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時子姫と7人のトキコビト



昔々ある森に、時子姫というお姫様が住んでいました。
元々はお城に住んでいた時子姫ですが悪い魔女に城を追われてしまい、殺されそうになった所を
逃れ逃れてたどり着いたこの小屋で7人の“トキコビト”さんと住んでいます。
“トキコビト”さんとは、時子姫にそっくりな小人さん達です。7人が同じ顔をしています。(服の色で見分けます)
城での豊かな生活は失った時子姫ですが、ここには仲良しのトキコビトさん達との楽しい生活があります。
1+7人で毎日幸せに暮らしていました。

今日の時子姫は純白のエプロンを翻して、木製スプーンで鍋をかきまぜています。
かつてのように煌びやかなドレスは着ていませんが、小屋にあった可愛い布で作った
ドレス風のワンピースは彼女に良く似合っていました。
「時子姫―!何してるの―?」
「何してるの―?」
「何してるの―?」
わらわらとトキコビトさんが時子姫の周りに集まってきます。
時子姫は笑顔で言いました。
「ホワイトシチューを作ってるんだよ。
今日のお昼ご飯は時子のスペシャルホワイトシチューにしようね!」
「わーい!時子姫のホワイトシチュー大好き――!」
「私も大好き――!」
「私も――!皆――!今日のご飯はホワイトシチューだって――!」
「「「「わぁぁぁぁい!!!」」」」」
トキコビトさんは全員集まってきて、皆大はしゃぎ。
その後は皆で歌を歌いながら楽しく昼食の準備をして、楽しく食べました。

その頃……時子姫が元いたお城では不穏な動きが……
美しい装飾の大きな鏡の前に、真っ赤なバラに飾られた漆黒のドレスに身を包んだ小柄な乙女がいました。
この乙女こそ時子姫を城から追い出した張本人の魔女、エレンです。
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのはだぁれ?」
美しいと言うより可愛らしいエレンの問いに答える声がします。
『それは、森にある7人のトキコビトの家に住む時子姫です』
「何ですって!?時子姫……あの女、生きていたの!?早く始末しなくちゃ!」
鏡の言葉に血相を変えた絵恋は、急いでドレスを脱ぎ棄てます。
すると、黒のフリルが可愛いブラジャーとTバックを透けたレースで繋いだ大胆なテディ姿……
魔女エレンの正装になりました。魔女が本性を現したのです。
エレンはくるりと向きを変えると、背中やお尻がほぼ丸見えなのも気にせずに動き回ります。
部屋のあちこちから鮮やかな色の液体が入った瓶を何種類か、それと美味しそうなリンゴを持ってきて、
大きな壺の前に来ました。
「見てなさい時子姫……貴女が一番美しいなんて許さないわ」
持ってきた瓶の色とりどりの液体を全て壺の中に入れて、最後にリンゴに軽くキスをして
それを壺の中にドボン。鼻歌を歌いながら待つ事3分。
エレンが呪文を唱えると、壺の中からフワリとリンゴが現れます。
とても美味しそうな『毒リンゴ』の完成でした。
エレンはテディの上からリボンのついた黒のローブを羽織って毒りんごを入れたカゴを持つと
意気揚々と時子姫の小屋に出かけました。
果たして時子姫はどうなってしまうのでしょう……。

小屋には何も知らない時子姫。
突然のノックにも警戒心ゼロで扉を開けてしまいました。
時子姫の後ろからひょこひよことトキコビトさん達も顔を出します。
「愚鈍な時子姫こんにちは。私は世界一美しいリンゴ売りよ!でもこのリンゴは無料よ!食べなさい!」
時子姫はリンゴ売りの乙女から何の疑いもなくリンゴを受け取りました。
「わぁ、美味しそう!ありがとう!後でトキコビトさん達と一緒に……」
「貴女が今すぐ食べるのよ!今すぐ、ここで!」
「え!?で、でも……」
「食べなさいよ!」
「いただきますッ!!」
押しに弱い時子姫は勢いよくリンゴにかぶりつきました。
そしてその瞬間、リンゴに秘められた毒が一瞬にして時子姫の命を掻き切ります。
可哀想な時子姫は地面に倒れ伏し、リンゴは地面を転がります。
「「「時子姫!!」」」
「「時子姫どうしたの!?」」
「「どうしたの!?」」
いきなり倒れた時子姫にトキコビトさん達は大慌て。
しかし、時子姫が返事を返す事はありません。
「あはははははっ!バカな時子姫!これで世界一美しいのは私よ!千賀流様のハートは私のもの!」
エレンの高らかな笑い声が響き渡り、辺りに闇が広がります。
漆黒のローブの魔女は闇に溶けて一瞬で消え、泣き叫ぶトキコビトさん達の声が森に響き渡りました。

やがて闇は晴れ、時子姫の死を悟ったトキコビトさん達は、庭に出て時子姫を花を敷き詰めた棺に寝かせました。
そして泣きながら皆で時子姫の上に花を手向けていました。
美しい花々に囲まれた時子姫の顔は穏やかで、花にも劣らず美しい……
けれど、もう一緒に歌う事もご飯を食べる事もできないので、トキコビトさん達はそれぞれ嗚咽を漏らします。
そんな時近くを王子が通りかかりました。
トキコビトさん達が泣いているので王子は傍に来て尋ねます。
「皆さん、何をそんなに泣いているのですか?時子姫は何故ここで寝ているのです?」
明るい茶髪の眼鏡をかけた若い王子は、トキコビトさん達の好みのタイプなのですが
今はそれどころではありません。泣く泣く事情を説明します。
「ううっ、この人は眠っているのではなく、悪い魔女に騙されて毒りんごで……ひっく、殺されて……」
「優しい時子姫、どうして死んでしまったの……うううっ」
「可哀想な時子姫……えぅっ、いつまでも大好きだよぉ!」
7人の小人が悲しみにうち震えているのを見て、無表情な王子は冷静に言いました。
「そうですか……毒りんごで。時子姫、僕が来ない間に許可も無く死んでしまうなんて仕方のないひとだ。
でも大丈夫。時子姫なら死体でも気持ち悪くありません。今すぐ僕が……」
「「「「「「「ひぃっ!!?」」」」」」」
王子が時子姫にキスしようとしているので、トキコビトさん達は一斉に怯えて息を飲みます。
皆青ざめた顔をして7人がかりで王子にしがみついて止めます。
「王子!!何て罰当たりな事を!やめてください!」
「そうですよ!それだけは人としてやっちゃいけない!」
「「「「「やめて――!やめて―――!!」」」」」
しかし7人とはいえ小人の……しかも、か弱いトキコビトさん達の力では王子は止められず……
王子は時子姫を棺から抱き起こしてキスをしてしまいました。しかも愛し合う様に深く。
「「「うわぁああああああッ!!!!」」」
「「「「この人で無しぃぃぃッ!!」」」」
トキコビトさん達は阿鼻叫喚。
しかし、次の瞬間奇跡が起きました。
「……ぅ、あ?」
吹き返す息。眠りから覚めるように開く瞳。
時子姫が、死の世界から完全に蘇ったのです!!
「「「時子姫!!!!」」」
「「「「時子姫!!」」」」
トキコビトさん達は驚きました。時子姫自身も驚いたように王子を見つめます。
ただ一人王子はどこまでも冷静な様子でした。
「時子姫……生き返ったのですね」
「き、君は……王子、様?」
「そうです。僕はユークン=キッサ・バイト。眼鏡の国の王子です。」
「ユークン……優君?」
「僕をそう呼ぶのは、後にも先にも時子姫だけですね」
王子が微かに微笑むと、時子姫は瞳を輝かせました。そして嬉しそうにはしゃぎます。
「わぁ!優君!?久しぶり!元気だった!?で、でも君……私の城のお茶汲み係だったのに!
いつの間に王子様に……大出世じゃない!眼鏡でひと山当てたの!?」
「違いますよ。僕は元々王子でした。親が社会勉強のためにと貴女の城に“お茶汲み係”として送り込んだ。
皆知っていますよ?知らないのは、人を疑う事を知らないバカな時子姫だけです」
「な、何さ!バカって言うな!」
「言いますよ。時子姫はバカです。怪しいリンゴ売りが持ってきたリンゴを
何も疑わずに食べて死んでしまったんですから」
王子がそう言うと時子姫は真っ青になって震えます。
「あ……わ、私……さっき、死んで……
そ、そう考えると何か急に怖くなってきた……!!」
「……もう大丈夫。貴女は生きています。僕が二度と死なせはしない」
「ゆ、優君……!」
震える時子姫を抱きしめる王子。時子姫も王子に身を任せます。
今までオロオロと見守っていたトキコビトさん達はロマンチックな展開に皆で羨望のため息をつきました。
でもそのため息は一瞬で7つの悲鳴に変わりました。
王子が時子姫のスカートの中に手を突っ込んだからです。
「ひゃぁう!?ゆ、優君、何っ!?」
「僕が貴女を二度と死なせはしない」
「うん、あ、ありがとう!嬉しいな!
で、でもそれと、お、お尻……触るの、関係ないよね!?」
「大ありですよ。貴女を死なせないために、無防備過ぎた貴女に罰を与えないといけません。
二度と怪しいリンゴ売りに扉を開けないように躾をしなくては。ここに」
「そ、そこって、うっ……お尻、くすぐったい……!」
ぎゅっぎゅとお尻を揉まれて時子は恥ずかしくてくすぐったくて涙目になりました。
そんな時子姫に王子は囁きます。
「さぁ、お仕置きの時間ですよ時子姫。小屋に戻りましょう」
「い……いや……お願い……」
時子姫は王子の服を掴んで、弱弱しい声で懇願します。
それに対して王子はわざとらしく驚いた顔で言いました。
「え?外でお仕置きされたいんですか?露出狂だったんですね時子姫……」
「小屋に戻ろう!今すぐ戻ろう!」
王子は時子姫を姫抱きにしてさっさと小屋に入って行きました。
顔面蒼白なトキコビトさん達も慌てて追いかけます。
こうして2人+7人はぞろぞろと小屋へ戻っていきました。


「では時子姫、そこのテーブルに上体くっつけてお尻を突き出してください。
ああ、もちろんスカートは脱いでくださいね」
「あのさ……この服、ワンピースだよね!?構造上、スカート脱ぐと一緒に上も脱げちゃうって分かってくれるよね!?
私裸になっちゃうよ!!」
「そんな事、見れば分かります。早く脱いでください」
「確信犯!?」
「脱ぎなさい」
「脱ぎますッ!!」
王子の冷静な威圧に押され負けて、時子姫は言われた通り服を脱いで
テーブルにもたれてお尻を突き出します。
下着はつけているとはいえ、自分の姿が恥ずかし過ぎて泣きそうでした。
心臓がドキドキして呼吸が増えてきます。
傍に立った王子にショーツを下ろされた時には、もう目を開けていられませんでした。
「綺麗な肌ですね時子姫。魔女が嫉妬するのも無理はない」
「いっ、いいから……早く、始めて…早く、終わろうよ……」
「ええ。早く始めましょう。早く終わるつもりはありませんけどね」
ぐっと背中を押さえつけられたのが合図でした。
パァンッ!
「ひゃぁ!!」
王子に平手でお尻を打たれた時子姫が叫んだ瞬間、トキコビトさん達が一斉に声をあげます。
「王子やめてぇ!時子姫が可哀想だよ――!」
「お仕置きなんてしなくても時子姫は反省してるよ――!」
「「「「「やめて――!やめて―――!!」」」」」
トキコビトさん達声を無視して王子は時子姫を叩きます。
パァンッ!パァンッ!パァンッ!
「やっ、やぁ!!痛い!」
「当たり前じゃないですか。怪しい人物からもらったリンゴをその場で食べてしまうなんて
警戒心が無いにしても限度がありますよ時子姫」
「だ、だって……!」
「そもそも、何故誰が来たかも確認せずに扉を開けるんですか?
許せませんね。その防犯意識の低さ」
「ご、ごめんなさい!で、でも……どうしてそんなに詳しく知ってるのぉ!?」
「貴女がやりそうな行動は大体分かりますよ。
僕は……貴女が城を追われたその日から、毎日ずっと貴女の生活を見ていましたから。
今日は来るのが遅れて大変な事になってしまいましたが」
「へっ!?きゃぁん!」
パァン!
時子の驚きは打音と悲鳴にかき消され、代わりにトキコビトさん達が悲鳴を上げました。
「「ストーカーだ!」」
「「ストーカー!」」
「「「ストーカー犯罪だ!」」」
「……おや、このテーブルにはまだスペースの余裕がありますね。
丁度お尻が7つぐらい並べられそうだ」
「「「「「「「ひぃぃぃぃぃっ!!」」」」」」」
王子の言葉にトキコビトさん達は団子のようにくっついて震えあがりました。
でも時子姫がそれを止めます。
「トキコビトさん達は叩いちゃダメだよ!小さな人達だもん、こんな風に叩かれたらお尻壊れちゃうよ!
そ、それに優君のストーカー行為は事実……」
「人聞きの悪い事を言わないでください」
パァン!パァン!パァン!
「やぁん!ああっ、ごめんなさい!」
ますます激しくお尻を連打されて、時子は震えながら叫びます。
痛くて痛くて堪りません。
「僕は、貴女に危険が無いように見守っていただけです。
あの幼稚で我がままで傲慢な魔女がまたいつ貴女を狙うか分かりませんからね。
本当はすぐに僕の城に貴女をかくまいたかったのですが……この森に隠れててもらった方が安全そうでしたので」
「あう!や、やぁっ、痛いよ!優君痛い!ごめんなさい!」
「僕は貴女を見守りながらも、あの魔女の弱点や使っている魔法を調べていました。
貴女がかかったのはキスで解ける死の魔法です。僕がこれを知らなかったら、貴女は本当に死んでいましたよ?」
「ごめんなさい!優君が、そこまで私の事、思ってくれてるなんて知らなくて!あんっ!」
「なら、思い知ってください。僕は貴女を想ってるんですよ。こんなにも。こんなにも」
パァン!パァン!パァン!
「いやぁあああ!その愛が痛いよぉぉっ!!!」
時子姫は叩かれるたび悲鳴を漏らして苦悶の表情を浮かべました。
お尻もすっかり赤く染まっています。
「はぁ、はぁ、ゆ、優君……も、やだぁ!!許してぇ……」
辛そうにテーブルにもたれかかって、ぐすぐすと泣く時子姫。
けれども王子の手は緩みません。
時子姫はお尻の熱に悶え苦しみながら必死に叫びます。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ああっ、どうしたら許してくれるの!?」
「そうやって許される事ばかり考えているのがいけません。
貴女、どうして自分がお尻を叩かれてるのか分かってるんですか?」
「ご、ごめんなさい!もう知らない人に家の扉を開けたりしないよ!
怪しい人にもらった物も食べないから!防犯意識も高めるよ!だから……!」
「よくできました」
パァン!パァン!パァン!
「あぁん!優君!許してくれるのぉ!?」
王子に叩かれながらも褒められたので、少し希望を持ってみる時子ですが……
おとぎ話もそう都合良くいかないようです。
「そうですね。時子姫がまともに喋れないぐらい大泣きしながら
それでも呂律の回らない舌で僕に許しを乞うぐらい追い詰められた時、許す事にしましょう」
「そんな!酷いよ!それってどれだけ限界なのさ!?もう、私、泣いて……」
「お仕置きは相手が泣きだしてからが本番なんです」
「知らないよぉぉぉっ!」
時子姫の渾身の叫びも虚しく、お仕置きはまだまだ続行のようです。
傍で見ているトキコビトさんも誰ひとり声を上げる事もなく、皆でくっついて嗚咽を漏らすだけ。
肌を打つ音と悲鳴だけが小屋を覆います。
パァン!パァン!パァン!
「ごめんなさい!許してください!優くっ、もうしない!もうしないからぁ!」
「当たり前です。次死んだら承知しませんよ?それにしても時子姫、さっきから『許して』ばかり言っていますね。
反省してるなら、『お仕置きは最後まで受けてやる!』って……そういう気概が貴女からは感じられません。
そういう態度ってどうなんですか?本当に反省してますか?」
「してるぅ!してるよぉ!でも痛いんだからぁっ!優君は分からないかもしれないけどぉっ!!
うぇぇぇぇ……もうやだぁああああっ!」
時子姫は、お尻が痛すぎて冷静さがすべて吹き飛んでしまったようです。
限界を超えた彼女は子供のように泣き叫びます。
「うわぁあああん!痛いぃぃぃ!痛いよぉぉぉぉ!やめてよもうやめてぇぇぇぇ!!」
パァン!パァン!パァン!
「ごめんなさいって言ったもぉぉぉん!反省したって言ったもぉぉぉん!うわぁあああん!」
パァン!パァン!パァン!
「うぇあぁぁぁぁぁあああん!!」
テーブルにボロボロ涙をこぼして、頬が濡れて、それでも時子姫は叩かれました。
テーブルを叩いたり足を動かして全身で『痛い』を訴えてもなかなか許してもらえないで、
その後何度叩かれたかは数えてもいなかったけど、ある時やっと王子がこう言いました。
「……そろそろ反省できましたか?お尻がリンゴみたいに真っ赤ですね時子姫」
「うわぁああああん!!(そんな情報どうでもいいよ!!)」
「時子姫、貴女の今日の軽薄さを全身全霊で謝ってください。それで終わりにしましょう」
泣くのでいっぱいいぱい、ツッコむ余裕もない時子姫でしたが、王子のこの言葉に全ての望みをかけます。
「ごぇ、ひ、ぅっ、なさい!!許して、んっ、ぐすっ、くら、さい!」
たどたどしくそう言うと……
「いいでしょう。今日のお仕置きはこれで終わります」
「あ……はぁぁぁ……」
安堵の息を吐きながら、時子姫はズルズルと地面にへたり込みました。
「「「「「「「時子姫――大丈夫――――!?」」」」」」」
時子姫を心配したトキコビトさん達が慌てて駆け寄ろうとしますが……
「貴女達……まさか僕をさしおいて、時子姫を抱きしめようとなんてしていませんよね?」
王子の言葉にズザ――っと全員後ずさって壁に背をくっつけました。
それを確認してから、王子は何事も無かったかのように時子姫を抱きしめました。
「きちんと最後までお仕置きを受けられましたね。やればできるじゃないですか」
「あぁ、優君……うっ、ぐすっ……ごめんなさい……」
「そんな顔をして……もっとお仕置きしたくなります。終わりだなんて言わなければ良かった」
そう言いながらも、王子は時子姫を優しく撫でていました。
壁際のトキコビトさん達も、不安そうですが頬を赤くして見守っています。
王子は時子姫の顔を上げさせると優しい声で言いました。
「やっぱり、こんな頼りない貴女放っては置けません。一緒に暮らしましょう」
「優君……」

こうして時子姫はお城で王子様といつまでも幸せに暮らしました。
……と、いうわけではなく……

「時子さ―ん!何してるの―?」
「何してるの―?」
「何してるの―?」
わらわらとトキコビトさんが時子姫の周りに集まってきます。
時子姫は笑顔で言いました。
「スパゲッティを作ってるんだよ。
今日のお昼ご飯は時子のスペシャルスパゲッティにしようね!」
「わーい!時子さんのスパゲッティ大好き――!」
「私も大好き――!」
「私も――!皆――!今日のご飯はスパゲッティだって――!」
「「「「わぁぁぁぁい!!!」」」」」
トキコビトさんは全員集まってきて、皆大はしゃぎ。
そんな騒ぎを聞きつけて、もう一人やってきました。
「騒がしいですね時子さん……ゴキブリでも出たんですか?」
「トキコビトさん達はご飯時はいつもこうだよ。優君」
時子姫は王子に笑いかけました。いいえ、正しくは“時子さん”は“優君”に笑いかけました。
2人は王子と姫という肩書を捨てて、森の小屋でトキコビトさん達と楽しく暮らしているのです。
その後は皆で歌を歌いながら楽しく昼食の準備をして、楽しく食べました。
食事の時、時子さんが優君に言いました。
「ねぇ、優君……喫茶店でも開いてみる?」
「喫茶店ですか?そうですね……いいんじゃないですか?従業員も7人いますし」
「「「「私達従業員!?」」」」
「「で、でも……喫茶店楽しそう!」」
「「楽しそう!やりたい!」」
優君やトキコビトさん達も賛成してくれて……
森の喫茶店“白雪姫”ができるのはもう少し先の話。

こうして時子さんと優君とトキコビトさん達はいつまでも幸せに暮らしました。


※ちなみに魔女エレンは、王子の手回しで魔王千賀流に悪行がバレて
鞭でお尻を叩かれてお仕置きされてしまった上、完全監視下で一緒に暮らす事になったので
それ以来時子姫を狙う事はせず、幸せに暮らしました。


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【作品番号】FS1

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