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一人DEできるもん!



町で噂の大富豪、廟堂院家。
その廟堂院家に仕える執事長の上倉大一郎とメイドの上倉真由(通称:小二郎)は仲の良い兄妹。
仕事も終わった夜、執事寮の大一郎の部屋に小二郎が遊びに来たらしい。
普段は執事服やメイド服を着ている二人だが、私服でくつろいでいるといかにも兄妹っぽかった。

「全く、いきなり来て人のテレビを占領するなんて……」
「いいじゃん別に!おにぃと一緒に見たかったんだよ!『カラフルレンジャー』!」

柔らかいクッションを抱えてテレビの前に座る小二郎。
ただいまテレビ画面に映るのは、それぞれ違う色のボディースーツを纏ったヒーロー達。
オープニングの熱い音楽に合わせてアクロバットで敵を倒す彼らの名は『カラフルレンジャー』。
これは小二郎が子供の頃から大好きな特撮ヒーロー物の再放送だった。
嬉しそうな小二郎の様子に、大一郎も仕方ないなという顔でため息をつく。

「……お前はまだ若いもんな。メイドだけが仕事じゃない。お前の意志が固いなら転職もありだと思う。
俺もできるかぎり協力するよ。もう一度、目指してみるか?」
「は?」
「赤レンジャー」

刹那、小二郎の顔が火を噴いたように赤くなった。
クッションを振りまわしながら兄に食ってかかる。

「ばっ、バカ!!それはちっさい時の……!!」
「大丈夫!今からでも遅くはない!!
『オレ大きくなったら赤レンジャーになる――!』って言ってたあの夢を……」
「ふざけんなっ!!赤レンジャーならテレビでオレ達のために戦ってんだ!もういいんだよ!
そ、それにっ、もう子供じゃねーし!赤レンジャーは好きだけど、オレの……ヒーローは……」

ふいにクッションを抱きしめ、桃色ほっぺで潤んだ瞳を伏せる小二郎。
『初恋モード』。と、大一郎は密かに名付けているが、要は小二郎が大好きなお友達の話をする時特有の状態だ。
誰の事かは大一郎も良く知っている。

「……はぁ、分かった分かった。そんなに言うなら呼んできてやるよ。
鷹森君という名の赤レンジャーを」
「別に鷹森だなんて言ってねーだろ!!鷹森だけど!」
「だからその鷹レンジャーを呼んできてやるって」
「あ、ちょっと、おにぃ!?」

伸ばす手虚しく、大一郎はひらひらと手を振って部屋を出て行った。
小二郎はぽつんと取り残されて

「鷹森が来るのか……」

と、呟いて急にそわそわ揺れる。
5秒ほどクッションをいじっていたが、ぱっと立ちあがり……

「ま、まぁ、ちょっとは、掃除しておいてやらないとな!」

ちなみにこの部屋、すでにスッキリ片付いていたりする。
小二郎のする事と言えばテーブルの上のリモコンをまっすぐ置き直したり、ミニサボテンの位置をずらしたり
元々整っているベッドの掛け布団を上から撫でるように押し伸ばしてみたり……

「ん?」

手でかけ布団をなぞった時に感じたボコっとした感触。
下に何かが入っているようなので、そっとかけ布団をめくってみた。

『素人さんから玄人さんまで♪ 楽しいセルフスパンキングの世界』

下着姿のセクシーなお姉さんがこちらにお尻を向けるポーズの表紙。
その手に持っているのと同じような丸型パドルが、本の横に置いてあった。
つまり、変な本とパドルが掛け布団の下に整然と置かれていた事になる。
小二郎はしばらく呆然として、そして……

「こんなもん整然と並べてんじゃね―――――っ!!」

一人でそう叫びながら思いっきり掛け布団を投げていた。
顔を真っ赤にしながら。

「何だよこのエロそうな本!?おにぃこんなの読んでんのか!?こんな……こんな……」

しばらく離れて表紙を眺めていた小二郎だが、左右を見回して誰もいないのを確認すると
手だけ伸ばしてそ〜〜っと、指先で、一ページだけめくってみた。

「うわっ……」

のっけからドぎついグラビアページで、思わず声を上げてしまった小二郎。
どれもこれも痛そうに腫れあがったお尻のお姉さん達の写真ばっかりだ。
しかも……

(な、何だこれ……自分で叩いてんのか?)

写真のお姉さん達、どうやら自分で叩いているらしい。
驚きと好奇心と少しのドキドキ……そんな感情が小二郎をフラフラと本に引き寄せて
最初の怖々とした態度はどこへやら、最後にはガッツリと本にかじりついていた。

(痛くないのかな……?)

愛しい恋人の写真を見つめつように、トロンとした目で解説図を見つめる小二郎。
ページを進めれば進めるほどドキドキは大きくなってくる。いけない好奇心も。

(楽しい、のかな……?)

少し目線をずらせば、本とセットで置いてあった丸型パドル。
まるで「さぁ、君もレッツトライ!」と言わんばかりの組み合わせだが
小二郎も簡単には踏み出せずにいた。

(だって、何か……変態っぽいし……鷹森とおにぃが帰ってくるし……)

パドルの柄を指で突きながら、小二郎は迷っていた。
ちょっと、やってみたいかも知れない。けど、そうすると越えてはいけない一線を越えてしまうような気がする。
やっぱりこんな事するのは良くないかもしれないけど、正直、興味あるし……
でも、鷹森やおにぃに見られたら……?小二郎の思考はどんどん泥沼にはまっていく。
そんな時……

『迷っちゃダメだ!!』
「ひゃっ!?」

いきなり小二郎を励ます力強い声。何事かと辺りを見回した小二郎は、背後に声の主を見つける。
テレビの中で、大好きな赤レンジャーがガッツポーズで励ましてくれていた。

『勇気を出すんだ!キミならできる!』
「赤レンジャー……!でも、オレ……」
『勇気のパワーこそ、レンジャーの証!!頑張って!やるなら今しかない!』
「わ、分かった!オレ、やってみる!!」

小二郎が決意を固めてパドルを手に取った背後で、青レンジャーが『ありがとう赤レンジャー!』と言いながら
新必殺技を繰り出したりしているのだが、小二郎は可愛らしい短パンを下ろすのに必死で気付かない。
ストンと床に落ちた短パン。その上にひらりとヒモの解けたパンツが重なる。

(ちょっとだけ……ちょっとだけだから……)

誰に対してか分からない言い訳をしながら、小二郎はベッドに持たれて膝立ちになる。
しばらくドギマギしながらパドル持った手をブラブラさせていたが
覚悟を決めてえいと振り下ろしてみる。

パンッ!

「ぁっ!!」

慌てて声が漏れた口を片手で押さえた。
あまり痛くはなかったが、確かにお尻にはジンとした感覚が……
たった一発なのに、恥ずかしさと興奮で心臓は大げさななほど早く打っていた。

(うわぁ……叩いちまった……自分で……)

お尻をそっと撫でて唇を舐める。
おにぃに叩かれてる時だとこんな風に休憩できないよなぁ……と、考えていると
だんだん切なくなってくる。心臓は相変わらずドキドキだ。

(もう、ちょっと……強くても……)

怖々と、もう一度腕を振り上げて……今度はさっきより強く。

パンッ!!

「いっ……!!」

痛いのは少し我慢して、もう2,3度振り下ろしてみる。

パン!パン!パン!

「いぁっ……んっ……はぁっ……!!」

ああ、きた。
完全にいつもの感覚。連続的なお尻の痛み。
痛くて、それなのに胸が熱くなる。

「ぅ……おにぃ……」

手を止めれば痛みの余韻がじわじわ慰めてくれる。
しばらく手を止めれば痛みは引いていき、次に求めるのはもっと大きな痛みだ。

(まだ……まだ平気だよな……?)

少し痛みの残る肌に再びパドルを振り下ろす。
叩けば痛いのは当たり前だけどいちいちその痛みにビクついてしまう。
息を切らせては何度も叩いているうちに剣山にでも座るかのような痛みは増してくる。

パン!パン!パン!

「痛っ……やっ、ぁ……!!」

自分で叩いているのに声が抑えられない。
恥ずかしいけどくすぐったいような奇妙な感覚だった。
痛いなら止めればいいんだけども、叩けば叩くほど気分が盛り上がっていく小二郎なのでやめられない。

(まだいける!いける!まだ頑張れる!)

パン!パン!パン!

自分で自分を励ましながら苦しめる。一種のスポーツ状態になってきた。
腕の疲れさえ無視すれば叩かれているのと同じ感覚なのだ。
それは小二郎の大好きな

「ぁ、は……やっ、おにぃ……ごめんなさい……!!」

おにぃに叩かれているような……

「んっ、ぁあっ……鷹森ぃ……やめてぇ……!!」

鷹森に叩かれているような……

「ダメっ、やだ……!!二人とも……あぁんっ!痛いよぉ!いい子にするからぁ!」

いっそ二人に……。
そんな想像を膨らませると興奮の境地だった。
心に鳥肌が立ったようなウキウキした気分になって、どうにもならない。
痛いのに、止まらない。
体の局地をきゅんきゅん疼かせて小二郎は自分のお尻を叩き続ける。

パン!パン!パン!

「いたぁ!くっ、ふぅぅ……!!」

泣きそうな自分の声に、頭の冷静な部分は本当に状況のヤバさを感じている。
このまま泣いてしまうとあまりにも情けない。
が、それ以上にもっとこの痛みと幻想を味わっていたかった。

「やだぁ……やだぁ!!許してぇ!!はぁんっ!」

おにぃ……鷹森……!!もっとオレの事お仕置きして……!
輪郭を失っていく世界をぼんやりと見つめながら小二郎は心の中で叫ぶ。
お尻は本当に痛くて、振り下ろすパドルは無意識にパワーダウンしてても小二郎は叩くのだけはやめなかった。
痛みで体をビクビクさせながら、瞳に涙を溜めていく。

「はぁ、はぁ……やだぁっ!!もうやだよぉ……!」

『嫌ならやめればいいのに』という理性のツッコミは今の小二郎には届かない。
なぜなら今の小二郎はおにぃと鷹森にお仕置きされている気分だったから。
『自分でやめる』などという選択肢は出てこなかった。

「は、ぁう……ぁ……」

パン!パン!パン!

気分よく叩いていたら、どうやら気分がよさ過ぎて局地の相棒がずっとスタンディング状態。

(お仕置き中にこんなになったらダメなのに……オレいっつもこうだけど……)

小二郎自身は、叩かれている時にこうなってしまう事には一抹の罪悪感を感じている。
でも、大好きな二人がそれを咎めた事は無かった。
おにぃはたまに言葉攻めみたいな感じで言うだけ……本気で怒られた事はない。鷹森はこの前怒らなかった。
優しい二人を思い出し、はぁと熱い息を吐き出して小二郎は自戒の意味も込めてぐっとパドルを振り下ろした。

バシッ!!

「いやぁああ!!おにぃ!鷹森ぃっ!ごめんなさぁああいっ!!」

思ったより痛くてそんなつもりは無かったのに大声で叫んでしまった。

「真由!!」

しかも最悪な事にその声に応える兄の声が聞こえ、扉方向には驚いている兄と、同じように驚いて+青ざめている親友の姿。
大一郎が鷹森を連れて帰ってきたらしい。
小二郎が慌てて弁解する前に、大一郎がツカツカと迫ってくる。

「真由、お前……!」
「ちっ、違うっ……!!ごめんなさ……」
「叩き方が全っっ然、なってない!!」
「へっ!?」
「ほら!もっとこう!力入れて!」

予想外の怒られ方をした上にベッドに押さえつけられ、手を掴んで動かされた。
誘導されたパドルがきつくお尻に当たる。

バシィッ!

「あぁあああっ!痛い!おにぃ痛いぃ!」
「何言ってるんだ!本気で楽しみたいならこれくらいしないと!はい、次は自分で!」
「ぁう……うぅっ……!!」

突然の熱血指導に逆らうに逆らえず、お尻は痛いものの
ぎゅっと目を閉じて叩いてみる小二郎。

バシ!

「ひぃっ!!」

痛そうな音も鳴ったし、実際息をのむほど痛かった。
結構いい線いったんじゃないかと思った小二郎なのだが大一郎は……

「う〜〜ん……さっきよりはマシか……でもまだ甘い!
そもそも角度が……いいや、とにかくやろう!いいか!?こうやって、こう!」

バシィッ!

「やぁああああっ!!痛い!やだぁ!」
「かつ、流れるようにさらにこれを20回……」
「ごめんなさぃぃっ!やだぁっ!やめる!もうやめるぅぅっ!!」

バシッ!バシッ!バシィッ!

自分の手ごと、赤いお尻を思いっきりお仕置きされて小二郎は泣きわめく。
力加減が自分でやってた時とは比べ物にならなかった。
熱血スパンキング教室を繰り広げる上倉兄妹に、鷹森は「帰っていいですか……僕もう帰っていいですか……?」
と言いながら壁に寄り掛かって泣いていた。
気付けば『カラフルレンジャー』の放送はとっくに終わっており
なにやら騒がしく、小二郎の初セルフスパンキング体験はもう1時間ほど続いたという……



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【作品番号】BSS3

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