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町で噂の大富豪、廟堂院家。 その屋敷で至近距離で向かい合う執事とメイド。 メイドはそっと執事の胸に寄り添って言う。 『鷹森……オレ、前からお前の事が……』 『分かってるよ小二郎君……』 執事がメイドを優しく抱きしめる。 抱擁。そして、見つめ合う瞳。自然に近付くお互いの唇。 触れた柔らかさに酔いしれて息ができない。幸せすぎて瞳を閉じた。 『だって僕も、小二郎君が好きだから……』 唇で繋がったまま、愛しい声は心に直接響いてくる。 まるで奇跡の様な初めての口づけ。遠くから二人を祝福する鐘の音が…… ピピピピピピピピピピピピピピピ!! 「!?」 驚いて目を開けた小二郎。 自分が着ているのは、お気に入りの“赤レンジャ―なりきりパジャマ”で 視界に飛び込んできたのはいつもの自室の風景。 けたたましく鳴る携帯のアラームを止めて体を起こす。 何て事は無い、いつもの朝だった。 「なぁんだ……夢か……」 呟いて眠い目をこする。 ――自分の言葉と夢に気づいて一気に目が覚めた。 それからは慌ただしく着替えて朝食を済ませ、 いつものメイド服でいつものように仕事をする小二郎。 けれど頭からは今朝の夢の事が離れない。 (どうしてオレ、あんな夢を……?) 自分でもよく分からないけれど、考えれば考えるほど顔が熱くなってくる。 と、その時。 「小二郎君!!」 「あ……!」 振り返ると、ちょうど今朝夢に出てきた執事の鷹森がいた。 ふんわりとした笑顔で話しかけてくる。 「お早う。会えて良かったよ。今日は一緒にお昼食べる約束だったよね? 待ち合わせは中庭でいいかな?」 「…………!!」 普段なら何気なく交わせる普通の会話。 けれど小二郎は鷹森を見据えたまま顔を真っ赤にするばかりで口が動かせない。 頭の中に、自分が勝手に夢に見たキスが蘇ってきて恥ずかしくて堪らない。 無意識に一歩後ずさると、そのまま鷹森に背を向けて走り出していた。 「ごっ、ごめん!!オレ急いでるから!!でも、お昼は一緒に中庭で食べよう!!」 走りながら鷹森の方を振り向かずにそれだけ叫ぶのが精いっぱいだった。 そして時刻はお昼。 小二郎は約束通り中庭にやってきて、鷹森と並んで座る。 「――でね、門屋さんが輪ゴムばっかり飛ばしてきて最終的に」 鷹森はにこやかに小二郎に話しかけているが、小二郎は完全に固まっていた。 なんせ今朝の夢の恥ずかしさがまだ抜けていない。 (ど、どうしよう……鷹森の顔がまともに見られない……) 膝に乗せたお弁当の包みをしっかりと握ったまま俯く事しかできない小二郎。 そんな小二郎の様子に気づいた鷹森が不安げな声を出す。 「小二郎君どうかした?」 「え、あ……」 「何だか元気が無いけど……あ、もしかして僕の話つまらなかったかな……?」 「そうじゃなくて……!」 力強くそう言う時に、反射的に鷹森の顔を見てしまって慌てて目を逸らす。 (な、何やってんだよ……!こんな態度じゃ鷹森に誤解されて……!!) 内心焦っても体は言うことをきいてくれない。 黙ったままの小二郎に鷹森がますます気弱な声で言う。 「……もしかして、小二郎君……僕とお昼食べるの、嫌だった……?」 「ち、違う!!オレっ……!!」 言わなければ、早く何か言わなければ!と、小二郎は軽いパニック状態。 自分でも訳が分からないまま言葉だけを繋いでいく。 「オレ、今日、変な夢見ちゃって……あ!変って言うか、オレ的にはすごくいい夢で…… その、鷹森が……オレに……して、くれて……」 言えば言うほど顔が赤くなっていくのが分かる。 (これ言っていいのか!?)という疑問を抱えたまま声だけが先走る。 「だから、はっ、恥ずかしくて!!鷹森の顔見られなくて! オレどうしてあんな夢見たのかな!?た、たぶん鷹森にそうして欲しくて…… うわぁぁぁっ!!無し無し今の無しぃぃッ!!」 「こっ、小二郎君、落ち着いて……!」 一人で混乱して真っ赤な顔を両手で隠してしまった小二郎を鷹森が宥める。 手の温もりが両肩に触れた直後、小二郎は信じられない言葉を聞いた。 「そんなにして欲しいならしてあげるよ」 「へっ!?」 驚きのあまり、恥ずかしかった事も忘れて鷹森の顔を凝視する。 鷹森は優しく笑っていて小二郎の胸がまた高鳴ってゆく。 (ま、まさか……鷹森、キス、してくれるのか……??) そんな思いが頭によぎった瞬間、少し強引に抱き寄せられた。 初キスの予感に心臓が跳ね上がる。 しかし身体は鷹森の正面を越えて大きく引き倒され…… 「わ、ぁっ!!」 気付いたら鷹森の膝の上に腹這いになっていた。 あまりに突然かつ予想外の事態に小二郎の思考が追いつかない。 頭の中が“?”の大群。小二郎は思わず鷹森の方へ顔を向ける。 「え?え?鷹森??」 「こうしてほしかったんだよね?」 【ホテルの教訓を生かす男・鷹森絢音】は爽やかな笑顔で片手を振り上げる。 完全にお尻を叩かれる流れが出来上がって、小二郎はまさかの誤解に慌てるしかない。 「ち、違……」 言いかけたら本能が(いや、違うわけでもない……)と、言葉を止めたのが悪かった。 ぱしっ!! 「ひぁっ!?」 訂正が間に合わず、振り下ろされた平手。 スカートの上からでも十分な痛みだった。 しかも、その痛みは間髪いれず一定のリズムで襲ってくる。 ぱしっ!ぱしっ!ぱしっ! 「やっ、鷹森!!」 「本当に小二郎君はお尻を叩かれるのが好きなんだね」 半ば感心したような鷹森の声を小二郎は否定できなかった。 すでに体がこのお仕置きに喜んで順応し始めている。今さら“やめてくれ”なんて言えない。 体をヒクつかせながら正直に今の感情を言うしかなかった。 「はぁっ、んっ……ごめっ……好きぃ……!!」 「今は昼休みだから、少しだけだよ?」 ぱしっ!ぱしっ!ぱしっ! 「あっ、ぁっ鷹森ぃ……!」 「お弁当もちゃんと食べなきゃいけないし。ね?」 「ひっ……ん!!ふぁっ!」 鷹森は強めに叩いてくれているので小二郎が漏らす悲鳴は止まらない。 怒られるでもなく優しく声をかけられながら、厳しくお尻を叩かれる…… このチグハグな感じに小二郎はすっかり興奮してしまう。 そして興奮のあまり鷹森に懇願した。 「ぁ、た、鷹森……スカート捲くって……!!」 「えっ!?」 「んっ、スカート要らない……パンツ、もっ!いつもみたいに、裸のケツ、叩いて……!」 ぱっ……し!……ぱしぱしっ! 動揺したのか、鷹森のお尻打ちのリズムが狂う。 「でも……こんな所で……誰か、来るかもしれないよ!?」 「いいから……見られても、いい!!」 「ダ、ダメだよそんなの!!」 ぱしっ!ぱしっ!ぱしっ! 鷹森の言葉も、興奮し切って夢心地の小二郎には届かない。 小二郎はただひたすら甘えた声を弾ませておねだりする。 「おねがいっ、ちょっとでいいから……あんっ、脱がせて……! 鷹森にっ、ぁぁ、裸の、ケツぅ……叩かれたいっ……!」 「小二郎君……」 「んっ、全部ぅ、脱がせて……お願いィッ!!はぁぅ!」 小二郎の目は完全に悦喜の色に染まっている。 喘ぎ声のような悲鳴に鷹森の顔も真っ赤になった。 しばらくそのまま黙ってお尻を叩いていたけれど、やがて左右を確認して 意を決したようにスカートを捲くる。 「あ……♥」 喜びを含んだ声に、応えるように一気に下着をずり下ろした。 「鷹森……」 「仕方ないんだから、小二郎君は……」 「うん……♥」 恥ずかしそうに震える声に、心底うれしそうな声。 そんな二人のお仕置きはいよいよ佳境だ。 いっそう力強い平手打ちの音が響く。 パァンッ!パンッ!パンッ! 「ひゃぁぁんっ!ああっ、痛い!鷹森痛い……!」 「こんな所で裸になりたいなんて言うお尻は反省しなきゃダメ!」 「ご、ごめんなさい!んゃぁぁっ!」 少し赤みがかっていた小二郎のお尻はみるみる赤くなって 同時に小二郎も涙目になっていく。 「やぁぁっ!!鷹森痛いぃっ!ごめんなさぁぁい!」 「どこでも裸でお仕置きされたいって言うの反省した?」 「したぁっ!ごめんなさいぃ!ふぇぇっ!」 「本当?」 「ほんとぉぉぉぉっ!やぁぁぁんっ!」 パァンッ!パンッ!パンッ! 足をばたつかせる小二郎を横目に、鷹森はチラッと時計台に目をやる。 「そろそろ時間だよ小二郎君。反省したなら、お仕置きは終わってお弁当にしよう」 「ふぇぇっ、もうそんな時間っ……!?オレ、もっと……」 「こ――じ――ろ――う――くんっ!」 パシィィッ!! 「あぁあああんっ!ごめんなさ――い!!」 最後に思いっきり叩かれて、お仕置きは終わった。 その後は半泣きの小二郎を鷹森が慰めつつ、二人でお弁当を食べた。 食べ終わる頃にはすっかり笑顔になっていた小二郎はとても嬉しそうで、 もう恥ずかしがって固くなる事も無かった。 こうして鷹森と小二郎は楽しく昼食を食べて、お互い自分の持ち場へと別れた。 (そう言えばオレ、キスしてもらってないや……まぁいっか。ケツ叩いてもらえたし) トイレに向かいながら嬉しそうにお尻をさすった小二郎だった。 |
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