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「反対!だってお父さんと離れるなんてさみしいんだもん!」
僕は言った。そうだよ、お父さんと離れるなんてさみしい。
たとえ少しの間でも、いやだ!
そう思って、お父さんにぎゅって抱きついた。
お父さんはガッカリするかなぁと思ったけど、やっぱり笑顔だった。
お母さんも僕の後から同じような事を言う。
「そうよ!お金だったら、きっと今のままでも貯められるわ!家族が離れるなんてやっぱり寂しいもの!」
お父さんは、お母さんと僕を交互に見た。
「参ったな……二人がそういうなら、僕も強引に話を進められないよ。
そうだね。皆で一緒に暮らす事が一番大切だ。
よく考えたら、僕だって二人と離れたら寂しくていい仕事ができる気がしないかも……。
転勤の話は命令じゃないから……断っておくよ」
そう言って照れ臭そうに笑ってくれた。
お父さんと今のまま暮らせる事になって、僕はホッとした。お母さんもきっとそう。


そして、それから何年か経った。
まぁまぁの広さのワンルームの中で、突然鳴った電話に出る。
「はい、鷹森です。あ、お母さん?元気だよ?そっちはどう?
え?大丈夫だよ!ちゃんと食べてるってば!できてるよ料理くらい!
手なんかもう切らないよ!そりゃ最初は切ったけどさ!心配性だなぁもう……!
あ、そろそろバイトに行かなきゃ。お父さんもお母さんも体に気を付けてね?夏休みには帰るよ、絶対」
素敵な事に、単身赴任しなくてもあの時のお父さんの夢は叶った。
今現在、お父さんとお母さんは海の近くに買った念願の家で暮らしている。
僕?僕は実家を離れて、一人暮らしをしながら大学に通っている。
それでも、何年かは家族と海の近くに住んだから、お父さんの夢は叶ったんだ。
お父さんもお母さんも嬉しそうで、僕にとっても楽しい日々だった。
ちゃんと自分の夢を叶えるなんて本当にお父さんはすごい人だと思う。
僕もしっかり勉強して、お父さんみたいに夢を持って、実現させたいな。いつか。
そう思いながら、教科書や筆記用具をまとめて鞄に入れる。
今日は午後の授業は無いんだけど、そろそろバイトの時間だ。

大学にほど近いこの辺りは、緑が豊かで落ち着いた住宅街。
ここに建っている一戸建てが僕のバイト先。
呼び鈴を鳴らして「鷹森です」と声をかけると、いつも優しそうなお母さんが出迎えてくれる。
「こんにちは鷹森先生。いつもありがとうございます」
「いいえそんな……こちらこそ。今日もよろしくお願いします」
お互い笑顔で挨拶を交わして、家の中に通されると、すぐに元気な足音が聞こえてくる。
「絢音お兄ちゃん!!」
嬉しそうに僕に呼びかけてくれるのが、僕の教え子。真由ちゃんだ。
最初はすごく人見知りの子だったんだけど最近は僕に慣れてくれたみたいで
家に着くとこうやって嬉しそうに出迎えてくれる。
「もう、真由ったら……“絢音お兄ちゃん”じゃなくて、“鷹森先生”でしょ?」
「だって……」
「あ、いいですよ。呼び方なんてどうでも。今日も頑張ろうね、真由ちゃん」
「うん!」
真由ちゃんはとびきりの笑顔で頷いてくれて、お母さんも嬉しそうに笑っていた。
今さらだけど、僕のバイトはこの“真由ちゃんの家庭教師”だ。
真由ちゃんは事情があって、普通の中学校に通えなかったんだけど、
今は目標である『ルミナス・クラウン使用人学校』に通う為に一生懸命勉強してる。
そんな真由ちゃんの目標を叶えるお手伝いができることが、僕はとても嬉しかった。

そういうわけで、今日も2人で真由ちゃんの部屋にきた。
テーブルに並んで座って、さっそく始めようとするんだけど……
「じゃあ真由ちゃん、前に出しておいた宿題の答え合わせをしようか?」
「うーんと……絢音お兄ちゃん!オレさ、新しい『カラフルレンジャー』のDVD買ったんだ!一緒に見る?」
「え?あ、面白そうだね。でも、先に勉強を済ませてからにしよう?だから前の宿題を……」
「じゃあさ!ゲームしよう!オレ、すごい面白いゲーム持ってる!」
「そうだね。ゲームしよう!でも、先に勉強してからにしようね?ねぇ真由ちゃん、前の宿題は?」
「…………」
真由ちゃんは困った表情で俯いてしまった。
もしかして、宿題をするのを忘れちゃったのかな?そう思って、少し言い方を変えてみた。
「別に、全部書いてなくていいから。分からないところがあったんだったら、一緒に考えよう?
とりあえず、問題集を見せてくれるかな?」
真由ちゃんはしぶしぶ……といった様子で問題集を差し出してくれた。
この前はこれの108〜120ページを宿題にしておいたんだけど……。
「……え――っと……」
案の定、真由ちゃんは宿題をするのを忘れていたみたい。
直接書き込むタイプの問題集なのに、宿題の範囲全部のページが真っ白。
僕は何て声をかけていいものか悩んでしまう。
実は、ここ数回ずっとこんな調子だった。
今までは毎回、きちんと出しておいた宿題はこなしてくれた。僕の授業も真剣に聞いてくれた。
真由ちゃんは飲みこみが早くて、授業は思ったより早く進んでて、この問題集だって終わりかけてる。
なのに最近、真由ちゃんは僕が授業をしようとすると、すぐに遊びの話題に逸らそうとして
宿題だって全く手を付けていない。
どうしたんだろう?勉強が嫌になっちゃったのかな?それとも何か悩み事が?
何にしても、ここで挫折するのはあんまりだ。せっかく今まで頑張っていたのに……と、僕は悲しい気持ちになった。
だから、真由ちゃんに真剣に語りかける。
「真由ちゃん……最近、真面目に勉強してくれないね。勉強嫌になっちゃった?」
「そうじゃ、ないけど……」
「じゃあ、何か勉強が手に付かなくなるような悩み事があるのかな?僕でよければ相談に乗るけど……」
「…………」
真由ちゃんの俯いた瞳が潤んでいる。
あまり責めて泣かせるような事はしたくないけど、それ以上にこの子には目標を叶えて欲しかった。
真由ちゃんが抱える事情は、この年齢の子が抱えるにはあまりにも重い物。
だから、もしかして僕には想像もつかないほど深い悩みがあるのかも……。なら、なおさら少しでも力になりたい。
色々と考えてしまって、固唾をのんで真由ちゃんの返事を待っていたら
やがて、ぽつりと真由ちゃんが言う。
「だって……」
僕を見つめる真由ちゃんの瞳は少し濡れていて、頬は少し赤い。
縋る様に僕の顔を見つめる真由ちゃんを、このタイミングで可愛いと思ってしまった。
そしたら……
「だって、問題集……勉強、終わったら……絢音お兄ちゃん、もう家に来てくれなくなるんだろ!?」
「え!?」
「お、オレっ……絢音お兄ちゃんにこれからもずーっと、家に来てほしくて……!」
「真由ちゃん……」
「だって、オレ……絢音お兄ちゃん好きだしっ……!!」
「あ……」
次々と繰り出される衝撃の事実に、僕はまともな返事が返せない。
“これからもずっと家に来てほしい” “好き”……あまりにもストレートな言葉。
もちろん、嬉しかった。嬉しくてたまらなかった。
「ま、真由ちゃん……別に、この問題集終わっても、別の問題集があるし……
君が使用人学校に受かるまでは、一緒に勉強して……」
違う。そうじゃなくて。こんな事が言いたいんじゃない。
どんどん熱くなってくる顔を、一拍、ぐっと手で押さえて。
意を決して僕は言う。
「僕は、真由ちゃんさえよければ、これからもずっとこの家に来るよ。
僕も真由ちゃんが好きだから……!!」
「絢音お兄ちゃん……!」
真由ちゃんが驚いた顔をする。驚きと照れと喜びが、入り混じったような顔。
可愛い。可愛い過ぎる。
気がつけば僕は、彼女を強く抱きしめていた。
「あっ……!!」
真由ちゃんの短い悲鳴。その妙に艶めかしい声に、柔らかな感触に、僕の体は止まらなくなる。
彼女を抱きしめたまま、その唇めがけて顔を寄せていた。
「絢音お兄ちゃん……!」
掠れた様な小さな声に、頭の中の理性が叫ぶ。
(やめなよ!教え子だよ!?)
関係ない。僕は真由ちゃんが好きだ。
(だってこの子、まだ中学生だよ!?)
いや、もう中学生だ。
(真由ちゃんのお母さんに何て言うの!?)
お母さん……真由ちゃんを僕にくださいッッ!!
叫んだ瞬間、唇が重なる柔らかい感触。
さすがに舌までは入れる勇気も無くて、すぐに唇を離した。
子供じみた短くて軽いキス。
けれど、真由ちゃんは耳まで真っ赤にして、口をパクパクしていた。
「ぉ……おれ、オレオレっ……キスしたの、初めて……!!」
「嫌……だった……?」
僕もドキドキしてそう聞き返すのが精いっぱい。
けれど真由ちゃんは、頭が取れるんじゃないかってくらい首を横に振る。
「嬉しかった……!!」
泣きそうな笑顔で、そう言ってくれて……
一度爆発した愛おしさが、またメーターを振り切って爆発しそうになる。
と、いうかまた彼女を抱きしめていた。
「ひゃっ!?絢音お兄ちゃん、ダメっ……勉強、しなきゃ!!」
真由ちゃんが恥ずかしそうに身じろぎしていて、僕も少々冷静になって体を離す。
「ご、ごめんね……真由ちゃんが可愛いからつい……」
「ありがと……」
お互いに真っ赤な顔で俯いた。

(こんな事してる場合じゃないや。勉強しなきゃ……。)
やっと家庭教師としての責任感が戻って、改めて目に入るのは真っ白なページ。
う〜ん……これはこの前教えたところだし、とりあえず自分で解いてみてもらおうかな?
ここ数回そうしてたし。
僕は問題集を真由ちゃんの前に広げて言った。
「えっと……真由ちゃん……ここ、まずは自分でやってみようか?」
「う、うん……」
ややぎこちなくだけど、今日の授業を始める事ができた。
真由ちゃんはスラスラとページにシャーペンを走らせていく。
まるで答えを全部知っているかのように淀み無く。毎回、これには驚かされる。
「すごいね……そんなにスラスラ早く解けるなんて。真由ちゃん、きっとすごく頭がいいんだよ」
いつもならこう言っても、「えへへ」と曖昧に笑っているだけの真由ちゃん。
けれど今日は、いつもと違う返事が返ってきた。
「……本当は、違うノートに解いてたんだ。だから、大体分かる……」
「え!?嘘!?だったら、そのノート出してくれれば……」
言いかけて、僕はさっきの出来事を思い出す。
問題集を全部終えてしまったら、僕と会えなくなると思って
必死に手を付けなかった(フリだったみたいだけど)真由ちゃん。
不器用に健気なこの子の頭を、そっと撫でる。
「これからは、きちんとやった宿題見せてくれるよね?」
「うん……!あ、でも、絢音お兄ちゃんと会えると思ったらドキドキして……勉強が手に付かなくなるかも……」
「あれ?それは困るなぁ」
冗談みたいに言い合う。けど、今までとは違う雰囲気だった。
でも……ここで僕はまた心配になる。
(確かに……真由ちゃんが恋煩いで勉強に手がつかなくなったら困るかも……
……あれ?“恋煩い”なんて、ちょっといい気になり過ぎかな僕……)
……と、とにかく、真由ちゃんが勉強に集中してくれなくなるのは困る。
何化対策を考えなきゃ。……う〜ん……。
「できたよ。絢音お兄ちゃん」
真由ちゃんが笑顔で問題集を僕に差し出してくれた。
「うん。じゃあ丸つけするから少し待っててね?」
「は――い」
真由ちゃんの解いた問題に丸をつけながら考えた。
どうしたらいいんだろう?真由ちゃんが次からきちんと勉強してくれるようになる方法……。
そう言えば、僕が中学生の頃……怖い先生の宿題は絶対にやって行ってたっけ。
でも、真由ちゃんに怖いだなんて思われたくないし……
いや、でも、真由ちゃんがきちんと試験に受かる方が大事だし……。
間を取って、少しだけ脅かしてみようかな?
「すごいね真由ちゃん。全問正解!」
問題集を真由ちゃんに返しながらそう言ったら、真由ちゃんはとても嬉しそうだ。
「やった!じゃあ絢音お兄ちゃん、ゲームする?カラフルレンジャー見る?」
「ダメだよ。まだ前の宿題を答え合わせしただけで、今日の勉強はしてないじゃない」
「あ。そっか」
真由ちゃんは赤くなって俯く。
彼女のこんな表情を見るたびに、可愛くて可愛くて……。
気が引けるけど……少し、脅かすだけだ。真由ちゃんの為に。
「真由ちゃん、それに今日は勉強の前に真由ちゃんをお仕置きしなきゃいけません」
「おしおき?」
「そうだよ。真由ちゃんが宿題をしなかったお仕置き」
「で、でも前まで無かったよ?」
「今からまとめてやる事にしたんだ」
僕の言葉に真由ちゃんの表情がみるみる不安げになっていく。
「それって痛い?」
「そうだね。お尻を叩くから普通は痛いだろうね」
「え!?」
「おいで真由ちゃん。お仕置きするから」
これ以上真由ちゃんを不安にさせる前に……と、思って僕は強引に
彼女を膝の上に引き倒した。半ズボンを脱がそうとすると真由ちゃんが叫ぶ。
「ズボン脱がすの!?」
「うん。ズボンもパンツも脱がせて、裸のお尻を叩きます」
「ダメ!!嫌だ!!」
真由ちゃんが泣きそうな声になった。
彼女が何をそんなに怯えているか、僕には分かる。
「大丈夫だよ。真由ちゃん」
優しく宥めながら、僕はズボンと下着を下ろした。それでも真由ちゃんは半泣きで叫んでいたけど。
「やめて!!絢音お兄ちゃん見ないで!」
“見ないで”と言われても、見えてしまった可愛らしいお尻。
けれど彼女が隠したいのはそこじゃなくて、その前っ側。彼女の“男性器”。
真由ちゃんが家から出られなくなって、普通の中学校へ通えなくなった原因。
彼女は生まれつきの“両性具有”だったんだ。
僕は最初にお母さんからその事を説明されていた。もちろん、真由ちゃんも僕に話す事に納得した上で。
でも実際に見せる事には抵抗があるようだ。
「見ちゃダメ……やだ……絢音お兄ちゃん変って思うもん……!!」
「僕からはお尻しか見えないよ。だから安心して。それに、もし見えたとしても
変だなんて思わない。大好きな真由ちゃんの体だから」
真由ちゃんを安心させるためにそう言いながら、手を振り上げる。
「それよりも、宿題をしなかった事を反省してもらわなきゃね!」
バシィッ!
「ひゃっ!?」
悲鳴に躊躇せず、小ぶりなお尻を何度も叩いた。
パシンッ!パシンッ!パシンッ!
「やぁぁっ!絢音お兄ちゃん!!」
「真由ちゃん、宿題は毎回やらなきゃダメでしょ?サボるたびに授業が遅れちゃうよ?
きちんと勉強して、使用人学校に行きたいんだよね?」
「そうだけどぉっ!!」
足をばたつかせている真由ちゃん。
痛いからだと思うけど、まだ叩き始めたばかりなので手を休めずに叩いた。
パシンッ!パシンッ!パシンッ!
「ああっ!痛い!」
「うん。真由ちゃんが今度からちゃんと宿題をしてくれるように痛くしてる」
「お、オレっ、次からちゃんとするし!!今までは、絢音お兄ちゃんが来てくれなくなると思って……!」
「本当?さっき“絢音お兄ちゃんと会えると思ったらドキドキして勉強が手に付かなくなるかも”って
言ってたけど、ちゃんとしてくれるの?」
「するよぉ!するってば!!ひゃぁぁぁんっ!」
パシンッ!パシンッ!パシンッ!
暴れながら、必死で真由ちゃんは叫んでいる。
「するからっ……もうケツ叩かないで!」
「ダメ。これは今までサボった分のお仕置きでもあるんだから。
真由ちゃんが反省したら、終わりだよ」
「オレ反省したもん!早くパンツはかせてよ!絢音お兄ちゃんにオレの裸見られたくない――っ!」
「それは反省したって言いません!!」
パシンッ!パシンッ!パシンッ!
今までより強く叩く様にしたら、真由ちゃんの悲鳴も大きくなる。
逃げようとする動きも同様に。お尻もだんだん赤くなってきた。
「いやぁぁぁっ!絢音お兄ちゃん痛いよぉぉ!!オレ反省したぁぁ!終わりぃぃ!!」
「真由ちゃんは早くパンツはきたいだけでしょ?勝手に終わらせないで」
「だって、だってぇ!オレの裸変だから絢音お兄ちゃんに嫌われるもん〜〜っ!!」
「だから、嫌わないってば!僕は真由ちゃんが好きだって、何度言えば分かるの!」
パシンッ!パシンッ!パシンッ!
何だか宿題は関係ない流れになってきたけど……先にこっちの話を解決しないと
真由ちゃんは宿題の件を反省してくれそうにない。
それに、真由ちゃんが自分の体をそんな風に思ったままだなんて、悲し過ぎる。
「じゃあさ、真由ちゃん……僕が君の事どれだけ好きか、お尻に教えてあげようか?」
「ひっ!?」
僕が手を振り下ろす気配を感じてか、真由ちゃんが息をのむ。
僕の膝に縮こまる様にしがみついた彼女のお尻に、力いっぱい平手を叩きつけた。
ビシィッ!
「いやぁあああっ!!」
バシッ!ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「あぁあああん!痛い!痛いよ!ダメぇ!!」
バシッ!ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「痛い!痛い!ケツ痛いぃ!やめてぇぇっ!」
バシッ!ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「ふぇぇっ!絢音お兄ちゃぁぁぁん!痛いよぉぉ!!やぁぁああっ!」
バシッ!ビシッ!バシッ!バシィッ!!
彼女が何を言っても、バシバシお尻を叩く。僕の手が痛くなるほど強く。ずっと。
そうしてると、真由ちゃんのお尻は真っ赤になってしまって。
「うわぁぁぁああん!痛い――――っ!うえぇぇ――――ん!!」
真由ちゃんも泣きだしてしまったので、少し手を緩めて言う。
「分かった?僕はこんなにも、真由ちゃんが大好きだよ?」
「えっ、ぅぅっ、絢音お兄ちゃぁぁ……でもぉぉ!!」
しゃくりあげながら、真由ちゃんは言う。
「オレの事っ、女だと思って、えっく、近づいてくる奴は……!オレの体見たら、嫌いになるもん……!
女にチンチンがあるの、キモイって、言う……!ふぇぇぇっ……!
絢音お兄ちゃん、オレの事……女だと思ってる……!」
「!!」
真由ちゃんに心の底を見透かされた気がしてギクリとした。
確かに僕は、最初真由ちゃんの事を女の子だと思っていたし、今でも正直、女の子として見ている部分が大きい。
けれど……僕は彼女を“キモイ”だなんていう連中とは違う。そんな奴らは絶対に許せない。
それを彼女に分かって欲しかった。
「僕は確かに、最初は真由ちゃんを女の子だと思ってた。
でも、真由ちゃんの体を気持ち悪いだなんて思ったりしない!真由ちゃんは僕の事信じてくれないの?」
バシッ!ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「あぁああん!ち、違う!!信じてるけど……でも……!!」
「だったら、君の体を見せて。僕は絶対に受け入れる」
「そんな事……!!」
これは最終手段だ。僕はお尻を叩く手を一旦止めて、彼女をひっくり返そうとした。
けど、真由ちゃんは僕の膝にしがみついて抵抗した。
「やめてお願い!!絢音お兄ちゃん!!ヤダよ!!」
「お願い。僕を信じて」
「ヤダ!やだぁぁぁぁっ!あぁあああっ!」
僕は真由ちゃんを膝抱きにするようにして、彼女の下半身を見た。
真由ちゃんは両手で顔を覆いながら泣いている。
男性器と言っても、彼女のそれは年の割には随分小さくて、可愛らしいとさえ思った。
不思議な感じはしたけど、嫌悪感なんて微塵も湧いてこなかった。それが何よりも嬉しい。
やっぱり、僕は真由ちゃんが好きだ。
だから自信を持って言える。
「ほら、やっぱり全然気持ち悪くなんかない。可愛いよ真由ちゃん」
「嘘だ!!可愛くないもん!」
「そんな事言うなら、自分で見てごらんよ」
そう言うと、真由ちゃんは律儀に、顔を覆っている手を恐る恐るどけて
自分の下半身をじっと見つめる。その仕草が何だか可愛らしくて頬が緩んでしまった。
おかげで真由ちゃんの不安げな目と視線が合った時、自然な笑顔になれたと思う。
「ね?とっても可愛いでしょ?」
「うっ……うわぁああああん!!」
真由ちゃんが膝立ちになって僕に縋りついて泣きだす。
僕は抱きしめて彼女の背中を撫で続けた。
「僕が真由ちゃんの事好きだって、信じてくれた?」
「信じたぁぁあっ!ありがとう!絢音お兄ちゃんありがとぉぉぉぉっ!!」
わんわん泣いている彼女のお尻をぺちぺちと軽く叩きながら僕は言う。
「じゃあ、今度から宿題きちんとやるんだよ?」
「やるぅぅぅぅっ!!」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさぁぁぁああい!うわぁああああん!!」
「うん。じゃあお仕置き終わり。真由ちゃんが泣きやんだら、カラフルレンジャー見てゲームしよう」
そう言ってお尻を撫でたら、真由ちゃんは首を縦に振りながら泣き続けた。
え?今日の勉強?そんなの一日ぐらいどうだっていいよ。
今は真由ちゃんの笑顔の方が大事なんだから。

その後、真由ちゃんが泣きやんでから、DVDを見たりゲームをしたりして過ごした。
やっぱり真由ちゃんは笑顔の方が可愛い。
そろそろ帰る時間になった頃、真由ちゃんが少し恥ずかしそうに僕の服を引っ張る。
「どうしたの真由ちゃん?(キスのおねだりかな?)」
僕の調子の乗り具合は置いといて、残念ながら真由ちゃんの言った事はキスのおねだりではなかった。
「絢音お兄ちゃんは……好きだとケツいっぱい叩くの?」
「え!?いや、あれは……」
「オレ、痛いけど、絢音お兄ちゃんにだったら、いっぱいケツ叩かれてもいいよ……?」
「ま、真由ちゃん!?」
僕のお仕置きの仕方のせいで、真由ちゃんが禁断のゲートを開きそうになっていた。
なので、しばらく真由ちゃんのお尻を叩くのはやめておこうと心に誓った僕だった。



それから、僕の家庭教師生活は順調に続いて、真由ちゃんは以前の様にきちんと勉強してくれて。
最終的には無事『ルミナス・クラウン使用人学校』に合格した。
そして2年間きちんと勉強して、立派に卒業した。
けれど彼女の進路はどこかの屋敷の使用人では無かった。

なぜなら……

「お帰りなさい。絢音お兄ちゃん」
「ただいま。真由ちゃん」
彼女はこうして、仕事から帰った僕を出迎えてくれて……つまり、僕の家に一緒に住んでいるからだ。
真由ちゃんが使用人学校に通う事になったと同時に、僕らは恋人として付き合いだした。
僕の方は一般の会社で働きだして、そのうち同棲するようになった。
あのワンルームは引っ越した。双方の親の支援もあっての事だ。
少し広くなった家での2人の生活……それはとても幸せな日々だった。
けれども、僕らはさらなる幸せへと歩みを進めようとしてるんだ。
スーツを着替えながら僕は真由ちゃんに声をかける。
「真由ちゃん。今度の日曜に式場へ下見に行こうと思うんだけど、どうかな?」
「うん。大丈夫……」
真由ちゃんは恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに頷く。
式場って言うのは……もちろん、結婚式場。
そうなんだ。幸運な事に僕は真由ちゃんにプロポーズして、受け入れてもらった。
今、少しずつ結婚準備を進めているところだった。
考える事も準備も多そうだけど、真由ちゃんと一緒なら楽しい。そう思える。

着替え終わると、ちょうど晩ご飯も出来上がっていて
真由ちゃんと二人でハンバーグを食べた。会話はもっぱら結婚準備の事だ。
彼女の希望としては、ウエディングドレスを着てお兄さんとバージンロードを歩きたいそうだ。
それは彼女の希望と言うより、彼女のお兄さんのどうしても叶えたい夢だったらしい。
真由ちゃんの家は早くにお父さんを亡くしていて、実質今まで家計を支えていたのはお兄さんだったらしい。
“住み込みのカニ缶工場”に一人で出稼ぎしてまでお母さんと真由ちゃんの二人を養っていたというから驚きだ。
その為にせっかく入った一流大学も中退してしまったらしい。青春を犠牲にしてまで家族を守った、
真由ちゃんにとってはお父さん代わりでもあって、大好きなお兄さん。
めったに自分の望みなんて口にしないそのお兄さんが唯一、お母さんにこっそり語った夢が
“真由の結婚式で一緒にバージンロードを歩きたい”だったんだって。
お兄さんは現在“廟堂院家の執事”に転職していて、もちろん結婚式にも出席してくれる。
だから僕もこの真由ちゃんの希望には大賛成だ。そんな素晴らしいお兄さんの夢、ぜひ叶えてあげたい。
ちなみにそのお兄さんから早くも、手作りっぽいうさぎの新郎新婦のぬいぐるみが届いてほほ笑ましかった。

「絢音お兄ちゃん……」
晩ご飯を食べ終わって食器を片づけた後、真由ちゃんが不安そうに言う。
「本当にオレでいいの?オレ、ちゃんとした女じゃないし、子供だって……」
「真由ちゃんこそ、本当に僕でいいの?」
そう返しながら、真由ちゃんをしっかりと抱きしめた。すると、真由ちゃんは僕に縋りついて言う。
「オレは、絢音お兄ちゃんがいい……!!絢音お兄ちゃんじゃなきゃ嫌だ!」
「僕も同じ気持ちだよ。真由ちゃんじゃなきゃダメなんだ」
「絢音お兄ちゃん……!」
真由ちゃんの泣きそうな声。
自分の体の事で、家族以外の誰かに愛される事や、まして結婚など諦めていたという。
そんな彼女に、僕はこの先何度でもこう言うだろう。彼女が不安になるたび何度でも。
「愛してるよ真由ちゃん。僕は君が好きだ。男の子だろうと女の子だろうと、君自身が好き。
この気持ちは何があっても変わらないから。安心して、ずっと一緒にいよう……」
「ありがとう……絢音お兄ちゃんありがとう……!オレ、こんな日が来るなんて……!
幸せすぎて怖いよ……!!」
「大丈夫だよ。君の事は僕が守る。二人なら何でもできるさ。
子供は、いざとなったら養子を取ればいいんだから……」
ポロポロと涙を流している真由ちゃんにキスをする。
“幸せすぎて怖い”と言った彼女の気持ち、痛いほど分かる。
だって僕も今同じ気持ちだから。

『彼女と一緒に幸せな家庭を築く事……』

やっと僕の叶えたい夢が、見えた気がした。

エンディング1 未来を君と




気に入ったら押してやってください
ついでに、気に入ったエンディング番号かいてみませんか?
【作品番号】TAZ


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