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 正しい嫁の躾け方2(竹雛の場合) 





俺はワルイ13世。
最近結婚したばかりの新婚フレッシュで若くてイケメンな王だ。
我が国の繁栄のためにも、愛しい妻とラブラブな毎日を過ごし、優秀な後継者を授かることが急務!
……なのだが……
「あーめんどくさいなー、アイツの相手をするなら、部屋でおやつを食べている方が有意義な気がする」
「ワルイ様!嫁いでもらった以上、きちんと夫としての義務は果たさないと!」
ギコギコと椅子を揺する俺にリリアが呆れ顔で言う。
しかしそうは言われても気分が乗ってこないので、リリアに言い返す。
「う〜……だって、アイツはアホのくせに上から目線で腹が立つんだ」
「ま、まぁ分からないことは無いけれど……けど!彼女だって可愛いところもあるわよ!
例えばほら!あんなだけど、一応ワルイ様には懐いてるみたいだし!」
「確かに、それもそうだな」
俺達が今話しているのは妻となった竹雛の事だ。
海上の孤島、閉ざされた島国の姫君だったアイツ。
国では王族が神の化身として民を納めていたらしく、それに甘やかされて育ったのが相乗してとにかく態度がデカい。
そしてとにかくアホだった。
見目は愛らしいけれど、それでカバーできる範疇を越えたアイツのウザさに俺も辟易しだしたところだ。
(しかし、多少出来の悪い妻でも包み込んで愛するのが立派な夫の風格と言うものだろうか?
アイツは絶望的にアホ偉そうだけれど、悪人と言うわけでは無いし……
一日三回は“可愛い”と思う瞬間があるしな……よし!!)
俺は椅子から立ち上がる。
包容力のある夫になるべく竹雛の相手をしよう!と心に決めて。
竹雛の部屋へ急いだ。


「おー婿殿!遅いぞ!はよう妾の遊び相手にならぬか!」
竹雛の部屋に入ると、メイドに自分を扇がせたり足をマッサージさせたりして、2,3人侍らせている彼女が
さっそく尊大な態度で俺に話しかけてくる。しかし笑顔だからまだ許せる……はずだ!
心の広い俺は引きつる顔で笑顔を作った。
だが
「ん?おやつも持っておらんのか?気が利かんのぉ」
あ?
「こやつらじゃ、ちと刺激が足りん。ちょうど良いから遅れた上におやつを持ってこなかった罰として、足を揉め婿殿」
あ?
「それが終わったら、婿殿がおやつを妾に食べさせてくれて、次に人力車を引いて妾に中庭を一周案内してたもれ♪
今日は花を愛でながら歌を詠みたい気分じゃ!」
あ?
「何じゃ何じゃ?そんな反抗的な顔をして。夫たる者、妻にかしずいてナンボじゃろうが!しゃっきりせい!」
「貴様ぁぁぁぁぁぁッ!!」
さすがに心が広い俺もこの発言群には黙っていられなかった。
何が“足を揉めだ”“中庭を一周案内せい”だ“妻に傅いてナンボ”だ!
この女尊男卑国家の虚栄神め!もう許さん!!俺は仮にも大国の国王だぞ!
俺はふんぞり返っている竹雛の腕を強引に取った。
「もう怒った!怒ったぞ俺は!完全に怒った!!」
「な、な!?痛い!引っ張るな無礼者!!」
「お前に今から自分の立場ってものを教えてやろう!お尻ぺんぺん300回の刑だ!!」
「は!?何じゃ、“オシリペンペ”……雪国の妖怪か何かかぇ??!」
……あ……?
「……………もういい。お前と話していると頭が痛い」
竹雛のあまりのアホさで俺の怒りは消えてしまった。
バカらしい。自分の部屋でリリアの淹れたお茶を飲もう。そしておやつのかき餅を食べよう。
「ま、待て!どこへ行く婿殿!コラ戻れ!妾と遊ばぬか!」
竹雛が何か喚いていたけど無視して部屋を去る。


【2時間後だ】
リリアのお茶で一杯やりながら、かき餅も食べて大満足の俺。
「はぁ〜だいぶ心に潤いが戻ってきたぞ」
「それは良かったわ。でも、竹雛様は放っておいて大丈夫?」
「うむ……」
リリアの言葉に、ふと竹雛の顔が浮かぶ。
『ま、待て!どこへ行く婿殿!コラ!戻れ!もっと妾と遊ばぬか!』
(……アイツ、寂しかったのかもしれないな)
竹雛がいつも、二言目には“遊べ”と突っかかってくることを思い出す。
態度は大きいけれど……アイツなりに国を出た寂しさもあるのかもしれない。
それにこのまま、お互いに溝ができた新婚生活を送るのは嫌だし。
「やはり俺が、余裕のあるところを見せなければな!行ってくるぞリリア!」
「頑張ってワルイ様!」
俺は再び竹雛の部屋に向かった。


「た、竹雛!来てやったぞ遊ぼう!」
俺は勢いよくドアを開ける。
すると目の前に信じられない光景が飛び込んできた。
パァンッ!パァン!
「ひゃぁぁん!あぁぁん!」
「ご、ごめんねアリア〜〜っ!!」
「んっ、くぅっ!いいのよダリア!姫様の、命令だもの〜〜あっぁ!!」
ピシィッ!
うちのメイドのダリアが同じくメイドのアリアの尻を叩いている。
そしてそれを椅子に座りつつ不思議そうな表情で見ている竹雛。
な、何がどうなってる!?
俺が硬直していると竹雛が頬杖をついて言った。
「面妖じゃのぅ……一体これは何の儀式じゃ?」
その後でアリアの悲鳴。俺はやっと我に返れた。
「おっ……おいっ!何のつもりだ!?やめさせろ!!ダリア!アリア!もういい!やめろ!!」
「「わ、ワルイ様〜〜っ!!」」
泣きべそ顔で俺を見る二人のメイド。
一方の竹雛はと言えば……
「何じゃ婿殿いたのか!さきほどそなたが言った“オシリペンペ”とやら、めいどに実演してもらった!
まぁワケの分からぬ儀式じゃが、現人神の妾の力が必要なのじゃろうて……
婿殿がやりたいのならやってやろうぞ!さっさとお尻を出すがよい!」
「…………」
竹雛は無邪気な笑顔だ。
コイツに悪意はない……悪意はないんだ……だけど、教えてやろう!!バカは罪なのだと!!
「おい竹雛、お前は一つ勘違いしているぞ」
「ん?」
「俺が叩かれるんじゃない!叩かれるのはお前だ!!」
俺は竹雛をとっ捕まえて、さっきまで竹雛が座っていた椅子に腰かけて、俺の膝の上に腹這いにさせる。
事情の読めたメイド達は「きゃっ!」と、可愛らしく短い悲鳴を上げて顔を覆ってしまう。
微笑ましいので俺は笑顔で言った。
「お前達、怖いのなら見ていないで逃げてもいいぞ」
「妾も怖い!だから逃げたい!」
「お前はダメだ」
ちゃっかり便乗してくる竹雛にこう返しつつも
「って、お前さっきまで平気でメイド達のお尻叩きを見ていたくせに怖いのか?」
素朴な疑問をぶつけてみた。
メイド達はパタパタ逃げて行き、竹雛は涙目になりながら叫ぶ。
「だ、だって!自分が叩かれるのは別じゃ!叩かれためいどはとても痛がっておったぞ!
しかもあ奴らなぜ逃げた!?そんなにも恐ろしいのかこの儀式は!!?」
「その通り、俺は味わった事があるから分かる。恐ろしくて痛い。儀式ではないけれど」
「な、なんと……!」
目をまん丸くして青ざめる竹雛。こうして見ると可愛いぞ。
と思ったら暴れ出した。
「わ、わわっ、妾は神ぞ!?神は痛みとは無縁じゃ!こんな事、あってはならぬ!!
離せ!離さぬか!無礼者!罰当たり!たっ頼む離してたもれ!!嫌じゃ!嫌じゃぁぁぁぁぁっ!!」
(ここまで怯えていたら可哀想か?)
「うわぁぁぁぁん!妾の婿の分際で!下男の分際で!
こんな事をしてタダで済むと思うな〜〜っ!おのれ蛮族が〜〜〜〜っ!!
悪しき儀式に妾を巻き込むな〜〜っ!!」
(そんな事は無かったか)
俺は新たな苛立ちによって心を鬼にして、竹雛の着物の裾に手をかける。
お尻を丸出しにするために。
竹雛もその動きが分かったのか余計焦って喚いていた。
「ふわぁぁぁぁっ!何をする!?そ、そうじゃ!妾は六の衣に守られておるぞ!
そう簡単に突破できるわけが……」
……確かに、捲ったらかさ張りそうな着物だな。お仕置きの邪魔かもしれない。
仕方ないな。
「おい竹雛。お前重いな。太ったのか?元からおデブちゃんか?」
「なななな何じゃと!?妾は最初も今も、“もてかわすりむ”じゃ痴れ者!!重いのは着物のせいじゃ!」
「ほぉ?じゃあ脱いでみろよ!脱いでまたここに来て、軽かったらその主張を認めてやろう」
「望むところじゃ!待っておれ!」
竹雛はぴょんと俺の膝から降りて、鼻息荒く着物を脱いで全裸になって、また俺の膝の上に戻ってきた。アホだ。
しかし、意外と胸があって、綺麗な体でドキドキしてしまった……
「どうじゃ!?どうじゃ!?軽かろう!?」
のは一瞬だ。必死に喚く言葉はいつもの調子で俺も落ち着いた。適当に合わせておこう。
「本当だ!木の葉のように軽いな!お前は確かにモテモテで可愛くてスリムだったようだ!」
「ほっほっほ♪分かればよい!本来、そなたのような男が結婚できるのが奇跡のような素晴らしいおな……」
バシィッ!!
「ひんっ!!?」
竹雛がこれ以上調子に乗る前に叩いてやった。
それだけで謎の高揚感が体中を駆け巡る。
内なる力……インナーパワーが引き出されるようだ……!よく分からんが!
驚いて体を縮こめた竹雛が呆けたような声を出す。
「あ……わ、……痛っ……!」
ビシッ!バシッ!!
「わぁっ!きゃぁぁあああっ!」
叩くたびに余裕のない悲鳴で騒ぎ立てる竹雛。おっと、悲鳴だけではない。
「やめよやめよ!痛い!ものすっごく痛いのじゃ!!」
早くもギブアップを宣言する。
もちろん反省もしてないうちから俺が許すはずもなく、漲る力を糧にバシバシ叩きながら言ってやった。
「先に言ってあっただろう“恐ろしくて痛い”と」
「先に言ってあろうが無かろうが、妾はこんな事はもう嫌じゃぁぁっ!やめてたもれぇぇっ!」
「まだ始まったばかりだろうが。我慢してたもれ」
「妾の真似をするなぁぁぁぁっ!!」
バシッ!!バシッ!ビシィッ!
「いやぁあああああっ!!うっ、くっ!!わぁぁぁあああん!
蛮族め蛮族、蛮族蛮族蛮族ぅぅぅぅっ〜〜!!」
「バンゾクバンゾクうるさいぞ!暴れるんじゃない!少しは自分の日ごろの行いを反省しろ!」
「黙れたわけミソ煮込みうどん!!やかましいわ!妾には逃げる権利がある――――っ!!
ぁっ……!うぅんっ!!」
必死にもがいたり前に体を押しだそうとしたり、狭い可動範囲で逃げ回る竹雛。
しかしダイナミックに動けているのは上半身だけで、お尻の方は揺れているくらいだ。
だから叩くのも容易い。そしてコイツは力も無いらしく押さえつけているのも楽ちんだ。
それに何だこの女、反省の色が一向に見られん。味噌煮込みうどんが食べたくなったじゃないか!
「いい加減にしろこの、小娘が!!」
バシィッ!!
「きゃぁああああっ!!」
俺がありったけの怒りと力を籠めて叩いてやると、竹雛が大声で悲鳴を上げて体をしならせる。
そろそろお尻も真っ赤になっているし、もうただ叩くだけではだめだ!
コイツには一度俺の偉大さを教え込んで、生意気な態度を改めさせないと!
竹雛は泣きじゃくりながらもまだ反抗的な言葉を喚いていた。
「わっ!ぐしゅっ、妾ぁは神ぞぉ!!おみゃっ、こんな事をして、ただで済むとぉぉっぐすっ!!」
「黙れ!!神の国を出たお前はもう神でもなんでもない!だたの女だ!
例え俺の妻でも、ただの女が、この俺の城でワガママ放題を許されると思うなよ!?オラ!
悪い子はこうしてこうして、こうだっ!!」
ビシッ!バシッ!バシィッ!
「ひゃぁぁぁぁっ!!痛い痛いうわぁあぁん助けてぇぇぇぇ!!」
竹雛はビービー泣き出してしまったけれど、コイツは頭が悪いしショック療法が一番だろう。
もう少しお付き合い願おうか。
大声で、威厳ありげに俺は竹雛に言う。
「この城で!ただの人の子のお前が!神のごとく大切にしてほしければ!いいか!?
俺の言う事を良く聞いて!偉そうな態度を取らず!大人しくしていろ!分かったか!?それとメイドを雑に扱うな!!」
「分かった!分かったからぁぁぁぁっ!やめてぇっ!痛いのじゃ止めてたもぉぉぉぉっ!」
「ようし分かったか!なら、“ごめんなさい。もうしません”は!?」
「ごっ……ごめんなさぁぁい!!もうしません――――っ!!」
(お。意外にあっさり謝ったな)
てっきりプライドが高い奴かと思ったら。
もしかして、保身のためにはプライドなんて投げ捨てるような、意外にヘタレな奴なのかもしれない。
竹雛はハァハァと息を乱しながら
「言ったぞ!言った!言ったから許してくれ!お願いじゃ!」
必死に懇願してくる。……う〜〜ん。
パァンッ!パン!パン!
「ひゃぁぁぁっ!何故じゃ!?何故じゃぁぁぁ!!?」
ダメ押しだ。バカにはオーバードラッグぐらいがいい薬だろう。
「俺の恐ろしさが分かったか?お前が下男扱いできるような男じゃないだろう?」
「分かったぁぁっ!婿殿は恐ろしき男じゃ!妾でも勝てぬ!」
「分かればいい」
そう言って俺が手を止めて、押さえつけていたのを弱めるやいなや……
「うわぁあああああん!!」
竹雛はすごいスピードで俺から逃げ出して、自分の着ていた着物を丸々頭から被って「重い!」と叫びながらも
着物にくるまって泣きながら震えていた。
「うっ!ぐすっ!良く考えたらこれ、儀式じゃのぉてでーぶいというやつじゃ!
妾はこれから毎日婿殿の暴力に怯えて暮らすのじゃ!あぁっ!やはり海の向こうは野蛮な国!
出なければよかった!家に帰りたい!帰りたいよぉ!
父上ぇっ!母上ぇっ!迎えに来てたもぉっ!助けにきてたもぉぉっ!!うぇぇぇぇっ!!」
(しまった脅し過ぎたのか?)
怯えて泣く竹雛を見て、少々罪悪感に苛まれた。
何より、せっかく反省したのなら当初の予定通りラブラブになりたい。
だから俺は彼女に近づいて優しく言った。
「こら。そんなものを被るな。頭を出せ」
「ヒィィ!今度は妾の首をねじ切るつもりか!?」
「そんな事はしない。なでなでしてやるぞ?そのままじゃ、陰になってお前の顔が良く見えない」
「…………」
俺の必殺癒しスマイルを見て、竹雛も警戒を解いたようで。怖々と着物を取り払う。
だから宣言通り彼女の頭を撫でながら言ったんだ。
「怖かったか?でも、お前がいい子にしていればもうこんな痛い事はしない」
「…………ほ、本当かの?」
「いい子にしていれば、な。
お前は今、“痛かったし怖かったし、これからは大人しくしよう”と思っているはずだ」
「う、うむ」
「そして俺の事をカッコいいと思っているはずだ」
「そ、そう言えば……さっきから心の臓がどきどきするのぅ……」
「俺はお前の夫で、お前は俺の妻だ。俺はお前を愛しているぞ。
これからはお互い愛し合い、慈しみあって暮らすんだ。素敵だろう?怯えなくていい」
「…………婿殿♥」
竹雛は真っ赤な顔で、潤んだ瞳で俺を見る。
(可愛い……!!)
俺は思わず竹雛を抱きしめる。
ここで考えて欲しい。愛しい妻が裸で、それを抱きしめて、大人しくしていられる夫がいるのか?
それはいない?
正解!!
「婿、殿……そなた温かいのぅ……♥」
ふわりとした、甘えるような音色に俺の理性は崩壊した。
竹雛から素朴でありながらも、自然の趣を思わせるいい香りがしてくる!!
気が付けば俺は彼女の唇にかぶりつくように口付けていた。
「んっ……ぢゅっ……!!」
そのままのし掛かって押し倒す!いいぞ俺!頑張れ俺!
唇を離して、竹雛を見下ろす。
真っ赤な顔をして戸惑っているかと思った竹雛が、予期せず妖艶な笑みを浮かべていた。
それで戸惑ってしまって、動けなかったのが悪かったのか……
「どうした?夫婦の契りをかわすのであろう?添い遂げようぞ?」
「こ、怖くは、ないのか?」
あまりの彼女の余裕に俺の方が竦んでしまう。
「怖い?心配せずとも、妾は博識じゃからな。
そのあたりの知識は皆から色々聞き及んでおるぞ。婿殿が怖いなら妾が……」
「ま、待て!!チクショウお前、耳年増か!?俺は勉強してから出直す!!」
俺は竹雛から飛び退いて大図書館へと走った。
俺だってそれなりの知識はあるけど!妻の前で恥はかきたくないぞ!
竹雛と添い遂げるのはエロマスターになってからだ!
「あぁん婿殿ぉ〜〜♥」
甘えた声が俺の背中にかかってゾクゾクした。
(竹雛……フフッ可愛い奴め。明日からはラブラブになれそうだ)

そんな事を思った、とある一日だった。



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【作品番号】TYS2

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