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廟堂院家の双子の話16



町で噂の大富豪、廟堂院家には二人の息子がいた。
名前は千歳と千早。まだ幼い双子の兄弟だ。

今日も兄の千歳は自室の全身鏡の前でため息をついた。
「千早ちゃんったら……またこんな見えるところ……」
指先でなぞる首筋には目立つキス痕。
つい昨晩の出来事を思い出して、ゾクリと甘い疼きが走った。
千早が主導権を握るのは夜も変わらない。
「まさか……普段から僕が“首輪”をしてないと気が済まなくなっちゃった……とか?」
痕を隠す様にチョーカーを巻いて自嘲気味に呟く。
“見えるところはやめて”と嫌がると、逆にそれが千早を煽ってしまうのだ。
「んっ……」
こんな風にだんだん思い出していくと堪らなくなる。
立っているというのに、鏡の前だというのに、千歳は下半身に手を伸ばしていた。
(僕は、もう……ダメかも……)
頭がぼんやりして、それなのに泣きそうになる。
その時、
ガシャンッ!!
「!!」
「あっ……あぁっ!!すみ、ません……!!」
大きな音が千歳を我に返した。
振り返れば、今入って来たらしい世話係の上倉が紅茶セット一式を派手に床にぶちまけていた。
世にも珍しい光景だ。
「上倉、びっくりした!!どうしたの!?お前らしくもない!」
「あ、はは……申し訳、ございません……」
「お前……なんか変だよ?顔が赤いし、具合が悪いの?」
「え……?いえ……千歳様、こちらに来ては危ないです……!」
駆け寄ろうとした千歳を手で制した上倉は、熱があるみたいに赤い顔で辛そうだった。
千歳はだんだん心配になってくる。
「具合が悪いなら、部屋で休んでなよ」
「ありがとうございます……ですが……」
「いいから!!」
千歳は大きな声で叫んで、それから申し訳なさそうに俯く。
「無理させてごめん……!」
「千歳様……」
味方を失うのが怖くて、彼を恋人と無理やり引き裂いてから一か月少しほど経つのだ。
それでも上倉は今まで嫌な顔一つしなかった。むしろ嬉しそうにしていたくらいで、
今だって優しく笑っている。
「貴方のせいでは、ありませんよ。けれど……そうですね、貴方の体に障るといけませんから。
体調不良野郎は撤退させていただきます♪」
「うん……」
「お願いですらから、そんな顔をなさらないでください。困りましたね、明日には全回復させなければ!」
上倉は、綺麗に片づけてしまうと大人しく部屋を出た。
(上倉……)
千歳は……この日はどうしてだか、とても心配になって後を付けたのだった。



それから間もなく、隠れている千歳の見ている前で、上倉は元恋人のイル君と廊下ではち合う事になる。
真剣な表情のイル君が、引き留めるように上倉の腕を掴んで言う。
「上倉君……」
「な、何ですか?今忙しいので……」
「最近ずっと様子がおかしい」
「風邪気味なんです。千歳様にお許しを頂いたので部屋で休もうと、しているところです。
離してください!!」
とにかく逃げるようにその場を立ち去ろうとする上倉の動きを、イル君は食い止めている。
「最後に誰かと寝たのはいつですか?」
「なんっ、ですか、その質問!?セクハラで訴えますよ!?」
「いいから答えなさい!」
イル君らしからぬ怒鳴り声。
とっさの剣幕に気圧されたらしい上倉は、顔を逸らしつつ小さな声で言う。
「い、一か月ちょっと前……」
「あれから一度も……もう限界ですね」
「――?!貴方何を!?」
イル君は無理やり上倉を抱きかかえようとする。
抵抗する上倉を押さえ込もうとしながら言葉を続けていた。
「定期的に、誰かと致しておかないと禁断症状が出る癖に無理をして!!助けてあげます……一緒に行きましょう!」
「や、やめて!!」
「そんな状態では仕事にならないでしょう!?小二郎君にも不審に思われてしまいますよ!?」
「嫌だ!!お願いです!相手なら自分でどうにかしますから!嫌!!」
言い合い、そして揉み合いが続いていた。
尋常じゃなく嫌がって抵抗する上倉が、必死に息を乱して叫んでいた。
やがて抵抗で負けると悟ったのか……慌て気味で叫んだ。
「あ、愛してるんです!!私……どうにかして、他の人と、しようと思ったけど……
できなかった!前まであんなに簡単にできてたのに!!
もう一度貴方に抱かれてしまったら、今度こそ別れるなんて耐えられなくなる!」
「!!」
イル君の動きが止まる。
そこでますます畳み掛けた。声を震わせて。
「お願いです……!許してください!!私を、千歳様の味方でいさせてください!
今のあの方は、追い詰められて、ふさぎ込んで、昔の真由にそっくりだ!助けたいんです!」
けれどそれは、そこまでの事。
再びイル君が動き出すと、上倉はいよいよ涙声で叫んでいた。
「た、助けて!犯される!怖い!あ、アオイさん……誰か!!」
「…………」
「あぁ、父さん……!父さん助けて!」
泣きながら抵抗している上倉の様子に、イル君が動きを止め、
ボロボロ涙を零す元恋人の頭を、かつてのように優しく撫でていた。
「私も、君を愛しています……大一郎。
千歳様を助けたい気持ちは分かるけれど、そのために無理をするのは許さない。
今日中に相手を見つけてどうにかしなさい。
明日も様子がおかしかったら、今度こそ君を犯します。
君が泣こうが、喚こうが……父親を呼ぼうが、ね」
「うっ……うぅっ……!!」
「可哀想に。一瞬錯乱してましたか?」
頭を撫でられ、嗚咽を漏らしながら首を横に振る上倉。
千歳の前では決して見せなかった、弱りきった姿。
(――――上倉……!!)
それを見てしまった千歳は、動揺してその場から逃げ出すしかなかった。



(ど、どうしよう……あの子があんな無理をしていたなんて……!!)
上倉は確かに泣いていた。それでも自分を助けたいと言ってくれていた。
様子がおかしくなるほど、自分の為に無理をしていた。
走りつつ考えれば考えるほど、千歳も泣きそうになってくる。
(どうしよう!僕、どうしたら……!!)
ぎゅっと目を閉じる。

「っ、兄様……?!」
「あ!!」
声と柔らかい衝撃は同時だった。
しっかり抱きとめられて目を開けると、千早と目が合う。
「千早ちゃん……」
「どうしたんですか?顔色がお悪い……」
「あっ、ちがっ……僕、何も……!!」
千歳は青ざめる。
先ほどまで上倉の事を考えていた事すら罪に思えて。
しかし……
「兄様……最近、ずっとふさぎこんでいらっしゃって心配です。オレの……せいなのですか?」
(え?)
優しく抱きしめられてしまった。
そして千早は普段と打って変わって気弱な声で言う。
「オレは……オレ、貴方が愛しくて、堪らなくてつい、強引にしてしまって!!
子猫のように怯える貴方が、可哀想なのに止められなくなる……!!
ごめんなさい!貴方にそんな顔ばかりさせたいわけじゃないんです!!
けれどオレ……兄様が愛しくて、オレの好きにしてるのが嬉しくて!!
あぁどうか、オレを怖がらないで……嫌いにならないでください!!」
「ち、千早ちゃん……」
千歳の頭の中に、無意識に声が響く。

(僕が間違ってるの……?)

慌てて、千歳は千早から身を離して笑う。
「やだな、僕が千早ちゃんを怖がるわけないでしょう?
僕の演技が見抜けないなんて……千早ちゃんもまだまだだね」
「いいえ!貴方の演技は見抜けます!!」
前は見抜かれなかった嘘や演技を、最近は随分簡単に見抜かれて……
笑顔を少し“観念しました”と崩しながら、千歳は本音を言わざるを得なかった。
「……僕も千早ちゃんが大好きだよ。愛してる。本当だよ?
君に可愛がられて、初めての事が多くて戸惑ってたんだ……ごめんね。慣れていくから。
千早ちゃんが僕のこと、愛してくれてるのは分かってるから」
「兄様……!!」
そう。分かっている。これは“本音”だ。
千早に強引にキスされて、とたんに体が熱くなる。
「んっ、だ、ダメっ……こんな所で……!!」
抵抗する言葉はもはや形だけ。
『可愛がられて、戸惑ってた』―嫌だったわけじゃない。
『慣れていく』―怖いくらいに。歯止めが効かないないほど。
拒めない。千早のすべてを。愛してるから。
「オレの物に、なってくれるんですよね……?」
「……うん」
もう、こんな生活は限界だ。
さっきの声がもっとはっきりと響いた。
(僕が間違ってるの?上倉に無理をさせて、千早ちゃんも不安にさせて……
僕が、奴隷に堕ちるのを拒んでるから皆が悲しむの?
僕が、千早ちゃんの奴隷になってしまえば、全部うまく回るの?みんな幸せになるの?
僕も、幸せに……)
全身の力が、抜けていくようだった。
(終わりにしよう……)
そう決めた瞬間、今度は千歳からキスを返していた。


そのままどちらともなく千早の部屋に誘い込まれて……
ベッドに押し倒されて、千歳は急に元気よく言う。
「ね、ちょっと聞いてくれる!?」
「兄様?!ど、どうしたんですか?急にご機嫌ですね??」
「ふふっ、一大決心をしたからね!心も軽いよ」
驚いて戸惑う千早を見上げながらクスクスと笑い、そして真剣な表情になって千歳は言う。

「千早ちゃん、やっと僕は決めた。僕を……心も体も、君の奴隷にして。
ううん。全部、君の物。君の奴隷になると、今ここで誓うよ」

「えっ……!!」
「どうしたの?上手に言えたんだから褒めて……ご褒美ちょうだいよ」
「ほ、本当に!?」
千早は突然の兄からの“服従宣言”に目を丸くしていた。
千歳はにっこりと笑う。もう彼に悲壮感も迷いも無い。
「もう、千早ちゃんったらくどいよ!何度も言うの恥ずかしいんだから!
さぁ、忠誠の口付けはどこにしようか?手の甲?足の甲?お腹とかもありかな?
……それとももっと、僕が恥ずかしくなっちゃうようなところ?」
「兄様……」
感心しきった表情で千早は千歳の頬を撫でる。
「奴隷になってもなお、気高く立派で……貴方は本当に大したお方だ。
オレはやっと、本当に貴方を手に入れた気がする」
「僕が腹をくくったからね。もう、可愛く泣いたりしてあげないよ?」
「それはどうでしょうか?」
やっと、千早にも実感が湧いたらしい。
嬉しそうに声を弾ませる。
「そうと決まれば、貴方がオレの奴隷になって記念すべき第一回目のお仕置きを始めましょう!」
「あら……千早ちゃんはいい子の奴隷もお仕置きしちゃう酷いご主人様なの?」
「まさか。オレは可愛い奴隷はいつでもお仕置きしてしまう素直なご主人様なんです」
「そうなんだ。まぁいっか。いっぱい可愛がってね千早ちゃん♥」
「あぁ兄様っ♥」
千歳も千早も、嬉しそうに微笑み合う。今までと変わらないようでいて……
しかし二人の関係は、今ここで生まれ変わってしまったのだった。


千歳は白が基調のフリルやレースの付いた下着の様なボンテージに着替えさせられて
ベッドに手をつくような格好でお尻を突き出していた。
千早に愛用のヘラ鞭で剥き出しのお尻を叩かれている。
パシィッ!
「うぁっ!!」
パシィッ!
「はぁっ、あぁっ!!」
「兄様ってば、今日は最初から大げさに鳴くんですね」
「だっ、だって……千早ちゃんが強くするから……!」
千歳が息を切らせて甘えた声を出すと、また一つお尻を打たれる。
バシィッ!!
「んぅっ!!」
「貴方が可愛いからいけないんだ。興奮して、強くしてしまいます」
ピシンッ!パシィッ!!
何度も強く叩かれ、身を捩る。
お尻がピンクに染まってきても、今日の千歳はどこか幸せそうだった。
悲鳴交じりの話声もふわふわしていた。
「ぁっ、う!!ね、ねぇ……もう僕は千早ちゃんの奴隷なんだから、
我慢できなくても、いっぱい恥ずかしいトコ見せちゃってもいいよね……?」
「ええ。恥ずかしくて可愛らしい貴方をたくさん見せてください。というか……」
バシィッ!!
「ひゃぁぁんっ!!」
「隠そうだなんて、許しませんからね!」
ビシッ!バシィッ!!
千歳のそんな反応が、千早の嗜虐心を駆り立ててしまうのだろう。
激しくなっていく千早のお尻叩きに、千歳は体を跳ねさせてた。
色白のお尻もだんだん真っ赤になっていく。
「あぁん!ダメ!ち、千早ちゃん!!やだっ……痛っ……!!」
「ダメですよ。これが嬉しいくせに」
「うぅっ、そんなっ……!!」
「今まで我慢していたんでしょう?一体何を?」
バシッ!バシッ!
「あっ、やぁあああっ!!」
確かに千歳は痛がっているけれど、千早が鞭で赤いお尻を思い切り叩くと
声や反応には嬉しさが滲んでいるのだ。
もはや、二人で煽り合っていた。
ビシィッ!パァンッ!!
「オレに鞭で打たれて、そんな風に大声でよがりたかった?それとも……」
「うぁあああああっ!!」
「泣いて悦びたかったんですか?ん〜、それじゃいつもと変わらないか」
「うっ、千早、ちゃん……ひ、ぃっ……!!」
パァンッ!パンッ!バシィッ!!
お互いの、感情や、興奮を、二人で煽り合って、貪り合っていた。
それが最高潮になろうとしている千早が言う。
「ねぇ兄様……貴方はオレに本当の姿を見せたかったんだ」
「あっ……あ!!」
千歳も弟の高ぶりを待ちわびるように震えていて、次の瞬間には
千早が最高に楽しそうに鞭を振るっていた。
ずっとずっと、彼が求めていたものに強引に手を伸ばす様に、千早は言う。
「今度こそ、本当の本当に!!」
ビシッ!
「あぁああああっ!」
バシッ!
「心の底から、おねだりしてください!」
ビシィッ!!
「やぁあああああっ!!」
ビシッ!!
「“もっと千歳をお仕置きしてください”って!!兄様!!」
千早にずっとお尻を痛めつけられて、千歳はついに泣き出した。
「や、やだっ……やだぁああああっ!!」
「やだじゃない!!」
パシィッ!!
「オレが、ご主人様が、見ててあげますよ!怖がらないで!
貴方が奴隷になったお祝いをしましょう!!」
「うっ、ぁ、あぁああああっ……!!」
泣きながらも、千歳は千早と同じくらいに興奮していたし満たされていた。
強引な手に引かれるのは、拒まなければ幸せだ。
「もっと……」
言わされるのではなく、心の底から、我慢できなくなって。
千歳はそれを言ってしまった。
「お願っ……お願い!!もっと、僕をお仕置きして!お仕置きしてください!千早ちゃん!!」
「兄様……!!」
ビシッ!バシッ!バシンッ!!
「あぁ、やっと……やっと!やっっっと!!オレの物になってくださったんですね!!」
「んぁあああああっ!ひゃぁああああん!」
千早のお仕置きが一段と激しくなって、千歳は余計なく羽目になった。
けれども、不思議な事にちっとも辛くない。
「今日をどれだけ待ち望んだことか!夢みたいだ!オレの、可愛い奴隷の兄様!!」
「ひ、ぁっ!!ぼ、ぼくっ……千早ちゃんの、ものだよ!!あぁあああっ!」
千早の興奮した大声に負けないくらいの声量で千歳も叫ぶ。
その言葉がまた千早を喜ばせ、振るう鞭の威力を増やす。
「幸せだ!オレは、今、世界一幸せだ!!」
「うわぁああああん!千早ちゃぁぁああああん!!」
「兄様も嬉し泣きですか?!」
ビシィッ!バシッ!
「あぁっ、痛いぃっ!痛いよぉ!ごめんなさい!でもぉっ……
僕も、あぁんっ!!幸せで、ごめんなさぁぁぁああい!!」
泣きながら、弟の手の中に堕ちる。
新しい幸せに包まれて……千歳は全てを受け入れた。


その後しばらく叩かれて、十分泣かされたけれど、
それ以上に……お尻叩きの後はハイテンション気味の千早に激しく愛でられて、クタクタになってしまった。
“仮病”を使って夕食は部屋で済ませるほど。
その時にちょうど良く、今まで頑張ってくれた世話係に事情を話す事となる。
ベッドに縋り付いて泣く彼の頭を弱々しく撫でて、
「千早ちゃんはこの屋敷のトップに立つのにふさわしいよ。僕が支えてあげればね」
と、慰めついでに、恋人との復縁も命令しておいた。
(ついに、ここまで来ちゃったか……でも、千早ちゃんの奴隷も、悪くない)
さっきの“お仕置き”を思い出して千歳は笑う。
一度受け入れてしまえば、ちっとも辛くなかった。
あれほど怯えて拒んでいた自分が馬鹿らしくなるほど。
(良かった。これからも千早ちゃんと、幸せに暮らせそう)

その日は、ぐっすりとそのまま自室で眠った。


次の日。
体力も回復し、昨日の“お仕置き”の余韻も冷めぬまま、
朝起きてからからソワソワと千早に会いたくなった千歳。
さっそく千早の部屋に遊びに行ってみると……
「おめでとうございます千早様!ついに悲願を果たされたのですね!」
部屋の中から声が聞こえた。
この声は、千歳が最近嫌いな執事の能瀬の声だ。
それに答える千早の声も。
「あぁ、やっと兄様がオレの奴隷になってくださった!こんなに嬉しい事は無い!
晴れてオレはこの廟堂院家のトップに認められたというわけだ!
やっぱりオレの実力……いや、考えが変わったのはお前のおかげだし、少しは礼を言わないとな」
「いいえ、私は何も」
(え……?)
二人の交わす会話は、何かがおかしい。
千歳は嫌な予感がした。
「あの時お前がオレに“廟堂院家の当主になれ”と、言ってくれなければ、オレは何も気づかないまま……
兄様に重荷を背負わせ、ゴミ虫に屋敷を乗っ取られていた事だろう」
(なっ……!!?)
「お前の働きはなかなかだったぞ。ふふっ、オレは今機嫌がいいからな、ご褒美をくれてやる」
「ありがとうございます。では、許されるなら……。
私は、ずっと千早様と千歳様と共に、この屋敷を守っていきたい。繁栄させていきたい。
貴方方の一番近くで、貴方方の力になりたいのです。どうか私に……」
千歳には次の言葉が容易に想像できる。
恐ろしい真実が浮かび上がってきた。

「執事長の地位を」

千歳は目の前が真っ暗になった。
(ヤダ、嘘ッ……!?今までの事、全部アイツのせいで……!?
アイツが、執事長になりたいがために千早ちゃんを言いくるめて!?そんな……!
全部、千早ちゃんにあげたのに……奴隷になるって、言っちゃったのに、こんな事って!!)
知るのが遅すぎた、恐ろしい真実。
思わずドアに背を向けてもたれかかって、青ざめて震える。
絶望感いっぱいの頭を抱え、鼓動が早まるのを必死で抑える。
(落ち着け……!状況はもうひっくり返らない。僕はもう戻れない。
やっと、決着がついたのに、これ以上皆を引っ掻き回すことはできない……!!
でも、でも……!!)
そして、千歳は決意した。

(許さない。あの男だけは、絶対に!!)





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【作品番号】BS16

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