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 正しい嫁の躾け方4(ネムール場合) 
BL





俺はワルイ13世。
最近結婚したばかりの新婚フレッシュで若くてイケメンな王だ。
我が国の繁栄のためにも、愛しい妻とラブラブな毎日を過ごし、優秀な後継者を授かることが急務!
と……おい!!そんな事より俺の寝室から煙が!!
「うわあぁあああ火事だぁぁぁぁ!!」
俺は急いで寝室に駆け込む。
中では組木に囲まれた柱のような炎が轟々と燃えていた。
そして何やら神秘的な音楽が掛かり、ネムールが躍っていた。
「ネムール!またお前か!!」
俺の言葉にネムールは答えない。ただ一心不乱に踊っている。
と、とにかく早く火を消さなければ!!
「みっ、水!水だ!早く!リリア!リリア――!!」
「どうしましたワルイ様!?きゃっ!!?」
駆けつけてくれたリリアも思わぬ火災現場に驚いたようだった。
「ネムちゃんまだこの部屋諦めてなかったのね……すぐに消火しますわ!」
「ありがとう!俺も手伝う!!」
すぐさま二人で水を汲んできて火柱にぶっかけた。
火は一瞬で消し止められた……良かったぁぁぁ……。
「あっ……!!」
火が消えて、やっとネムールが反応した。
「やだ……何てこと!!何をなさるんですか!!」
「それはこっちのセリフだバカぁぁぁぁっ!!音楽止めろぉぉぉお!!」
もう俺はいてもたってもいられずネムールを怒鳴りつける。そしてリリアが音楽を止める。
ネムールは周りを砂漠に囲まれた秘境、小さな村の出身だ。
暴漢に襲われているところをリリアが保護してついでに俺の嫁となった。
王族の血筋こそないが、とある宗教の教祖を名乗っていて……
そうこれ!この宗教こそが今の最大の問題点だ!!
ラーナ・カリット教……火の女神ラーナを信仰するらしいこの宗教の祈り方で
俺の寝室が何度焼かれそうになった事か!!
今日という今日はもう絶対に叱り倒してやめるよう説得してやる!!
「ネムール!!俺の寝室で祈るなと何度言ったら分かるんだ!!礼拝室を作ってやっただろう!」
「ワルイ様こそ、何度言えば分かっていただけるんですか!!ここが一番神聖な場所なんです!!
あんな礼拝室要りません!!」
そうだった!何度言い合ってもこの流れになるんだった!しかし、今日は引くモノか!
「神聖云々はもう諦めてくれ!ここは俺の寝室なんだ!」
「ここを礼拝室にしてください!!ワルイ様が別の部屋で寝ればいいでしょう!?」
「先祖代々寝室はここなんだよ!こっちにとっても特別な部屋だお前には渡せない!!」
「なら勝手に祈らせてもらいます!!」
ぐるりと部屋を取り囲むように飾られるご先祖様の肖像画の為にも、俺はネムールを説得したいのに
ネムールはずっと俺を睨みつけてくる。
他の事に関しては、嫁達の中で一番模範的なくらいなのに宗教が絡むとこうも強情だ。
うぅ、政治と宗教となんちゃらの話題は夫婦でも揉めるというけれど……
可愛らしいネムールとケンカが絶えないのは心苦しい。
(こうなったら、少し強引にでもこの場所は諦めてもらおう!!)
たった一つだ。この寝室さえ諦めてくれたら、あとは俺もとやかく言うつもりは無い!
ケンカの火種も無くなるだろう!
俺はなるべく威圧的に言う。
「……ネムール、お前に手をあげたくないんだ」
「!!」
「今一度しか言わないぞ、“この部屋は諦めろ”。他は自由にして構わないから。
これ以上逆らうなら、仕方がないから体で分かってもらおうか?」
……まるで悪役の様なセリフだ。
ネムールも少し怯えたような顔になって何だか胸が痛む。
でもここまで言えばさすがに……
「……分かりました。この場所は、諦めましょう」
「お!いい子だ!」
ほら!諦めてくれたぞ!
「……他は好きにしていいんですよね?」
「あぁ、もちろん!」
「ふふっ……♪後悔しますよ
「ん?」
最後の方は聞き取れなかったものの、ネムールも機嫌よく笑っているしこの件は解決だな!
これからはネムールとラブラブできるはずだ!


【次の日だ】

さっそくネムールと一緒に過ごそうと部屋に行ったらいなかった。
リリアに聞いてみると……
「お祈りしているんじゃないかしら?ほら、礼拝室で」
あの礼拝室をさっそく使ってくれてるのか!関心関心!!
祈りの邪魔をするのも野暮だし、戻るまで待っていようか……
そう思って、歩いていたらアシュラフとすれ違った。
「お!アシュラフどこへ行くんだ?暇なら一緒にお茶でも……」
「悪い。礼拝にいくんだ。ラーナ様に祈りを捧げないと」
「へ?」
「急いでるんだ。もう行くぜ」
アシュラフはさっさと歩いて行った。
あれ?アシュラフはラーナ・カリット教の信者だったのか?
(……ネムールと、出身が近そうだし……そうだったのかもしれない)
俺は、少し胸騒ぎがしたけれどネムールを待っていた。
そして帰ってきた彼と楽しく話した。


【その次の日だ】

今日もネムールと一緒に過ごそうと部屋に行ったらいなかった。
あの礼拝室だろうか?アシュラフもいるのかな?
俺が入るわけにもいかない。今日も戻るまで待っていよう……
そう思って、歩いていたらロロとすれ違った。
「お!ロロ、元気か?暇なら一緒にお茶でも……」
「あ……ラーナ様に、お祈りを、しにいくので……」
「は?」
「すみません。ごめんなさい」
ロロは早足で歩いて行った。
おい、ロロもラーナ・カリット教の信者だったのか?
(……ロロは、気が弱かったし、神に心のよりどころを見出していたのかも)
ラーナ・カリット教の布教規模は知らないが、有り得ない話ではない。
何だか変な感じがしたけれどネムールを待っていた。
そして帰ってきた彼と一緒に夕飯を食べた。


【その次の日だ】

今日こそネムールと一緒に過ごそうと部屋に行ったらいなかった。
あの礼拝室……アシュラフやロロもきっと。
俺は何だか中を覗いてみたかった。邪魔かな?やっぱり戻るまで待っていよう……
そう思って、歩いていたらリウリーとすれ違った。
「お!リウリー、いいお茶請けがあるぞ!暇なら一緒にお茶でも……」
「今からラーナ様に祈りに行くのよ。後にして」
「ええっ!?」
「アンタも来れば?」
リウリーはキビキビと歩いて行った。
……リウリーも、ラーナ・カリット教の信者だったの、か?
(何か、何か不気味じゃないか?)
ラーナ・カリット教の規模は知らない。有り得ない話ではない。
けれど、今になって急に皆が祈り出した気がしてならない。
俺はネムールを待たずに眠った。
明日、俺のやる事は決まっていたからだ。


【その次の日だ】

今日の俺はネムールではなく竹雛に会いに行った。
あの礼拝室……アシュラフやロロ、リウリーまで通っている。
俺が中を覗く前に……確証が欲しかった。
竹雛の部屋に行き、何気なく声をかけた。
「竹雛!一緒にお茶しよう!」
「騒々しいのぉ。妾は今からラーナ様に祈りに行くのじゃ」
「……やはりか!!」
「婿殿も来るか?」
竹雛は楚々と部屋を出ようとする。その腕を取った。
「竹雛!ネムールに何かされたか!?お前だけじゃない!他の皆も!」
「何じゃ!?邪魔するでない!」
「お前の神はお前だろう!!目を覚ませ!」
あの竹雛がラーナ・カリット教の信者なはずがない!!
こうなってくると最初のアシュラフさえ怪しい!
アイツはネムールを可愛がっていて一緒にいる時間も長かったはずだ!
全員が、ネムールに何かされた可能性があるぞ!!
「ワケの分からぬことを喚くでない!離してたも!
気になるなら一緒に来ればいいのじゃ!」
「……」
そういえば、昨日のリウリーも俺に“来い”というようなことを言っていた。
(ネムールが俺を誘いこんでいるのか?
俺も洗脳しようとしているのか?フッ……面白い!)
どのみち、俺はこの洗脳を解く術を知らないし、ネムールに解かせるしかない。
「分かった。行ってやろう」

覚悟を決め、竹雛と共に礼拝室に行った。

【礼拝室だ】

「ネムール!!来てやったぞ!」
「ようこそワルイ様……」
ネムールは部屋の最奥で、ただいつものように笑っていた。
手前のアシュラフ、リウリーやロロの視線が俺に集まったが、恐ろしいくらい虚ろなものだ。
いくつもの蝋燭(?)が灯り、何か分からないがいい香りが漂い、薄明るい間接照明……
部屋の宗教的な独特の雰囲気も相まって、俺は少々気圧されながら言う。
「おっ、オイタはここまでだぞ!みみみ、みにゃ、皆の洗脳を解け!」
ちょっと気圧され過ぎた。
クスクス笑うネムールにいつもの無邪気さは無い。
「洗脳などと人聞きの悪い……皆様、純粋な信仰心によって集まってくださっています」
見ればネムールも何だかふわっとした、酔っているような顔だ。
まさか、自分を含めて何らかの暗示にかけてるんじゃ……
恐ろしい宗教だラーナ・カリット教!
「おのれ、目を覚まさせてやる!!」
俺は弱い!だが、いくらなんでも子供相手なら勝てる!
そう思ってネムールをとっ捕まえようとしたが……
「ラーナの民よ!異端者を捕えるのです!」
ネムールの一言で、リウリーとアシュラフが俺の前に立ちはだかる。
あ、ダメだこの組み合わせは勝てない。ネムールめ、よく全員の戦闘力を把握してる。
ぜひリリアを呼びたい。ところだが、
(し、しかし……俺の嫁の事だ。どうにかして俺の力だけで、解決したい……!!)
どうすればいい!?どうしたら皆の意識を取り戻すことができる!?
とにかく何か話しかけてみよう!愛の力で目を覚まさせるのだ!
「リウリー!アシュラフ!愛してる!!お願いだ!目を覚ましてくれ!」
「聖域をヨコセ」「寝室をヨコセ」
ドカッ!ドカッ!
「あいたたたっ!何をする!やめろ!やめてぇぇっ!!」
くそ!二人がかりで蹴ってくる!痛い!
俺は防御態勢を取りながら必死で叫ぶ。
「やめろ!こら!キャー!まっ、またお尻を叩かれたいのかお前らァァァアっ!!」
「「!!」」
こうなったらやけくそだ!俺はワケも分からず叫びまくった!
「リウリー!お前、お尻を叩かれて泣いている時は子供みたいで可愛かったのに!
お前もだぞアシュラフ!二人とも、俺に泣きながら、甘えたくせに!」
「なっ……!」
「コイツ……!!」
「また膝の上で『ごめんなさい』連呼がしたいのか!?お尻を真っ赤にされて――」
「「黙れぇぇぇぇぇッ!!」」
バキッ!ドゴォッ!!
「ぐふぅぅぅぅぅっ!!?」
「何言ってんのよアンタこんな所でぇぇぇっ!!もうバカ!サイテー!」
「喋るな!喋るなもうこれ以上喋るなぁぁァァッ!!」
ガンッ!ガンガンッ!!
あ、あれ?いつもの2人っぽいのになぜ俺は攻撃されているんだ??
「や、やめっ……うぐぅっ!ふ、二人とも!洗脳が解けたんだな!!」
「「!!?」」
俺が必死に叫ぶと、二人はハッとして辺りを見回す。
「あ、あれ?そう言えば私どうしてこんな所に……」
「俺は確か……ネムの部屋に遊びに行って……」
2人が困った様な、疑うような視線をネムールに向ける。
「っ……!!」
ネムールは少しばつが悪そうだ。
俺はチャンスとばかりにネムールに言う。
「二人の洗脳は解いたぞ!残りの二人もすぐにそうなる!もうバカな真似はやめろ!」
「ま、まだ……!!ラーナの民よ……!!」
ネムールの声で今度は竹雛とロロが前へ出る。
だが、リウリーとアシュラフを失った時点で勝負はついてるのだ。
「ネムール……いくら俺でもこの2人には勝てるぞ?
それに、リウリーとアシュラフが黙ってない!!なぁ、お前達!?」
「よく分からないし、ワルイに賛同するのは癪だけど……そうね、二人は助けるわ」
「ネム……」
2人の言葉に、ネムールは余計身動きが取りづらくなっているようだ。
よし!あと一押し!
「ネムール……お前の神はお前がこんな事をする事を望むのか!?
人の心を操ってまで手に入れた信仰を望むのか!?無益な戦いを望むのか!?」
「!!」
ネムールは根はいい子なので、良心に訴える作戦でいくことにした。
思った通り効果はあったようだ。
「あぁ、ラーナ様……!!」
ネムールが悲しげに叫んで顔を覆う。
すると……空から大量の水が降り注いだ。
おぉ、これは……!!
「見よ!ラーナ神の嘆きだ!!」
「いや、普通にスプリンクラーだろう……」
「ん?なんじゃここは!?ぎゃぁあああ妾の高貴な服が濡れるぅぅ!!」
「あ、雨……?」
皆が思い思いに喋っていて賑やかだが、炎も香の香りも、すっかり水に掻き消されてしまって、
とにかくネムールの宗教空間と洗脳は消すことができたようだ。
そんな中、アシュラフがネムールに近づいて、悲しそうな顔で穏やかに言う。
「ネム」
「アシュラフ様……」
「皆に謝るんだ」
ネムールは力なく頷く。
そして皆に向かって深く頭を下げた。
「皆様……本当に申し訳ありませんでした……!!」
ネムールを見ているリウリーも竹雛も、ロロも怒る様子もなく笑っていた。
「反省したんなら、別にいいわ」
「苦しゅうないぞ!妾は小さき者には寛大じゃからの♪」
「大丈夫。気にしないで……」
流石、女衆は子供には優しいな。
俺は……そうはいかないのが辛いところだ。
「ネムールは素直に謝れて偉いな。
でも、これだけの事をしてお咎め無しとはいくまい?一緒に来てもらおうか」
そう声をかけながらネムールへ手を伸ばすが……
「おい!どこ連れてく気だよ!?謝ってんだろ!?」
「そうよ!反省してるじゃない!アンタどこまで鬼畜なの!?」
「えぇ!?」
アシュラフとリウリーに止められた。
俺が悪者みたいになっているが、意外にも二人を宥めたのはネムール本人だ。
「いいのです。これは当然の報い。
皆様の心を弄んだ罰が当たったのです。
アシュラフ様、リウリー様、お気遣いありがとうございます」
本人にこう言われては、アシュラフもリウリーも口を閉じるしかない。
しかし今度は竹雛やロロが……
「む、婿殿!あまり泣かせるでないぞ!?」
「お願いです!残酷な事はしないであげてください!」
結局は、皆に念を押されながらネムールを連れて行くことになった。

【俺の部屋だ】

ネムールをお仕置きしようと、部屋に連れて帰ってきた。
濡れた服もお互い着替えたのだが……
大きなベッドに向かい合って座っても、ネムールは抵抗も反抗もせず大人しくニコニコしている。
(う〜ん……何だかやりづらいなぁ)
「皆様、それぞれ大国の王族の身でありながら、
私の様な民草にも慈愛の心をかけて下さる素晴らしい方々ですね、ワルイ様!」
(頼むからその“良い子オーラ”を消してくれネムール)
かといって、このまま何もせず許してしまうのも……あれ?いいのか?
まぁ、いつまでも俺が固まっているわけにもいくまい。
ネムールに何か言ってみよう。
「ネムール、反省しているか?怖くないのか?」
「!!……す、すみません!!ワルイ様が怒っているのに
ヘラヘラと笑ってしまって……!!」
あ、あら?……
「本当は、怖いです……貴方にみっともなく許しを乞うてでも、
助かれないかと、考えている卑怯な自分がいるんです……うぇっ、ご、ごめんなさい……!!」
「あっ、ちょっ……ご、ごめん……!!」
いけない!!ネムールが泣いてしまった!!
し、しかし……
(な、何だか怯えているネムールが、可愛い……ぞ?)
ネムールは他の皆と違って、王族特有の華やかさが無い。
ロロも王族では無さげだが、あいつはあいつでミステリアスで不思議なオーラがあるのだ
これは決してバカにしているわけでは無く、他の皆にはない素朴で無垢な可憐さがあるのだ。
“ただの村娘”を組み伏せてしまいたいのは王族のロマンではなかろうか?
※ネムールは娘ではないという野暮なツッコミは無しだぞ☆
「そ、そうか俺が怖いか……」
無意識にニヤニヤしそうになる。
少しだけ、少しだけ……俺は弱いし王族嫁達は生意気だからあまり強そうに振る舞えないのだ!!
俺だってたまにはカッコいい“ドSイケメン王”になりたい!!
俺はドキドキしながらネムールに手を伸ばして、それだけで体をビクつかせるネムールが可愛い。
「なら、俺の手の甲にキスをして、ちゃんと“お仕置きして下さい”ってお願いするんだ。
そうしたら、反省しているとみなして少しは優しくしてやる。ほら、やるよな?」
「はっ……はい……!!」
急かすように言うと、ネムールは躊躇しながらも俺の手の甲にキスをする。
柔らかい唇の感触が素敵だ。
「私が、悪い子でした……!お願いですから、貴方の……ワルイ様の手で、反省させてください!!
お願いです……っ、反省するために、私の、お、お尻を叩いて……ください!!」
「ふ、ふふっ……」
「ワルイ様……?」
いざ、言わされると恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にしたネムールが俺を上目づかいで見つめてくる。
うわぁああああ!言わせちゃったぁ!リウリーやアシュラフなら(俺が)骨折モノだな!
俺はもうトキメキが止められなかった!
「合格だ!!」
「ひゃぁぁっ!!?」
俺はネムールを強引に膝に横たえて服の裾を捲る。
そして下着を下ろした。
もう今日は今思いついた『“ドSイケメン王”セリフランキングTOP10』のセリフ全部言っちゃおう!!
「だが、勘違いするなよ?優しくするのは“少しだけ”だからな、しっかり反省するがいい」(10位)
「うぅっ、はい……!!」
も、もちろん!お仕置きはまじめにしながら、だ!
ネムールは素直な子だが、今日はオイタが過ぎたからな。
俺はネムールの尻に手を振り下ろした。
バシィッ!!
「ひゃっ……!!」
「まだ始まったばかりだぞ!」(9位)
「んっ、ごめんなさい……!!」
ビシッ!バシィッ!!
「やぁああっ!!」
うーん、俺はいつもお仕置きの時には思いもよらぬ力を発揮できるみたいだが、
ネムールは割と素直だし幼いからセーブしないと。
そう思って、少し力を抜いてみる。
パァンッ!!
「っふぁっ!!」
「まったく、操心術を使うなんて油断も隙もないな!」
「ごめんなさい!!うぁあっ!」
パン!パン!
ネムールが楽になったかはよく分からないが、小さな体で懸命に痛みに耐えようとしているようだ。
「ワルイ様ぁ……!!ひっ!」
「何だ?まだ“許して”は聞かないぞ?」(8位)
「んっ、決して、そのようなことは……!!」
バシッ!!
「あっ、やだ!痛い!!っ、いえ、その……!!」
「もう何も喋るな」(7位)
パァンッ!パン!!
「う、うぁあああっ!!」
まだ泣き声ではないとは言え、ネムールの悲鳴は苦しげだった。
そんな彼の姿を見ていると……
普段は信仰深いせいか、落ち着いて大人びて、物腰柔らかな、
そんなネムールの年相応の、ありのままの姿が俺は見たくなった。
そうさせてやりたいような気がした。これも“ドSイケメン王”ぶりたい俺の、歪んだ欲望だろうか?
(落ち着け……落ち着け……)
このまま、力押しでいけば泣かせることはできる。確実に。
しかし、暴力的にお仕置きをして傷にしてはいけないのだ。
(仮にも相手は“神の僕”……過度の暴虐は、下手をすれば俺だって罰が当たる。
ここは、高度な精神安定とプロ並みのテクニックが、力加減が必要だ)
色々と小難しい事を考えながら自分を落ち着ける。
その間も手を止めるわけにはいかないから厄介だな。
パン!パン!パン!!
「やっ……!!あぁっ!!」
「おぉ、元気だな。だが、暴れるならもっと厳しくお仕置きしてしまうぞ」(6位)
「ご、ごめんなさい!!」
ネムールも抵抗して身を捩るくらいには余裕が無くなってきたのだろう。
だが、神に仕える者の精神力は強靭だ。注意すれば大人しくなる。
ピシッ!ピシッ!!
「うっ、ぐっ……!!ごめんなさい!ごめんなさいワルイ様!!」
「謝ったからといって、すぐに許してもらえると思うなよ?」(5位)
「は、ぁっ……!!わぁああっ!ごめんなさい!!」
「俺が気に入る様に泣き喚けば話は別だがな」(4位)
「あっ……!!あ!!」
……思うに、今日は言葉で怖がらせてるから痛みはそんなに要らないと思うんだ。
それでも、悲鳴を上げて痛がっているネムールを見ていると、
痛みに耐える健気な尻が俺の手で赤く染まっていくと……
(思いっきり、叩いて泣かせてみたい……!!)
あぁ、俺よ!ワルイの王よ!神を恐れぬ覚悟はあるのか……!!
そこまでして“ドSイケメン王”になりきりたいのか……!!
俺は自問した。
答えは……
(俺は宗教は本気で信じてない!!)
俺は気が付けばネムールの尻を思いっきり叩いていた。
バシィッ!!
「うっ……うわぁあああああん!!」
案の定、痛みに耐えかねていたネムールにトドメをさすことなった。
彼は泣き出してしまった。
(ネムールはそれだけの事を、したんだし!早めに切り上げれば問題ないだろう……!!)
俺は手を緩めなかった。
ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「やっ、うわぁああああん!!ごめんなさい!ワルイ様ごめんなさぁぁい!!」
「ダメだ、よりによって俺の嫁達に悪戯するなんて悪い子め。
今日はお尻が真っ赤になるまでたっぷりお仕置きしてやるからな?(もうなってるが)」(3位)
「やだぁぁあっ!うわぁああああん!ごめんなさぁぁい!!」
(おお!“やだ”って言ったぞ!)
「や、やめてぇ!もう許してよぉ!痛い!ごめんなさぁぁああい!わぁああああん!!」
敬語も忘れて大泣きするネムールが新鮮だ。
手足をバタバタさせて本気の暴れようだし
もしかして、普段はこんな風に普通の男の子なのかもしれない。
「反省したぁっ!もう反省したからぁぁっ!!お願い!もうやめてぇぇッ!!」
「反省したかどうかは体に聞いてやる」(2位)
バシンッ!ビシッ!バシィッ!!
「そんなぁっ!!うわぁあああん!痛いよぉぉ!!助けてぇぇ!!わぁあああん!!」
ネムール……こんなに泣いてるし暴れてるし、お尻も真っ赤で痛そうだし
十分反省したようだし、そろそろ許してやろうか……
『“ドSイケメン王”セリフランキングTOP10』のセリフも大方言えたし。
(よし、あとは1位のセリフを……)
と、思ったがその時……
ドンドンドン!!
扉を叩く音。
「ワルイ様!さっきからネムちゃんの泣き声がすごいけど、もうそのくらいになさったら?」
リリアの声だ!!
しまった!くそっ、この防音の低さ!!
まだ1位のセリフが言えてない……
「うわぁああああん!うわぁあああん!リリア姉様ぁぁっ!!」
「……ネムール……」
泣いているネムールを見て、俺は彼を膝から下ろした。
少しやり過ぎたと認めざるを得ない。
謝罪の意味も込めて、ネムールを優しく抱きしめる。
「今日はこのくらいにしてやろう……いや、やり過ぎたか?すまないな。
でも、もう皆を操ったりするんじゃないぞ?」
「うわぁあああん!!ワルイ様ごめんなさぁぁい!!」
俺に縋り付いて泣くネムール。
(ネムール……あぁ、可哀想な事をしてしまった)
前述のように、ネムールは暴漢に襲われて逃げている途中にリリアに助けれられ、ここへ連れてこられ、俺の嫁となった。
襲われていたのは宗教対立が原因だ。
ラーナ・カリット教を根絶しようとする勢力に生まれた村を襲われたと言っていた。
リリアが見つけたのはネムール一人だ。と、いう事は親や兄弟……他の村人たちは……
(バラバラに、逃げたのだと考えたい)
幼いネムールとはぐれて?いや、そういう状況にならざるを得なかったのだ。
それより酷い可能性は、考えたくない。
俺の胸に中で、ネムールが必死に話している。
「私は、私はっ……父様に、母様に、姉様に……っ皆に、逃がしてもらって……!!
必死で、走って……振り返ったら、村が、村が!!も、燃えていて……!!
唯一生き残ったラーナの民として、教祖となって、ラーナ・カリット教を、絶やせてはいけないと……!!」
「ネムール、もう何も言うな。大丈夫、お前の家族も、村の者も皆、生きてる。
お前の神が、自分の民を見捨てるはずがない」

こんな無責任な言葉しかかけられなかった。
ネムールは声を上げて泣き続け、やっと落ち着いたらいつもの調子に戻ったけれど、
俺はリリアと、嫁達から一斉に責められてしまうのだった。

それはそうと、俺はこの日、リリアにネムールの故郷の村ととそこに住んでいた人々が
どうなったのかの調査を言い渡した。

【5日後だ】

朗報だ!なんと!
ネムールの故郷の村人たちは、多少の犠牲は出たものの、ネムールの家族含めほとんど生きていた!!
今は別の場所へ移住して平和に暮らしているそうだ。
村があった場所の壊滅状態を聞いた時には絶望したが、本当に良かった!!
ネムールは村へ返すべきか迷ったが、嬉しい事にここへ残りたいと言ってくれた。

「本来、ラーナの民を率いるのは巫女の……女性の役割なのです。
姉様は優秀なラーナの巫女なので、彼女が生きていると分かった以上、私の出る幕はありません。
巫女と民が生きているのですから、教祖の肩書も無くなりました。
これからは、一人の民としてラーナ様に祈りを捧げていきます」
何だか、権威を失ったような言い方だが、ネムールは本当に嬉しそうにニコニコしていた。
彼は頬を赤らめて言う。
「姉様に手紙で言われました。“ラーナ・カリット教の事は自分や父様、母様に任せて、
貴方はラーナ様の加護の元、安心して自分の幸せを追い求めなさい”と」
「出来た姉だな。一度会ってみたいものだ」
「いけません。とても美人なので、きっとワルイ様は私より好きになってしまいます」
そう言いながらもネムールはまた嬉しそうに笑う。姉自慢も入っているのだろうか?
ネムールの笑顔に、俺も嬉しくなって言う。
「それは無い。愛してるぞネムール……」
「ワルイ様……」
(いい雰囲気だ……)
このままキスしてしまいたい……だが、
(昨日火傷した舌が痛い!!)
俺はここ連日小さな火傷を繰り返していた。
メイドに熱いお茶をかけられたり、うっかり熱いポットに触ってしまったり……
昨日は食べたスープが熱すぎた。
まさか、ネムールをドSにお仕置きした事に対する火の女神ラーナの怒りだろうか?

(うぅ、俺もあの礼拝室で許してもらえるように祈った方がいいかもしれん……)

そんな事を思った、とある一日だった。




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【作品番号】TYS4

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