで寝た。 ソファーで寝ると主張したら小二郎君が『風邪ひくから!』って……押し切られて。
小二郎君はすぐ寝ちゃったけど僕は全然眠れなかったよ。
(結局、お尻叩いただけで終わっちゃったな……)
真っ暗で静かな部屋で、とりとめもなく今日の事を考えた。
告白もうやむやになっちゃったし、キスとか全くできなかったけど(お風呂でももちろん何もなかったよ)、
でも、すごくドキドキしたし楽しかった。
(また小二郎君と泊まれたらいいな……)
それまでに僕のヘタレをどうにかしよう。……と心に誓った。

※ちなみに、途中から寝相か何かで小二郎君が僕にべったりくっついて寝ちゃった為、一睡もできませんでした。



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【作品番号】BSS5


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