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二鬼昔話
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ここは、ある日の妖怪御殿……ではなく、それどころか妖怪御殿が無かった頃。
人間の世界の、とある神域の山奥、西部45団の鬼たちが住む集落は
今日も平和で、皆が気ままに過ごしていた。
「そーれっ!」
「ぷぎゃっ!!」
青年鬼に軽く放り投げられた幼い子鬼が地面を転がる。
むくっと起き上がって頭を振る子鬼に、周りの青年鬼達から明るい声援がかかる。
「ほらほらどうした煤鬼ぃ!」
「煤鬼行け!頑張れ―っ!!」
「今度こそいけるいける!やっちまえーっ!!」
その声援を受けて、子鬼……煤鬼は再び立ち上がって走って、
果敢にも先ほど投げられた青年鬼に組みかかっていくが……
「よいせ――っ!」
「ひぎゃっ!!」
再び軽く放り投げられてしまう。
周りからは笑い声混じりの歓声、そして先ほどと同じように声援が掛かる。
「煤鬼いけるって!もうちょっともうちょっと!!」
「ほら立って立って!!頑張れ!」
「俺達がついてるぞ煤鬼―!ハイす・す・き!す・す・き!」
はやし立てるような声援、手拍子と“煤鬼”コールに押されて……
煤鬼はまた立ち上がって、顔に付いた砂を乱暴に拭うと
先ほど投げられた青年鬼に走りかかっていく……
「うっ……うわぁあああん!!」
泣きながら。
一応言っておくと、煤鬼は決していじめられているわけでは無く、
あくまで大きいお兄ちゃん達と遊んでいるわけだが……
「おっ!やるか煤鬼この!!」
「あぁああああん!!」
今度は抱き上げられてグルングルン回される煤鬼の不機嫌そうな泣き声が響き渡ると、
「ゴラァアアアアアッ!お前らまた煤鬼泣かせてんじゃねぇっ!!」
どこからか怒鳴り声が響く。
その怒鳴り声と共にこちらに向かってきたのは大柄な鬼の青年。
その場にいる誰よりも大きくて立派な体躯の彼を見て、
煤鬼と遊んでいた青年鬼達は、焦ったように口々に弁解を始めた。
「違うって剛鬼兄さん!!俺達煤鬼と遊んでただけで!!」
「そうそう!別にいじめてないから!!」
「ちょっとした相撲だし!」
“剛鬼兄さん”と呼ばれた青年、剛鬼は困った顔で仲間を見やってかがみ、泣いている煤鬼の頭を撫でる。
「ったく……遊ぶのはいいけど限度考えろって!大丈夫か煤鬼?」
「だぁあああってぇぇぇ!!全然勝てないぃぃぃっ!!」
痛みや悲しみではなく、怒って泣いているらしい煤鬼の様子に安心したように笑って、剛鬼が明るく言う。
「あーあー、男がそんなに泣くんじゃねぇよ!おーし!じゃあ、俺とやるか?」
「!!」
驚いたように目を丸くして泣き止む煤鬼。
周りがまた勝手に盛り上げ始める。
「おっ!煤鬼〜〜!剛鬼兄さん倒しちまうのか!?」
「行け行け!剛鬼兄さん倒したらすごいぞお前!」
「ハイす・す・き!す・す・き!」
周りにはやし立てられ、煤鬼もやる気になって先ほどと同じように
剛鬼に組みかかっていくが……
「おいしょぉっ!!」
「ぎゃぁああっ!!」
やっぱり軽く放り投げられて、周りに楽しそうな笑い声が響いていた。



そんな昼間から時間は夜へと移り、
若い鬼達は集会所のような場所で火を焚いた明かりの中で酒を酌み交わす。
煤鬼は宴会に疲れたのか、胡坐をかいた剛鬼の膝の上で丸まって眠っていた。
そんな煤鬼の姿を見て誰かがぽつりと漏らす。
「こうやって見ると、煤鬼やっぱ小さいよなぁ……」
「だよな。いくら食わせても、なっかなか育たんし……」
「言いたくないけどよぉ、あんま長く生きられない子かもな……」
誰ともなく口々に言った会話で、その場がしんみりした空気になる。
すると、杯を一口呷った剛鬼が眉間にしわを寄せて呟く。
「んな事ねぇよ……」
自分に注目した仲間達に向かって、剛鬼は今度は笑って言う。
「今だけだ。きっと煤鬼もすぐデカくなる。
それに、いつ死ぬか分からないのは俺達だって同じだろーが」
「違いねぇ」
剛鬼の言葉に、周りも安心したように微笑んで、空気が和らぐ。
剛鬼はそのままこう続ける。
「だから、生きてるうちに楽しい思い出をしこたま作るんだよ。なぁ煤鬼?」
まるで煤鬼に語りかけるようにそう言って、剛鬼が眠っている煤鬼の頬を撫でると……
煤鬼が眠りながらうっとおしそうにその手を払いのけて、皆が大爆笑していた。


また別の日。
煤鬼は、楽しそうな青年鬼達の輪を見つけたので嬉しそうに寄っていく。
「皆何してるんだ!?」
「ああ!あっちの山にさ、美味いキノコがあるから採りに行くんだ!
誰が一番デカくて美味いキノコを採れるかって!」
ニコニコと答えてくれた青年鬼の答えを、煤鬼は驚いて止めた。
「だ、ダメだ!何言ってる!山は剛鬼兄さんが危ないから行っちゃダメだって言ってただろう!?」
不安げな煤鬼がそう言った後、今度は青年鬼達が驚いて互いに顔を見合わせる。
明らかに気まずそうに目配せした後、ぎこちなく笑いながらパラパラと口を開いた。
「あ〜〜……あぁ!そうだった!じゃあ行くのやめるわ!な!?」
「そ、そうだな!剛鬼兄さんに怒られる!やめよやめよ!」
「止めてくれてありがとな煤鬼!じゃあ!」
すれ違いざまに煤鬼を撫でる者もいつつ、青年鬼達はスタスタと去っていく。
煤鬼は、そんな彼らに違和感を感じてこっそり後をつけた。
すると……
(やっぱり!!皆でこっそり山へ来たんじゃないか!)
現在、青年鬼達は連れだって山の中を歩いている。
煤鬼は深く入る前に引き返そうとした。
(剛鬼兄さんに知らせないと……!
まったく!皆、お仕置きされても知らんからな!!)
が。
「しっかし、煤鬼に止められたときは焦ったよなー!」
「お前がベラベラ喋るからだろ?」
「!!」
自分の名前が会話に出て来たものだから、煤鬼は思わず振り返って……また青年鬼達に付いて歩く。
そうとも知らない好き勝手な会話が繰り広げられた。
「いやだって聞かれたから……けど、うっかりしてた!煤鬼は山歩き禁止だもんな」
「まぁアイツ子供だしちっこいからなぁ。いざって時の体力も腕力も無いし、この辺危ないよなぁ」
「剛鬼兄さんの優しさだろ?いつか一緒に来たいけど……まだしばらくは無理か」
「煤鬼と来られるのは500年後くらいかねぇ?」
途端、「そんなにかからんだろ!?」と皆の笑い声が響く。
煤鬼は驚愕してその場で立ち尽くした。
(……え?何……?もしかして、“ここに来ちゃダメだ”って言われてるの俺だけ?
俺が小さいから?弱いから?)
皆に騙された。仲間外れにされた。それも、酷く優しい方法で。
“剛鬼兄さん”でさえも……
煤鬼の顔が悔しさと恥ずかしさで赤くなる。
(何だ……何だ!!俺だって皆と同じ鬼なんだぞ!!
こうなったら、皆が驚くようにデカくて美味いキノコを採って、ビックリさせてやる!
そしたら剛鬼兄さんだって、俺を認めてくれて、変な禁止は出さないはず!)
皆の笑い声がまだ微かに聞こえてきて体が熱くなる。
拳を握った煤鬼は、適当な方向へ走りだした。

「……おい、今後ろでなんか動いた?」
「え?分からん。獣か何かだろう?」
青年鬼達は、何も知らずにキノコ狩りへ向かう。


その後……
一人山の中を適当に歩く煤鬼は、重要な事を思い出していた。
(俺……皆の探してるキノコがどんなのか知らない……!!)
一瞬、頭の中に“ガーン”とショックの音色が響いたが、煤鬼はすぐに気持ちを切り替える。
(けど!とりあえずデカいキノコを採っていけばいいだろう!
それか、いっぱい採っていくとか!見た目の綺麗なキノコってのもいいな!)
剛鬼や皆の賞賛と笑顔を思い浮かべながら、煤鬼は楽しそうにキノコ狩り始める。
『すげぇ!こんなデカいキノコ見た事ねぇ!本当に煤鬼が採ってきたのか!?』
『しかもたくさんあるし美味い!煤鬼、今度俺達にも場所を教えてくれよ!!』
『煤鬼もやるもんだなぁ、御見逸れした!今まで小さい小さい言ってごめんな?』
『煤鬼……悪かった。お前も俺達と同じ、立派な鬼だって分かった……!
これからは、どんどん山へ行っていいぞ!』
「ふふふっ!フンフンフ〜〜ン♪」
いつしか鼻歌が始まり、一人なのに大きな声を出していた。
「これ!これはどうだろう!?相当デカいぞ!」
「こっちは色が綺麗だ!皆きっと感激するなぁ!」
「ふふ!こんなにデカいのも綺麗なのもたくさん取れたら、
間違いなく俺がキノコ狩り優勝だな!」
厳選したキノコ達を服の中にどんどんしまいこんで、煤鬼はご満悦だった。
時間も忘れて、思う存分キノコを集めて……
気が付けばあたりも暗くなりかけて、ハッと気づく。
「あれ……もう日が暮れてるぞ……帰ろうかな……」
そう思って、キョロキョロと辺りを見回して……
煤鬼はこの時に初めて――
(帰り道、どっちだっけ……?)
道に迷った事に気が付いた。


「おーい!皆――っ!いたら返事してぇぇぇっ……!!」
しばらく森の中を彷徨っている煤鬼は、声を張り上げる……が、語尾は弱くなる。
相変わらず帰り道は分からないし、どこかにいるはずの皆と合流できないかという
淡い希望も、辺りが暗くなるにつれだんだん消えていく。
煤鬼は心細さでだんだん泣けてきて……
「な、泣いちゃダメだ!泣いちゃダメだ!
泣てばっかりだと剛鬼兄さんみたいになれないって、言われたもん!!」
自分を勇気づけるようにそう言って、溢れだす涙を必死で拭う。
そのとき、近くで物音がした。
ガサッ!ガササッ!!
「!?皆!?」
煤鬼は皆が反応してくれたのかと嬉しそうに音のする方を注目する。
が。
そこに現れたのは
「煤鬼!!」
「!!」
「バカ野郎!!こんな所で何やってんだ!!」
突然現れた剛鬼に大声で怒鳴られて、強く手を引かれる。
「帰るぞ!!言いつけを守らねぇ奴にはうんとお仕置きしてやるから覚悟しとけよ!?」
はずみで、採ったキノコがいくつか服の中から零れ落ちて、
それを見た煤鬼は悲しいようなイラつくような複雑な気持ちになって、思わず叫ぶ。
「嫌だ!皆は山に入っていいのに何で俺だけお仕置きされるんだ!
俺だけ差別しやがって剛鬼兄さんの性悪!!」
「あ゛ぁっ!?」
「おっ、大声出したって怖くないぞ!!
俺だけ仲間外れにした事、謝るまで帰らんからな!!」
とにかく必死でそう叫びきった煤鬼。
「……そうか。ここでがいいのか」
酷く冷静なその一言に、その意味に。一瞬で鳥肌が立って一歩身を引くが、間に合わず。
煤鬼は一瞬で捕まってしまって、躊躇なく地面に胡坐をかいた剛鬼の膝の上に横たえられ、
着物の裾を捲られてお尻を丸出しにされると、恐怖のあまり手のひらを返して泣き喚く。
「待って違う!違う!!嫌だ怖い怖い怖い!!」
「ほぉ?さっき“怖くない”って言ってたのにもう撤回か!?」
バシィッ!!
「うわぁあああん!!」
力の強い剛鬼の平手打ちは、当然ながら
一発目から高火力で、煤鬼は早くも泣き喚いた。
「痛い!痛いぃっ!!」
「当たりめぇだ!心配掛けやがって!こっからどんどん痛くなるぞ!?」
ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「うわぁあああん!嫌だぁッ!ごめんなさぁぁい!」
「一回謝ったくらいで許されると思うなよ!?
山には!危ないから!!入るなって!何度も言っただろうが!
お前がどんなに泣こうが喚こうが、たっぷり反省させてやるからなぁ!」
バシッ!バシッ!!バシィッ!!
脅されつつも容赦なく叩かれて、そんなに時間の経たないうちから
煤鬼の小さなお尻は真っ赤になってしまって、
ひたすら謝って泣き喚いていた。
「うわぁあああん!ごめんなさぁぁい!!だってぇぇっ!!」
「言い訳なんて聞かんぞ!こんの悪坊主め!!」
「うわぁああん!だってぇぇっ!!ごめんなさい!!だってぇぇっ!!」
「“だってだって”言うな!」
バシッ!ビシィッ!バシィッ!!
何か言おうとするたびに何度も叩かれて叱られても、
煤鬼は体を跳ね上げて泣きながらも懸命に言う。
「あぁああああん!だってぇぇっ!俺が小さくて弱いから一人だけ“ダメ”って言われると思って!
剛鬼兄さんにも皆にもバカにされてるって思ったら!
そしたら、悲しくなって、悔しくてぇッ!!すごいキノコ採ったら!あぁあっ!
剛鬼兄さんも皆も認めてくれると思ってぇぇッ!!」
「!!…………」
その必死の言葉に、剛鬼は一瞬驚いたように手を止めるが、
「そういう事じゃねぇだろバカが!!」
バシィッ!!
「わぁああああん!ごめんなさぁぁい!!」
またすぐに力強い平手を振り下ろした。
煤鬼は最初から真っ赤にされているお尻を振って足をバタつかせて、
とにかく痛みで暴れて泣きながらも謝りまくっていた。
「もうしない!反省した!反省したからぁッ!痛いごめんなさぁぁい!あぁああん!!」
バシィッ!バシッ!バシンッ!!
「うわぁああん!もう絶対しない!剛鬼兄さんの言う事聞くぅぅぅっ!!約束守るからぁぁッ!!」
「よーし言ったな!?絶対だぞ!?今度言いつけ破ったこんなもんじゃ済まさねぇからな!?」
「分かった!分かったぁぁっ!もう許してぇぇッ!!痛ぁぁい!うぇぇええっ!!」
頭を振って泣きじゃくっている煤鬼を軽々と押さえつけている剛鬼は、
最初の言葉通り“どんなに泣こうが喚こうが”まだ許す気は無いようで、
ペースを崩さずに厳しくお尻を叩いている。
「はぁ!?甘い事言ってんじゃねぇよ!誰が許すっつった!?
悪い子鬼めはこのまま一晩中お仕置きだっていいんだぞ!?」
「あぁぁああっ!やだっ!痛いぃっ!ごめんなさいもうやだぁあああっ!!」
もう必死&本気で泣いて嫌がっている煤鬼がそれでも叩かれて……
バシィッ!ビシッ!バシィッ!!
「うわぁああん!痛い!痛い痛いぃっ!!やぁああああっ!!」
「うぉ!?」
急に剛鬼が素っ頓狂な声を上げる。
原因は剛鬼のズボンをみるみる濡らしていく温かい液体……
つまりは、煤鬼が痛みと恐怖の限界で失禁してしまったらしい。
「わぁああああん!!ごめんなさいぃっ!!」
「煤鬼、おまっ……え……」
剛鬼は一瞬動きを止めてビックリしたように瞳を瞬かせたのち、
「何しやがる!!着物グショグショじゃねぇか!!」
バシッ!ビシィッ!バシィッ!!
「ああぁああん!ごめんなさぁぁい!!痛かった!痛かったぁ!」
また煤鬼のお尻をバシバシ叩いたけれど、
このアクシデントで怒る気が削げてしまったらしく、すぐに手を止めた。
「ったく……!!しっかり反省したか?」
「いっぱいしたぁああああっ!ごめんなさぁぁい!」
「ならいいけど……どうすんだよコレ……まぁいいか」
剛鬼は煤鬼をその辺に下ろすと汚されたズボンを脱ぎ捨てる。
そして、再びしゃがんで煤鬼を抱き寄せる。
煤鬼は一瞬ビクリと身を震わせて目を閉じたけれど、優しく撫でられて怖々と目を開けていた。
剛鬼の優しい声が言う。
「なぁ煤鬼?俺は別にお前が小さいからとか、弱いからとかバカにしてるつもりはねぇし、
お前だけを差別してるつもりも無い。
まだ子鬼のお前が、俺らより小さいのも弱いのも当たり前じゃねぇか。
俺だって最初からこんなデカかったわけじゃねぇよ……分かるだろ?」
「うん……」
煤鬼はしゅんとしながら頷いて、剛鬼が話を続ける。
「デカくて強い鬼になりたかったらな、まずは大人にならなきゃならん。
長生きするって事だ。俺はお前が、大人になるまで守りたいんだよ。
だからお前に“山に行くな”って、言ったんだ。他の奴らには大丈夫でも、
お前にはまだ危険な場所だから。下手すりゃ死ぬかもしれないから。な?」
「うん……」
「……ま、でも……お前にそんな風に思わせたんなら……ごめんな?」
剛鬼が少し眉尻を下げて笑う。
すると煤鬼も感極まって、
「う……ん……っ、うわぁああん!!ごめんなさい!心配かけてごめんなさぁあああい!!」
また泣きながら剛鬼に縋り付いた。
剛鬼はそんな煤鬼の背中を優しく叩きながら明るく声をかける。
「だ〜から、男がいつまでも泣くな!皆も心配してんだ!帰るぞ!」
「うんっ!!」

こうして、煤鬼はすんなり剛鬼に負ぶられて帰る道を辿る。
その道中、剛鬼を後ろから覗き込むようにしながら煤鬼が言った。
「剛鬼兄さん……、俺がその、お仕置きされて漏らした事、皆にはナイショだからな!?」
「ん〜〜どうだかなぁ?俺は性悪なもんで」
「ち、違う!!あれは……違う!言い間違えた!剛鬼兄さんは優しい!!」
「調子いいなぁコイツ」
剛鬼も嬉しそうに笑っていて、二人は楽しそうに会話しながら穏やかに帰っていった。



そして、帰ったら帰ったで心配していた他の青年鬼達に怒り気味に取り囲まれる煤鬼(と傍にいる剛鬼)。
「煤鬼!今までどこ行ってたんだお前コラぁ!!」
「心配したんだぞ!お仕置きしてやるからちょっとこっち来い!」
「ごっ、ごめんなさい……!!」
煤鬼は皆の剣幕にたじろいで剛鬼の影に隠れるが、
そうすると剛鬼が大声で皆を宥めた。
「勘弁してやれ皆!煤鬼は俺が漏らすまでお仕置きしてやったから!」

「「「…………」」」

静寂の後、
さっきまで怒っていた青年鬼達が一瞬で笑顔になった。
「あ、それならいいか!」
「じゃーまー懲りたよなぁ煤鬼?」
そして、もちろん煤鬼は……
「剛鬼……兄さんの……バカァアアアアアッ!!性悪ぅぅぅぅうう!!」
顔を真っ赤にして涙目で叫んでいた。
周りで、楽しそうな笑い声が重なった。

※煤鬼の採ったキノコはいつの間にか全部落としてしまったようです。

【おまけ】

剛鬼「……てぇ、事が〜〜、昔あってよぉ〜〜……」
灯美鬼「アンタ、その話50回くらい聞いたんだけど?」
剛鬼「あ?そうだったかぁ〜〜?」
灯美鬼「飲み過ぎだよ。酔うとその話始まるんだから……罪悪感でもあんのかい?
     煤鬼も“子供の頃の事だから気にしてない”って言ってたし、
     いい加減ネタにすんのやめてやんなよ?」
剛鬼「“子供の頃の事”……かぁ。ククッ、ちゃぁんと大人になったんだなぁ……
    まだ全然ちっさいけどよぉ……」
灯美鬼「あぁ。立派なイイ男だよ。あの子は」
剛鬼「ったりめぇだろ〜〜俺の弟分なんだからぁ……
    よーし!気分いいからとことん飲むぞ〜〜!!酒持って来〜〜い!!」
灯美鬼「だから飲み過ぎだってば!!」



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【作品番号】hutaoni

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