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☆3 「……やってごらんなさい」 「え?」 ちっとも動じない琳姫の態度に驚く立佳。 しかし、ここで引くわけにはいかない。 「な、ならばお望みどおりッ……!!」 立佳が手をはね上げると、当たりに突風が巻き起こって…… 「あっ!」 「きゃっ!」 遊磨と閻濡の二人はさっとスカートを押さえる。 ただ一人、堂々と立っている琳姫のスカートはブワッと逆立つ勢いで捲れ上がったが 目の前の光景を見た立佳は愕然とした。 「……な、何て事を!!」 琳姫のスカートの中には立佳が期待したユートピアではなく、濃紺の短パン。 立佳は地面に膝をつく。 「反則だ……反則過ぎる……遊磨ちゃんや閻濡お姉ちゃんまで……」 遊磨や閻濡のスカートの動きもしっかりチェックしていたのに 同じ悲劇が起こっていたショックで立ち上がれない。 失意のどん底の立佳の横を琳姫達は悠々と通り過ぎて行く。 「すいません、琳姫さんに言われたもんで……」 「ご、ごめんね立佳……何か……ごめんね……」 すれ違いざまに声をかけてくれる遊磨や閻濡にも反応せず、 立佳は高らかに空に向って叫んだ。 「チクショ――!スカートの中に短パン着用するのは校則で禁止にしてやる――!!」 と……立佳が誰も聞いていない宣言を叫んだ朝から時間は過ぎ、あっという間に昼休み。 美術室の隣の準備室から、誰かの声が聞こえてくる。 「学校もさ、おやつの時間を作るべきだと思うんだ!」 無邪気に机に大量のお菓子を広げ出す壮年と、困惑する青年。 青年はこの学院の生徒の健介、そして壮年はこの学校の美術教師の夕月。 「夕月先生、またそんなお菓子広げて……健人先生に怒られますよ?」 「だ、だって!私、糖分足りないといい授業できないんだもん! ほら、健介君にもこれ持ってきたんだよ!?」 夕月がいそいそと取り出したのはタバコ。 しかも、健介がいつも吸っている銘柄のタバコだった。 「アンタ何持って来てんですか!?」 「え!?要らないの!?健介君いつも吸ってるから要るかなって思って……」 「だ、だからってここ学校なのに……えっと、灰皿あります?」 悪気の無さそうな夕月と目の前のタバコの誘惑に負け、健介はあっさりタバコを受け取った。 そのまま10分もしないうちに、その場はタバコとお菓子が入り乱れる校則違反集会になってしまった。 「いや〜、やっぱ校内禁煙辛いです〜!そもそも、俺に学ランなんて無理あるっつーの! 吸わなきゃやってられないですよね〜!」 「だよね〜!おやつ食べなきゃやってられないよね〜!」 タバコを片手にすっかりくつろいでいる健介の横で、夕月はお気に入りのお菓子をほおばる。 そうやって2人が話していると、準備室の扉が開いた。 「夕月先生、この段ボール、準備室で良かったですか?」 突然、教員の健人が入ってきて2人は呆然とした。 健人の方も2人の様子をしばらく眺めて…… 「楽しそうですね2人とも……お邪魔でした?」 目が恐ろしい笑顔でそんな台詞をのたまうので、2人は冷汗ダラダラ…… 特に健介は今更ながら後ろ手でタバコを消す事に必死だ。 健人は段ボールを下ろして、夕月に近づく。 「夕月先生?僕、生徒の前でお菓子食べるのはやめて下さいって言いませんでしたっけ?」 「い、言ったかな……?」 「はい。忘れてしまったなら仕方ありません…… 今度は記憶に残るようにお仕置きしながら言う事にします」 「わぁぁっ!覚えてる!覚えてるからお仕置きやめて!」 「覚えてるなら余計悪いですよ!言っても聞いて下さらないならお仕置きです!」 「やぁぁっ!!」 健人は逃げ出そうとする夕月を素早く捕まえて、さっさと椅子に座って膝の上に乗せてしまう。 このままいけば地獄絵図だろうと判断した健介は、その場から撤退しようとドアに手をかけるが…… 「ちょっと待って健介君……いつも学校で隠れてタバコ吸ってるの?」 止められた。 しかも絶望的な一言とともに止められた。 「い、いえ……俺は……今日たまたまです……」 「そう……君は高校生だよね?」 パン!パン!パン! 健人は夕月を叩きながら器用に健介と会話を交わすが 健介は肌を打つ音と悲鳴のBGMの中で冷静に会話する能力など無い。 裸の尻を叩かれて暴れている夕月から目を逸らしていても 恐怖でだんだんしどろもどろになってくる。 「い、いや……あの…あ…れ……俺は……その、二十……歳……」 「君は高校生だよね?」 「あ、その……高校生……っていうか…えっと……心は……二十歳だと……」 「高校生はタバコ吸っちゃダメだよね?ましてや学校で」 「いや……二十歳の……気分的なあれ……で……ちょっと、大丈夫かな……と……」 「そこに座ってて。夕月先生の次は君」 「はい、すいません……」 その場に正座した健介は、特等席で夕月が叩かれるのを見る羽目になる。 健介が大人しく座ったのを確認すると、健人は夕月の方にお説教をはじめた。 「夕月先生、学校は基本的にお菓子持ちこみ禁止なんです! それなのに先生が生徒の前でお菓子なんて食べたら示しがつかないでしょう?!」 パン!パン!パン! 「やっ、だって……皆で食べた方がおいしいんだもん!」 夕月はさっきから一生懸命もがいているが、全然効果が出てないようで 健人は何食わぬ顔で叩き続けている。 「貴方……まさか、他の生徒の前でも食べてるんじゃないでしょうね!? その上さらに生徒に配ってたりとか……最近生徒のお菓子の所持率が上がってると思ったら……」 「してないッ!してないよ!たまに交換してくれる子がいて……交換するぐらいだよ!!」 「……交換しちゃダメでしょ!そう言う時は先生なら注意しなきゃダメです!」 パン!パン!パン! 一段と激しく叩かれだして、夕月はいっそう足をばたつかせる。 「うぁ……やだよ痛いよ!健人君痛いよ!私は美術教師なんだぞ!」 「だから何なんですか!夕月先生、貴方はもっと教師としての自覚を持って下さらないと! 今度やったら、貴方もおやつ持ち込み禁止にしますよ!?」 「やだぁぁっ!!パンが無ければおやつを食べればいいけど おやつが無ければ……生きていけない!」 「だったら、おやつはこっそり食べて下さい!」 バシッ! 夕月は思いっきり叩かれて、泣きそうになりながら叫ぶ。 「わぁったぁ!健人君に見つからないように食べる――!!」 「僕に隠れてどうするんですか!僕じゃなくて生徒に隠れて食べるんですよ!」 パン!パン!パン! 「わぁぁぁんっ!分かった!分かったぁ!他の子には内緒で食べる――!」 「健介君にもですよ!?」 「健介君にも内緒にする――!タバコも持ってこない――!」 「え?タバコなんて持ってきたんですか?貴方は吸わないでしょうに……。 まぁ、いいや。分かったらそれでいいんです。」 健人は夕月を膝から下ろして、ポンと頭に手を置くと優しくこう言った。 「本当に、約束ですよ? 一人で食べるのが寂しいなら、僕が付き合いますから」 「ほっ、本当!?じゃあ……」 「あ、今は待ってください……僕はまだ健介君のお仕置きがありますから」 健人の言葉に健介はビクッと反応し、夕月も少し怯えた表情になる。 「そ、そう……頑張ってね……健人君……あれ?この場合は健介君……?」 「僕たち二人とも頑張りますから、ご心配なく」 「う、うん……ご心配ない。わっ、私……花壇の水やり頑張ってくる!」 夕月は慌て気味に準備室から出て行った。 健介は(逃げたな……)と思ったもののホッとした。 健人と二人きりの恐怖も、お仕置きされている姿を見られるよりはマシだ。 「さぁ、健介君、一緒に頑張ろうか!」 「もちろん、俺は頑張ります!俺は頑張りますけど、兄貴は……いや、健人先生は 頑張らなくていいです!むしろ頑張らないで!」 「そういうわけにはいかないよ」 (うっ……!!) 健介は健人の膝の上に乗せられて、制服のズボンも下着も下ろされてしまう。 実を言えば教師と生徒以前に、兄と弟(しかも現在同居中)であるこの二人なので 健介は健人に何度かお仕置きされた事はあるが、何度経験しても慣れない緊張の一瞬だ。 「ご、ごめんなさい……もうしないから……」 今謝っても無駄なのは分かっていてもつい謝ってしまう。 で、答えはいつもの平手打ち。 パンッ! 「さっきも言ったけど、高校生はタバコ吸っちゃダメ」 「いっ、俺は……二十歳……っ!!」 「君は高校生だよね?」 三回目の確認。何度二十歳を主張しても“高校生”を押されるので、健介は黙るしかない。 そんなだんまり健介に、健人は苦笑しながら言った。 「諦めがつくように断言してあげるよ。君は今、高・校・生。 だから学校でタバコ吸うのは悪い事!」 パン!パン!パン! 「家で吸ってるのは“暗黙の了解”ってヤツだよ健介君? 学校で同じように吸っちゃダメなの分かってたよね?」 「うっ……わっ、分かってました……!」 「分かっててタバコなんて持ってくるんだから、たいした度胸だよ君は……」 「ちがっ……これは、うっ、夕月さ……先生にもらっ……て!!」 「夕月先生に?!はぁ、あの人はもう……でも、君だって断ることはできたはず……」 「だって……!!」 「言い訳するなら家も全域禁煙にしちゃおうか?」 バシィッ! 「やぁあっ!ごめんなさい!!家では吸いたい!」 強い平手打ちに思いっきり反応してしまった後は、じっとしていられなくなった。 逃げられないのは分かっているけど、この痛みに耐えられなくなってきて 健介はひたすら体をごそごそしていた。 「それなら、学校と家は区別してよ?あと、自主休講もダメだからね?」 「わ、分かった!ごめんなさい!もう許して!」 「ダメだよ。高校生がタバコ吸ってるのがバレて、簡単に許してもらえると思う? 君が泣いて反省するまで離さない」 「そん……なっ!!」 「それに、僕が簡単に許すと君……境佳先生に回されちゃうよ?」 その言葉を聞いて、健介は青ざめる。 境佳先生は教育指導の先生で、厳しくて真面目な学院の六法全書……怒らせると怖いのだ。 そんな先生にタバコなんてバレたら……想像しただけで今すぐ泣ける。 「う、ぁ……そんなの……嫌だ……!」 「でしょ?僕に思いっきりお仕置きされればきっと 境佳先生も大目に見てくれると思うから。ここで泣いちゃった方がいいね」 「それも……んんっ!」 「嫌だ」と続けようとして、強い痛みに阻まれる。 お尻に感じる痛みが一段と激しくなって、 ああ、ヤバい……泣かせにかかってる……!! と、直感した。 「ごめんなさい!あぁっ、ふぁっ……ごめんなさい!」 そろそろ効果があってもいいんじゃないかと必死で謝るが、 それでも返事はない。 「ごっ、ごめんなさ……ひっ、うっ……」 バシ!バシ!バシ! 「ごめんなさい!ごめんなさい先生ぇっ!やだぁぁっ!」 ほとんど泣きだしそうなところを強く叩かれ続けて、泣き声混じりで叫ぶ健介。 体も自分の意思以上に激しくもがいてしまう。 「ごめんなさいぃ!もうしなぃいっ!!健人先生!もうしないからぁぁ!」 「うん、もうしないでね」 「わぁぁんっ!!ごめんなさいぃ!痛いやだぁ――っ!ごめんなさい―――!」 「痛いのは分かってるよ。君のお尻真っ赤だもの」 バシ!バシ!バシ! 泣いてもがいて、何度も何度も謝って、そのたびに連れない返事を返されて…… そんな蟻地獄状態を繰り返しているうちに、やっと健人から声をかけてくれた。 「そろそろ懲りた?」 「懲りた!懲りた――!ごめんなさい――! うぇぇぇっ!!もうしない!タバコ吸わない!ごめんなさぁぁい!」 「……うん、もう十分みたいだね。いいよ、終わりにしよう」 必死で叫びまくる健介の姿に、健人は手を止めて 健介を膝から下ろしてあげた。 「うぇぇぇっ……ううっ、はぁっ……ぐすっ……」 膝から下ろされた健介は、息を整える。 そのうち、お約束のようにぎゅっと健人に抱きしめられて、健介も健人の胸に顔を埋めた。 「学ラン、とっても似合ってるよ健介君……」 「……んっ…それって嫌味?」 「ちっ、違うよ!褒めてるんだってば! せっかくなんだから青春エンジョイしたら?健全な方法でね」 健人に撫でられながら、健介も気分が落ち着いてきた。 (頑張ってみるか、高校生……と、平日昼間禁煙。) そう心の中で呟いた健介であった。 |
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