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奥様とメイド
※エロくはないと思うけど小二郎の性癖がアレなんで……(笑)



町で噂の大富豪、廟堂院家。
若奥方の絵恋の部屋に綺麗な花を数本持ったメイドの小二郎が入ってきた。
陽光がきらめく朝の物語。

「あら小二郎、綺麗なお花じゃない」
「花瓶に飾ろうと思ったんです」
「うふふ。いいわね。一本だけもらえるかしら?」
「どうぞ。それ、どうするんです?」
「決まってるじゃない。花占いよ。千賀流さんは私の事が、すき、きらい、すき、きらい、すき、きらい」

花弁は6枚。そこですべての花弁は無くなった。
手に残った茎を見つめる絵恋、それを見つめる小二郎。
二人の間にしばしの沈黙。
そして…………

「ちょっと小二郎!!どうなってるの!?『きらい』で終わっちゃったじゃない!」
「ええっ!?そんな事言われても……」
「ご主人様にこんな花を持ってくるなんて……悪い子にはお仕置きが必要ね!」
「んな理不尽な!!」
「何よ文句でもあるの!?私にこんな嫌がらせをした挙句口答えだなんて……」
「ひぃぃぃっ!!わ、分かりました!分かりましたってば!!」

小二郎は観念した様子で、スカートに手を突っ込んで白いフリル付きの布を下ろしてくる。
それを足から抜き取って丸めてポケットに入れた。
後はおずおずとスカートを持ち上げて、絵恋にお尻を見せる。

「これでいいですか……?」
「立ったままじゃ叩きにくいじゃない。私が。そこのソファーに手を付きなさい」
「ううっ……」

小二郎は恥ずかしそうにしながらもすべて絵恋に言われるがままだ。
差し出された滑らかな小尻に、絵恋もご満悦の様子。

「良い様だわ。私が直々にお仕置きしてあげるんだから感謝なさい」

パァンッ!!

「っあ!!」

振り下ろされた一発はすぐに重なって、何度もお尻を打たれる小二郎。
打たれるたびに小さな痛みが積もっていく。

パン!パン!パン!

「うぁっ!絵恋様……許してださい!!」
「もう音を上げるわけ?自分の罪の重さが全然分かっていないわね」
「オ、オレは……あんっ!!」

『オレは花を持ってきただけじゃないですか!!』、その一言が平手打ちに阻まれて言えない。
言ったところで絵恋が聞き入れてくれるかは大いに疑問だが、せめて真っ当な主張だけはしておきたいところ。
しかし現実問題、喋れない小二郎ほったらかしで喋り続けるのは絵恋だった。

「小二郎、これだけは言っておくわ」
「んっ、ふぅっ……!!」
「いいこと?私と千賀流さんの間を邪魔するヤツは死ぬの!!そう決まってるのよ!」
「死ぬとか規模デカっ……」
「お黙り!!」

パァンッ!パァンッ!パァンッ!

「やぁあああんっ!!」

無茶苦茶な持論と一緒に強めの平手を叩きつけられて、小二郎は大きな悲鳴を上げる。
お尻もジンジン疼くのだがだんだん前の部分もジンジンしてきた。
自然と呼吸も荒くなってくる。

「あぁ……はぁ、あっ……!!んんっ……!!」

そんな小二郎には気付かない様子で、絵恋は相変わらずお説教という名の超理論を展開していた。

「花占いが『きらい』で終わる花を持ってくるなんて、立派な恋愛妨害よ!
でもまぁ、千賀流さんに直接手を出したわけじゃないし……
私のメイドだから特別にお尻を叩くだけの優しい罰で許してあげるの。ありがたいでしょう?」
「はぁ、あんっ……ありがと……ございますぅ……!!」
「……何よ。変な声出して
もしかして、お尻叩かれるの良くなってるの?」

喋ると絵恋も気付いたらしい。
しかし小二郎もおめおめと答えるわけにもいかず、ただ打たれるまま声を上げていたが……

「んっ……あぁっ!!」
「どうなのよ?聞いてるんだけど」

パァンッ!パァンッ!パァンッ!

赤くなってきたお尻を責め立てられて、痛みと夢心地の狭間でうっかり答えてしまう。

「あっ、はっ……ごめんなさい……!ちょっとだけ……!!」
「呆れた。さすが、あの汚らわしいゴミ虫が兄なだけあるわよ……奴隷気質って遺伝するのかしら?」
「あぁっ……おにぃを……悪く言わないでください……!!」
「ふん、生意気ね」

パァンッ!

「あぁんっ!!」

叩きこまれた一発に、小二郎は瞳を潤ませる。
兄を悪く言われた悔しさか、お尻の痛みか、それともそれら全部を含めた歪んだ快感か……
涙の理由は本人にも分からない。
しかし一旦弱みを見せると、お仕置きしているご主人様の方はヒートアップしてしまった。

「浅ましい奴隷遺伝子ならそれらしく、下品に喚いて見せたらどうなのよ!ほら!」
「ご、ごめんなさい!!あぁっ、ごめんなさい!!」
「あははっ!!そうよ!そうそう!
お仕置きされてよがってる恥ずかしい自分を地球上の全人類に詫びなさい!」

パァンッ!パァンッ!パァンッ!

振り下ろす手にも罵倒にも一段と気合いが入る。
小二郎にとっては色んな意味で堪らない。
さっきまでかろうじて目の端に引っ掛かっていた涙が、バラ色の頬を流れる。

「うわぁあああんっ!絵恋様ぁ!もう許してください〜〜っ!!」
「あ!!」

小二郎の叫びが天に届いたのか、絵恋は動きを止めた。
そして……

「いけないわ!そろそろ千賀流さんからラブコールが来る!準備しなくちゃ!」

そう叫ぶやいなや、急に小二郎の存在を忘れたかのように慌ただしく鏡台に向った。
鏡を見ながら髪を梳いたり、ピンクの口紅をつけたりしていると電話が鳴り
ワンコールにも満たないうちに絵恋は素早く電話に出て、天使のような愛らしい笑顔を浮かべる。

「もしもし!?千賀流さ〜〜ん!ああ、声が聞きたかったわ!
1万800秒も会話していないんだもの……寂しくて死んじゃうかと思った!
ええ、ちゃんと良い子にしてるわよ?帰ってきたら褒めてくれる?うふふっ……
あ、ちょ〜〜っと待ってね千賀流さん……」

受話器を耳から少し離し、通話口を手で塞いだ絵恋は傍で呆然としている小二郎を睨みつけた。

「小二郎!!私と千賀流さんの二人っきりのスイートタイムを邪魔する気!?
早く出て行きなさいよ!気が利かないわね!
ホント貴方、いい加減にしないと殺……ううん!違うのよ千賀流さん!コロッケって、言おうとしたの!」
「すんません……失礼しました……」

千賀流との会話に戻った絵恋は聞いちゃいなかったが、そう挨拶をして小二郎は部屋を出て行く。
あまりに疲れたので、ポケットに入れた白いフリルの布の存在は忘れていた。
その日はそのまま仕事をしていたらしい。

そして後日……


「あら小二郎、今日もお花を持ってるのね」
「ひっ!?いや、花瓶に飾ろうと……」
「ふーん。まぁいいわ。一本寄こしなさい」

また花を持ってきたところを見つかった小二郎。
しかもまた一本ねだられてしまった。
だがメイドの小二郎、易々と同じ轍は踏まない。

「ど、どうぞ……」(よし、こんな事もあろうかと今日は花弁が7枚の花を持って来たぞ!)
「千賀流さんは私の事がきらい、すき、きらい、すき……」
(あ、オレ死んだわ)

小二郎の受難はまだまだ続きそうだ。



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【作品番号】BSE2

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