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家政ごときじゃ救えない!?
エピローグ
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田中温人(たなか はると)、現在執事……もとい、“家政夫”の求職中……
だったが、母校に推薦してもらった就職先(皇極園家、数住家、芽家家、影井家)へ家政夫として派遣されてみたものの
どの派遣先でも諸事情あって、家政夫を続けることができなかった。
つまり、就職先全アウトだったので結局普通の働き口を探す事を決めたところである。

家の中で、じっとノートパソコンとにらめっこしながら温人は唸る。
「うぅう……!とりあえずハローワークかなぁ?それとも若者ハローワーク?」
そんな兄の姿をじっと見ていた双子の弟の温真は、少しだけ迷ってから、
思い切った様子で声をかける。
「兄さん」
「なぁに〜?あ!何かいいアドバイスくれるの?!」

「兄さん、俺の家政婦にならない?」

「え?!」
驚いて振り返る温人。
温真は顔を赤らめた真剣な表情で、しかし温人は驚いた表情のまま激しく首を振った。
「ダメダメダメダメ!!温真にそこまで迷惑かけられないよ!!
今までだって住まわせてもらって……」
「迷惑なんかじゃない!!給料だって出すし、兄さん働かなくたっていいよ!
毎日一緒にいて、家事しながら俺の帰りを待っててくれればいい!!
俺が養ってあげるから!ずっとここに住んでてよ!!」
「は、はるま……?」
温真らしからぬ勢いに、温人はますます驚きつつ首をかしげて笑う。
「あ、はは……温真ってば、優しいんだから。
それって“兄をダメにする弟”だよ〜〜……?
僕だってちゃんと自立しなきゃ!絶対、そのうち温真の生活の邪魔になっちゃうって!
温真だって、そのうち彼女出来たり、将来は結婚だって……」
「兄さん……俺、本気だよ……!!」
温真の必死な表情に、今度こそ何も言えなくなる温人。
そうすると、温真が顔を伏せながら言う。
「……前に、俺の夢、知りたいって言ってたよね?
本当は兄さんには話した事あるんだ、昔。
覚えてないかもしれないけど……」
「…………」
「今もう一回、聞いてくれる?
怒ったり嫌ったり、後悔したり心配したりしないで、聞いてくれる……?」
そう尋ねながら、顔を上げた温真は不安げで泣きそうになっていた。
温人はただただ、そんな弟の不安を解いてあげたい一心で優しく笑う。
「言ってごらん?」
「……あのね……」
一度言うのを躊躇って、深呼吸した後に温真は言った。
「温人を、お嫁さんにしたい」
「……!!」
温人の驚きと困惑の表情は温真の胸を締め付けたけれど。
けれど昔のように泣いてばかりでも無く、温真は更に温人に詰め寄った。
「俺っ、俺!本気なんだ!!愛してる兄さん!ずっと前から!!
別に兄さんが俺の事そういう風に思ってくれなくても構わない!!
俺は結婚なんてしない!彼女も作らない!兄さんが好きなんだ!!
ずっと、ずっと一緒にいたい!!……兄さんが……っ、幸せになるまでで、いいから……!!」
「温真……」
泣いている弟と、彼の本気の告白を抱きとめながら、温人の方も顔を赤くして言う。
「僕も……温真の事大好きだけど、温真と同じ“好き”ではないと思うんだ。
でも……そんなに想ってもらえて、嬉しい……。えへへ、何だか恥ずかしいね……」
温人が温真の頭を撫でながら、そっと言う。
「本当にいいの?温真の家政夫になっても……」
「お願いだから、俺だけの家政夫になって。他の奴に渡したくない」
「仕方ないなぁ、温真は。じゃあねぇ……」
そう言って、温人は必死にしがみついていた弟を優しく剥がして、両手で握手する。
そして満面の笑みで挨拶をした。
「家政夫の田中温人です。これから、よろしくお願いします」
「!!田中温真です!!一生、幸せにするね!!」
「う〜〜ん……何か違うような……??」
笑顔を少し困り顔にしながらも、温真のものすごく嬉しそうな様子を見て
まあいいかと流すことに決めた温人。
(……僕、温真が可愛過ぎて将来彼女とか結婚とかできるか心配になってきた……)
と、一抹の心配がよぎった温人だったけれど、
やっぱり心の大部分は弟への愛おしさと幸せを感じていた。

こうして、温人はめでたく家政夫として就職する事が出来た。


【おまけ】

温人「ねぇ温真?やっとあの時の事思い出したんだけど、
温真小さい時は“温人のお嫁さんになりたい”って言ってなかった?」
温真「!!あっ、あれは……!!大人になれば夢だってちょっとずつカスタマイズされるでしょ!?
今は温人をお嫁さんにしたい気持ちなんだよ!」
温人(……どう違うんだろう??)



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【作品番号】kseihu5

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