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うちの画家先生21 【最終回】 おまけ







俺の部屋で、俺のベッドの上の、さらに兄貴の膝の上で……俺は悲しみに打ち震えていた。
(せっかく……せっかく、大学のシステムが俺を守ってくれたのに……!)
先ほど、うっかり夕月さんにそのシステムを説明した俺は、兄貴に単位落とし隠蔽がバレてこのザマだ。
おかしいなぁ、おかしいいなぁ俺はさっきまでズボンも下着も穿いていたはずなのに……!
今日も直打ちかぁ……!たまには服の上からって選択肢はないのかなぁ……!!
顔を覆って嘆いても後の祭り。兄貴のお怒りの声が聞こえる。
「健介君……いくつ単位落としたの?」
「お、覚えてない……で、でもそんなにたくさんじゃないんだ!次期で巻き返せるから!本当に!
ちょっとさ、忙しかったんだ!俺が本気で勉強したら簡単に……」
「言い訳から入るのは良くないね」
バシッ!
「痛っ……!」
最初から言葉をミスった俺は慌てて兄貴に謝る。
「ご、ごめんなさい!これからは本当に、本気で勉強するから!」
「どうして最初から真面目にやらないの!?」
ビシッ!バシッ!
「うぁっ!ごめんなさい!」
「さて、今日は何回叩こうかな……」
問答無用で叩きながら、サラッと重要な発言をした兄貴。
ここを逃す手はない!俺はすかさず言った!
「お、俺の歳の数だけとか!」
「足りないんじゃないかな?」
ビシィッ!
「んあっ!じゃ、兄貴の歳とか!」
「あんまり増えないね」
バシン!
「ひっ!いっそ二人合わせて!」
「50以下……反省する気はある?」
パシッ!バシィ!
「ぁあるよぉ!ごめんなさい〜〜っ!」
俺の意見はことごとく却下されて、しかもジワジワ叩かれた痛みが肌に張り付いてくる。
(い、痛い……痛いけど、100以下なら俺は頑張る!!)
そう!どうしても俺は少ない数で乗り切りたい!
何かうまい数はないのか!?単位落とした数を大体で言ってみるか!?
そんな事を考えながらも声は抑えられない。
「うっ、ぐっ……やっ!!」
「あんまり……大学生にもなった子にうるさく“勉強勉強”言いたくないんだよ?」
(だったら言わなきゃいいのに!!)
「健介君!?」
ビシィッ!
「わぁぁっ!ごめんなさい!!」
ぃぃっ痛い!ビックリした!心読まれたかとドキッとした!そ、それはないよな……?
兄貴は俺に耐えがたい痛みを叩きつけながら続けてお説教してくる。
「でも、あまりにも勉強しないのも困る。タダで通ってるわけじゃないんだから」
「(こ、心を読まれてもいいように謝っておこう。ごめんなさいごめんなさい……)うぅ!ごもっともです……!」
「今日は、その重みを分かってもらうために、健介君の大学の学費総額分のお仕置きを……」
「やめてお尻が死ぬぅぅぅぅぅぅっ!!」
俺は全身全霊で叫んだ。
こんな恐ろしい提案冗談じゃない!今でさえ我慢できないくらい痛いのに!
無意識に叩かれるたびあがいちゃうほど痛いのに!
「あ、兄貴ぃ!もう許してよ……!本当に、反省したからぁぁっ!」
「ダメだよ。健介君のお尻全然赤くなってないし」
ビシッ!バシッ!ビシッ!
「うそだぁっ!!」
俺は叫んだ。
嘘だ!!絶対真っ赤になってる!もう痛いもん!痛すぎる!ズキズキするし!
いやそもそも!兄貴が俺の尻を真っ赤にしようと思ってる事も恐ろしいけど!
「鏡に映してあげようか?」
「要らないぃっ!」
恥ずかしいだろ!
叫んだら何だか我慢できなくなってくる。痛くて、泣いてしまいそうなのが。
ビシィッ!バシン!パァンッ!
「うっ、ぇっ……!!」
いつもみたいに泣いたら、すぐには許してくれないだろうけど……でも終わりには近づくだろうか?
どうせもう数なんか数えてないんだ!
さすがに兄貴も泣き叫ぶ俺をずっとお仕置きしてられるような鋼鉄の心は持ってないはず!
今日はそんなに怒って無さそうだし!そ、それか夕月さん達が帰ってくるとか……!
「健介君反省してる?!」
バシン!
「してるぅぅぅっ!ごめんなさいぃぃっ!うわぁぁぁぁあん!」
少し余計な事考えてたけど、本当にこれは反省する。それほど今、痛い。涙が出た。
それに対して兄貴は……
「そうなの……じゃあ、ちょっと我慢してね」
「な、何を!?」
兄貴に何かされそうな気がして、反射的に叫んだ声が上ずった。
俺の声には答えてくれなかった。けど代わりに、すごい事になった。
ビシィッ!
「うわぁぁあああっ!!?」
ぃぃっったい!!何だこれ!?何!?何で叩かれてんだ俺!?
肌がざわざわするほどの痛みと怖気で、俺は半パニックになって叫ぶ。
「痛い!いったぁい!何っ、こっ、やぁぁぁっ!何ィィィィっ!!?」
「健介君のお部屋って散らかってるね。どうしてベッドの上にスリッパが転がってるんだろう?
こんな適当なお部屋だから落ち着いて勉強ができないんじゃないの?」
ビシッ!バシッ!バシン!
す、スリッパ!?じゃあ、今叩かれてるの、スリッパ!?
俺は知らない!んなもんこっちが聞きたい!!つーか、痛い!!
「あぁあああああ!ごめんなさい!ごめんなさいちゃんと片づけるからぁぁぁぁっ!!」
もうダメだった。
俺は本気で泣いたし、本気で暴れた。
……助からなかったけど。
ビシィッ!パァンッ!パァンッ!
「うわぁぁああああっ!あぁあああああん!やだ!やだぁぁぁっ!ごめんなさぁぁぁい!」
「やっと反省したっぽくなってきた……もう悪い子!」
バシィッ!パシィィンッ!
「あっ、うぅぅぅ―――っ!お兄ちゃん!お兄ちゃんやめてぇぇぇっ!!ふぁああああああんっ!!」
「は、反省したっぽくなってきたね……」
「わぁぁぁああああん!もう無理ごめんなさぁぁぁぁいぃ!!」
それからが地獄で……本当に、俺ってこんな声が出るのかってくらい叫んで暴れた。
恥ずかしいくらい“お兄ちゃん”連呼した。
それでもなかなか許してもらえなくて……一生このままかと思って余計に泣いたんだ。
最終的によく分からないうちに、終わってた……。
「うぇっ、ぐすっ……ご、ごめんなさ……!!」
「もういいよ。これからはちゃんと勉強するんだよ?部屋も片付けること」
「は、はい……!」
兄貴に縋り付いて泣いた時に、やっと生きてる事を実感したんだ……!大げさでなく!
今から冷静に考えたら……あんな泣きわめいている時に夕月さんが帰って来なくて良かった。
(これからは……適度に勉強しないと……)
それも考えてげんなりする。
(夕月さんはいいよなぁ……引っ越したら兄貴に叩かれなくて済むだろうし……あ!)
一瞬、心を読まれてたら!と思ってハッと顔を上げる。
でも兄貴は笑ってる。
「どうしたの?」
(バレてないバレてない!甘えとけ!)
俺が誤魔化しでぎゅーっと兄貴に抱き付くと、兄貴が心なしか嬉しそうに
「もう、本当にどうしたの?そんなに痛かった?」
って……撫で繰り回してくれた。

色んな意味でホッとして、されるがままに身を委ねる俺だった。



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【作品番号】US21b

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