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廟堂院家の双子の話11



町で噂の大富豪、廟堂院家には二人の息子がいた。
名前は千歳と千早。まだ幼い双子の兄弟だ。

今日も弟の千早は自室のソファーでため息をつく。
傍に付いている執事の能瀬が見かねて声をかけた。
「千早様……まさか、このまま見過ごすおつもりではないでしょうね?」
「黙れ。分かってる。だけど……」
そう言って、千早は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
「兄様がいつも通りなんだ!いつも通り美しくて!優しくて!
いつも通りオレと仲良く遊んでくれて!そんな兄様にどう切り出せと!?」
すでに千早の、世界滅亡の夜から一週間過ぎていた。
けれども千早は何もできずにいたのだ。
今までと変わらず、毎日兄と仲良くと遊んで暮らしていた。
悩める千早を能瀬はそっと助け起こす。
「千早様……お気持ちは分かりますが、今宵は“お勉強”の日。
今夜までに何とかしないと同じ事が起こってしまいますよ?」
「それは……!」
「せめて、千歳様に先週の夜の事を問いただすくらいはしないと」
「で、でも……良く考えたら、その話をするとオレが兄様の
“お勉強”をのぞいていた事がバレて……兄様の言いつけを破った事に……」
「貴方が後ろめたく感じる必要がどこにあります!?」
能瀬は大きな声で、懸命に千早を励まし続ける。
「我々は、千歳様とこの屋敷を守る為の必要な調査をしたまでです!
結果、千歳様は騙されていたとはいえ貴方に対する不義行為をしていた!
ここは毅然とした態度で千歳様を諌めるべきです!
千歳様にこれくらい言って差し上げてください!
“貴方が誠意を見せてくれないなら、今後貴方を愛する事は出来ない”と!」
「なっ……!」
千早は能瀬の言葉で真っ青になりながら首を振った。
「無理だ!!それで兄様に“それじゃ仕方ないね。僕も千早ちゃんを愛せない”
なんて言われたら……死ぬしかない……オレはもう死ぬしかない!!」
「気をしっかり持ってください千早様!貴方のお兄様がそんな返事をすると思いますか!?
そんな弱腰だからあの色情狂につけいられてしまうのです!」
「きっ、貴様言わせておけば……!」
「すべて貴方のためなのです!!」
千早に怒る隙を与えず、能瀬は千早に跪いて両手を握る。
しっかりと曇りない瞳で千早を見つめた。
「勇気を出して、確かめて下さい。その愛に囚われているのは
貴方か千歳様、どちらなのか……結果は必ず、貴方に味方する。私が保証します」
それでも視線を彷徨わせる千早に、能瀬はさらに押した。
「千歳様をアイツに取られてしまってもいいのですか?
貴方の愛しいお兄様の為……さぁ、千早様……」
「わ、分かった……兄様の、為だ……」
やっと、ぎこちなく頷いた千早に能瀬はほっとしたように微笑んだ。



そして、覚悟を決めた千早は千歳の部屋にやって来た。
覚悟を決めたと言ってもやっぱり腰引け気味で、ビクビクと部屋の中に呼びかける。
「兄様、あの、少しお話をしませんか?」
「千早ちゃん?……どうしたの?改まって……」
「いえ、その……」
「いいよ。おいで」
読んでいた本をすっと閉じた千歳に、ソファーの上から手招きされた。
千早は千歳の横に座る。
いつもなら平気で隣に座っているのに、今日は緊張してしまう。
そんな千早の姿を千歳が見逃すわけが無かった。
「ねぇ、千早ちゃんもしかして……僕にお仕置きされる様な事したの?」
「え!?」
「だって、何だかオドオドしてるから。何か謝りに来たのかなぁ〜〜って」
「違うんです……でも……」
「じゃあ何だろう?何か……頼みにくいお願いをしに来た、とか?」
自然に、それなのに妙に艶めかしく……千歳が千早との距離を詰めてくる。
肌を合わせるようにぴたりと横にくっついて、
幼く細い指が胸元を滑り下りると、千早はたまらず声を上げていた。
「あぁ……兄様……」
「何でも言ってごらん千早ちゃん?
君をどうするか、僕がちゃ〜〜んと決めてあげる……」
「うぅっ……!」
蕩ける様な優しい声に、屈服しそうになりながら
千早は必死になって今日の目標を果たそうとする。
「オレ、こっそり見たんです!!兄様が“お勉強”してるところ!!」
「あぁ、なんだ……やっぱりお仕置きの方だったの」
「へっ!?」
やっと勇気を振り絞れたのに展開が変わらず視界が回る。
背中に伝わった柔らかい衝撃で、自分が押し倒されたのだと気付いた。
目の前の千歳は相変わらずの天使の笑顔で言う。
「僕は“絶対入って来ないで”って言ったでしょう?もちろん、覗くのもダメ。
僕が机に向かっているところなんか見て楽しかった?」
「あ、あのっ……!」
言おうとして声が続かなかった。
『ちゅっ』と、一瞬の間で千早の言葉を奪った唇を離して、千歳は笑う。
「ごめんね……言い訳は聞きたくないかも。
早く、悪い子の千早ちゃんをお仕置きしてあげたいな」
千早はもう声すら出ない。ただ瞳を潤ませて千歳を見上げる。
心の中には幸福と諦めが渦になって広がっていた。
(あぁ、力が入らない……やっぱりオレが兄様に敵うはずが無い……
いつもみたいに兄様に身を委ねて甘美なお仕置きを……)
と、そのまま目を閉じたら、脳裏に浮かんだのは(裸で抱き合う)執事の上倉と千歳の姿。
その妄想が千早を爆発的に突き動かす。
(いや、しっかりしろ!あんな奴に兄様を渡さない!)
そして勢いのまま叫んだ。
「兄様は、上倉の事を“大一郎”って呼んでいた!!」
「っ!?」
息を飲むように、千歳が驚いて目を見開く。
余計に勢いづいた千早は追及を加速した。
「ど、ど、どういう事ですか!?二人っきりの時はあんな、親しげに!!
あのゴミ虫をあんなに楽しそうにお仕置きして!まるで……まるで……
恋人同士みたいにッ!あんなのが“お勉強”なわけがない!!
納得のいく説明をして下さい!」
「……あ……アレを……見……」
千歳は口をパクパクさせて動かない。
千早はついに、震えながら伝授された宝刀を抜いてみる。
「あっ、貴方が誠意を見せてくれないなら!!オレは今後貴方を愛する事は出来ません!!」
「!!」
千歳がさらに驚いて硬直していた。
一方の千早も『言ってしまった――――ッ!!』と内心大パニックだ。
(兄様が“僕も”と言うなら土下座だ!土下座して許してもらうしかない!!
いや、土下座してどこを舐めてでも絶対に許してもらおう!)
「千早ちゃん……」
(ハッ!!土下座してペロペロする時が来たか……!?)
千歳の声で我に返った千早。
けれど、千早が見たのは思いもよらぬ光景だった。
「そんな、悲しい事を言わないで……!ごめんなさい、僕……!
説明でも何でもする!何でもするから、“愛せない”だなんて……!」
それは、泣きそうな顔で声を震わせる千歳の姿。
「兄、様……?」
「あんなの!遊びだよ!!君もよく、執事を虐めて遊ぶでしょう!?
それと一緒!ねぇ信じて千早ちゃん!!僕が一番愛してるのは千早ちゃんだよ!?
上倉なんか、ゴミ以下の価値しかないんだから!」
(何だコレは……?)
泣きそうで、目に見えて取り乱す千歳の姿に混乱する千早。
“その愛に囚われているのは貴方か千歳様、どちらなのか……”
能瀬の言葉を思い出す。
怖々と、千歳に言い返してみる。
「な、なるほど……でも、“大一郎”だなんて、呼んでたじゃないですか」
「そ……そうだったかな……?良く、覚えてないや……」
「……兄様……」
「違う!!あれは、たまたまだよ!つい、口をついて!
だってほら、ペットっぽく……扱ってやりたかったから……!」
バレバレのシラを切って、呼びかけただけでビクビクしながら言い訳を並べて。
焦りと怯えと悲しみの入り混じったその表情は普段とはまるで別人だ。
(オレの兄様は……こんな頼りない表情をするのか……?)
軽蔑したわけではない。むしろ逆だった。
この頼りない千歳が愛おしくて愛おしくて堪らない。
千早は心の中に、すごい勢いである感情が湧きあがってくのを感じる。
だから呆然と黙っているだけの千早に、千歳はついに抱きつく様に突っ伏した。
「お願い、千早ちゃん信じて……許して……お願いだから……!!
愛してる……君が僕を愛してくれないなら、僕……もう死んじゃうしかないよ……!」
か細い声で、泣きながら震える千歳の体をしっかりと抱きしめた。
(捕まえた……オレの、兄様!!)
千早は思わず笑みを零していた。
ハッキリと感じた『征服欲』・『支配欲』……もう千早がそれらを必死に打ち消す事は無い。
彼はそれを受け入れ、千歳に優しく声をかけた。
「信じます……信じますとも、兄様。オレだって貴方を愛してるんです」
「千早ちゃん……!!ありがとう!!」
「でも、だとすると……貴方は“お勉強”の時間に遊んでいたんですね。
貴方ともあろう方が不真面目な。しかも、お父様から散々“執事をいじめるな”と
叱られた直後にコレでしょう?こんな事……もしお父様が知ったら……」
「…………」
少し脅すと、千歳は青くなって黙りこむ。千早は楽しくて仕方がなかった。
込み上げる笑いを優しい笑顔に変えて千歳の頭を撫でる。
「安心して下さい。貴方をあの汚らわしい男に売ったりしません。
けれど……オレの愛する兄様が不真面目で悪い子だったのを
放っておくわけには……ねぇ、兄様?どうか答えて下さい」
千早の笑顔にビクリと身を震わせる千歳。
体位とは真逆の上下関係に酔いしれながら千早は言う。
「今“お仕置き”されるべきなのは、オレと兄様のどっちですか?」
「……そう……だね。僕、だよね。ごめんなさい……」
「兄様はやはり聡明なお方だ……!そんな聡明な貴方なら
次は何をすればいいかも、もちろん分かって下さいますよね?」
「……うん……」
千歳は真っ赤な顔で千早から降りて、自らズボンと下着を脱いだ。
恥じらう様子で色白のお尻が露わになる様子をスローモーションの
様に堪能し、記憶に焼きつけた千早。
そして千歳はテーブルに手を付いて恐る恐る千早を振り返った。
「これでいい……?」
「完璧です!!」
差し出された柔らかそうな小尻に千早は思わず勢いよく立ちあがる。
実際、立ち上がって鞭を取りに行く必要があったので
この動作は無駄にならなかったわけだが。

双子御用達のヘラ鞭をピタピタ当てると、千歳は縮こまるみたいに
身を固くして、そんな様子が千早の心を悶えさせたところでお仕置きが始まる。
パシッ!!
「ひゃっ!?」
パシッ!パシッ!パシッ!
「あっ、あんっ!!」
(あぁ……いつ聞いても兄様の悲鳴は……ずっと聞いていたい……)
千早は恍惚としながら千歳のお尻を叩き続ける。
軽い打音が響くたび、苦しげに小さな悲鳴を上げる千歳。
悲鳴だけじゃなくて早い段階から謝罪もしていた。
「ごめんなさい千早ちゃん……!!」
「貴方は素直で素敵な方ですよ兄様。
でも、まだお仕置きは始まったばかりですし」
パシッ!パシッ!パシッ!
「はぁ、あ……!うっ!」
(さぁて……いつまで耐えられるか……)
千早はだんだんピンクに染まっていく千歳のお尻を観察しながら
そんな事を考える。簡単に許すつもりなんて無かった。
だから、何度も何度も鞭を振るい続ける。
けれど……不思議な事にお尻を打てば打つほど許せなくなってくるのだ。
パシッ!パシッ!パシッ!
ずっとそうしていると、千歳のお尻も痛々しい感じに赤くなってくる。
悲鳴も泣き声に近くなる。
「やっ、あ、あぁぁっ!」
「お尻がもう真っ赤だ……可愛らしいですね」
千早の涼しい声がそう言えば、正反対の切羽詰まった声が叫んだ。
「千早ちゃん!もうやめて!反省した、から……!次から、ちゃんと勉強するから!」
「勉強?そんなのどうでもいい……」
「許して……お願い!お願いだからぁぁっ!!
千早ちゃん!痛い!痛いよぉっ!ごめんなさい!」
「そうです……痛いんですよ兄様……!」
千早はギリッと鞭を握る。
叩いているうちに膨れ上がった怒りがここにきて爆発した。
「あんな物を見せられて!!オレがどんな気持ちだったと思ってるんですか!?」
ビシッ!バシィッ!ビシィッ!
怒鳴って、力任せに鞭を振るえば、鞭の音はいっそう激しくなって
千歳が泣き叫ぶ勢いで悲鳴を上げた。
「いやぁぁぁぁっ!ごめんなさい!ごめんなさぁぁぁい!」
「貴方があんなゴミ虫と!あんな事をして!オレは気がおかしくなるかと思った!!」
「ごめんなさい!愛してる!僕が愛してるのは君だからぁぁぁ!!」
「えぇ、オレも愛してますよ兄様!だからこそ、遊びでも許せない!
許して欲しいなら、もっとオレに愛を誓ってみろ!!」
ビシッ!バシッ!ビシッ!
「あぁああっ!千早ちゃん!!愛してるから!愛してる!君だけを!
痛いぃ!愛してる愛してる痛い愛してるぅぅぅっ!千早ちゃぁぁぁん!」
(兄様……!!)
千早は千歳が足踏みするように暴れて、真っ赤なお尻が上下に揺れるのを見ていた。
泣きながら“愛してる”を叫んで許しを乞う……その千歳の姿に、
許せないけど、愛おしくて虐めたい……そんな良く分からない興奮を感じて
強く鞭を振るっていた。
ビシッ!バシッ!ビシッ!
「うわぁぁぁぁぁん!あぁぁあああん!」
耐えられなくなったのか、千歳は泣きながらその場にしゃがみこんだ。
それでも千早の異常な興奮は冷めない。
顔にだけは優しい笑顔を貼り付けて、千歳に手を差し伸べる。
「ダメじゃないですか兄様……まだ途中ですよ。立ってください」
「ごっ、ごめんなさい!ごめんなさい……ぼくっ、もう……!
許、っして……愛してるから、君を……!」
「オレもです。さぁ、いい子だから立って」
「いやっ……ごめんなさい!もう嫌なの!お願い、許して!!」
「それなら、貴方は悪い子というわけですか?」
千早がそう言うと、千歳は「ひっ……!」と悲鳴を上げ、本気で怯えた表情をしたけれど
それを無理やり立たせるでも無く、千早はソファーにぶっきらぼうに座って足を組む。
そして驚いた表情の兄を見下ろした。
「ね?立たなくていいようにしてあげましたよ?
この前貴方がしてくれてみたいに、続きはオレの膝の上でお仕置きしてあげます。
だから……」
背中から抜ける様な快楽と共に、千早は言う。
「オレのところに這いつくばっておいで?愛しい兄様」
「うっ……ひっく……」
千歳は無言でただ泣きじゃくって、
立ち上がりもせずにズルズルと“這う様に”千早の膝に上る。
体力が無かったのか千早の言う事を実行したのかは定かではないけれど、
千早にとっては大満足の後半戦だ。
張り切って、再び千歳の真っ赤なお尻を叩き始める。
バシッ!バシッ!バシッ!
「あぁん!!ごめんなさい!ごめんなさい千早ちゃん!あい、して……!
ふぁあああんっ!」
「貴方の“愛してる”なら何度でも聞きたいところだけれど……
あまり連呼すると安っぽくなりますね……もったいない事です。
だから、今からはもう可愛く鳴くだけでいいですよ?」
「うわぁぁぁぁん!千早ちゃぁぁぁん!」
「あはははっ!上出来上出来!その調子!」
バシッ!バシッ!バシッ!
すっかり上機嫌になった千早は
千歳の呼吸と抵抗を体で感じながら、気の済むまでお仕置きし続けた。


そしてお仕置きはいつしか終わっていて、
千早はソファーでお尻を出したまま泣いている千歳を抱きしめていた。
穏やかな空気に包まれながら、千早が口を開いた。
「兄様……オレ、思い出した事があるんです。
小さい頃、兄様は可愛らしい泣き虫で、泣いている兄様を
オレがいつも慰めて、引っ張っていました。“オレが兄様を守ってあげる”って……」
千歳が頷くのを肌で感じて、千早は抱きしめる腕に力を込めた。
感情が高まっていくのを止められない。
「けれど、貴方はだんだん泣かなくなった。
知らない間に、どんどん強く気高くなって、オレの前ばかり歩く様になった。
いつも笑顔で余裕たっぷりで……そんな貴方がオレは愛しくて誇らしかった。
だから、喜んで貴方に従っていました」
千早は夢中で話し続ける。
何かを訴えるように服を握りしめる千歳の手の感触も感じないほど。
「でも、実際は違ったんですね。貴方はただ“強いフリをしていた”だけだった……
ごめんなさい。オレは、ずっと気付かなかった。
泣き虫でか弱い貴方に、ずっと前を歩かせた……無理をさせていたんだ!!」
「違う……」
「もう大丈夫です兄様……前みたいにオレが、守ってあげます!
ずっと、守りますから!貴方はもう強がらなくていい!
これからは安心して……オレの後ろに付いて来て下さい……!」
「千早ちゃん……!僕……っ!」
千早の口づけが千歳の言葉を奪う。
唇が離れたと同時に千歳は無意識に呟いていた。
「ダメ……」
小さな声も零れた涙も、千早には届かなかった。
そのまま、千歳は千早に押し倒された。



「イル君!!」
能瀬に呼びとめられたイル君は振り返る。
怪訝そうなイル君に、能瀬は友好的な笑顔で話かけた。
「ごめんなさい、呼びとめて。今更ですけど、改めて挨拶をしておきたくて。
私、君の様に千早様に忠誠を誓う事を決めましてね。
“洗脳組”の貴方達とも、今後は色々協力する事になりそうです。
どうぞ、よろしくお願いします。共に、千早様の望む未来を叶えましょう!」
能瀬はイル君にしっかりと握手をする。
しかし、握った瞬間に大きく振りほどかれてしまった。
イル君は能瀬を睨みつけ、言う。
「我々が叶えたいのは“千早様の望む未来”だ……!
貴方の野心じゃない……!!」
「……だから、そう言ってるじゃないか……」
能瀬は挑発するように笑う。
けれどもその笑顔は一瞬でいつもの人の良い笑顔になった。
「驚いたよ。君にもそんな顔ができるなんて。
頭の良い方は警戒心が強過ぎて困る……私は君の味方だよ?」
「…………」
まだ睨みつけてくるイル君に、フッと諦めたように笑い、
能瀬はイル君の横を通り過ぎた。
「君も近いうちに分かる。何が“千早様の望む未来”か……」
そう言いながら、通り過ぎざまに肩を叩かれたイル君は
能瀬の後ろ姿をずっと睨みつけていた。




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【作品番号】BS11

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