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廟堂院家の双子の話


町で噂の大富豪、廟堂院家には二人の息子がいた。
名前は千歳と千早。まだ幼い双子の兄弟だ。
ある日、面白い物を見つけた千歳はそれで一緒に遊ぼうと千早の部屋に行った。

扉を開けて目にしたのは、四つん這いになり、千早に馬乗りになられている若い使用人の姿。
千歳はさして驚きもしない。挨拶をするように柔らかい笑顔で使用人に微笑むだけだ。
使用人はその笑顔にすがるように口を開く。

「た、助けっ……」
「おい。」
「うっ……」

しかし、言い終わる前に千早に髪の毛を鷲掴みにされて、使用人は小さな呻き声を上げた。


「馬が人の言葉なんか喋るな。それに、馬の分際で兄様に慈悲を求めるなんて厚かましいにもほどがある。
お前は黙って馬になっていればいいんだ。ほら、いななけ馬ぁ!」

ぱしっ!

「ひ、ヒヒィンッ!」

千早に尻を叩かれて、馬の鳴き真似をする使用人が、助けてくれと目で訴えている。
その縋るような眼を愛おしそうに見つめて、千歳は一言、こう言った。

「あら、楽しそう。僕も混ぜてもらおうかな?」

瞬間、絶望の表情を浮かべる使用人を見て、このままこの遊びに加わってしまうのも面白そうだと思ったが
その為にここにきたわけではない。


「って、言いたいところだけど……千早ちゃん、“お馬さんごっこ”はそれくらいにして、僕と遊ばない?
面白い物を見つけたから。」
「はい!もちろんです!」

千早は、純粋に嬉しそうな笑顔で“馬”から降りると振り返って言った。
今の笑顔からは想像もできない冷たい表情で。

「お前、もう下がっていいぞ。部屋で馬になる練習でもしているといい。」
「っ、失礼します……」

涙目で逃げるように出ていった使用人を見て二人はくすくす笑う。

「いつもああやって遊んでるの?」
「いいえ……今日は気が向いたから。この前は犬だったし……
そんなことより、何を見つけたんですか?」


馬になったり犬になったり、毎度千早の気まぐれに付き合わされる使用人もたまったものではないだろう。
しかし千早にとっては使用人の苦労など、どうでもいい事らしい。
今はただ、わくわくした表情で千歳の反応を待っている。
千歳としても、早く可愛い弟と遊びたいので……


「ほら、こーれ。」

千早の目の前に見つけたものをかざして見せる。
黒い、ゴムか何かでできた柔らかい笏(しゃく)のようなもの。

「これは?」
「実は僕もよく分からないんだけど、何だか鞭の一種っぽいと思わない?」

言いながら千歳は千早にその物体を手渡す。
千早はよくしなるその物体を不思議そうに見つめながら、反らせて弄んだ。


「んー……言われてみれば……」
「でしょ?だから、少し試してみたいなーと思って。それで、何か叩いてみたり。」
「何か……」
「千早ちゃん、僕に叩かれてみない?」
「!!」


硬直する千早を見て、千歳は少々マズイ事を言ったかもしれないと思った。
しかし、これを見つけたときに使い道はこれしかないと確信したのだ。
普段は千早に手を挙げるようなマネをするなんて考えたこともなかったが
何でも大好きな弟と一緒に試してみたい、と。


「ダメ?新品だからキレイだよ?」
「あ……その……」
「……やっぱり嫌だよね……。ごめんね千早ちゃん……試したら面白いと思ったんだけど……」

寂しげに目を伏せる千歳に、千早は慌てて近づいてぐっとその手を握る。

「ぜひ、やりましょう!!」
「ありがとう……千早ちゃん。」
千歳は花の咲くような笑顔を浮かべた。


ベッドの上でやろうということになって、千歳は千早を四つん這いにさせる。
下半身は一糸まとわぬ姿で、少し恥ずかしそうではあるけれど、千早は大人しく言うとおりにしていた。


「いつ見ても可愛いね、千早ちゃんのお尻。」

尻を撫でられて千早がくすぐったそうに身じろぎする。

「ぁ……んっ……」
「ダメだよ……そんな声出しちゃ。」

パシッ!!

「あっ!!」

驚いたような悲鳴を上げる千早の尻をもう2,3発、例の鞭で軽く打つ。

パシッ!!パシッ!!パシッ!!

「んっ……くっ……」
「どう?痛い?」
「少し……。」
「やっぱりねぇ……」

千歳はしみじみと呟きながら、さらに千早の尻を打つ。

パシッ!!パシッ!!パシッ!!

「っ……うっ……!!」

(ふふっ、可愛い……)
打たれるたびに小さな悲鳴をあげながらも耐えている千早を見て、千歳は思う。
てっきりすぐに「やめてやめて」と音を上げるかと思っていたのに、千早は健気に我慢しているではないか。
自分には従順だという自負はあったがここまでとは……

そんな事を考えながらしばらく叩いていると、千早の尻はほんのりピンク色に染まっていた。


「あはは……千早ちゃんのお尻、可愛いピンク色。」
「あっ……あぅっ……!!」
「痛そうだねぇ……でもそれにしては……」

パァンッ!

「あぁんっ!!」

力を入れて叩くと、千早が崩れ落ちそうになる。

「ずいぶん可愛らしい声を出すね、千早ちゃん。嬉しいの?こういうの好き?」
「ちっ……違っ……!!」

パンッ!

「やんっ!!」
「違わないよ。だって全然抵抗しないもの。千早ちゃん、もしかしてマゾさん?」
「違うっ……違いますっ!!」


千早が抵抗しないのは自分が叩いているからだと分かっていながらも、ついつい意地悪な聞き方をしてしまう。
何たって、千歳からすれば、耳まで真っ赤になりながら必死で否定する千早が可愛いすぎるのだ。
普段見慣れない姿だから特にそう感じる。


「こ、これはっ……っぅ、兄様だからっ……あぁっ!!」
「僕だから?」
「そ、そうですっ……兄様以外のヤツにっ……こんなこと、させなっ……!!」
「そう……ありがとう千早ちゃん。とっても嬉しいよ。ご褒美あげなくちゃね。」

パンッ!パンッ!パンッ!

何の躊躇いもなく「兄様だから」などと言われて、ならばこの特権を利用しない手は無いと
思いっきり連打すると、千早は一層叫びあげる。目に見えて苦しそうになってきたのだ。
尻もピンクというより赤に近い。


「いっ、いやっ!!ああっ!!……兄様っ!!もっ……もう、許してください!!」
「許してって言われても……困ったなぁ、僕は別に怒っているわけじゃないんだけど……」
「ごっ、ごめんなさいっ……もう、限界なんですっ……だから……やぁぁっ!!」


パンッ!パンッ!パンッ!


「お願いですっ……お願っ……っ……やめてくださいっ……!!」

千早が震えているのを見て、千歳は言い表せない陶酔感を感じていた。
普段、他人には指の一本も触れさせない千早が大人しく打たれ、身を委ねている……
人の頭を踏みつけるのも厭わない千早が、必死で自分に許しを乞う。

(千早ちゃんが本気で痛がってるのに……情の一つも湧いてこないなんて……)

それどころか、もっと虐めたいとすら、思ってしまう。

(僕はなんて悪いお兄ちゃんなんだろう……)

自分自身の罪悪感にさえ興奮してしまう、この状況。
完全にスイッチが入ってしまったようだ。


「兄様っ…………!!」
「……千早ちゃんが可愛すぎるからいけないんだよ……」
「えっ……?」
「……ねぇ、もう少しだけ頑張って?僕のために。」
「にっ……!!」

パンッ!パンッ!パンッ!

返事も聞かずに、千歳は力いっぱい振り下ろしていた。

「ひぁあっ!!うっ、うわぁぁあっ!!」

強く叩かれて、千早は泣き声に近い叫び声をあげる。

「兄様ぁっ!!ごめっ……やぁぁああっ!!……許しっ、てぇぇっ!!あぁぁんっ!!」
「だから別に怒ってないってば。」
「うぇええええんっ!!兄様ぁあああっ!!」


もう上半身を完全に突っ伏して泣いている千早。
そろそろ限界だろうか……あまりやって嫌われるといけないし……
そう思うと、千歳はやっと手を止めることができた。

改めてみると、千早は大泣きしているし、尻も赤い。
けれども千歳が感じたのは「可哀想」とか、「やりすぎた」とかではなく……

(やっぱり千早ちゃんはどんな姿でも可愛い……)
その後、僕、やっぱり悪いお兄ちゃんだ……とも。


「千早ちゃん、もういいよ……ごめんね……?」
「うぇぇっ……ぐすっ……」

泣きながらも必死で頭を振る千早に、いっそうい愛おしさが込み上げてきて
千歳は千早を起こして抱きしめた。
そして、そのまま泣きやむようにあやしていた。



「千早ちゃん……痛い?」

心配そうに尋ねる千歳に、もう泣きやんでいた千早はやはり首を振って笑った。

「痛いけど大丈夫です。そんな顔しないでください。
オレは兄様が満足してくれたらそれでいいですから。むしろオレが……」

言いかけた千早は恥ずかしそうに俯いて、小さな声で続けた。

「オレが、兄様の前であんな醜態をさらしたかと思うと恥ずかしくて……」

「醜態だなんて……千早ちゃん、とっても可愛かったよ?
僕、思わず途中から本気になっちゃった……。」
「兄様……」

千歳がぎゅっと抱きしめると、千早は恍惚とした表情を浮かべる。
そんな弟を、千歳はずっと撫でている。


「可愛すぎてもう一回やりたいくらいだよ。夜にもう一回やる?
上手くすれば、もっと盛り上がるよ。」
「え……」
「あ、でも……一日二回はきついよね……千早ちゃんに無理させるわけには……。」

悲しげに目を伏せる千歳に、千早は慌ててぐっと抱き返す。

「ぜひ、やらせてください!!」

廟堂院兄弟の夜は、長くなりそうだ。

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【作品番号】BS1

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